【資料】米ドル流動性・FIMA為替スワップ最新残高
本稿は「資料集」です。当ウェブサイトでは「FRB-FIMA為替スワップ」に関して、その実行残高を定期的に報告しているのですが、今週もその最新の残高が公表されていますので、本稿ではその残高、平均金利・借入期間、時限スワップに関する返済予定表などの概要をまとめておきたいと思います。
FIMA為替スワップ
『速報:米FRBが9つの中央銀行と為替スワップを締結』などでも報告したとおり、日英欧瑞加5ヵ国・中央銀行に加え、世界の9つの中央銀行・通貨当局(FIMA)は現在、米連邦準備制度理事会(FRB)と為替スワップを締結しています。
この為替スワップは、通貨スワップと異なり、「通貨当局同士」が通貨を交換する協定ではありません。あくまでも通貨当局を通じ、相手国の民間金融機関に対して外貨を供給するための契約であり、一般に “Bilateral Liquidity Swap Agreement” などと呼ばれます。
なお、国際金融協力の世界における通貨スワップや為替スワップと、デリバティブの世界における通貨スワップや為替スワップについては意味合いが異なりますので、これについては『【総論】4種類のスワップと為替スワップの威力・限界』あたりをご参照くださると幸いです。
一般に「為替スワップ」でも通用するのですが、いわゆる民間金融機関の提供する「為替スワップ」(Buy-Sellあるいは “FX swap” )と区別するため、本稿では敢えて、「FIMA為替スワップ」と呼称したいと思います(※ただし、この表現は一般的なものではありませんが…)。
現時点における米FRBとのFIMA為替スワップは、日英欧瑞加5ヵ国の中銀が常設型で金額上限を設けていないタイプのものを保有しており、それ以外の9つの中銀・通貨当局は、期間6ヵ月以上、上限600億ドルないしは300億ドルの為替スワップを3月に締結しています。
米FRBとのFIMA為替スワップ
- 常設・金額上限なし…日本、英国、欧州、スイス、カナダ
- 期間6ヵ月~・金額上限600億ドル…豪州、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデン
- 期間6ヵ月~・金額上限300億ドル…デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド
最新残高は4460億ドル、うち日本銀行が半額借入
また、ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” に、3月2日以降の入札実績がすべて公表されています。
見たところ、このエクセルファイルはおおむね週1回、現地時間の木曜日に更新されているようであり、現時点で公表されているデータは5月27日(水)入札実施・5月29日(金)貸付実行分までのものです。
これをベースに、5月28日(木)時点の借入残高をまとめたものが、図表1です。
図表1 5月28日(木)時点の各中央銀行のFIMA為替スワップ借入残高
相手先 | 元本 | 平均金利/平均日数 |
---|---|---|
日本銀行 | 2217.97億ドル | 0.34%/82.09日 |
欧州中央銀行 | 1445.86億ドル | 0.36%/83.87日 |
イングランド銀行 | 231.25億ドル | 0.35%/75.68日 |
韓国銀行 | 187.87億ドル | 0.62%/83.89日 |
スイス国民銀行 | 102.99億ドル | 0.33%/83.60日 |
シンガポール通貨庁 | 100.28億ドル | 0.49%/80.06日 |
デンマーク国民銀行 | 65.90億ドル | 0.77%/84.00日 |
メキシコ銀行 | 54.00億ドル | 0.34%/84.00日 |
ノルウェー銀行 | 42.90億ドル | 0.34%/82.36日 |
豪州準備銀行 | 11.70億ドル | 0.32%/84.00日 |
カナダ銀行 | なし | ― |
NZ準備銀行 | なし | ― |
リクスバンク(スウェーデン) | なし | ― |
ブラジル銀行 | なし | ― |
合計 | 4460.72億ドル | 0.37%/82.46日 |
(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)
5つの中銀のなかで最も多くを借り入れているのは日本銀行であり、その金額は2217.97億ドルと全体の半額に達しています。また、欧州中央銀行が1445.86億ドルで、両行あわせて3663.83億ドルに達し、この2行だけで全体の82%を引き出している計算です。
非常設型スワップの返済予定表
一方、非常設型のスワップ締結国の場合は、最も多額の借入を行っているのが韓国銀行で187.87億ドル、2番目に多くの借入を行っているのがシンガポール通貨庁で100.28億ドルです。
一方、常設型スワップ締結国のなかではカナダ銀行、非常設型スワップ締結国のなかではNZ準備銀行、リクスバンク(スウェーデン)、ブラジル銀行の借入残高がゼロです。
ここでは、5月28日時点の残高についての「返済予定表」を確認してみましょう。
まずは韓国銀行です。韓国銀行は5月28日時点で187.87億ドルを借り入れており、加重平均金利と日数はそれぞれ0.62%と83.89日ですが、その返済予定表は図表2のとおりです。
図表2 韓国銀行の返済予定表
返済日 | 金額 | 金利/期間 |
---|---|---|
6/25 (木) | 79.20億ドル | 0.91%/84.00日 |
7/2 (木) | 41.40億ドル | 0.53%/84.00日 |
7/9 (木) | 20.15億ドル | 0.36%/83.00日 |
7/16 (木) | 21.19億ドル | 0.34%/84.00日 |
7/23 (木) | 12.64億ドル | 0.33%/85.00日 |
7/30 (木) | 13.29億ドル | 0.29%/83.00日 |
合計 | 187.87億ドル | 0.62%/83.89日 |
(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)
次に、シンガポール通貨庁(MAS)です。MASは5月28日時点で100.28億ドルを借り入れており、加重平均金利と日数はそれぞれ0.49%と80.06日で、その返済予定表は図表3のとおりです。
図表3 シンガポール通貨庁(MAS)の返済予定表
返済日 | 金額 | 金利/期間 |
---|---|---|
6/3 (水) | 4.57億ドル | 0.30%/28.00日 |
6/17 (水) | 2.48億ドル | 0.32%/28.00日 |
6/24 (水) | 21.75億ドル | 1.09%/84.00日 |
7/8 (水) | 31.49億ドル | 0.34%/84.00日 |
7/22 (水) | 25.06億ドル | 0.33%/84.00日 |
8/5 (水) | 14.43億ドル | 0.30%/84.00日 |
8/19 (水) | 0.50億ドル | 0.30%/84.00日 |
合計 | 100.28億ドル | 0.49%/80.06日 |
(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)
同様に、デンマーク国民銀行、メキシコ銀行、ノルウェー銀行、豪州準備銀行についても残高をまとめておきましょう(図表4)。
図表4 その他の中央銀行
返済日 | 金額 | 金利/期間 |
---|---|---|
<デンマーク国民銀行> | ||
6/19 (金) | 28.25億ドル | 0.34%/81.00日 |
7/2 (木) | 14.25億ドル | 0.33%/85.00日 |
7/10 (金) | 0.40億ドル | 0.45%/84.00日 |
デンマーク国民銀行 合計 | 42.90億ドル | 0.34%/82.36日 |
<メキシコ銀行> | ||
6/26 (金) | 50.00億ドル | 0.91%/84.00日 |
7/1 (水) | 15.90億ドル | 0.36%/84.00日 |
メキシコ銀行 合計 | 65.90億ドル | 0.77%/84.00日 |
<ノルウェー銀行> | ||
6/22 (月) | 10.75億ドル | 0.37%/84.00日 |
6/29 (月) | 5.00億ドル | 0.32%/84.00日 |
7/13 (月) | 2.75億ドル | 0.33%/84.00日 |
7/20 (月) | 35.50億ドル | 0.33%/84.00日 |
ノルウェー銀行 合計 | 54.00億ドル | 0.34%/84.00日 |
<豪州準備銀行> | ||
6/19 (金) | 0.50億ドル | 0.34%/84.00日 |
6/26 (金) | 6.00億ドル | 0.32%/84.00日 |
7/7 (火) | 5.00億ドル | 0.33%/84.00日 |
7/24 (金) | 0.20億ドル | 0.30%/84.00日 |
豪州準備銀行 合計 | 11.70億ドル | 0.32%/84.00日 |
(【出所】ニューヨーク連銀の “Central Bank Liquidity Swap Operations” のページにあるエクセルファイル “U.S. Dollar Liquidity Swap – Operation Results” を参考に著者作成)
なお、このFIMA為替スワップについては、いちおう、9つの中央銀行・通貨当局については9月まで協定自体が維持されるとのことですが、当ウェブサイトとしては、すべての国についてこれが維持されるのかどうかには注目している次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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図表1の平均金利は既に返済済の分も含めたものと思いますが、デンマーク国民銀行の平均金利の値がおかしいと思います。
各金利から求められる利子総額/借入総額 で計算してみると、0.32%のように思います。
ただ、最近の分はどこも概ね0.3%前後に落ち着いているようにも見えます。
スワップに上限がある国は上限超過しないために入札によって借り入れ先を決めるため、確実に応札するために借りてもいいなという上限金利で札を入れます。これが当初借り入れ金利が上昇した意味。その後入札が札割れ確実なことが知れたあとは誰しももったいないので、FRBが決めた最低金利に張り付いた入札結果になります。国の信用力とかあまり関係ない話ですね。まあ、そもそもスワップ上限があるかないかが信用力の差でもあるのですが。
借り入れが多い国はそれだけ金融規模が大きい国だということは事実だと思います。為替スワップは通貨スワップと違って市中銀行が適格担保を差し出さなきゃいけないからです。
ただ、韓国は見栄のために市中銀行にスワップのドルを借りさせた疑惑はありますね。韓国の銀行は海外業務ほとんど出来ないからドル要らないはずなのに。おかげで普通にウォンの供給に使うための担保が不足して思うように通貨供給ができなくなる可能性も。これ(担保不足)がせっかくの為替スワップを上限いっぱいまで使えない唯一の理由なのです。
6月末の最初借り入れした分の借り換えですが多分激減するでしょう。そもそも市中銀行は無理して担保使って借りているのですから。ドル借り入れが減ることがドル信用不安がない意味にはなりません。むしろ担保が不足しているという別の金融不安があることを意味します。
韓国でドルが必要なのは国自身と海外進出している企業です。市中銀行はドルを手にして、そういった海外進出した企業を間接金融によるドル融資でもって支えるべきなのですが、市中銀行の能力不足で間接金融の役割を果たせません。そんな市中銀行にドルを強制的に借りさせたってまさに宝の持ち腐れです。韓国の海外進出企業は自力で直接金融(債券発行)でドル調達するか、彼らから見ての外銀から間接金融でお金借りるか。金融が弱い国はそうなりますね。
大韓民国株式市場で外国人の売り越し
約20.4兆ウォン(160億ドルくらい)
NY連銀からの借金188ドルくらい
連日のドル買/ウォン売
と
為替スワップで借りたドル、ほとんどが半島から流出。
また、NY連銀は確実に回収できる場合だけ貸し付けるとのこと。
9月外貨準備金米国債約200億ドル分が没収されるだけ、、スワップスワップ喚くことはないのにねぇ~
と
9月末が待ち遠しいド素人の独り言でした。