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「神風邪」論の不謹慎さと「コロナより桜」の情けなさ

「コロナよりサクラが大事」――。私たち日本国民の多くが心配しているのは、「桜を見る会」ではなく、昨今のコロナウィルスの蔓延と新型肺炎の発生ではないかと思います(これについては当ウェブサイトでも『【読者投稿】行政の観点から考察するウィルス騒動』などで取り上げています)。ただ、野党の視点に立てば、コロナウィルス騒動は政権追及する絶好の機会であるはずなのに、ここ数日は「桜を見る会」問題に関連し、前日に開かれた夕食会の領収書のあて名がどうした、といった、本当にどうでも良い問題で、野党側が審議拒否などをしているようです。

コロナウィルス騒動を「神風邪」と呼ぶ不謹慎

昨日紹介しようと思っていた記事を紹介しそびれていました。

安倍政権内部で新型肺炎は“神風邪” 憲法改正に利用の動きも(2020.02.19 07:00付 NEWSポストセブンより)

掲載されていたのは『NEWSポストセブン』というウェブサイトですが、原文には日付の直後に『週刊ポスト』という表記があります。おそらく雑誌の記事の転載でしょうか。

それはさておき、タイトルを読んでわかるとおり、最近世の中を騒がしている新型コロナウィルスに伴う新型肺炎のことを、「神風邪(カミカゼ)」と呼んでいる、というのが、この記事の主張ですが、正直、不謹慎極まりないと思います。

NEWSポストセブンによると、「自民党ベテラン議員」が次のように述べたのだとか。

安倍総理にはまだ悪運がある。本来なら、今国会はIR汚職や桜を見る会問題などの不祥事追及で窮地に陥ってもおかしくなかった。そこに新型肺炎の流行で国民の関心が外に向いた。官邸は上陸を水際で食い止めることができれば支持率も上がると張り切っていて、武漢からの政府チャーター便を国会審議の時間帯に合わせて帰国させるなど、巧妙に利用している

はて?

そもそも論ですが、IR汚職や「桜を見る会」問題自体、私たち一般国民のあいだでそれほど「安倍政権の不祥事」として盛り上がっているような気配がないことは、先月の『「桜を見る会」野党とメディアが一生懸命追及した結果』でも議論したとおりです。

NEWSポストセブンは今回の新型肺炎騒動を巡って、政権関係者が「上陸を水際で食い止めることができれば支持率が上がる」、などと張り切っていたと述べているのですが、この見方自体、どうも正しいようには思えません。

というのも、私自身が見たところ、大騒ぎしている某有名人を含め、むしろインターネット上では安倍政権に対する批判意見が多いように見受けられるからです。

実際、『「独裁者アベの悪行の数々を絶対に許すな!」(笑)』でも紹介したとおり、主要メディアの2月の世論調査では安倍政権に対する支持率が下落しているのですが、これなどは明らかにコロナウィルス騒動の「不手際」に対する批判ではないかと思う次第です。

(※もっとも、『【読者投稿】行政の観点から考察するウィルス騒動』などで紹介したとおり、政権支持率は印象に左右される傾向があるため、安倍政権のコロナウィルス騒動への対応に実質的な問題があるのかどうかはまた別問題ですが…。)

予算委員会で「桜追及」に明け暮れる野党

というよりも、このコロナウィルス騒動を巡って、野党の皆さんはいったい何をやっているのかと呆れます。

なぜならば、ここ数日、国会では「桜を見る会」の前日に開かれた夕食会を巡って、安倍晋三総理大臣の国会答弁とホテルの説明が「食い違っていた」とされる問題で、野党側が衆院予算委員会で審議拒否などに出ているからです。

ANAホテルと首相の食い違い 回答求め野党が審議拒否(2020年2月18日 10時27分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

ちなみに朝日新聞の記事では「安倍晋三首相の国会答弁と会場のホテルの説明が食い違った問題」と勝手に決めつけていますが、事実関係を調べていけば、ANAホテル側は「一般論として」回答しただけの話であり、そもそも安倍総理の答弁と整合するものではありません。

正直、野党としてはもっと追及すべきことはたくさんあると思います。

たとえば、横浜港に停泊していた客船「ダイヤモンドプリンセス」でコロナウィルスが蔓延していた問題を巡っては、国際法の問題から日本政府として対処に限界があったということが、数日前の日経新聞に報じられています。

クルーズ船対応「旗国主義」の穴 義務なかった日本(2020/2/18 2:00付 日本経済新聞電子版より)

野党側としては、「国際法上、ダイヤモンドプリンセスに対して日本の法律・行政権の適用ができないとわかっているのなら、なぜ同船を日本の港湾に招き入れたのか」という点をもっと追及すべきですし、また、現行法制度の不備についてあぶりだす、非常に良い機会でもあるはずです。

さらには、安倍政権は中国の一部の省出身者などについて入国拒否する方針を示していますが、『コロナウィルス蔓延で見えた、日本の入管法制の問題点』でも報告したとおり、この措置自体は法的にはかなりグレーです。

つまり、何らかの措置を講じようとしても、現行法に規定がない(あるいは不十分である)がために、解釈などで乗り切らざるを得ないという現行法の不備を巡っては、日本国憲法に非常事態条項などが設けられていないという、憲法の根本的な欠陥に行き着きます。

「コロナウィルス怖い」ではなく、本来議論すべきは「現在の日本の憲法、法制度に欠陥はないのか」という視点ではないかと思うのですが、「桜を見る会」を巡る揚げ足取りで審議拒否をする現在の野党を見ていると、本当に絶望的なものしか感じません。

安倍総理の本当の「高笑い」とは?

さて、先ほどのNEWSポストセブンの記事にある「神風邪」を巡っては、週刊ポストの捏造なのか、それとも本当に官邸内でささやかれているのかはわかりません。

ただし、結果的に見れば、安倍政権がコロナウィルス問題でどんな対応を取ったとしても、野党側にはそれを追及する意志も能力もない、ということであり、国会で問題視される心配がない(?)以上、安倍政権としては(その気になれば)かなり大胆な措置を講じることもできます。

あまり考えたくない「陰謀論」ですが、たとえば、「コロナウィルスをわざと日本国内で蔓延させ、それにより詳細なデータを得る」、ということだって、やろうと思えばできるかもしれません。

さらには、このような「陰謀論」に立てば、最近、ごく一部の著名人らがコロナウィルス問題で国民を扇動し、大騒ぎしているのも、彼らが一種の「陽動部隊」となることで「政権の本当の目的」から国民の目を逸らさせる狙いがある、という可能性すらあるでしょう。

もちろん、こんな「陰謀論」が正しいと信じたくはないのですが、ただ、結果論として見れば、安倍総理が国会で追及されているのは「桜を見る会」であり、「コロナを見る会」ではありません。まさに「桜よりコロナが大事」な野党の人たちに、安倍総理が救われている格好です。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

それはともかく、くだんの「神風邪」記事については、正直、不謹慎であるだけでなく、野党のことを少々買いかぶり過ぎではないかと思います。

野党が本気で安倍政権を追い込むつもりがあるならば、たとえば防疫体制や入管法の不備、安倍政権が講じた中国・湖北省パスポート所持者の入国拒否の法的根拠などについて、法的、医学的な専門知識を活用して政権追及する絶好の機会だからです。

なぜ野党が、この「絶好の機会」をわざわざ逃しているのかは、よくわかりません。

ただ、ひとつの可能性を指摘するならば、野党側は「もりかけ・桜」などのスキャンダル追及に代表される「粗探し・揚げ足取り戦術」を過去7年にわたって繰り返してきた結果、専門知識を学習するだけの意欲を失っているからなのかもしれません。

いや、「意欲を失った」のではなく、「最初からそんな意欲を持ち合わせていない」だけなのかもしれませんが…。

新宿会計士:

View Comments (15)

  • 更新ありがとうございます。

    >つまり、何らかの措置を講じようとしても、現行法に規定がない(あるいは不十分である)がために、解釈などで乗り切らざるを得ないという現行法の不備を巡っては、日本国憲法に非常事態条項などが設けられていないという、憲法の根本的な欠陥に行き着きます。
    >「コロナウィルス怖い」ではなく、本来議論すべきは「現在の日本の憲法、法制度に欠陥はないのか」という視点ではないかと思うのですが、「桜を見る会」を巡る揚げ足取りで審議拒否をする現在の野党を見ていると、本当に絶望的なものしか感じません。

    自称・護憲派の特定野党にとって、日本国憲法の不備や欠陥は「あってはならない」事であり、下手に指摘すると「9条改憲」につながりかねないから触れられないのだと思います。

    日本国が無くなれば日本国憲法も無くなる訳で、「日本国民の為に日本国憲法があるのか、日本国憲法の為に日本国民が居るのか」という点に関して、特定野党は「日本国憲法を守り抜く為に日本国民は死ね」という価値観なのだと理解しています。

  • 頭の中がお花畑だから、桜の話が好きなのでしょう。
    世論調査の、桜についての説明不十分が、70%は本当なのかな。
    国民の生命よりも、打倒アベが大事。
    みんな、見てますよ。

  • 国、国民に対する方向性を示さないまま、永田町内のことばかりで騒いでいる野党は即退場モノ。
    凶惨党も情報のアクセス及び伝達が良くなかった頃はそれなりに使えていたけど、今のご時世ではポンコツである。
    (敢えて誤字にしてある箇所あり)

    • お隣の国も法治主義、民主主義の危機に晒されているようですが、日本も議会制民主主義の意義が問われていると感じます。残念ながら今の体たらくでは現状の野党は、安倍さんが何となく嫌いな人がそういった理由で投票することもあるでしょうが、現実が現実として見えず、安倍さんがいないと何も言えないため、政権の選択肢になりえないです(自分の衆議院選挙区は毎回同じ党から3人出ますが、正直考える間もなく1択です)。健全な野党が育たないことが国家として不幸だと思います。

  • サイト主様
    タイムリーな論考の矢継ぎ早の掲載、興味深く拝見しています。
    文中、後段のところで「「桜よりコロナが大事」な野党」とありますのは、政治的意味合いを勘案しても、「コロナより桜が大事」な野党、とされるべき所のように存じます。ご検討下さい。

  • コロナ問題を掘り下げると、初動対処に行き着き、中国、国内の中国シンパへの批判に行き着く。法の不備、緊急事態条項、総理大臣の権限(命令権、人事権、組織編成権など)の拡大に行き着き、官僚批判・処断、国内の中国シンパへの締め付けになる。…確かに無理にでも避けたいですよね。誰が音頭取ってるのか明白な気がしますが、陰謀論でしょうか。

    • ああ、そうそうIHRに付いて書こうと思ってたんですが、日本語のが見つからなくて後回しにしてたんですよねえ。
      良い記事ですね。

  • こんなことでは、日本の議会制民主主義は崩壊する。いや、既に崩壊しているのかも。国政課題について、政府に対し正面から異論を唱え、対案を出して議論を深めるべき野党のはず。しかるに最近では、政府の揚げ足取りに終始。与党に対し絶対少数になってしまった故、手っ取り早く世論の耳目を集めやすいスキャンダル話に飛びつきたくなるのは分かるにせよ、そればかりでは、心ある国民からは見放され、増々じり貧になるばかり。その結果、一般国民はさらに政治に無関心になるという悪循環。さらに、このようにして政治に対する国民の監視の目が緩むことで、政府与党は緊張感を喪失、傲慢・怠慢になり、失政を失政と認めなくなる。その行く先は、国勢停滞(今ここ)を経て「亡国」必至。

  • 懲りずに、もう一度貼らせてもらいます。

    辻元清美議員の「意味のない質問」(安倍総理)を検証してみた
    https://www.dailyshincho.jp/article/2020/02171500/?all=1

    この中で、野党議員は「虚実問わず政府を批判一辺倒で追いつめるようなタイプの議員の方が出世する」と書かれているのは事実ではないでしょうか。

    常識的には、桜問題よりコロナウィルスで政府を攻める方が、国民の共感を得るためには効果的だと思うのですが、野盗の皆さんの考え方はそうではないようですね。
    安倍さんにとっては、ありがたいことでしょうけども。

    • 老害様
      辻本議員は政策で戦うとあまり自民を攻めきれないのでやわらかい部分の職務姿勢と会計を主戦場に自民を攻撃するのが好きな様です。
      不倫や不明瞭な会計は世間で受けるそうですので、さしずめ国会のワイドショー化と言った所でしょうか。
      まるで規律にうるさい風紀委員みたいです。疑惑の総合商社に続き腐った鯛の頭。例えることがお好きなのでご自身も何かに例えてみられるといい思います。

      • 簿記3級 さま

        コメントありがとうございます。

        「関西生コンはどうなった?」と聞かれると、逆上するか逃げるように去るかでしょうね。
        あれは、「腐ったサバ」ぐらいですかね。(サバから抗議されそうです)

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     もしかしたら、ここに来るような人の日本とは別に、(日本の)野党の
    日本があるのではないでしょうか。(パラレルワールドというやつです)
    もしかしたら、韓国の頭のなかにある、もう一つの日本もあるのかもしれ
    ません。

     駄文にて失礼いたしました。

  • 事態が落ち着いたら、今回の対処が良かったか改善すべき点は無かったのか
    検証を国会主導でしてほしいとおもう。

    また、危険な非常事態条項を日本国憲法に導入する前に、
    人権とはなにか、緊急事態と人権制限の関係・折り合いに関する
    日本国民の頭の体操として下記をやるべきではないかと思う。
    (特に、ナチスドイツ、韓国、ベネズエラ、ペルー等の民主主義崩壊例を念頭に)

    ・NBC(感染症含む)対策の専門機関の設立&予算措置
    ・標準NBC(感染症含む)対策&広報のマニュアル化
    ・特に脅威・リスク認定及びその見直し・再認定のマニュアル化(恣意的な対応が入らないために)
    ・NBC対策品の備蓄の見直し
    ・船員・教員資格へのNBC(感染症含む)対策教育・訓練の義務化
    ・小学生・中学生への感染症対策の教育・訓練(英会話必修化よりも先)
    ・緊急物資(医療器具(マスク等)・薬等)の政府強制調達に向けての立法措置
    ・緊急時の医療器具(マスク等)・薬等)の窃盗に対する殺人未遂罪適用の立法措置

    • 農家の三男坊様

      橋本副大臣がツイッターでやらかしてくれました(現在は削除)。
      全ての関係者の努力に全力で泥を掛ける広報上の特大失態「不潔ルート」。
      削除ではなく、あの写真の状況がその後、どのように改善したかの写真を続けて掲載せねばならなかった。