先ほどの『前提条件を疑え!「朝鮮半島生命線説」論に潜む罠』で、日韓友好論にありがちな「勝手な前提条件」に関する個人的な考え方を紹介しました。そのついでに、もうひとつ、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に、日曜日に掲載されていた記事についても紹介しておきたいと思います。それは、日韓関係を巡る『3つのNO』『7つの原則』という議論です。
日韓懸案は韓国がもたらしたもの
現在、日韓関係が一種の「膠着状況」に陥っていることに関しては、疑念の余地はないでしょう。その理由は、なんといっても自称元徴用工問題をはじめとする、韓国側が日本に対して仕掛けてきた国際法違反、約束違反、信義則違反などの不法行為の数々にあります。
一昨年秋口以降、韓国側から仕掛けられてきた「日韓友好に反した非合理な行動」のうち、主なものに絞っても、次のような事件がありました。
- ①旭日旗騒動(2018年9月頃~)
- ②自称元徴用工判決問題(2018年10月30日、11月29日)
- ③レーダー照射事件(2018年12月20日)
- ④天皇陛下侮辱事件(昨年2月頃)
- ⑤日本による韓国向けの輸出管理適正化措置(昨年7月1日発表)
- ⑥慰安婦財団解散問題(昨年7月頃)
- ⑦日韓請求権協定無視(昨年7月19日)
- ⑧日韓GSOMIA破棄通告(昨年8月22日)
- ⑨対日WTO提訴(昨年9月11日)
このうち⑤については日本側が講じた措置ですが、『輸出管理の「緩和」を「対韓譲歩」と勘違いする人たち』などでも考察したとおり、日本政府がこの措置を講じるきっかけを作ったのは韓国ですので、やはり究極的には韓国の行動がすべての原因であるといえます。
ただ、こうした日韓関係のギクシャクを巡っては、『「日韓Xデー」が到来しても、それは韓国の責任だ』『現代ビジネス「日韓両国は大人になれ」の周回遅れ』などでも報告したとおり、「それでも究極的には日本が悪い」(あるいは「日韓双方に原因がある」)、などと考える人もいるようです。
(※なお、こうした考え方のおかしさについては、今朝の『前提条件を疑え!「朝鮮半島生命線説」論に潜む罠』でも触れたとおりです。)
貴国の大統領の認識能力、大丈夫ですか?
ただ、少しだけ本論から脱線します。
「日韓関係が悪化している」という点については、ほとんどの人が異論を差し挟まないと思うのですが、ただひとり、例外がいるようです。その「例外」とは、恐ろしいことに、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領その人です。
『年頭会見に見る「文在寅政権がもたらす日韓関係破綻」』で紹介したとおり、文在寅氏は14日の記者会見で、「強制徴用、輸出規制、GSOMIAという3つの問題を別とすれば、韓日関係は非常に健全で良好な関係だといえる」と述べたからです。
というよりも、文在寅氏の年頭記者会見の内容そのものを読むと、彼の発言については、かなりの部分が南北関係に割かれています(※韓国語ではありますが、その全文は韓国大統領府ホームページに掲載されています)。
2020ムン・ジェイン大統領の新年記者会見(2020-01-14付 韓国大統領府HPより)
そして、南北関係以外の話題(とくに経済政策、雇用、外交安保などの重要な話題)については、彼の認識は極めて薄弱であり、それは日韓関係を巡っても例外ではありません。だからこそ、文在寅氏の口からは
「日韓関係は非常に健全で良好」
という、なかば呆れるような発言が飛び出してくるのでしょう。
個人的には、文在寅政権は「韓国版・鳩山由紀夫政権」のようなものだと感じていたのですが、仮に鳩山由紀夫政権が5年間続けば、日本だでさえ、本当に滅亡していたかもしれません。ましてや国家としての基礎体力が弱い韓国のこと、文在寅政権があと2年半ほど続けばどうなるのか。
気になって仕方がありません(※といっても、しょせんは外国の話なので、気にしても仕方がないのですが…)。
「3つのNOと7原則」
さて、気を取り直して本論に戻りましょう。
韓国の大統領自身を例外とすれば、「現在、日韓関係は良好ではない」というのは、おおむね、日韓両国の国民、政府関係者、財界関係者などの共通認識になっていると考えて良いでしょう。
そうなると、必ず出て来るのが、「どうすれば良いか」、という提言です。
ここでひとつ興味深いのが、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に日曜日に掲載された、次の記事です。
「平行線の韓日関係回復のため3つのNOと7原則ルールを守っていこう」(2020/01/26 06:07付 朝鮮日報日本語版より)
これは、「中曽根平和研究所」の藤崎一郎理事長が朝鮮日報のインタビューに対し、日韓関係の改善を巡って具体的な提案をした、とする話題です。朝鮮日報によると、藤崎氏が提案したのは、『3つのNO』、『7つの原則』です。
『同盟国間では守られなければならない3つのNO』
- No surprise(相手を驚かせない)
- No Politicize(国内政治化しない)
- Do not take it for granted(両国関係を当然視せずに配慮すること)
『日韓が守るべき7つの原則』
- ①相手に対する敬意を忘れないようにしよう
- ②将来の世代は常に仲の良い友達になろう
- ③両国間の問題は両国が解決し、ほかの国に広めないようにしよう
- ④両国間の関係悪化を喜ぶ国があることを忘れないようにしよう
- ⑤懸案はプロらしく協議しよう
- ⑥国内向け発言、ヘイト発言で相手国の国民を傷つけないようにしよう
- ⑦さまざまな分野の対話交流を中断することなく続けよう
…。
韓国に対する強烈な皮肉
あれ?これってすべて韓国の側がやっていることばかりじゃないでしょうか?
藤崎氏の議論が正しいかどうかについては、とりあえずいったん措くとしましょう。
そもそも論ですが、日韓慰安婦合意や日韓GSOMIAの一方的な破棄、国際法に反した判決などで「相手を驚かせた」のは韓国の側ですし、ことあるごとに「歴史問題」を「国内政治問題化」してきたのは韓国の側です。
さらには、日本が日韓関係を壊さないように配慮しているという厚意を当然視し、日本にまったく配慮していないという意味では、まさに韓国そのものでしょう。
そういえば、韓国は旭日旗を踏みにじったり、日常的に日の丸を焼いたりするなど、「①日本に対する敬意」を払っていませんし、そんな国と「②将来世代において仲の良い友達になる」ことが可能だとも思えません。
また、日韓問題を外国に宣伝するという「告げ口外交」を展開する韓国の態度は「③日韓問題を日韓両国が解決しよう」とするものとは程遠く、「④日韓関係悪化」で中国やロシア、北朝鮮を喜ばせまくっています。
そんな韓国が日本に対し、「⑤プロらしく協議」するどころか、日韓請求権協定の協議プロセスそのものを踏みにじりましたし、「⑥国内向けの発言、ヘイト発言」で日本国民を傷つけまくっているのは韓国の側です。
さらには、ノージャパン運動で「⑦さまざまな分野の交流を停滞させている」のも韓国の側です。
藤崎氏の提示した『3つのNO』『7つの原則』という議論が正しいかどうかはさておき、藤崎氏の発言そのものが、韓国に対する強烈な皮肉になっているという点について、朝鮮日報の記者の方が気付いているかどうかは定かではありません。
いずれにせよ、日韓関係の将来は、韓国が日本との紳士的・友好的な話し合いに応じるかどうか、約束を守るかどうかにかかっていることは、間違いないと考えて良いでしょう。
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私の学生時代(1960年代終盤~1970年代前半くらい)の思想界,言論界といったら,おおむね革新=進歩派=良識派=国際協調派といった認識がまかり通っていて,大げさに言うと,国益の観点から云々などといったら,右翼・保守反動扱いされなかった.国粋主義,軍国主義に走った挙げ句の敗戦で国を焼け野原にしてしまった記憶がまだ強く残る時代っただから,まあやむを得なかったのだろうと思いますが,一応そういう見方を身につけて社会に出ても,大半の人間は経験を積むほどに,そんな頭の中で組み上げただけの実態に即さない意見のアホらしさ,ピンボケぶりに気づいていって,その必然的結果が今日の「進歩的」思潮の凋落となっているのかなと考えています.ところが,こうした中,今や少数派となっても,進歩,良識,国際協調という色褪せた旗を懸命に護り続けている知識人,マスコミ界の方々,ぶれずにおられる点はある意味敬意を払うべき存在だとは思うんですが,それらの方々がおしなべて,進歩,良識,国際協調 etc.のフレーズからは最も遠い位置にある例の国にひとかたならぬ深い思い入れがあるのはどういうわけなんでしょうか? そこのところがどうしても解けない謎.
「例の国」が進歩、良識、国際協調と近かろうが遠かろうが、それは二の次あるいは問題外で、要は日本政府=「権力側」=「体制側」を悪とし否定する材料にできるなら、利用するものは利用するという理屈かと。
例の国が被害者、日本は加害者という設定、前提ですので、永遠の「謝罪」と「賠償」が必要だとなり、一見それは例の国に「思い入れて」るように見えるのですが、むしろ日本の「良識的知識人」の深層心理にあるのは、例の国の人々に対する「軽蔑意識」「差別意識」です。「かわいそうじゃないか」「手を差し伸べてあげるべき」という言動の根底にあるのは、例の国の人々を独立した一個の人格とはみなさない、対等な人間ではないという認識です。逆に見下しているからこそ、「かわいそうなヒトを助けるわたしは美しい」と自己満足できる。彼らはヒューマニストというよりナルシスト、エゴイストです。
藤崎氏の発言として朝鮮日報が報じたルールですが、「ゴールポストを動かす韓国」と言うほとんど揺るがない大前提がありますので「ルールの設定それ自体が韓国相手には無理で無意味」と言うどうしようもない不信の沼で泥まみれです。
名無しさん様
韓国にとって、ルールというものは相手は死守せねばならず、自分は拘束されない便利な決まりという認識ですので、彼らの中ではこの件で矛盾は発生しないものと思われます。
自転車の修理ばかりしている様
「韓国はゴールポストを動かす」は本当に名文句ですよね。
これに対しては寡聞にして未だ韓国側から「それは全く当たらないニダ」と言う反論を読んだことがありませんし、然りとて「ウリがゴールポストを動かして何が悪いニカ?」と居直る事も言えず、過日の日本の間違った対韓対応の様に「マトモに答えては負け」とでも言う「日本式の無視」を決め込んで頰被りしている様子です。
やはりゴールポストを動かしている自己認識はあったのでしょう。但しそれが韓国にだけ(日本相手にだけ)許されると思っていた様子。日本相手になら本当に頭を踏みつけて勝利ポーズを取れるレベルで許されている事と思い込んでいた事が、何やら謎の理由でひっくり返って言葉にする事も出来ないで思考停止みたいですね。
小生は、宝塚のブスの25カ条の方が好きですね。
誰とは言いませんが、ほとんどあてはまる気がします。
1. 笑顔がない
2. お礼を言わない
3. おいしいと言わない
4. 精気がない
5. 自信がない
6. グチをこぼす
7. 希望や信念がない
8. いつも周囲が悪いと思っている
9. 自分がブスであることを知らない
10. 声が小さくいじけている
11. 何でもないことにキズつく
12. 他人にシットする
13. 目が輝いていない
14. いつも口がへの字の形をしている
15. 責任転嫁がうまい
16. 他人をうらむ
17. 悲観的に物事を考える
18. 問題意識を持っていない
19. 他人につくさない
20. 他人を信じない
21. 人生においても仕事においても意欲がない
22. 謙虚さがなくゴウマンである
23. 人のアドバイスや忠告を受け入れない
24. 自分が最も正しいと信じている
25. 存在自体が周囲を暗くする
一般市民様
すごい25カ条をご存じですね(笑)
私はこの「負のオーラ」で彼らをだいたい見分けることができます。
一般市民様
???特定の個人ですよね?
気になります…。彼女…?
Mayor さん?
彼女ではありません。
『宝塚』、『ブスの25カ条』と入れて検索してみて下さい。
宝塚歌劇団の楽屋に貼ってあるそうです。
一般市民様
ありがとうございます。
人生訓…
たいへん参考になりました。
心して以後気をつけます。
>25. 存在自体が周囲を暗くする
うわぁ~w
1~24は意識して改善できる内容だけど、25は存在自体の否定なんで一気に印象悪くなるなぁ
1~24の結果25になるって意味なんですかね。
お疲れ様です。
まぁ、記事は読んでわかる通り
典型的なネロナムブルです。
自覚がないんですよ、だから余計にタチが悪いんですけどね。
更新ありがとうございます。
中曽根平和研究所の藤崎一郎理事長が朝鮮日報のインタビューに答えた、、、藤崎氏は元大使、さすが大物キャリアに理事長になっていただけるんですね〜。
それはともかく、この韓国人記者は何を聞きたくて行ったのか。事前にある程度自分の考える引き出しを整理して臨むもんだと私は思いますが、何となくテーマも無く行き当たりばったりの単発質問に終始しているようです。
問題は朝鮮民族のソレだと思うんですよね〜。つまり当事者意識がなさ過ぎる。他人のせいにする。いくら韓国目線が主体としても、一つ一つの事案を解いて行けば、韓国に責任がほとんどあるよ、と言うのは心では否定しながも、分かると思います。
厄介なのはまったく理解出来ていないのが文大統領だという事。コイツは頭ん中は北のご機嫌取りと、統一(しなくても)による核武装の調達。その他の中国や日本や、ましてや米国との関係など興味が無いのです。
盟友だった盧武鉉に報いる為もあるでしょうが。藤崎氏の提案に対し、特に持論も無く掲載だけでは、「コリャダメだ」です。
約束を守れない人達と、新しいルールを作りましょうと言ってる所でアウトでしょう。
全て都合の良い様に解釈して、韓国は全て守っていると言うと思います。
新しいルールは、日韓関係で最重要な、日韓協定を韓国が守ってからの相談でしょう。知らんけど。
日本が守らねばならないのは3点のみです。
1.「助けない」
2.「教えない」
3.「関わらない」
北と同じ扱いにしてしまえばスッキリしてよいと思うのですが。
>3つのNOと7つの原則
日韓だと同盟国じゃないし、まずは米韓の間で守ってみよう。