【資料編】7月29日に開催されたWTO会合の議事録

本稿は資料編です。韓国が日本の「輸出『規制』」を不当だとして世界貿易機関(WTO)に提訴している問題で、WTOのウェブサイトに紛争解決小委員会(DSB)の定例会議の要旨が公表されていましたので、その概要について紹介しておきます。なお、参考訳が誤っている可能性がありますが、その責任は当ウェブサイトに帰属します。また、当ウェブサイトに掲載した内容につきましては出資を示していただければ自由に転載・再利用等をいただくことが可能ですが、その際には自己責任にてお取扱いください。

WTOパネルのリンク

該当するリンクは、次のとおりです。

Panels established to review Indian tech tariffs, Japanese export restrictions, EU palm oil measures

WTO members agreed on 29 July to the establishment of four new dispute panels to examine various trade complaints. A <<…続きを読む>>
―――2020/07/29付 WTOウェブサイトより

7月29日に開催されたDSBでは、韓国による日本の「輸出『規制』」の不当性に関する提訴など、4件のパネルが設置されたのですが、このうち「DS590」が韓国の日本に対する「輸出『規制』」に関するものです。

DS590: Japan — Measures Related to the Exportation of Products and Technology to Korea

少し長いのですが、原文のうち最終段落以外の部分と、これに対する参考抄訳を付しておきたいと思います。

韓国側の主張

まずは、韓国側の主張です。

Korea presented its second request for the establishment of a dispute panel to rule on Japan’s amended export licensing policies and procedures imposing certain additional requirements on exports of fluorinated polyimide, resist polymers, and hydrogen fluoride, as well as their related technologies, destined for Korea. Korea’s first request was blocked at the DSB meeting on 29 June.  Korea reiterated that exports of the products in question were being seriously restricted because of Japan’s amended export licensing requirements and that Korea considered these requirements to be in violation of WTO agreements covering trade in goods, services, trade-related investment measures and protection of intellectual property rights.

韓国向けのフッ化ポリイミド、レジストポリマー、フッ化水素およびそれらの韓国向けの関連技術の輸出に一定の追加要件を課す日本の輸出ライセンスポリシー・手順を巡り、韓国はパネル設置に関する2回目の要求を行った。最初の要求は6月29日のDSB会議で承認されなかった。韓国は問題の製品の輸出が日本の改正輸出許可要件のために厳しい制限を受けていると主張。あわせて、これらの要件は、商品、サービス、貿易関連投資措置、知的財産保護を対象とするWTO協定に違反していると繰り返した。

日本側の主張

これに対し、日本は次のように主張しました。

Japan said it was deeply disappointed with Korea’s second request for a panel and said the measures in question were in line with international practices regarding export controls over dual-use items (those with civilian and military applications).  Japan has and will continue to grant such licences for exports to Korea in line with the new requirements.  Korean companies have not suffered any damage as a result of the measures, yet Korea is challenging the fundamental premises underlying the internationally-established framework for non-proliferation of arms and sensitive military technologies, including weapons of mass destruction.  Japan views dialogue as the best way of resolving this matter rather than dispute settlement, it said.

日本は韓国からの2回目のパネル設置要求に深く失望していると述べた。また、日本はこの措置が民生・軍事の双方に使用可能な物資の輸出管理に関する国際慣行と整合的であると主張した。日本はまた、これら品目の対韓輸出については継続しているしたうえで、韓国企業は今回の措置により何の被害設けていないと指摘した。日本はまた、韓国が武器や機微軍事技術の不拡散に関する国際的に確立した枠組みの根底に対して挑戦しているとしたうえで、この事項はDSBではなく対話により解決を図るのが最良とみなしていると述べた。

米国の意見

また、DSB議事録には米国の次の発言も掲載されていました。

The US said only Japan can judge what is necessary to protect its essential security interests and that since the erroneous panel findings in “Russia — Measures Concerning Traffic in Transit” (DS512), several WTO members have rushed to challenge national security measures. This surge in litigation poses serious risks to the WTO, threatening to enmesh the organization in national security matters it has wisely avoided for over 70 years.

米国は安全保障上の重要な利益を守るために必要な事項を判断できるのは日本のみであるとしたうえで、過去の「DS512(ロシアの貨物輸送経由地に関する紛争)」におけるWTOの誤診を巡り、複数のWTO加盟国による国家安全保障の問題と通商の問題を混同した申し立てを急増させたと批判した。米国はこの手の訴訟の急増がWTOに深刻なリスクをもたらすとともに、70年以上にわたって賢明に回避してきた国家安全保障問題にWTOを巻き込みかねないと懸念を示した。

本稿は、以上です。

読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    配信を読みました。米国がまともなコメントを発してくれたようで、心強いですが、何かとしぶとい下朝鮮なので、ロビー活動とか暗躍が最後まで気になります。

    また韓国中央日報からの孫引きで恐縮ですが、肝心な点を要約すると以下の通りです。

    『先月29日にジュネーブで開かれたDSB定例会議で、米国側は「日本だけが自国の本質的な安全保障に必要な措置を判断することができる」とした。この発言は、韓国政府が日本の輸出制限措置をWTOに提訴したことについて、日本の安保措置はWTOの審理対象にならないという趣旨と解釈される』。祝!

    でも韓国政府はあさっての方を向いた談話を発表してますネ(笑)。アホか?

  2. 愛知県東部在住 より:

    基本的には日本がこれまで主張してきたことに沿った主張のようですが、更に一歩踏み込んで韓国へ輸出した40トンものフッ化水素が行方不明になっていること、しかもそれを韓国は「返品」したと説明しているが、税関の書類にはそれを証明しうる証拠が一切残っていないこと等も併せて各国代表に説明すべきだと思います。

    ことここに至っては韓国に無駄に忖度すること等一切無用にして貰いたいものです。

    やられたらやり返す、それもできれば「百倍返し」ぐらいを希望します。(笑)

    1. だんな より:

      愛知県東部在住
      韓国は無理筋ですので、日本がここで先にカードを切って、得する事は、無いと思います。

      1. 愛知県東部在住 より:

        だんな 様

        日本がここでカードを先に切って >いや先にカードを切ったのは韓国の方ですよ。
        WTOパネル設置の提訴が韓国のカードです。ただ韓国にとって残念なのは、このカード以外に切ることのできる材料がもはや殆ど残されていないというのは、彼の国にとってはさぞや残念なことでしょうね。

        それに引き換え日本には、表だって事を構えなくても使える有効な手立てはいくらでもあります。
        その一つが今回新宿会計士様が指摘された金融措置です。みずほ銀行に金融庁の内部監査を入れて、韓国企業への融資残高を査察せる事などもやって貰いたいところです。

        外貨不足に陥っている韓国企業の脆弱性は日々高まるばかりですから、融資残高が増えることはそれだけ銀行にとってもリスクが増大する要素となります。リスクが増えればそれだけ貸倒引当金の積み増しを要求することも金融庁の重要な業務の一つです。

        と云う事で、今後の融資の審査には多少影響が出てくる可能性もありますよね。

        「半沢直樹」に出てくる黒崎のような優秀な検査官だと尚面白いと思う次第です。(笑)

        1. 愛知県東部在住 より:

          訂正です。

          ただ韓国にとって残念なのは、このカード以外に切ることのできる材料がもはや殆ど残されていないというのは、彼の国にとってはさぞや残念なことでしょうね。 ×

          ただ韓国にとって残念なのは、このカード以外に切ることのできる材料がもはや殆ど残されていないということでしょうね。 ○
           

        2. だんな より:

          愛知県東部在住さま
          韓国は、数少ないカードを切って来ました(弱いけど)。日本のカードが何かは、分かっていないと思います(私も分からん)。
          これ以上のカードは、韓国から出て来ないのが分かっているんだから、日本は、最後の最後に韓国に勝つカードを切れば良いでしょう。
          どうせどんな結果が出ても、負けを認めやしません。
          WTOが機能せずに、有耶無耶になって喜ぶのは、韓国かも知れません。

        3. だんな より:

          銀行に査察に入って、韓国向けの債権の安全度を再確認させれば良いと言ったのは、私が起源ニダ。

        4. 愛知県東部在住 より:

          どうせどんな結果が出ても、負けを認めやしません>

          負けを認めようが認めまいが、韓国は既に詰んでいる状況です。

          WTOが機能せずに、有耶無耶になって喜ぶのは、韓国かも知れません>

          それが韓国にとって喜ばしい結末とは思えません。日本側には表沙汰にはしなくとも打つ手はいくらでもあります。

          金融を少しずつ絞り込むのは、いわゆる「制裁」などではなく、日本の金融体制維持の為の自衛策だと言えばそれだけで済む話です。韓国には反論不可能でしょう。

  3. だんな より:

    韓国が、「知的財産保護を対象とするWTO協定に違反している」と言っているのは、笑うところですかね。
    日本の主張は、ブレていないと思います。
    アメリカの意見を見ると、やはり黒幕でもおかしくないな、と思いますね。

    1. 心配性のおばさん より:

      だんな様 私もそこが分りません。WTOの委員は分かったのでしょうか?

      >「知的財産保護を対象とするWTO協定に違反している」

  4. 七味 より:

    >日本はまた、韓国が武器や機微軍事技術の不拡散に関する国際的に確立した枠組みの根底に対して挑戦しているとしたうえで、

    日本の主張のこの部分は、「韓国は、不正に軍事技術なんかを拡散させている」ってことを言ってるよう思うのですが、踏み込んで主張してるなって思うのです♪

    (≧∇≦)b クッ゙

    1. G より:

      あっ確かにめちゃ踏み込んでますね「枠組みの根底に対して挑戦している」って

      黙っておくつもりだった、あんな話やこんな話。パネルの場でバラしちゃうかもw

  5. だんな より:

    “日本の肩持つ”米国「輸出規制は“安保”措置」…WTO紛争に「影響大? 」=韓国のWTO提訴
    https://news.yahoo.co.jp/articles/84e154cfbbfeaab29430ac5d482840fc6422627f
    以下引用します。

    韓国の産業通商資源部(経済産業省に相当)の当局者は「米国はDSB会議でGATT(WTOの前身)の第21条の、安保例外に対する自国の長い間の立場を繰り返しただけのものだ」とし「結果的に日本の肩を持つようなかたちになったが、このこと自体が日本の立場を支持しているということではない」と強調した。

    引用ここまで。
    このコメントが、韓国人らしいなと思います。
    お薬増やしておきますね。

    シンシアリーさんのブログでも、同じタイミングで同じ話題でした。
    ふと思ったのは、WTOパネルでは、関係国がパネルに参加する事が、認められるケースが有ります。実例としては、日本が韓国を訴えてる造船のパネルには、EUが日本側で、参加する事になっています。 
    何処とは言いませんが、このパネルの日本側に参加する国が、有ると面白いですね。

    1. G より:

      間違いなくアメリカが参加します。日本の仲間だからじゃなくて、「複数のWTO加盟国による国家安全保障の問題と通商の問題を混同した申し立て」に断固とした対応をしなきゃいけないから。アメリカが全部潰して回りますよ。

  6. G より:

    普段は単純な変換ミスの指摘とかはしないんですけど、ここはあえてさせてください。

    ✖️ 韓国企業は今回の措置により何の被害設けていないと指摘した。
    ⭕️ 韓国企業は今回の措置により何の被害も受けていないと指摘した。

    要するにここがミソですよね。被害がない。被害額ゼロ円だから、WTOとしては何の解決手段も提案できない。対抗関税みたいなの認めようとしても被害額ゼロ円じゃどうしようもない。
    日本の輸出管理が差別的だったとしても、他にも現在と同じ立場の国はたくさんある。

    韓国も例え勝っても何も出来ないのは知ってるので、途中で交渉で和解みたいなこと言ってるけど、ただ、日本としては和解に応じなきゃいけないような困った事柄は何もない。WTOの措置で実効的なものがあり得ない以上和解する意味もない。

    ホント、意味のない「判定勝ち」だけなんですよね。ありうる成果としては。あと、日本に対して強気のアクションとっているという国内アピールのみ。

  7. はにわファクトリー より:

    米国の腹話術役をやらされていることがいよいよあからさまになりそうな展開ですね。日本の国益のためです、まこと結構なこと。出番を提供されているのですから日本国全体を挙げてバックアップしWTOチームには堂々やりとげていただきたいものです。

  8. 心配性のおばさん より:

    韓国は、日本の輸出管理強化により、フッ化水素の野放図な輸出が不可になっただけです。だけ、と申し上げましたけど、これはイランの原油代物納の不可、半導体製造の不安定へと繋がります。中国のファーウェイも台湾からの購入は急いでいますが、サムソンからの購入を減らしているとか。

    韓国はこれを公にはできませんし、証拠を押さえている日米はニヤニヤ笑って動きません。

    では、どうなるかです。文在寅政権は、破れかぶれの制裁破りを決行し、北朝鮮の南進を誘導するかしら?
    北朝鮮のご都合もあるかと存じますが、制裁破りのほうは韓国の独断で可能です。

    もちろん、そうなれば日米からのセカンダリーサンクションが確定し、韓国民の地獄が確定しますが、もとより、文在寅政権にとって、韓国という国体、国民はどうでもいいので、南進ではなく、北朝鮮に無血開城かも知れません。

    事前に韓国経済の焦土化を行ったとしても、半島全体が明示的な敵基地となります。私どもが覚悟し、準備するのはこのことです。半島難民?日本上陸は赤子一人許しません。

    上陸しようとしたら、侵略者として難民キャンプ船に拘留。死に絶えるまで世界の海をさすらっていただく。
    「人道がぁ」とかおっしゃる国家に引き受けて頂けばよろしい。いないとは思いますが。

  9. カズ より:

    特恵国から優遇国にされたことでどんな不都合が発生したのでしょう?

    韓国を狙い撃ちしたのではなくて、他の先進諸国と足並みを揃えただけのこと。

    管理体制の確立と書類申請を課されるだけの違いだけだと思うのですが・・。

    無条件での包括許可は問題外だとしても、ある意味、管理体制の整備が進捗し信頼回復の要件は整いつつあったはずなのに、変ぇ〜んなの・・?

    *彼らが最悪のタイミングで最悪の決断しか下さないのは「誰かに強く叩かれたがってるから」としか思えないときがあります。
    彼らの本質はサンドバッグなのでしょうか?
    そういえば鈴置論考にも「より強く叩いた方に従う」旨のくだりがありましたよね・・。

  10. 匿名 より:

    これもう勝ちでは?笑

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