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たった200億円の増額に狂喜乱舞するのはなぜ?

ちょっとした「ショートメモ」です。3月3日なので、たまにはちょっと遊んで3時3分に記事を更新してみます(といっても大したことが書けるわけではありませんが…)。

昨日、某隣国のメディアに、不思議な記事が掲載されていました。

韓国中小企業銀行、日系銀行とウォン・円優先供給増額…「内外の不確実性に対応」(2020.03.02 13:00付 中央日報日本語版より)
韓国の企業銀行 三菱UFJ・みずほと外貨融通枠拡大(2020.03.02 12:20付 聯合ニュース日本語版より)

これらの記事の内容を解釈すると、日系のメガバンク2行が韓国の政府系金融機関「中小企業銀行(IBK)」に対し、それぞれ300億円ずつのコミットメントラインを供与し、同時に両行はIBKから3000億ウォンのコミットメントラインの供与を受けることにしたそうです。

正直、なぜこれがニュースになるのか理解に苦しみます。

日本政府が通貨スワップ協定を締結するというのならば話は別ですが、正直、みずほ銀行も三菱UFJ銀行も単なる民間企業であり、今回は単なるコミットメントラインの供与に過ぎませんし、金額もそれぞれ300億「ドル」ではなく、300億「円」です(しかも増額分は各100億円に過ぎません)。

なぜ、たかだか200億「円」の増額で、ここまで狂喜乱舞するのでしょうか。

ちなみにこの金額のコミットメントラインは、日本のメガバンクにとってはさほど負担がある金額とはいえません。

当ウェブサイトでは以前、日本の民間金融機関が中国本土という閉鎖市場で債券を発行したことを『危険なパンダ債と「日中為替スワップ構想」』等で批判的に取り上げたこともありますが、今回は債券発行という「負債側」ではなく、資産側(しかもリスクの低い短期オフバランス取引)です。

また、300億円といえば、みずほ、三菱UFJともに、「普通株式等Tier1資本(CET1)」の1%にも満たない額であり、正直、各行が自行の判断において、健全性の範囲内でやっているのであれば、とりたてて問題とすべき話でもありません。

両行のCET1の額(2019年12月時点)

それよりも、『「日韓スワップ500億ドル」の本当の意味とは?』でも報告しましたが、韓国が必要としているのは民間銀行からのコミットメントラインではなく、日本政府(外為特会)からの通貨スワップではないでしょうか。

しかも、必要としているのは300億「円」だの600億「円」だのといった金額ではなく、300億「ドル」であったり、600億「ドル」であったり、という金額ではないかと思います。

いずれにせよ、たかだか600億「円」ごときで(しかも既存ポジション400億円からの増額幅は200億円ごときで)大手メディアが大きく騒ぐというあたり、どうも私たちの隣国で、コロナショックからの通貨危機という連想が強まっている証拠といえるのかもしれませんね。

新宿会計士:

View Comments (4)

  • 3のゾロ目は思いもよらなかったわw

    たしかに韓国のウキウキ気分が伝わる記事です。「今回の契約で外貨をさらに安定的に確保する基盤を確保した」とまで書いてあります。対して「NOジャパンはどうした」「さすがパラサイト国」等々、中央日報の読者コメントがどれも辛らつで笑います。

    このところ冷たかった「ヒモ」が「たくらむところあって」珍しく「ショートケーキ」などを買ってきた。そうとは知らず「あんた優しいのね」と喜ぶ女。そんな構図でしょうか。

  • 自己資本比率などの制約条件があり、有事の際に役立つかには疑問符がつくという話もあるようです。

  • 規模の大小にかかわらず韓国の要望に日本が応えた〔有利な条件を得た=マウント〕ところが肝なのでしょうね。
    *****

    そういえばハンファケミカルが借換できなかったサムライ債も200億円。
    代替としての香港ドル建債も思わしくなかった〔=未確認・最終的にウォン建で起債?〕とのこと。

    今回の200億円融通が「自傷交渉の成果」としての悪しき前例でなければいいんですけどね・・。

  • 新宿先生、詳細の解説ありがとうございます。勉強になります。
    昨日、記事を見て憤慨してた自分がちょっと恥ずかしいです。。。
    ありがとうございました!