先週の『中央日報「青瓦台で日韓GSOMIA破棄論が再浮上」』などでも紹介した論点が、どうも「日本の輸出『規制』を撤回させるためには、韓日GSOMIA破棄をチラつかせるのが手っ取り早い」、という誤解が韓国政府、韓国メディア内で蔓延しているらしい、というものです。この韓国大統領府のGSOMIA破棄論を巡っては、公式にはそれを否定する見解が出たものの、本日の『中央日報』(日本語版)の記事では、「韓国政府内外では日本に圧力をかけるためにGSOMIAの終了決定は依然として『生きたオプション』という声があがっている」、などと記載されていて、思わず驚きます。
無関係な問題を勝手に関連付ける韓国
日本政府が昨年7月1日に発表した「韓国に対する輸出管理適正化措置」を、韓国側(つまり、韓国政府や韓国メディア)が「輸出『規制』」と誤記し続けているという話題は、『中央日報「青瓦台で日韓GSOMIA破棄論が再浮上」』などで、くどいほど繰り返し紹介してきた論点です。
(※日韓GSOMIAとは、『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』のこと。)
簡単にいえば、韓国側では、次のようなストーリーが勝手に成立してしまっているのです。
- ①2018年10月の大法院(※日本の最高裁に相当)による強制徴用工(※自称元徴用工のこと)に関する判決を皮切りに、韓日関係が悪化している。
- ②日本政府は2019年7月に、この強制徴用問題を巡る報復として、韓国を(旧)ホワイト国から除外するとともに、半導体材料などの3品目の輸出を制限することなどを柱とした輸出規制を発動した。
- ③韓国ではこの日本の不当な措置に対する反発が生じ、市民の間では「ノージャパン」運動などが自然発生し、韓国人の日本旅行が激減したほか、日本の対韓輸出全体にも急ブレーキが掛かった。
- ④韓国政府はこれにさらに対抗するために、2019年8月、韓日GSOMIAの終了を日本政府に通告した。
- ⑤その後、日本が韓国を(旧)ホワイト国から除外した措置を復元することに関する協議を行うことで韓日両国が合意したため、韓国はこの韓日GSOMIAの終了通告の効力を一時的に中断する措置を取った。
①から⑤までを眺めていると、さまざまな事実誤認、曲解(あるいは妄想)などが含まれていて、それらの事実誤認が積み重なって複雑骨折しているという状態だと思わざるを得ないのですが、ただ、彼らがその事実誤認を正そうとしない以上、私たち日本人としては正直「お手上げ」です。
実害が生じない限り、放っておくしかない
ただ、韓国側がこのような勝手な妄想を膨らませるのには困ったものですが、冷静に考えて、それによってわが国に何らかの実害が生じているのかといえば、話は別でしょう。
まず、自称元徴用工問題において、日本企業の在韓資産が差し押さえを喰らってしまっているのは事実ですが、万が一、これが強制売却されたとしても、それらの日本企業にとってはそもそも在韓資産自体の金額的重要性が低く、致命的な損害が生じるわけではありません。
それに、在韓資産の売却という被害に遭った日本企業も、韓国銀行が保有する在日資産(たとえば外貨準備)を凍結・換金するなどすれば損害の回収は可能です(※)し、在韓資産の売却が実現すれば、むしろ日本政府にとっては堂々と韓国に対する制裁を発動する口実が得られます。
(※ただし、『毎日新聞が報じた徴用工判決巡る「日本側の対抗措置」とは?』などで紹介したとおり、外国政府等の不法行為に基づく報復措置の発動については国連のルールに従う必要があるほか、日本国内の関連法が必ずしも十分に整備されているとは言い難い状況ですが…。)
次に、日韓GSOMIAの破棄については、たしかに日米韓3ヵ国連携が妨害されるというのは困りものかもしれませんが、実際のところGSOMIA破棄をチラつかされて激怒しているのは、日本政府ではありません。むしろ米国政府です。
昨年8月に韓国政府が日韓GSOMIA破棄を日本側に通告した際も、日本政府は「残念だ」で済ませる一方、米国が日韓GSOMIA破棄とほぼ同じタイミングでこれに反応したのです(『もう日本は関係ありません、今後は米韓間で直接どうぞ』参照)。
そして、韓国政府は昨年11月22日に、「日韓GSOMIAの終了通告の効力を中断した」などと述べたものの、これは非常に苦しい言い訳であり、韓国政府が日韓GSOMIA破棄の事実上の撤回に追い込まれたのは明らかです。
つまり、「自称元徴用工問題」、「輸出『規制』問題」、「韓日GSOMIA問題」は、いずれも韓国側の自爆であって、私たち日本の側としては、状況が決定的に悪化しないように管理しつつも、ある意味では冷ややかに眺めていれば良い問題ばかりだ、という言い方もできます。
あるいは「実害が生じない限りは放っておくしかない」、という言い方の方が正確でしょうか。
中央日報「SGOMIA破棄はオプションとして有効」
ところが、このことをまったく理解していないのでしょうか、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、こんな記事を発見しました。
輸出規制の早期撤回を求めた韓国外交部長官…日本側「時間が多少かかる」(2020.02.17 07:15付 中央日報日本語版より)
これは、ドイツ・ミュンヘンで開かれたミュンヘン安保会議(MSC)にあわせて開かれた日韓外相会談で、現地時間15日に茂木敏充外相と会談した康京和(こう・きょうわ)韓国外国部長官が、
「日本の輸出規制が早期撤回されなければならない」
と述べた、とする記事です。ちなみに中央日報によれば、この康京和氏の要請に対し、
「日本側は『時間が多少かかる』と説明した」
のだそうですが、そのわりにこの記事を読んでみても、茂木外相が「(輸出『規制』撤回まで)時間が多少かかる」などと述べたという事実は確認できません。というよりも、
「韓国から廃棄の主張が出ている韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)には言及しなかったとされる。これを受け、青瓦台(チョンワデ、大統領府)は日本の輸出規制の撤回を前提に昨年11月23日GSOMIAを条件付きで延長すると発表した。だが、3カ月が過ぎたにもかかわらず日本側が誠意のある態度を見せずにいるというのが青瓦台の判断だ。日本側は会談で『時間が多少かかる』という立場を見せ、政府内外では日本に圧力をかけるためにGSOMIAの終了決定は依然として『生きたオプション』という声があがっている。」
という(やや文法的に意味が通じない部分が含まれた)記述にあるとおり、「時間が多少かかる」とは、中央日報による勝手な解釈であって、茂木外相の発言ではないのです。
というよりも、輸出管理適正化措置を管轄しているのは、外務省ではなくて経済産業省です。茂木外相が「輸出『規制』」という誤った言葉を使うとも思えませんし、自身の管轄外のことで、かつ、自称元徴用工問題とは無関係な措置のことに、何らかの言及をすることは、常識的にはあり得ません。
だいたい何ですか、「生きたオプション」って…。
中央日報によれば、康京和氏はこの日の会談で、「輸出規制が早期撤回されなければならない」、「日本がより可視的で誠意のある措置を早急に取るべきだ」、などと強調したのだそうですが、日本が輸出「規制」の撤回に動かなかったとしても、現状、韓国には何もできません。
日韓GSOMIA破棄を持ち出した瞬間、再び米国によって全力で殴られると考えられるからです。
日韓関係が傷つかないとでも?
もっとも、日韓関係が悪化したままの状態で放置され続ければ、日韓関係は非常に悪い状態で固定化されます。
『【速報】「韓国に親しみ感じない」が初めて7割を超過』や『日経の最新調査、「韓国は日本人が3番目に嫌いな国」』などでも紹介したとおり、昨年から今年にかけて公表されたさまざまな調査によれば、日本人の対韓感情の悪化は明らかです。
(※もっとも、個人的には、「韓国に親しみを感じる」人がそれでも2割を超えているという事実自体、「日韓関係は二番底、三番底があり得る」という可能性を示唆しているように思えてなりませんが…。)
こうしたなか、韓国経済は「半導体不況」、「中国経済減速」に加え、「反日によるセルフ経済制裁」や「コロナウィルスショック」などが襲い掛かり、パニック状態に陥りつつある、という兆候も見えます。
韓国経済、1-3月期マイナス0.3%?…「新型肺炎ショック」でマイナス成長の危機(2020.02.17 08:10付 中央日報日本語版より)
韓国副首相「格安航空会社に3000億ウォン緊急融資…空港使用料猶予」(2020.02.17 09:43付 中央日報日本語版より)
正直、あまり同情する気分は湧き上がりませんし、日本は日本でコロナウィルス騒動による観光産業への打撃を懸念する状況でもあるため、正直、韓国経済が苦境に陥ったところで、日本は日本のことで手一杯です。
このような状況が長続きすれば、「コーポレート・ジャパン」としても「サウス・コリア・リスク」を意識せざるを得なくなりますし、批判を覚悟で個人的な希望を申し上げるならば、日本社会全体で「サウス・コリア・エグジット」の動きも徐々に生じてくるのだとしたら、それはそれで悪いことではないと思っているのです。
※もっとも、当ウェブサイトでこれまで何度も報告してきたとおり、韓国国民の間で「ノージャパン」運動が広まっているという状況は、韓国国民に対する入国ビザの厳格化に踏み切るにはちょうど良いタイミングなのかもしれませんが…。
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ホワイト国に戻す話は、経産省の管轄だから、外相会談で動く道理が有りません。
「日本側は「時間が多少かかる」と説明した。」部分も、疑って掛かった方が良いと思います。
GSOMIAには言及しなかったなら、もうGSOMIAの主張は諦めますというのが、外交でしょう。
韓国国内向けの、話だと思います。
日本側の発表は、外務省HPより、以下のリンクです。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page1_001025.html
興味深かったのは
「新型コロナウィルスの問題やALPS処理水の問題等について,科学的根拠に基づく正確な情報発信を求めました。」
の部分です。
韓国にデマを拡散するなと、鍵を刺した物と思います。
刺したのは、鍵ではなく、釘です。
訂正します。
釘を刺したのは糠床とかにでしょうか?
冷や水を浴びせて凍てつかせ続けるくらいしないと、すぐに抜けてしまうんでしょうけどね・・。
いつものように「そんなことは言っていない」の案件でしょう。
日韓とも、マスコミの「脳内取材→嘘でした」が日常化し、誰も問題視しないのが問題ですね。未だにレガシーメディアを盲信する層が一定数いる現状では、マスコミの嘘には十分な影響力があります。
表現の自由には事実を伝える責任が伴うことを、法制化できないもんですかねえ。
阿野煮鱒さま
コメントありがとうございます。
最後の「表現の自由には事実を伝える責任が伴うことを、法制化できないもんですかねえ。」ですが、難しいんじゃないかと思います。
ことが芸術となると、事実どころか、名誉毀損まで「表現の自由」でしたからね。
強いて言えば「報道の自由」には事実を伝える責任が、あるべきだと思います。
> 「報道の自由」には事実を伝える責任が、ある
仰る通りですね。表現の自由は違う話が混ざってしまいました。撤回します。
だから報道機関の皆様も、「報道の自由」と「表現の自由」を混ぜないでくださいね。
カズさま
結果は、刺しただけでになるでしょう。
そうならない、何かが欲しいですね。
GSOMIA破棄が生きたオプションというのはどういった国際法的根拠に基づくのでしょうかね。
まあもちろん今年の11月でもって破棄するのを8月まで通告するのはありです。
最初は「いつでもやめられる」だったのをさりげなくそっちに軌道修正してくる可能性はありますから要注意。
日本としては何もしないのが最上策です。幸いにして?コロナウイルス対策に忙しくて韓国に構ってる暇は本当にないのです。
本気で何もせず、あとは勝手に自爆行動をしてくれるのを待ちましょう。GSOMIA破棄はまあ日本は困りません。
そういや米韓の駐留費交渉はどうなったのでしょうね。案外アメリカは言い値が通らなければ駐留費交渉などどうでもいいのかも知れませんね。兵士の給与や維持費は払うけど、その他韓国への支払は原資がないことを理由に拒絶すれば良い。韓国人の基地関係者への給料もじきに停止されますね。
有事が起こっても自軍の身を守るだけ。
まあ我々には関係ないですが
韓国政府の こうげき!
日本政府は ようすをみている。
韓国政府は GSOMIA破棄を となえた。
日本政府は わらっている。
某ボス戦を想像しました。残念ながらそのメガンテは同盟国にしかダメージがいきません。
簿記3級さま
韓国政府は GSOMIA破棄を となえた。
日本政府は笑っている。
アメリカ政府は、怒り出した。
韓国政府は、ダメージを受けた。
ですかね。
だんな様
今後はアメリカにどどうのひつじの如く殴られるか、中国に殴られるかですね。
こちらからは滅びの呪文のようにしか見えませんが、起死回生のパルプンテのつもりだったのかもしれません。
まだ昼になったばかりでこれからもいくつかの話題がアップされるでしょうが,本日一番コメントが集まりそうにないのがこれだという予感.中央日報の鉄板ネタみたいなもので,「動かざること山の如し」なのか「暖簾に腕押し」なのかはともかく,GSOMIA破棄をいくら叫んでみても,もはや何の効果も望めないってことは,分かってるでしょうにね.それでも性懲りもなくこうした記事を日本版に掲載し続けるってのは,日本人から何らかのレスポンスを得たいという願望をもっているはず.それって一体何でしょう?
ズバリ,PV数30万?を誇る当サイトの存在.サイト主さんが律儀に紹介され,実質は揶揄でも一応は論理的な反論を加えるから,閲覧するわれわれの相当部分もリンクされてる元記事にアクセスしている.日本人がそれだけ見てるのならと,日本版担当部署や翻訳者をリストラしようということにはならない(かな?).まあね,サイト主さんの紹介にしても,さすがに一応お約束だからねという義務感的な色合いが強くなってきたし,こう言っちゃ何だが,このところはテンプレをチョコチョコッといじった程度.閲覧する側も「またか」と感じてしまうのも仕方が無いでしょうが,与太記事がほとんどでも中央日報日本版が無くなったら,それはそれで寂しいと思う方は(わたしもそのひとりですが),義務的にでもときどきアクセスくらいはしてみましょうよ.
(付録)無意味な行為が止められない~強迫性障害(監修/北村聖.東京大学医学教育国際協力研究センター教授)というネット記事のご紹介
https://www.myclinic.ne.jp/imobile/contents/medicalinfo/gsk/top_mental/mental_003/mdcl_info.html
>自分の意思に反して、不合理な考えやイメージが頭に繰り返し浮かんできて、振り払おうと同じ行動を繰り返してしまう病気.抑えようとしても抑えられない強迫観念と、それによる不安を打ち消すために無意味な行為を繰り返す強迫行為があります。
だそうです.「自分の意思に反して」の部分はどうかなとは思いますが,中央日報の記者さんの相当部分が,火病だけじゃなく,これにも罹ってる可能性があるかも,ですね.で,こういう患者に周囲はどう接すればいいかというと,
○病気のことを理解する。
○患者さんの性格の弱さなどを責めない。本人の苦しみや治そうとする努力を理解する。
○患者さんの病気に対して過度の罪悪感や責任感を持たない。
○治療を続けることを応援し、症状の波に一喜一憂しない。
○治療の手助けはするが、強迫行為自体は手伝わない。
○患者さんが日常生活のリズムを維持できるよう、配慮しサポートする。
○気長に応援し、患者さん本人が少しでも余裕を持てるように努める。 など
だそうです.
大前健一氏が週刊ポストで、韓国が脱日本に向けて成功できるか詳しく述べています。必読の価値あり
更新ありがとうございます。
中央日報「韓日GSOMIA破棄は生きたオプションになる」え!意味分からん。辞めれるなら、さっさとヤレよ(笑)。日本は寸分動きませんで〜。まだ駆け引きで自分が優位と信じ込んでいるみたい(苦笑)。
それとコレは康氏による発言だったそうだが、この人、文大統領に次ぐぐらいの頭の悪さですネ〜。ホンマ、めんどせー国だな。最近ね、中央日報も朝鮮日報も読んでません。まあ、週2回ぐらい(多いやろ)。
数字は嘘やし、内容は文批判がストレートに出て来たのは良いが、相変わらず『反日』。こればかりは変わりないDNAなんでしょう。
日本は、日韓基本条約が無視されているところから動かないで良いです。
それが、国と国との関係だと私はおもいます。
韓国航空会社が映画「パラサイト」の機内放映せず、その理由は…―韓国メディア
大韓航空の機内放映映画の選定基準に「旅客機の事故シーンなど乗客に不安を与えるもの、特定の国や民族をおとしめるもの、政治や社会の論争を巻き起こし得る映画は放映リストから除外する」とあり、韓国国内の貧富格差などを描いた同作品は「韓国のネガティブなイメージを与える内容」としてこの基準に引っ掛かったと伝えた。
https://www.recordchina.co.jp/b781999-s0-c30-d0135.html
「韓国のネガティブなイメージを与える内容」
アメリカが反米国の韓国にアカデミー賞を与えた理由がわかってきたねw
何でもマジェマジェしないと気がすまないお国柄なのでしょう。
生きたオプションだと思うならカードを力強く切ればいいけど、多分、それ、あんた自身の手首やで。
イーシャ 様
"あんた自身の手首やで。"
に、座布団2枚です。
中央日報が、日本の輸出規制を止めろというと、大体同じ時期に出てくる記事です。
韓国経済副首相「日本の不当な輸出規制、具体的な被害ない」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200217-00000028-cnippou-kr
以下引用します。
「日本の不当な輸出規制施行後、これまで韓国企業の生産支障など具体的な被害は現れていない」と評価し、「日本に具体的行動と措置を改めて強力に促す」と明らかにした。
引用ここまで。
「被害は無いが、早くホワイト国に戻せ」とずっと同じ、矛盾した発言です。
まあ、何らかの被害が有るから言ってるんだと思いますが、被害者ポジション大好きな韓国にしては、不思議なケースです。面子から、被害がでたとは、言えないんですね。