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韓銀、為替スワップを通貨スワップと意図的に誤記か?

昨日の『韓国、米韓為替スワップに続き日韓通貨スワップに期待』では、米FRBが現地時間3月19日付で「一時的な措置」として復活させた「米韓『為替』スワップ」を巡り、なぜか「米韓『通貨』スワップ」と誤報し続けている、という話題を紹介したばかりですが、その理由がわかりました。韓国銀行が韓国語版ウェブサイトで、今回の協定を「通貨スワップ」と明確に誤記しているからです。しかも、英語版ウェブサイトには記載していないという徹底ぶりです。

通貨スワップと為替スワップ

通貨スワップと為替スワップは別物ですよ!

週末は、米FRBが電撃的に世界の9つの中銀・通貨当局と為替スワップを締結したという話題で、ずいぶんと盛り上がりました。

ただ、読者コメント等を拝読していて、「そもそも通貨スワップと為替スワップの違いは?」、「デリバティブの通貨スワップと国際金融協力の通貨スワップの違いは?」といった疑問を呈する声が多かったため、改めて先ほどの『【総論】4種類のスワップと為替スワップの威力・限界』で解説しました。

というよりも、この記事を執筆した目的のひとつは、「国際金融協力の世界における通貨スワップと為替スワップの違い」を明らかにすることにあります。

先ほども申しあげたとおり、通貨スワップと為替スワップについては、英語表現では若干の表記の揺れもあるのですが、ざっくりと言えば、

  • (1)二国間通貨スワップ(Bilateral Currency Swap Agreement)…外貨不足に備えて通貨当局同士が通貨を交換する協定
  • (2)二国間為替スワップ(Bilateral Liquidity Swap Agreement)…民間金融機関の外貨流動性不足に対応するための流動性ファシリティ

という違いがあります。

また、さらに細かいことをいえば、通貨スワップには

  • (1)-①ローカル通貨同士を交換する協定(Bilateral Local Currency Swap Agreement)
  • (1)-②ローカル通貨と基軸通貨(とくに米ドルなど)を交換する協定(米ドルとのスワップについて、敢えて英訳すれば “Bilateral US Dollar Swap Agreement” ?)
  • (1)-③多国間の通貨スワップ協定(敢えて英訳すれば “Multilateral Currency Swap Agreement” ?)

という種類がありますので、国際金融協力の世界におけるスワップといえば、およそ4種類のスワップが存在する、ということでもあります(ちなみにローカル通貨同士の通貨スワップの危険性については『弱小通貨同士の通貨スワップの「融通手形」説』などをご参照ください)。

誤報相次ぐ韓国メディア

さて、どうして当ウェブサイトがこの「通貨スワップと為替スワップの違い」にこだわっているのかといえば、通貨スワップと為替スワップでは機能・役割がかなり異なるからであり、また、一般に両者の使途を混同することはできないからです。

それなのに、数日前から韓国メディアは、米FRBが19日に再開した「流動性スワップライン」(つまり為替スワップ)のことを、「通貨スワップ」と誤報し続けています(『韓国、米韓為替スワップに続き日韓通貨スワップに期待』等参照)。

本来、「米ドル建て通貨スワップ」という「最強のツール」がもし本当に手に入ったならば、為替相場の暴落局面は収束するようにも思えます(実際、2011年10月、当時の野田佳彦首相が韓国との間で巨額の通貨スワップを結んだ際、韓国ウォンは暴落を免れました)。

しかし、先週金曜日の外為市場では、韓国ウォンは一時、1ドル=1230ウォン台に戻す局面も見られたものの、結局、1ドル=1250ウォン台に戻してしまいました。本日以降、どういう動きをするのかはまだわかりませんが、少なくとも先週時点では為替市場は不安定なままです。

どうも韓国メディアなどが「通貨スワップ」と大々的に誤報しているにも関わらず、金融市場は「これは通貨スワップではなく為替スワップでしょ?」と見透かしているフシがあるのです。

(※もっとも、2008年9月15日に、米投資銀行大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻した、いわゆる「リーマン・ショック」の際も、2008年12月12日に米韓為替スワップが締結されて以降も、しばらく韓国ウォンの相場は不安定でしたが…。)

誤報の原因がわかった!

さて、韓国メディアが軒並み、この「為替スワップ」(または「流動性供給スワップ」)のことを「通貨スワップ」と誤報している理由はなぜなのでしょうか。

これについては昨日、「韓国ウォッチャー」様というコメント主様から、こんなコメントを頂きました。

韓国メディアが為替スワップを通貨スワップと誤報というところが気になり、韓国銀行のウェブサイトを確認してみました。韓国銀行のプレスリリースにはっきり『通貨スワップ』と書いていますね。/韓国メディアが誤報したと言うよりは、韓国銀行が確信犯的に伝えているということですね。

「韓国ウォッチャー」様から教えていただいたリンクは、下記です。

韓国銀行、米FRBと通貨スワップ契約を締結【※韓国語】

韓国銀行と米国の連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board、FRB)は、本日(韓国時間3月19日22:00)、600億ドル規模の二国間通貨スワップ契約(bilateral currency swap arrangements)を締結したと発表しました。<<…続きを読む>>
―――2020/03/19付 韓国銀行HPより

いかがでしょうか。

ハッキリと、「二国間通貨スワップ」と明記されています。しかも、英語で “bilateral currency swap arrangements” と付記されていますね(※どうでも良い疑問かもしれませんが、なぜ複数形なのでしょう?)。

「為替スワップは日銀用語であり、外国では為替スワップも通貨スワップも『通貨スワップ』と総称する」という言い訳が成り立つならば、話はまだわかります。しかし、英語で “bilateral currency swap arrangement(s)” とハッキリ記載してしまっている以上、言い逃れはできません。

韓国銀行自身が「デマ」をバラ撒いているからです。

ファクトチェックと推理

FRBは「BSA」とは言っていない

その具体的な証拠を示しておきましょう。少し長いのですが、FRBのプレスリリースの第一段落を引用しておきましょう。

Federal Reserve announces the establishment of temporary U.S. dollar liquidity arrangements with other central banks

The Federal Reserve on Thursday announced the establishment of temporary U.S. dollar liquidity arrangements (swap lines) with the Reserve Bank of Australia, the Banco Central do Brasil, the Danmarks Nationalbank (Denmark), the Bank of Korea, the Banco de Mexico, the Norges Bank (Norway), the Reserve Bank of New Zealand, the Monetary Authority of Singapore, and the Sveriges Riksbank (Sweden). These facilities, like those already established between the Federal Reserve and other central banks, are designed to help lessen strains in global U.S. dollar funding markets, thereby mitigating the effects of these strains on the supply of credit to households and businesses, both domestically and abroad.<<…続きを読む>>
―――米国夏時間2020/03/19 9:00付 米FRBウェブサイトより(※下線は引用者による加工)

ここではハッキリと、 “U.S. dollar liquidity arrangements (swap lines)” “facilities” (つまり「流動性供給ファシリティ」)とあります(※複数形の理由は、9つの中銀・通貨当局と協定を結んだからです)。

この外貨建て流動性供給ファシリティとは、間違いなく為替スワップのことであり、通貨スワップではありません(ちなみに一般に中央銀行による流動性供給ファシリティとは、中央銀行から民間金融機関に対して提供される短期貸出、ありていにいえば有利子負債のことです)。

英語版ウェブサイトには掲載されていない

韓国銀行のプレス・リリースが悪質な理由は、それだけではありません。

現時点において韓国銀行の英語版ウェブサイトを確認したところ、この「為替」スワップについての報道発表が掲載されていないからです(あくまでも現時点では、ですが…)。

その理由はおそらく、英語版ウェブサイトに、うっかりでも

『韓国銀行はFRBとの間で通貨スワップ協定を締結した』 “Bank of Korea and the U.S. Federal Reserve has established bilateral currency swap arrangement”

などと記載しようものなら、FRB職員にチェックされ、睨まれてしまうからではないでしょうか?(しかし、それにしてもなぜ韓国語版ウェブサイトでわざわざ “bilateral currency swap arrangements” などと記載しているのかについては、正直、理解に苦しむところですが…。)

いずれにせよ、韓国メディアが揃いも揃って、今回の為替スワップ(流動性スワップ)のことを「通貨スワップ」と誤報し続けている理由のひとつは、韓国メディアが自ら通貨スワップと為替スワップの違いを調べようともしないだけでなく、中央銀行自身が(韓国語版で)間違った情報を発表しているからでしょう。

そして、韓国銀行は少なくとも2008年のリーマン・ショック時に似たようなドル流動性ファシリティの提供を受けていますので、通貨スワップ(BSA)と為替スワップ(BLA)の違いは理解しているはずです。

どうしてこのような見え透いたウソをつくのでしょうか。

輸出管理適正化措置を「輸出規制」と呼ぶのと同じ?

ただ、あまり厳しいことを言いたくはないのですが、今回、為替スワップを通貨スワップだと言い張っているのを見ると、「ナチュラルにウソをつく」という意味で、「いつもの韓国だな」、と思ってしまったのもまた事実です。

その典型例といえば、日本政府が昨年7月1日に発表した「韓国向けの輸出管理の厳格化措置」(あるいは適正化措置)のことを、韓国が政府・メディアを挙げて、しつこく「輸出『規制』」と誤記し続けていることでしょう。

韓国側ではこれを、2018年の「自称元徴用工判決問題」に対する貿易報復・対抗措置だと勝手に勘違いし、国際社会で日本を口汚く罵ったすえに、昨年8月には「日韓GSOMIA」(※)を勝手に破棄すると宣言し、11月に事実上の撤回に追い込まれたのは、記憶に新しいところです。

(※日韓GOSMIAとは『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』のこと。)

あるいは、2018年12月に発生した、韓国海軍駆逐艦による海自P1哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件を巡っても、韓国政府は勝手にないことないことでっち上げ、「むしろ日本が低空威嚇飛行を仕掛けてきた」というメチャクチャなウソをついて日本を国際社会で批判しました。

このようなエピソードの数々を思い出すと、もはや韓国を「ウソツキ国家」だと呼ぶことに、何の違和感もない、という人は少数派ではないでしょう。

そして、「ウソツキ国家」である韓国が、為替スワップを「通貨スワップだ」と言い張ることなど、彼らにとっては大した問題ではないのかもしれませんね。

ウソをついても問題はなくならない

ただし、ひとつだけ問題点があるとしたら、

ウソをついても問題がなくなるわけではない

という、厳然たる事実です。

実際、『韓国、米韓為替スワップに続き日韓通貨スワップに期待』でも報告したとおり、少なくとも韓国が諸外国と締結している二国間通貨スワップ(BSA)のなかで、米ドル建てのものは、ただの1本もありません。

今回の為替スワップについては、たしかに韓国の金融機関などが抱えている短期債務のロールオーバー(借換)ができなくなった際に、その流動性不安を解消するという意味では絶大な効果を発揮しますが、だからといって通貨の暴落を完全に防止するという効果はありません。

もちろん、現在の新興市場諸国の通貨安は、コロナショックという一時要因に基づくものであると考えられるため、コロナショックが収束すれば、市場で再びリスク選好が戻ってくるという可能性は十分にあります。

ただ、それと同時に、欧州や米国などにも、新型武漢コロナウィルスSARS-CoV-2の感染者がかなり広まっていて、各国が移動制限・入国制限などの措置をとるなか、全世界のサプライチェーンに甚大な影響が生じていることは事実です。

いちおう、FRBによる為替スワップ(流動性ファシリティ)については、当面は6ヵ月間有効だとされていますが、2008年のリーマン・ショック時に照らせば、為替スワップは通貨暴落を予防するうえで十分ではありません。

このため、問題はむしろこれからが本格化するのだ、という懸念は、完全には払拭できないのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いずれにせよ、日本市場が休場から戻る本日以降、リスク選好が回復するのかどうかについては、見極めるべきポイントのひとつであることは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (52)

  • おはようございます。
    経済音痴なので、いつも拝読して勉強させてもらってます。記事UPありがとうございます。

    特定亜細亜三国ともに嘘が普通の国です。都合の良いことしか事実報道しません。為替と言わず通過と報道して日本とスワップさせたいんでしょう。どうせ世界中が信じていないと思います(いと憐れ)

    • 韓国銀行のプレスリリース、翻訳にかけると、通貨でも通過でもなくて、通話となってしまいます。

      通話スワップ! 

      翻訳の精度、まだまだですねえ。

    • ちゃんと痛貨と正しく翻訳されるようになるにはもう少し時間がかかりそうです。

  • 韓国の報道をメールでFRBに教えてあげたいところですが、今は世界の混乱を押さえるのが先。
    当面見送ることにします。

  • 昨日の中央日報の記事を読んでいて「通貨スワップ」と書いてあったので,また韓国民を騙そうとしてるのかな,と思っていました。犯人は韓銀でしたか。たぶん,韓国民を安心させて,とりあえず,為替や株価を安定させようとしているのでしょう。現実として,KOSPIと日経平均はそれなりに連動して動くので,韓国民が騙されてKOSPIを買ってくれると,日経平均の上昇にもつながるので,悪いことばかりではありません。
    ところで,コロナに飽きた人も多いかもしれませんが,昨日の夜9時に放送されたNHK特集「"パンデミック"との戦い」は非常に参考になる番組ですので,見逃した人はNHKプラスでも利用して見てみて下さい。反面,民放のワイドショーでの非理系のコメンテーターの発言は,井戸端会議レベルで有害なデマに近いものが多いですから,無視するか,そもそも観ないことをお勧めします。

    • (自分らに)都合が悪い事実を公表しないというのは、日本を含め一般的なことでそのこと自体問題ないことも多々ありますが、韓国とかかわるに当たり知っておくべき特有な特徴としては、政府・公的機関・報道・民間を問わず、

      自国民に対し(真実から)誤読・誤解に導くように事実の一部または全部に巧妙に変え公表する
      (特に報道機関は)他機関・民間による上記のような「工作」の事実を知っても自国に都合が良ければ黙認・追認する

      ということですね.

      今回の場合は、FRBと米韓「通貨」スワップを勝ち取ったと宣伝を韓「国民」を対象にして、経済・金融危機の流れに楔を打ちたい側面の割合があるのでしょうね.まあ、資本流出は外国勢の要素が大きいのであまり意味があるとは思えませんけど.そうなると4月の総選挙の与党宣伝という目的も考えて良いでしょう.

  • 彼の国の報道にあるようにスワップは、為替を安定させる効果があるんでしょうね。
    為替スワップを通貨スワップと偽れば、市場はとりあえず安心するでしょう。
    真っ当な政府のすることじゃありませんが。

  • おはようございます。

    メッキは数日の内に剥がれるのでは無いかと考えております。
    そしたらまた市場への悪影響になるかと。

    外面だけ取り繕っても中身はズタボロですので。

  • 韓国が国を挙げて嘘をつくのは、日本が散々やられていますので、珍しい事では有りません。
    細かい話になれば、米韓協議の後の記者会見などで、両国の発表が一致しないのは、当たり前のようになっています。
    新宿会計士さんが、「ウソをついても問題がなくなるわけではない」は真理ですが、韓国人はそう考えません。
    嘘をついて物事が、解決するのであれば、それはその人に徳が有るように考えます。その為に、高位者の汚職が、当たり前の事で、偉い(上の)人程、徳が有るので、嘘をついても許されるというような価値観です。
    現実に韓国の問題は、解決しないと思いますが、韓国人は解決したと、思い込みたがりがちです。
    国も国民も揃って、嘘を受け入れて、問題から目を背ける、ウィンウィンの関係だという事です。
    話がずれますが、韓国の個人投資家が、コスピの買い支えをしているようです。方法としては、借金をしてサムソン株を買うというのが、一番ポピュラーで、階層社会の中若い人が、上下逆転を狙って勝負しているようです。
    このように韓国の経済崩壊の先延ばしは、外国人投資家の取り分を増やす結果となると思います。
    この様に、彼らは危機だと思われる事態でも、機会と捉えてアクションしてきます。ある意味とてもポジティブと言えますが、どんな状況でも利益を得る事を考えていますので、油断してはいけません。

    • だんな 様

      韓国人が借金をしてサムソン株を買うのは、ある意味合理的な行動かもしれません。
      サムソン株が無価値になるときは韓国自体が(経済的に)滅びるときであり、韓国が再生するならばサムソン株も再生すると考えているでしょうから。
      そう見れば、ノーリスク・ハイリターンの賭けなのでしょう。

      • イーシャさま
        コスピの時価総額が、1000兆ウォンで、サムソンか30%位です。
        借金で、いつまでも持っていられますかね。

    • いつも思うのですが、南の人達の言動って、博徒っぽいですよね、それもコンパにやられちゃう。

  • スワップ協定締結いうニュースを見たらと聞いたらまず為替スワップなのか通貨スワップなのかを新宿会計士さんのところに来て確認するようになりました。
    メディアよりも的確な解説をありがとうございます。

    さて、為替スワップ締結で韓国の民間金融機関はドル調達(借りること)が可能になったわけですが、そうして得たドルを韓国通貨当局が市場介入のために巻き上げる可能性はあるのでしょうか。
    日本の常識では考えられないこととは思いますが・・・

  • 私は中韓スワップもBLA為替スワップだと予想してました。
    もし韓国銀行がウソ書く傾向あるならあり得るのではないかとふと思いました(もちろん現在もう無効になってる可能性も。

  • このような誤表記捏造を続けたところで、余命3カ月が余命6カ月になるだけなのになぁ。武漢ウィルスのゴタゴタで逃げ切れるとでも思っているのでしょうか。

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