「南北同時ボイコット」の可能性はどれだけあるのか

昨日の『韓国で「東京五輪不参加論」が勝手に燃え広がるのか？』で報告した、韓国の「東京オリパラ不参加論」を巡って、「続報」があります。東京五輪組織委のウェブサイトに掲載された日本地図に竹島らしき薄い点が描かれている件で、韓国政府外交部報道官は昨日の定例会見で「継続して積極的に対応する」と述べたのだそうです。まさに、予想どおりの展開ですが、ただ、本当に「南北同時ボイコット」にまで行き着くかどうかについては、まだ読めません。

2021/05/28 11:45 追記

推敲段階でうっかり残したままだった文章を削除しております。

東京五輪竹島騒動

楽心配のあまり、夜も寝られないというのは、こういう状態を指すのでしょうか。

『韓国で「東京五輪不参加論」が勝手に燃え広がるのか？』では、韓国の丁世均（てい・せきん）前首相が自身のＳＮＳで「東京五輪ウェブサイトの日本地図から独島を削除せよ、さもなくば韓国政府は五輪不参加を検討せよ」などと主張した、という話題を取り上げました。

丁世均氏のいう「独島」とは、東京五輪のオフィシャルウェブサイト上の日本地図の島根県沖合部分、ちょうど竹島の場所に描かれている小さな薄い点のことだと思われますが、丁世均氏はこれを問題視している、というわけです。

といっても、丁世均氏自身が本気でこれを求めた、というものではないように思えます。

この話題を取り上げた５月26日付の産経ニュースの『韓国前首相、東京五輪ＨＰの竹島地図削除要求「拒否なら五輪不参加」』という記事を参考に、客観的な事実やいくつかの観測をまとめると、どうも次のとおり、丁世均氏の「大統領選をにらんだ政治的な動き」にも見えるのです。

• ４月まで首相を務めた丁世均氏は、来年３月の大統領選に向け、今月末にも左派系与党「ともに民主党」からの出馬を正式表明するとみられている
• この地図を巡っては、韓国・誠信女子大の徐敬徳（じょ・けいとく）教授が21日、国際五輪委員会（ＩＯＣ）に「訂正を求めるメール」を送付した
• 丁世均氏は25日、現在行われている野党の党代表選で若手候補が善戦していることに関し、「韓国には『長幼の序』の文化がある」などと発言していた

…。

要するに、与党からの大統領選出馬を目指す丁世均氏にとっては、自身の「失言」をごまかすために、徐敬徳氏がかねてより大声で主張している「五輪地図の竹島問題」に飛びついた、というのが実情に近いのではないでしょうか。

そもそも徐敬徳氏自身も、本当の義憤にかられてやっているというよりはむしろ、自身が有名になるために、韓国国内で「ウケる」反日ネタを探して、それに積極的に火をつけているフシがあります。

徐敬徳氏自身が火をつけようとして失敗した反日ネタもたくさんあるからであり、どうもこの人物は韓国国内でも単なる活動家として冷ややかに見る人が多いようです。

旭日旗問題を思い出す

ただ、昨日の当ウェブサイトで申し上げたとおり、どんなくだらないネタであっても、「反日」となれば一致団結してしまうこともあるのが、韓国という国の特徴です。その典型例が、「旭日旗問題」でしょう。

「旭日旗問題」とは、わが国の自衛隊旗などとして広く使われている旭日旗を巡り、韓国が2011年頃から「戦犯旗だ」、「（ナチスドイツの）カギ十字と同じような意味の旗だ」、などと言い始めたというものです。

ことの発端は、2011年１月25日のＡＦＣアジアカップの日韓戦において、韓国の奇誠庸（き・せいよう）選手による、日本を侮辱する猿真似パフォーマンスが問題視された際に、奇誠庸選手が苦し紛れの言い訳として「スタジアムの旭日旗を見てカッとなった」と述べたことにあります。

要するに、奇誠庸氏という個人が自身の不祥事をごまかすためにでっち上げたウソが、韓国国内の反日感情に火をつけ、ありもしない「旭日旗＝戦犯旗」という虚構を作り出しただけでなく、それを全世界に広げつつ、迷惑をかけている問題だ、と言い換えても良いでしょう。

実際、この「旭日旗ヘイト問題」は、すでに日韓間の問題にとどまらなくなっています。『ＬＡの学校の壁画が修正へ　被害者でなく加害者としての韓国』でも紹介した「壁画事件」などは、韓国人の悪意が無関係な第三者に多大な迷惑を掛けた事例でしょう。

この壁画事件は、壁画家のボー・スタントンさんが米ロサンゼルスのケネディ・コミュニティ・スクールの外壁に、往年の名ハリウッド女優のエバ・ガードナー（1990年没）とヤシの木をモチーフに壁画を描いたところ、地元韓国人集団が抗議した、というものです。

結局はスタントンさんが壁画の部分修正を受け入れたものの、この壁画は日本とは何も関係がない、純粋に壁画家としてのスタントンさんの作品であり、これを理不尽な政治的意図で修正させられること自体、まさに表現の自由の侵害です。

（※余談ですが、その意味で、この旭日旗問題は、普段から当ウェブサイトで申し上げている、「韓国の日本に対する不法行為が第三国にも被害を与えている」という事例でもあるのです。）

旭日旗問題のような「暴走」はあるのか？

さて、東京五輪竹島問題に話を戻しましょう。

昨日、当ウェブサイトでは、「韓国では反日的な材料が本人たちの意図を越えて暴走する傾向がある」と指摘しました。

旭日旗問題自体が奇誠庸氏と無関係に韓国社会を暴走させているのと同様、今回の「東京五輪竹島問題」についても、丁世均氏や徐敬徳氏といった「元凶」と無関係にその問題が勝手に独り歩きし、韓国社会を暴走させるかもしれない、という問題意識です。

その「続報」でしょうか。

昨日夕方、韓国メディア『中央日報』（日本語版）に、こんな記事が出ていました。

韓国外交部「日本の東京五輪の独島表示について継続して積極的に対応」

―――2021.05.27 17:07付　中央日報日本語版より

これは、韓国外交部の崔英森（さい・えいしん）外交部報道官が27日の定例記者会見で、「状況を注視しながら文化体育観光部、大韓体育会などのすべての関連機関との積極的な協議を通じ、継続して積極的に対応していく」と述べた、というものです。

「継続して積極的に対応」。

これは、いったい何を指すのでしょうか。

これについて崔英森氏は「現在、韓日間で関連する疎通が行われている」などと述べたのだそうですが、中央日報によると韓国政府が24日にも「東京五輪の地図の即刻是正」を要求したものの、「日本政府側は受け入れることができない」という姿勢を固守しているのだとか。

真の敵は、だれだ？

つまり、前首相という立場の人物が「東京五輪竹島問題」にうっかり口を出してしまったがために、韓国政府もこぶしを振り上げざるを得なくなり、それが崔英森氏の「継続して積極的に対応」という発言につながった、という可能性が高そうです。

このまま日本側も一切譲らず、地図の修正に応じなかったら、いったいどうなるのでしょうか。

やはり、韓国が取り得る選択肢は、丁世均氏の主張する「東京オリパラ不参加」でしょうか？

もしそうなってしまった場合、ただでさえ日韓関係がギクシャクしているなかで、オリパラという平和の祭典への不参加は主催国である日本に対する侮辱であり、日韓関係が破綻に瀕しているというのは、もはや世界の誰の目にも明らかになってしまいます。

しかも、北朝鮮がすでに東京オリパラ不参加を表明していることを踏まえると、韓国のオリパラ不参加は、「東京オリパラへの南北同時不参加」という歴史的かつ最高悪の事態につながるかもしれません。これで中国までが東京オリパラ不参加を表明しようものなら、あまりにも嬉

2021/05/28 11:45 追記

推敲段階で消し忘れていた一文を削除しております。

ただ、こうしたなかで、もっと大きな懸念材料があるとしたら、「こうした事態を招くと、日韓関係の亀裂は修復不可能になりかねない」と判断した外務省が余計な仕事をし始めることでしょう。

つまり、日本にとっての最大のリスクは、韓国が求める「地図からの竹島の削除」に安易に応じてしまうことです。

「外務省こそが外交の素人集団である」というのは、当ウェブサイトの一貫した見方ですが（たとえば身近なところでは『【速報】姜昌一氏が天皇陛下に信任状捧呈、正式大使へ』でも触れた「姜昌一問題」の顛末がその典型例でしょう）、また外務省が余計なことをしないかが心配でなりません。

くれぐれも、「日本の外務省が動いて地図の修正を働きかける」、ということは決してしないでほしいと思います。

もっとも、焦点の地図を掲載しているのが、外務省ではなく東京五輪組織委員会のウェブサイトであるというのは安心材料のひとつではありますが、いずれにせよ日本も「譲るべきではないところは絶対に譲らない」という、国家としての最低限の矜持を維持して欲しいと願うばかりです。