昨日の『朝日新聞ですらメディア部門が営業赤字に転落する時代』で、久しぶりに新聞社の財務分析を取り上げたところ、コメント欄が大盛況であり、なかには「天声人語」風のコメントを寄せてくださる方もいらっしゃったようです。ただ、それと同時に「新聞紙自体は革靴を乾かしたり、天ぷらの油を吸わせたりするうえで有益だ」というご指摘もいただいたのですが、これはまったくそのとおりだと思います。
目次
新聞業界の苦境
朝日新聞の財務諸表分析からわかること
昨日の『朝日新聞ですらメディア部門が営業赤字に転落する時代』では、主要新聞社のなかでは珍しく有価証券報告書を財務局に提出している(株)朝日新聞社について、2020年3月期有報をもとに、部数、人件費といったデータを紹介しました。
あらためて、客観的な数字で確認した、昨日の議論を振り返っておきましょう。
- 朝日新聞の部数は朝・夕刊ともに右肩下がりで減り続けており、2020年3月期の朝刊部数は537万部で、これは6年前の2014年3月期の753万部と比べてざっと30%減少している。
- しかし、過去6年分のデータで読む限り、朝日新聞社の平均年間給与は一貫して1200万円台を維持しており、昨年一部メディアに報じられた「1人あたり一律165万円の賃下げ」が行われた様子はない。
- 同社の「メディア・コンテンツ事業」は2020年3月期、約50億円の営業赤字に転落しているが、不動産事業で約68億円の営業利益を計上したため、新聞事業の赤字を不動産事業で補填している構図にある。
つまり、結論的にいえば、朝日新聞社に関しては「まだまだ経営的には余裕がある」、というのが、当ウェブサイトなりの分析です。
たしかに新聞事業は今回、赤字に転落していますが、1人あたりの人件費は高額であり、引き下げる余地もあります。朝日新聞本社に勤務する職員は4000人弱ですので、今すぐ1人165万円の賃下げに踏み切れば、(新聞部数がこれ以上落ち込まなければ)新聞事業は黒字に戻るはずです。
また、不動産部門は非常に余裕がありますので、極端な話、賃下げをしなくても、新聞部門の赤字を不動産部門の黒字で埋めることが可能です(※といっても、「新聞部数がこれ以上落ち込まずに現状維持を続ければ」、という前提条件が付きますが…)。
新聞業界自体、「安泰」なのか?
ただし、この分析には、3つの限界があります。
1つ目は、この「まだまだ経営に余裕がある」、「不動産事業の黒字で新聞事業の赤字を穴埋めすることが可能」というのは、あくまでも朝日新聞社に関しての話であって、新聞業界全体の話ではない、という点です。
つまり、朝日新聞とて「まだまだ余裕がある」ように見えても、結局はこれ以上、部数が落ち込むようであれば、職員の賃下げやリストラクチャリングに乗り出さざるを得なくなる(かもしれない)、ということであり、朝日新聞でさえそうなのならば、ほかのメディアは目も当てられない惨状なのかもしれない、ということです。
次に2つ目は、武漢コロナ禍によって、新聞社、新聞販売店の経営状態が一気に厳しくなった可能性がある、という点です。とくに、「新聞販売店にチラシが入らなくなった」、「新聞に公告を出す企業が減った」、などの話はよく耳にします(といっても、客観的に検証できるデータには乏しいですが…)。
しかし、後述するとおり、同じ「マスメディア」の範疇に属するテレビ業界などは現在、スポットCMが4割前後も落ち込むなど、かなりの苦境にあるようです。当然、テレビ業界が広告費の落ち込みに直面している以上、新聞も影響を受けていないとは考えられません。
新聞論じるうえで避けられぬ「押し紙問題」
そして3つ目は、新聞の部数自体が適正に報告されていない可能性がある、という点です。最近、複数の人から(朝日新聞に限らず)「新聞の部数には『押し紙』が含まれているのではないか」、「押し紙は全体の3割前後に達するのではないか」、といった主張がなされているのは気になります。
かくいう当ウェブサイト自体も、下記記事で一般社団法人日本新聞協会の『新聞の発行部数と世帯数の推移』というデータを使って、「朝刊単独部数の減り方が少なすぎるのではないか」という点を指摘していますので、よろしければご参照ください。
「新聞業界の部数水増し」を最新データで検証してみた
相変わらず、「新聞の部数」が怪しいです。先日、「一般社団法人日本新聞協会」が2019年10月時点の新聞部数データを公表しているのですが、公表されているデータが非常に曖昧であるという問題点もさることながら、「一般紙」「朝刊単独部数」の減少率がほかの区分と比べて小さすぎるという疑問があるのです。昨年の「桜を見る会」虚報騒動でも見られたとおり、普段、新聞業界は「疑われている側が無実の証拠を出す義務がある」と騙っていますので、新聞業界さんには「押し紙問題は存在しない」ということを、私たち国民が納得するように説明する義務があります。<<…続きを読む>>
―――2020/01/05 10:00付 当ウェブサイトより
ちなみに、この日本新聞協会が発表する新聞業界全体の部数、ほかにもその「怪しさ」の片鱗を見ることができます。
というのも、先ほども触れたとおり、朝日新聞朝刊の部数は2014年3月期の753万部から2020年3月期には537万部へと、6年間で約215万部減った計算です(減少率は30%)。
ところが、日本新聞協会が発表するデータによると、日本全体の「朝刊単独発行部数」は、2013年10月時点の3355万部から2019年10月時点には2854万部へと、約501万部減っているのですが、減少率は15%に過ぎません。
朝日新聞の場合、2014年に相次いで深刻な虚報事件が発覚したという事情もあり、だからこそ読者離れが加速したのだ、という説明もできなくはないのですが、むしろ、新聞業界全体が朝日新聞と同じくらい減っているにも関わらず、その事実を隠蔽しているのではないか、という疑いも抱いています。
図表1 新聞の部数の推移(2000年以降、発行形態別)
(【出所】(一社)日本新聞協会『新聞の発行部数と世帯数の推移』より著者作成。ただし、グラフ作成のレイアウトの都合上、データが存在しない1999年と2020年を、それぞれ起点、終点としている)
このあたりについては、正直、よくわかりません。
しかし、少なくとも自然に考えて、スポーツ紙、夕刊単独部数などが2000年代初めと比べて激減しているにも関わらず、朝刊単独部数だけが大して減っていないというのは、不自然極まりない現象でもあります。
既得権の終焉
テレビ業界の「三重苦」
さて、「マスメディアの苦境」という意味では、新聞だけでなく、テレビも状況は似たようなものです。
つい先日も『民放の5月のスポットCMが4割減の衝撃=東京新聞』で取り上げましたが、東京新聞の7月11日付の『民放、衝撃のCM収入減 「ステイホーム」期間中、「スポット」不振 3〜4割下落』という記事によると、在京民放は軒並みスポットCM収入が激減したそうです。
在京キー局各社の5月のスポットCM収入(前年同期比)
- 日本テレビ…未発表
- テレビ朝日…58.7%
- TBS…59%台
- テレビ東京…64.7%
- フジテレビ…57.5%
【出所】東京新聞)
テレビ業界に襲い掛かっているのは、それだけではありません。
『テレビの三重苦:視聴者、広告主、クリエイター離れ』でも紹介しましたが、地上波テレビ局から若くて優秀なクリエイターが、高給や潤沢な制作予算をエサに、NetflixやAmazonといった外資系の企業から引き抜きに遭っている、といった報道もあります。
さらには、武漢コロナ禍で在宅ワークが増えたにも関わらず、ワイドショーをはじめとする地上波テレビの内容があまりにも酷く、誤報などで却って人々の信頼を失ったのではないでしょうか。
すなわち、地上波テレビからは、広告主、視聴者、クリエイターが同時に離れ始めており、こうした動きが武漢コロナ禍により、ますます加速する兆候がある、ということです。
ちなみに東京新聞はテレビ東京の石川一郎社長の
「構造的な問題も、新型コロナの問題もある。世の中が大きく変わる状況の中、テレビ業界も昔と同じことをやっていては生き残れないのではないか」
という発言を紹介しているのですが、個人的にはこの石川社長の「昔と同じことをやっていては生き残れない」という発言は、これを報じている東京新聞自身を含めた新聞業界にもまったく同じように当てはまる話ではないかと思わざるを得ないのです。
ビジネスモデルの転換に遅れると…
ただ、古今東西、さまざまな業界に言えることですが、「この世の春」を謳歌してきた業界・会社に限って、なかなか脱皮することができません。
たとえば、むかし、ダイエーというスーパーがありました。このスーパーは高度経済成長期、都市の人口密集地帯に出店して地価を上昇させ、不動産の担保価値を上昇させて銀行から資金を引っ張り、さらに新たな場所に出店する、といった、一種の「土地神話」を前提に経営戦略を立てていました。
しかし、90年代のバブル崩壊で土地の値段が下がり始めたことに加え、1995年の阪神淡路大震災で店舗に大きな打撃を受けたことなどの打撃が積み重なり、結局は2000年代の不良債権処理の流れで多くの銀行からは自己査定上の破綻懸念先などに指定され、最後は産業再生機構行きとなりました。
(※なお、個人的には、とある有名な経営破綻劇の裏事情を深く存じ上げているのですが、その話をこのサイトに記すことはできません。なぜなら公認会計士には厳格な守秘義務が課せられていて、職務上知りえた話を明らかにすることはできないからです。残念ですが、この話は墓場まで持っていくことにします。)
新聞紙の使い方
さて、何やら話が脱線しまくってしまいましたが、当ウェブサイトでは普段、新聞業界に少し批判的すぎる、と感じていらっしゃる方もいると思いますので、ここで新聞業界を少しだけ擁護しておきたいと思います。
それは、「新聞紙の良さ」について、です。
じつは、あまり知られていませんが、新聞紙は吸水効率が良いらしく、大雨の日に大事な革靴が濡れてしまったときや、美味しい天ぷらを食べたいと思った時には、新聞紙が大活躍します。革靴の水分や、天ぷらの余分な油を吸い取ってくれるからです。
また、子育て中の方であれば、外出先の荷物に新聞紙を忍ばせておくと、何かと便利です。
子育てをしていて、まだ子供が小さいうちは、外食中に膝の上に座らせて食事をする、という方も多いでしょう。こうした際、子供がコップや食器を倒してズボンがビシャビシャになることがありますが、このような場合にも新聞紙が大活躍します。
子供が少し大きくなり、習字を習うようになると、今度は新聞紙を使って筆についた余分な墨を吸収させることもできますし、さらには新聞紙を使って大きな兜を作ってみたり、キャンプに出掛けてキャンプファイヤーを作る際に新聞紙を燃やしてみたりするのにも大いに役に立ちます。
さらには、日常生活でも、引っ越しや荷造りなどの際の緩衝材、大掃除の際に新聞紙で汚れを取る、ペットのトイレに使う、といった具合で、まさに新聞紙は「万能の生活資材」なのです。
新聞を取るのをやめてしまうと、こうした新聞紙のありがたみがよくわかるものなのです。
調べてみたら、あった!
さて、新聞を取り続けているという方のなかには、「チラシが欲しいから」、「古新聞を生活に使うから」、といった方もいらっしゃると思うのですが、ふと気になって調べてみると、意外とあるものです。
アマゾンのアフィリエイトリンクを探していると、『新聞紙 (新古・未使用) たっぷり15kg 【ペット飼育の中敷として】 ペット トイレシート』という商品がありました。
図表2 新聞紙
(【出所】アマゾンアフィリエイトリンクより)
見たところ、おそらくこれはいわゆる「押し紙」でしょうか?(笑)
ただ、この手の新聞紙だと、印刷用のインクがついていてじゃまだ、という方もいらっしゃるでしょう。
そんな方のためには、『新聞紙 新品の新聞紙 インク移りなし綺麗 詰め物 更紙 ペットシーツ 梱包材 無地 10kg 中敷き 荷造りの緩衝材等 人気 お得! 通常タイプ』という商品がおススメです。
図表3 無地の新聞紙
(【出所】アマゾンアフィリエイトリンクより)
図表3の「無地の新聞紙」は、図表2の新聞紙と比べてインクが付いていない分、お高めです。
ただし、純粋に新聞紙が欲しいということであれば、余分な情報が一切印刷されていないピュアな新聞紙というものは、意外とおススメかもしれませんね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、以前に紹介したとおり、某新聞の現・論説委員は『だまってトイレを詰まらせろ』という記事を執筆したことがあるようです。この論説委員氏は「エビデンス?ねーよそんなもん」という名言でも知られていますが、それにしてもご自身が新聞社に勤めておられて、新聞紙をトイレに流せとはすごい主張です。
ただ、ここでひとつだけ警告しておきたいのですが、新聞紙で新聞紙でお尻を拭くとお尻がインクで真っ黒になってしまうそうですし、水洗便所に流すとトイレが詰まってしまいますので、くれぐれも「便所紙」として使うことは控えてください。
この点だけは警告しておきます。
View Comments (30)
自衛隊次代に窓拭きに使った記憶があるニダ。🐧
インクがガラスに染みて綺麗な飴色になるそうニダ。🐧
なりません。
なるのならやり方がまずい(タバコのヤニがちゃんととれていないなど)かガラスが変なのだと思います。
いいですね、無地の新聞紙。
○○人がいない○○半島と同じで、余計なものがなければ価値が上がるものって意外に多いですよね。
まあ、インク付きの新聞もガラス拭きなどには、有用なこともあるかと。
新聞紙のインク油の成分が、ガラス汚れの油分を分解してきれいになります。
記事を読まなくとも、役立つことも。
更新ありがとうございます。
不思議な数字ですネ〜。
6年間で朝日新聞単独で朝刊215万部減った。新聞協会は1年のズレはあるが、同じく6年間で500万部減った。朝日のシェアは43%ですか?(笑)。
朝日の全国シェアはそんなに高いはずが無い。朝日新聞を信用するなら、全国の新聞朝刊では3,355万部から30%減の2,300〜2,400万部じゃないの?更に押し紙あるし。極めて怪しい数字です。
信用出来ない数字を発表するものは、わざわざ購入しません。朝日はタケノコ生活してろ。あ、新品の新聞紙ですが、いくらお尻に印字されないと言っても、トイレでの使用はやめましょう(笑)。
日本製下水道は口径太く、大概のモノが流れますが、やはり危険です。もちろん簡易水洗などは、もってのほかです!ポットンも駄目!
いつも興味深く読ませてもらっています。説得力のある論調で 主要新聞の社説より幾段もレベルが上だと思います。(褒め言葉にもなりませんが )
そういえば、水槽の掃除にも新聞紙が良かったのです♪
リセットして、立ち上げ直すときに使ってたのです♪
(๑¯◡¯๑)懐かしいな〜
刺身包丁を保管するには、もってこいなのです。
忙しい時は、電話帳にブスッと刺しておきます。
インクの油が錆を防ぐのです(*>∀<*)ノ
一般家庭はステンレス包丁か...
新聞社は鮮魚店、精肉店、仕出屋さん、はたまた個人経営のカメラ店と同じ斜陽産業なのは明らかです。
実際よく似てます。かつての鮮魚の売り方はなんでもかんでも末尾に「○○タイ」と言って売り、精肉店は馬肉を混ぜて売ってました。
今の大手新聞社のウソや捏造、曲解や誇張と実によく似てます。国民は馬鹿じゃない。斜陽になって当然ですよ!
近頃は通信販売でものを買うことが増えました。梱包箱と商品の間の空間を、プラスティックの気泡緩衝材ではなく、紙をくしゃくしゃと丸めて緩衝材とする業者が増えています。希に新聞紙が使われていることがありますが、多くは「ボーガス・ペーパー」と呼ばれる、インク無しの紙です。
【紙緩衝材ボーカスペーパー】538㎜×350m巻 1巻 ¥2,776
https://www.amazon.co.jp/dp/B07NPDPQ3T/
自分で買うなら、価格的に無印刷新聞紙の方が安そうですが、緩衝材として無料で大量に手に入っていますので、これを新聞紙の代わりに色々と活用しています。
特に、日曜大工で木工品を塗装するとき、下敷きやマスキングに使うと便利です。インク移りの心配がありません。
新聞社が各地に拠点を持つインフラと考えれば、ネットワークを利用して配食事業などに転換すればいいと思いますがね。ウーバーイーツのようなものですが。各営業所などには新聞配達用のカブなどがあり、それを利用してこれから需要が増えそうな在宅ワークや独居老人などのところへケータリングする。上手く福祉と結びつければ、社会貢献度は捏造歪曲記事をばら撒くよりいいのでは?と思いました。どうでしょうね。
新聞紙の活用法はネタとしては面白いのですが実際には、そこまで有用性があるわけではありません。
窓をきれいにするなら、界面活性剤の入った洗剤を使うのが正道であり、実際、お掃除のプロの方が新聞紙を使っている姿などみたこともありません。
最近イラっとする、レジ袋有料化ですが、レジ袋に毎回2-3円徴収するのを義務化するくらいなら、新聞を購入するたびに「新聞紙でのご提供は、新聞紙代2円が含まれますがよろしいですか?」と確認するのを義務化してほしいです。
いくら新聞紙が再生すると言っても森林資源を消費することには変わりはないのです。