「物価安定」は北朝鮮制裁「無効論」の証拠にならない
北朝鮮制裁を巡って、昨日の『北朝鮮の瀬戸際外交は経済制裁がうまくいっている証拠』では、北朝鮮が仕掛けて来ている瀬戸際外交は、金正恩体制が経済制裁に「焦り」を感じている証拠のひとつであり、だからこそ、経済制裁を継続しなければならない、と結論付けました。ただ、昨日はとあるコメント主様から、「北朝鮮では物価が安定しており、これは経済制裁が効いていない」とする趣旨のコメントを頂きました。せっかくですので、このコメントを手掛かりに、あらためて「貨幣現象」について、考えてみましょう。
目次
北朝鮮制裁、実際にはどうなの?
驚くほど物価が安定する北朝鮮の実情
昨日の『北朝鮮の瀬戸際外交は経済制裁がうまくいっている証拠』では、北朝鮮が必死に瀬戸際外交を仕掛けて来ている背景を巡り、おそらく北朝鮮が猛烈な外貨不足に陥りそうになっていて、金正恩(きん・しょうおん)が焦っているからではないか、とする仮説を提示しました。
この仮説が正しいかどうかは、よくわかりません。
とくに、以前、当ウェブサイトでは『米朝首脳会談と「今、北朝鮮制裁を解除すべきではない理由」』のなかで、『Yahoo!ニュース』とウォール・ストリート・ジャーナル(日本版)に掲載された2つの記事を紹介し、「どうも北朝鮮では物価が安定しているらしい」という話題を取り上げました。
該当する記事2本のリンクを再掲しておきましょう。
北朝鮮経済、制裁にどう耐えているのか(2019 年 2 月 26 日 15:47 JST付 WSJ日本版より)
北朝鮮内部の「肉声」を聞く――制裁は特権層を直撃 揺れる金正恩政権(2019/2/23 8:44 付 Yahoo!ニュースより)
どちらの記事も共通しているのが、北朝鮮では国連安保理制裁以降も、物価も為替相場(対人民元)も顕著に上昇していない、という指摘です。
「(国連制裁の強化はエリート層などの外貨収入を奪うことで)北朝鮮にある程度の打撃を与えた。しかしそれ以外の面では、北朝鮮経済は持ちこたえているように見える。コメの価格は安定しており、制裁強化後に上昇していたガソリン価格は2017年秋の高値から大幅に低下した。北朝鮮の通貨ウォンの対ドル相場も安定している。首都平壌(ピョンヤン)では建設プロジェクトが続いている。また脱北者や北朝鮮を最近訪れた人々によれば、制裁強化前には目立っていた中国製加工食品など外国製品の多くは、国内工場の生産拡大を受けて国産品に置き換えられている。」(WSJ)
「中国元の交換レートは安定を続け、ガソリン、軽油の価格が乱高下した以外に、大きな物価上昇はなかった。食糧、日用品の価格の値上がりは20~30%の範囲内だ。/2017年末に経済制裁の強化が始まった時、筆者はインフレの発生を予測した。外貨不足は必至なので、北朝鮮ウォンが下落すると考えたのだ。ジンバブエやベネズエラのように数十万%に及ぶハイパーインフレが発生すれば経済は大混乱だ」(Yahoo!ニュース)
物価安定は「経済制裁が効いていない証拠」?
もしこの報道が事実ならば、一見すると北朝鮮経済は安定しているように見えます。
ジンバブエやベネズエラの場合は、経済の崩落とハイパー・インフレが同時に発生しましたが、少なくとも北朝鮮ではハイパー・インフレ状態にはなっていない(らしい)からです。
(参考)ベネズエラのスーパーマーケット(※クリックで拡大)
(【出所】SHAREAMERICA)
そして、この点について、「ぁ」と名乗るコメント主様から、改めてこんなコメントを頂きました。
「結論から言うと、北朝鮮には制裁は効いていません。つまり商品流通が問題なく行われているかどうか、物価水準が高騰していないかどうかを観察すれば良い。北朝鮮自身が公表していなくても、アジアプレスが内部協力者を使って毎週調べています。これを見る限り、制裁がぜんぜん効いていないどころか、北朝鮮ウォンが強含みであることすら分かります。」
ここで「ぁ」様が提示して下さったのが、『アジアプレス』に掲載されている、次のリンクです。
<北朝鮮>市場最新物価情報(アジアプレス・ネットワークより)
これは、
- ガソリン
- 軽油
- 北朝鮮産米
- トウモロコシ
- 中国人民元
- 米ドル
といった品目・通貨の価値を北朝鮮ウォン(KPW)で調べたものですが、たしかに物価は驚くほど安定しています。
以前のWSJ日本版やYahoo!ニュースの報道、あるいは「ぁ」様がご指摘になった『アジアプレス』の最新物価情報などからは、北朝鮮でこれらの主要品目の価格が安定していることは、ほぼ間違いないと考えて良いでしょう。
「物価の安定」は「経済の安定」とは限らない
これについては、たしかに一見すると不思議な現象です。
ただ、じつは今月、人民元について議論した『怪しい通貨・人民元と「北朝鮮制裁の実効性」の関連性』のなかで、この話題について取り上げています。
当時の議論の流れを再整理しておきましょう。
まず、今年2月の時点で、WSJと『Yahoo!ニュース』という、お互いに独立したメディアが、たまたま同じような時期に同じような結論の記事を掲載したこと自体、「北朝鮮で顕著な物価上昇が観測されていない」という情報が、ある程度信頼に値するという証拠でしょう。
繰り返しになりますが、一般にモノ不足の国では物価が急騰します。終戦直後の日本の場合、生活必需品などが極端に不足し、都会の人々は着物などの現物を持参して農家に行き、直接、食料を物々交換で手に入れた、といったエピソードは多数あります。
(私自身の祖母が生前に執筆し、昭和末期に自費出版した自伝でも、そのような記述が出て来ます。)
これは、一般には「モノの値段が上がること」ですが、もう少し厳格には、
- ①カネに対するモノの価値が急騰すること
- ②モノに対するカネの価値が急落すること
と表現されます(ちなみに①と②は同じ意味です)。
ここでそもそも「物価」とは、「モノを手に入れるために必要なカネがいくらであるか」を示した尺度ですが、同時に、「カネがいくらあればモノが手に入るか」の尺度でもあります。いわば、物価とは「モノとカネを交換するときのレート」のことだと言い換えても良いでしょう。
ここで、仮に1ユーロ=125円だったとすれば、1円=0.008ユーロです。
- 1ユーロ=125円→1円=0.008ユーロ
これは当たり前のことですね。
日本人は為替相場を「コンチネンタルターム」(相手通貨1単位の価値を自国通貨で表現する方式)に慣れていますが、「ニューヨークターム」(自国通貨1単位の価値を相手通貨で表現する方式)も存在するからです。
物価もこれと同じことで、
- コメ1キロ=1250円→1円=コメ0.8グラム
- 白菜1玉=200円→1円=0.005玉
などと表現し直すことができるのです(非常にわかり辛いですが…)。
すなわち、「インフレ」とは「カネに対するモノの値段が上がる現象」、あるいは、「モノに対するカネの値段が下がる現象」と定義できるでしょう。仮にコメ1キロが1250円から2500円に値上がりすれば、1円で買えるコメが0.8グラムから0.4グラムに半減する、ということだからです。
議論の証拠力とは?
物価とは、モノとカネのバランスである
さて、あらためて考えてみましょう。
ここでは、「北朝鮮では物価が顕著に上昇していない」というのが事実だと仮定しますが、その理由としては、
- ①経済制裁にもかかわらず、モノが十分に供給されているから
- ②(モノ不足以前に)そもそもカネの供給が不十分だから
という、ふたつの可能性があるのです。
先日より紹介している、「北朝鮮では案外物価は上昇していないらしい」という話題は、「北朝鮮の経済は思ったほど打撃を受けていない証拠」=「経済制裁が効いていない証拠」、という文脈で用いられているのですが、これは①の場合しか考慮していない思考です。
もちろん、この可能性が皆無であると申し上げるつもりはありません。
「中朝国境、あるいは露朝国境で、意外とヤミ取引がたくさん行われていて、北朝鮮産のマツタケなどが中国やロシアで飛ぶように売れており、中朝からは国連制裁決議に違反してヤミで大量の石油、外国産の食糧などが流入している」
という可能性は十分にあるからです。
(本質的な反論ではありませんが、この仮説が正しければ、大なり小なり「中国やロシアの統計がウソをついている」という前提を置くことになりますが、「中国やロシアの統計をまったく信頼しないのに、なぜアジアプレスの報道を信頼するのか」、というシンプルな疑問が出て来ます。)
その一方、②の仮説が正しければ、「北朝鮮でモノ不足に陥っているにもかかわらず、不思議なほどに物価が安定していること」の理由は、経済学的にはちゃんと説明できます。
当たり前ですが、経済規模は、
数量×物価
で表現されます。
少々厳しいことを言わせていただきますと、数量の方を見ずに物価だけを見て、
「結論から言うと、北朝鮮には制裁は効いていません。」
と決めつける態度は、論理的思考が欠如しており、極めて短絡的な結論だと言わざるを得ません。
くどいようですが、「物価水準が安定している」というのは、「モノとカネの供給バランスが釣り合っている状態」を意味するに過ぎず、「経済が安定している証拠」にはならないからです。
(※ついでに細かい話ですが、先ほどのコメントにあった「つまり商品流通が問題なく行われているかどうか、物価水準が高騰していないかどうかを観察すれば良い」は、論理的には間違いです。物価水準が安定しているからといって、商品流通が問題なく行われている証拠にはならないからです。)
証拠が多い方で議論する必要がある
くどいようですが、以前からの議論で何度も申しあげているとおり、当ウェブサイトとしては、北朝鮮で物価が安定している現象が、
- ①モノ不足が生じていないから(=経済制裁が効いていない証拠)
なのか、
- ②カネ不足が生じているから(=経済制裁が効いていない証拠にならない)
なのかについては、②の可能性の方が高いと考えられるものの、どちらであるかはわからないと申し上げて来ています。なぜなら、北朝鮮は統計などが整備されておらず、整備されていたとしても公表されていないため、これらの議論については経済学的に見た決定的な証拠がないからです。
(※もっとも、昨今の情勢で、①と②のどちらの方が可能性が高いかと問われれば、一般的には「①の可能性の方が高い」、つまり「結論から言うと、経済制裁は効いていない。」と結論付けるには、かなりの無理があると言わざるを得ませんが…。)
したがって、「北朝鮮の物価水準」は北朝鮮に対する経済制裁が効いているかどうかを判断するための証拠のひとつにはなるかもしれませんが、「決定的な証拠」にはなり得ません。経済学的には反論が十分に可能だからです。
では、物価、貨幣現象を説明するための決定的な証拠がないならば、どうすれば良いのか。
一番手っ取り早いアプローチは、「他の証拠」を探してくることです。
昨日の『北朝鮮の瀬戸際外交は経済制裁がうまくいっている証拠』は、タイトルでわかるとおり、「北朝鮮が瀬戸際外交に踏み切っているのは、北朝鮮が経済制裁で苦しんでいるという仮説が正しい証拠のひとつだ」、という主張です。
あるいは、昨日の議論ではたまたま取り上げませんでしたが、北朝鮮が執拗に「段階的核放棄」を主張しているのも、韓国の「親北派政権」が北朝鮮制裁の緩和を主張し続けているのも、結局のところ、北朝鮮が経済制裁に苦しんでいるという、きわめて有力な証拠でしょう。
当たり前ですが、昨日の議論は、「貨幣現象だけでは説明し切れない、北朝鮮経済の苦境の証拠」のひとつです。したがって、昨日の議論を否定するために物価現象を持ち出しても、残念ながら論破する証拠力にはならないのです。
とても当たり前の話ですが、対立する仮説が2つあるときは、どちらの主張の方が正しいかについては、証拠力の有無で判断するしかありません。この場合、仮説は
- (A)北朝鮮に対する経済制裁は効いている
- (B)北朝鮮に対する経済制裁は効いていない
ですが、北朝鮮の物価が安定しているからといって(B)を否定する根拠にはなりません。
(A)が正しいと主張するのならば、物価現象だけでなく、ほかにも何らかの証拠を持ってくるべきでしょう。
「北朝鮮は外貨不足に陥っていない」としたら?
ただし、経済制裁が金正恩体制にかなりの打撃を与えていることはどうやら間違いないものの、北朝鮮が「決定的な外貨不足に陥っている」という決定的証拠も、残念ながら存在しません(だからこそ、昨日の記事のタイトルが『北朝鮮の瀬戸際外交は経済制裁がうまくいっている証拠』なのですが…)。
あえて当ウェブサイトの議論に自分で反論を加えておきますと、あくまでも現状は、「状況証拠」で判断する限り、北朝鮮の外貨が枯渇しつつあるのではないかという「仮説」が提唱できる、というだけの話に過ぎません。
たとえば、現実には金正恩(きん・しょうおん)がスイスや香港あたりに偽名で開設した銀行口座に、巨額の金融資産を隠し持っている可能性は、かなり低いものの、完全にゼロではありません。
(ちなみに最近だと、スイスや香港などの伝統的なマネーセンターでは、「マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)」の厳しい監視の目を掻い潜ることがきわめて難しくなっているのですが、この点については機会があればどこかで議論したいと思います。)
これに加えて、北朝鮮から「出稼ぎ労働者」や「マツタケの輸出」などによる外貨獲得手段を奪ったとしても、彼らには得意の外貨獲得手段があります。それは、贋札製造や保険金詐欺、サイバー犯罪などです。
今から約2年前、暗号通貨「NEM」の大規模な窃盗事件が発生しましたが(『暗号通貨窃盗事件続報と犯罪国家・北朝鮮』参照)、個人的には、これは北朝鮮による組織犯罪の疑いが濃厚だと考えています。
さらには、次の『ニューズウィーク日本版』の記事によると、北朝鮮は国際的な保険市場のロンドンを舞台に国家ぐるみで保険金詐欺を働いているとの情報もあるなど、犯罪による資金窃盗は引き続き、北朝鮮の得意分野なのかもしれません。
北朝鮮が国家ぐるみで保険金詐欺、毎年数十億円を稼ぐ(2017年1月16日(月)15時39分付 Newsweek日本語版より)
もっとも、あえて「犯罪資金収入があるから、北朝鮮は経済制裁に苦しんでいない」という仮説を無理に引き出すためには、かなり巨額の資金を窃盗するための大規模な組織犯罪・サイバー犯罪等が、現在も大々的に行われていなければおかしいはずですが…。
いずれにせよ、仮に「犯罪資金や瀬取りなどで北朝鮮が潤っている」という仮説が正しかったとしても、私たち西側諸国がやらなければならないことは、経済制裁の緩和ではなく、さらなる強化であり、圧力の最大化です。
今後は日米英仏豪などが連携し、積極的に瀬取りを摘発するなどして、北朝鮮の資金源を、それこそしらみつぶしに断ち切っていく努力が求められるのです。
独裁者が一番嫌うこと
さて、昨日の議論の繰り返しです。
韓国による日韓GSOMIAの破棄騒動や自称元徴用工訴訟における「売却するする詐欺」を見つめて来た当ウェブサイトとしては、北朝鮮が「一線」を越えて、米軍の軍事オプションの行動を誘発するような決定的行為に踏み切る、とは考えていません。
ただし、「自分たちが経済的には困っていない」と思わせるような工作活動は、多数仕掛けてくるかもしれません。くだんの「北朝鮮で物価が安定している」という情報についても、北朝鮮当局としては、「自国の物価が安定している証拠」として、わざとアジアプレスの報道を泳がせている可能性もあります。
また、当ウェブサイトごとき「弱小ウェブサイト」はともかく、「Yahoo!ニュース」などのウェブサイトのコメント欄を通じて、
「北朝鮮は経済制裁にまったく困っていない」
というプロパガンダを広め、
「経済制裁をやっても意味がないから、緩和して違うアプローチを探るべきだ」
などとする世論を醸成しようとする動きが広まる可能性もあるでしょう。
いずれにせよ、独裁者にとっては、
「西側諸国の経済制裁はまったく効いていない」
というプロパガンダを植え付けることで、まんまと経済制裁の緩和をせしめれば、こっちのものです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ちなみに、独裁者らが一番嫌うのは、「議論」です。
以前、『韓国、財務省、NHK、共産党の共通点は議論の拒否』などでも報告しましたが、たとえば、財務省、NHK、日本共産党には一貫した共通点があります。それは、「自分たちにとって都合の良い結論を決めつけ、それに反する議論を排除すること」です。
- 財務省…増税を通じた財政再建が必要である
- NHK…公共放送のために受信料制度を守ることが必要である
- 日本共産党…志位和夫の独裁体制を守ることが必要である
といったところでしょうか。
当ウェブサイトとしては、今後も「議論することを通じて知的好奇心を刺激する」というスタンスで運営していきたいと考えています。少し気が早いのですが、来年もご愛読ならびにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>>「結論から言うと、北朝鮮には制裁は効いていません。」
>と決めつける態度は、論理的思考が欠如しており、極めて短絡的な結論だと言わざるを得ません。
私の個人的な見解ですが、『結論から言うと、北朝鮮には制裁は効いていません』が間違っているかもしれない理由は「論理的思考の欠如」よりも、寧ろ「帰納と演繹の混同」或いは「大前提の間違い」ではないかと思います。
「秋映リンゴは赤いし、赤玉リンゴ、マッキントッシュやシナノレッドも赤いから全てのリンゴは赤い筈だ」と言う帰納論法の落とし穴に嵌ったか、「貨幣の供給は十分であった場合に限り…」と言う大前提を無視した論法です。
「制裁は効いてない論」の最もおかしいところは、
何故か「だから制裁はやめよう」という結論に持っていくところだと思います。
北が制裁されても豊かにやっていけているならそのまま放置すればよいでしょう。
> 「制裁は効いてない論」の最もおかしいところは、
> 何故か「だから制裁はやめよう」という結論に持っていくところだと思います。
「制裁が効いていない」のなら、「抜け穴塞ぎに更に尽力する」のがあるべき姿で、「制裁を止める」というのは明らかに向きが逆。
そうですね。
制裁が効いてないならさらに制裁項目を増やすだけですね。
まずは今回の出稼ぎ労働者帰国の成果をじっくり見届けるだけです。
北朝鮮は完全統制経済だから普通の経済理論は成り立たないのでは。後は「経済制裁は効いていませんよ。」というプロパガンダかね。金正恩だけ生き残ればいい国だから経済制裁しても北朝鮮国民が困るだけで金正恩は全く困らないからね。ある意味、経済制裁は効いてないみたいだけど、最近の金正恩の映像を見ると余裕がなくなっている。下手すると政変があるかも。
北朝鮮国民は、支配層とそれ以外に区別され、それ以外の国民がどうなろうと、支配層は気にしないと思います。その為、経済制裁は、支配層が影響を受けるかどうかが、効果判定の基準になると思います。
北朝鮮国内の物価は、その他の国民には影響が有っても、支配層には影響が無く、またその他国民の生活は、既に支配しての影響を受け辛くなっているとも思えます。支配層とそのため国民が、乖離しているという事です。
北朝鮮制裁の最終的な目的は、朝鮮半島の完全なる非核化で、韓国や中露が言っているのは、制裁しても非核化が進展しないので、制裁を緩和した方が、非核化に繋がるという、論理だと思います。北朝鮮がアメリカとの対話の場に、出て来たのは、制裁の効果が有った為で、それは支配層が影響を受けるという事だと思います。
中露韓が、制裁緩和を言い出しているのは、国境を接している国々で、色々な思惑があるのでしょう。
制裁緩和の効果には根拠が無く、国連制裁経済に基づく制裁を徹底し、北朝鮮支配層を弱らせる事が重要です。
北朝鮮の反発が有れば、制裁強化、軍事行動とエスカレートする事でしょう。
瀬戸際外交をする国に、譲歩しても、得する事はありません。
前にも2度ほど述べましたが,「北朝鮮経済」を「政府や軍や金正恩氏が管理している正式な貿易にもとづく経済」(以下,国家経済と呼ぶ)と,「政府の許可なく民間で行われている貿易にもとづく経済」(民間経済)に分けて考えるべきだと思います。国家経済に対して経済制裁が効いているのは異論ありません。国家経済は公式には北朝鮮ウオンによって統制される経済です。他方,民間経済は人民元などの外貨を媒介としています。
密貿易が活発に行われていることを前提とすれば,その金額ベースでの貿易量を監視することはできませんので,北朝鮮が中国等に輸出できるものがどれくらいあるかを考察するべきかと思います。北朝鮮の工業製品で輸出できるものは多くないでしょう。兵器や核技術の輸出は厳しく監視されています。あとは,1次産品です。農林水産物以外に,麻薬,石炭や鉱物などがあると思います。小型ボートに積めるくらいだと量は知れているでしょうが,大勢がそういう密貿易に関わっていれば,ある程度の金額になると思います。また,麻薬なんか少量でも結構いいお金になります。国境を管理するはずの軍や警察自身も活発に密貿易に関わっているらしいですし。あと,ハッキングで稼いでいるお金もあるようですが,こっちは国家経済ですね。ニセ札はやめたのでしょうか(中国に怒られるので)。
物価の安定の原因として,市場に流通する人民元が減っていると分析する人もいますが,その人民元は中国に流出しているのではなく,来るべき有事にそなえて,国民がため込んでいて使わなくなったことを,流通量減少の主原因としてあげています。
昔,国境封鎖が強化されたとき,北朝鮮国内に贅沢食料が大量に出回ったことがあります。輸出できなくなったからです。でも,今はそれがない,ということは,輸出できているのでしょう。北朝鮮の工業については,経済制裁下でも伸びている,という報告があります。
飢えている人が多いのは事実でしょうが,お金は偏在する性質があるので,貧富の差はどこでも生まれます。アメリカでも貧乏人は多いですよね。統計データとして決してでてこないものを議論しないところが難しいですが,たまに写る平壌の姿を見る限り,国民経済が困窮しているようには見えません。国家経済は困窮して,金正恩氏があせっているのは間違いありませんが。
追伸ですが,「物価」の考察を書くのを忘れました。
まず,人民元や米トルと北朝鮮ウオン(KPW)の交換レートについて。これは,北朝鮮国民が持っている外貨を北朝鮮当局が召し上げる時の交換レートで,その逆はあり得ないので,意味のない数字です。旧ソ連時代のルーブルと米ドルの交換レートの議論と同じです。
北朝鮮米,トウモロコシのKPW建て価格。これも,農民から農産物を召し上げるときの価格と考えてほうがいいと思います。その価格で,国民がほしいだけ米やトウモロコシを買える,という意味ではないと思います。つまり,公定配給価格で,購入量に制限がついていて,購入可能量はかなり少ないと考えるべきかなと想像されます。足りない分は人民元等の外貨で,市場(いちば)などで買うしかないでしょう。
ガソリン,軽油については,そもそも一般国民は車やトラックを持っていないので,公定価格的なものと考えるべきだと思います。
KPWは昔の1/100デノミ以降信頼を失っていて,「配給券の一部」のような役割しか果たしていないと思います。配給券の一部というのは,それだけで商品は買えずに,それ以外の何か購入許可証のようなものがないとダメだという意味で。日本にも昔,米穀配給通帳というものがありましたね。
物価をKPWで計るか,人民元で計るかも本文に書かれていませんが,恐らく前者の意味かなと思います。前者は公定価格なので,資本主義国家におけるような物価の意味はないでしょう。その価格で買える量が制限されているのですから。後者は,中国の通貨なので,国境での物流がある程度あれば,中国国内での物価からそれほど離れないはずです。一応,社会主義国なので,社会主義国の視点で多少は考えるべきかなとも。
更新お疲れ様です。
統計データを用いての議論は、非常に興味深く知的好奇心を満たしてくれます。
「ぁ」様の出した結論はともかく、そういうデータを提示し反論し、さらにそこから
議論が深まったことを見て、素晴らしいと思いました。
巷ではロクにデータもなく憶測や印象のみでレッテル貼りコメントを繰り返す人が
多い昨今、こういうやり取りはとても有意義であるし、様々な思考の可能性を
読み手に与えてくれます。
今後も楽しみに拝読させていただきます。
北朝鮮の経済制裁の対象に観光は含まれてないようです。 年間20万人が訪れるそうで その多くは中国人らしい。
https://toyokeizai.net/articles/-/298967
2019.12.19の記事「訪日外国人、韓国人だけが激減も現状の影響は限定的」にあるように 中国人が日本国内と同等のお金を消費するとすれば年間400億円以上の外貨が入ってくる計算になります。
あと、「北朝鮮は食料支給を行なっておりその量が年々減っている」という記事を時々見ます。また、時々漏れ出てくる一般人(含下級軍人)の姿は貧しく余裕など見えません。
つまり国として生きていく必要最低限のお金が その他の国と比べ恐ろしく少ないのかもしれません。
その基礎の上に 愛読者様御指摘の人民元立て裏ビジネス。(金もそれなりに採取されています) それと 覚醒剤、日本海等での密漁、サイバー攻撃などの犯罪ビジネスがそれをカバーしている状況と思います。
今、北朝鮮があせっているのは 少し余裕のある支配層のお金が不足し始めているからではないでしょうか。衣食住の最低ラインが維持されているので物価が安定していていると考えられませんか?
今回も非常に考えさせられる論考で、面白かったです。
客観的に見て、北朝鮮の目指しているものは、他国に脅かされることなく無法を働きながら、一部の特権階級が十分に満足可能な支配体制を恒久化することですね。そのための手段が核とその具体的運用で、経済制裁はその野望を挫くためにやっているわけです。
中でも資金喰いなのは兵器開発だろうと思われ、北としてはその部分に十分な余力がなければ理想に向かって突き進めないわけです。とは言っても、その部分は停滞するだけで国が破綻するわけじゃないでしょう。
しかし、兵器は資金だけあっても物資が無ければ停滞し、特権階級への富の分配も生活必需品とは別種類のものでしょう。よって、経済制裁が効いてるかどうかを判断するのに、通常の物価で判断するのは間違ってます。
現在、中露が北の擁護に回ってるのは、米国とのパワーゲームで北が完全に沈黙してしまうと都合が悪いからという理由だけで、北が本当に危険な兵器を手にしようとしたら手のひら返しをして潰す判断をするでしょう。つまり、いくら北が頑張っても、先に進むほどハードルが上がっていくので、いつまでも理想にはたどり着けないと見ます。
北も南も無茶な理想を追いかけるところは似てますね。
キタの通貨政策なんてのは全く闇の中で、どんな意図でどういう風に行われて居るのかは推測するしかありませんが、対人民元レートの安定こそが眼目、死活的に重要ということかも知れませんね。中国の企業、商人がウォン決済を相手にしてくれなくなったら、それこそ国民が干上がってしまう。貴重な外貨は軍事最優先でしょうから。公認の(目こぼしされている)市場で売買される生活物資の相当部分は中国から入っているはずだが、その取引価格は巡回監視員が常にチェックしていてリアルタイムで当局に報告されているでしょう。余計に儲けてると見なせば、ショバ代だか、みかじめ料の名目で取り立てればいいんだから、お上の意に反した高い値段を付けることは実質的に出来ないという極めて単純な理屈で、そんなに高度な通貨管理のテクニックを労さずとも為替レートと物価の安定は図れるのかもしれません。少し前、市場の開放の行き過ぎで新たな富裕層が雨後の竹の子のように生まれてしまったときには、彼らがため込んだカネを巻き上げるために?たいした必要性もなさそうなデノミ(新札への切り替え)を実施するといった荒技まで繰り出した国ですからね。国民の機嫌を取るためのバラマキ政策でインフレを招くなんてことをする必要は全くない国。モノが欠乏したってお構いなし。生きていくために必要な物資はそれぞれの才覚で市場で調達しろと言いながら、その実は統制耐乏経済を貫徹している、それがキタの経済の実情じゃないでしょうか。
北朝鮮は国連制裁の監視をかいくぐって、中東、アフリカ諸国に通常兵器を輸出していますよね。旧型兵器でも、どこの国の製品かわかりにくいので需要があるそうです。また、兵器についてのメンテナンスで技術者も輸出しているようです。
貴重な外貨収入になっているようです。
>「北朝鮮は経済制裁にまったく困っていない」
>「経済制裁をやっても意味がないから、緩和して違うアプローチを探るべきだ」
>というプロパガンダを植え付けることで、経済制裁の緩和をせしめれば、こっちのものです。
デジャブでしょうか。どこかで見たことがあります。
「日本の貿易規制にはまったく困っていない」「貿易規制をやっても意味がないから、ホワイト国に戻すニダ」
経済制裁、貿易管理ともに、北と南に効いているようです。
>数量の方を見ずに物価だけを見て、「結論から言うと、北朝鮮には制裁は効いていません。」と決めつける態度は、論理的思考が欠如しており、極めて短絡的な結論だと言わざるを得ません。
はっきり言いますね(笑)
でも、私も新宿会計士様の意見の方が説得力があります。
ぁ様はおそらく湾岸戦争後のイラク・ディナール、ムガベ政権下のジンバブエ・ドルが「経済制裁→禁輸で全体的なモノ不足→紙幣増発→ハイパーインフレ」となったのを、最初と最後だけ見て「経済制裁が効いてるなら必ずハイパーインフレになる。インフレになってないなら経済制裁は効いてない」と考えたのでしょう。実際のところ、禁輸対象から外れているモノが滞りなく市場に供給されていればその物価は上昇しませんし、当局が紙幣を増発しなければハイパーインフレも起きないわけです。
アジアプレスの石丸氏や北朝鮮人ジャーナリストの活動には確かに頭が下がりますし、現地で見た者でなければわからない情報も新鮮です。かと言ってその記事を100%信頼できるかはまた別の問題ですし、咸鏡北道や両江道のような辺境の地の闇市の物品価格4つと闇為替レートだけを見たところで北朝鮮経済の全容、そして核とミサイル開発に関係する特権階級の資金繰り事情はちっとも見えてきません。経済制裁の影響を調査するにはもっと資料を集めなければなりませんが、それよりは北朝鮮政府の態度を観察していた方が案外当たらずとも遠からずの結論が出せる気がします。
とはいえ、北朝鮮ウォンが1ドル=8000ウォン前後で安定傾向なのも無視はできませんね。安定といっても、かつても1ドル=2.16ウォンから比べると十分にハイパーインフレですが。
経済制裁下の北朝鮮ウォンと昨日書いたソマリア・シリングの安定は将来の経済学研究のテーマになり得るでしょうね。
ところでなぜ安定してるのでしょうね?そしてなぜカネ不足なのでしょうか?
「北朝鮮ウォンのマネーサプライが不十分なのを当局が理解してない」
「最高発行額が5000ウォン(=約70円)なので印刷が間に合わず、市場に必要な供給が追いついてない」
「2010年のデノミ&財産没収政策のせいで北朝鮮ウォンが信用されなくなり、人民元やUSドルの需要が高まったのであまり発行されてない」(←これだとハイパーインフレが進行してもおかしくないので微妙です)
「高額決済や手形決済は人民元かUSドル建てが主なので北朝鮮ウォンのマネーサプライを増大させる必要がない」
「タバコ、チョコパイ等、北朝鮮ウォンに代わる交換手段が使われている」(←タバコはソ連崩壊直後のロシア、チョコパイは10年前の北朝鮮で通貨代わりに使われた事があります)
「ハイパーインフレが続くと売買に支障をきたすので、北朝鮮ウォンの信用度と市場での潤滑な取引ができる均衡点が現在の状態である」
「実はデフレ不況である」
ここまで考えてみたのですがいかがでしょうか?
愛読者様の「人民元は中国に流出しているのではなく,来るべき有事にそなえて,国民がため込んでいて使わなくなった」というのも私はあり得ると思いますし、それだと今は蓄財が招いたカネ不足によるデフレなのかもしれませんね。
私の書き込みを読んでいただいてありがとうございます。
北朝鮮ウオンのハイパーインフレが起きないのは,為替レートが公定レートで実施的な意味がなく,ウオンも通貨としての機能がなくなっているからだと思います。民間市場では人民元などの外貨だけが通貨の役割を果たしていて,ウオンは配給品をもらうときしか使わないと思います。配給は無料でもらえるのはなく,ウオンの公定価格で決められた量の範囲内で買うものですから。たぶん,制限量いっぱいまで購入して,余ったら市場で売って外貨に替えるのだと思いますけど。
愛読者様
>為替レートが公定レートで実施的な意味がなく
アジアプレスの2015年6月8日、11日付の記事「<北朝鮮>外国人の両替レートは実勢の80倍 入手「明細書」でからくり明らかに(上)(下)」では国定為替レートが1ドル=107.620ウォン、闇市や両替商との取引で使われる実勢為替レートは8200〜9000ウォンと書かれてます。アジアプレスの北朝鮮市場最新物価情報はドルとのレートが2018年9月14日しかさかのぼれませんが、1ドル=8466ウォンとなってます。現在の国定為替レートはわかりませんが、3年間で1/80に下げるとは考えにくいので、おそらくアジアプレスの北朝鮮市場最新物価情報の価格は当局が農民から召し上げる価格ではなく、闇市で人民が買える、または交換できるものの値段ではないかと考えます。米1kg70円は安過ぎるような気もしますが、もしこれを召し上げ価格または配給価格とすると闇市での値段が1kg5600円という日本でもあり得ない高さになりますので。
それ以外の意見には概ね同意します。闇市を始め日常の決済が人民元で行われていてウォンが無視されているなら、経済制裁による中国との取引減少や人民が人民元紙幣を貯めこんだりする事でカネ不足によるデフレ圧力がかかり、モノ不足によるインフレ圧力を打ち消して一見物価が安定しているように見える、という事があり得ます。
ただ、実際の闇市ではウォンでの買物もできるようでして、まるっきり無視されているわけでもなさそうです。ウォンの価値はかつての固定相場ではなく、為替市場の変動相場ですから。それでいてウォンが安定傾向にあるのはなぜだろうか、と考えました。
とある福岡市民様
お話の内容からすると,北朝鮮ウオンで,配給の厳しい数量制限にかからない商品がいくつかはあって,それでウオンの貨幣価値がある程度保たれている,ということでしょうか。あるいは,1ドルを108ウオンで入手できる特権階級が存在するのかもしれません。社会主義の計画経済・統制経済と自由資本主義経済が混在しているために,資本主義の経済学では理解しにくいことも起きるのでしょう。中国人商人が北朝鮮で,どのようにして商品(物資)を買い付けているか,そのあたりの事情がわかると,もう少し確かなことが言えるかもしれません。
ソ連崩壊直前のソ連でのルーブルと,崩壊後のハイパーインフレ時のルーブルを思い出しました。崩壊直前は,一般の商店で外国人がルーブルで商品を購入することはできない,とか,ハイパーインフレ時は,ルーブルじゃなくて1ドル札で払えとうるさかった,とか,通貨として十分に機能しないルーブルを体験しました。あと,公定価格と市場価格のギャップが激しいために,奇妙なことが起きるんですね。
どうして,ウオンが貨幣価値を維持しているのかの考察をやりなおしてみました。
まず,北朝鮮の社会主義的な意味での正規の労働者の賃金はウオンで払われていて,同時に,配給量が職場等を通して割り当てられるようです。大半の労働者はその配給だけでは生活できない,と言われています。他方,外貨収入しかない不正規労働の商人がいます。でも,商人達にもある程度の配給があったり,国にウオンで税金のようなものを払う必要があって,ウオンも必要としているのでしょう。一般労働者の給与が国定で得られるウオンは上限があることと,市場では外貨が主要通貨であるため,流通しているウオンの量はほぼ一定なのでしょう。また,ウオンを沢山持っていても使う場面が限られるので,人民元を沢山得ても意味がないので,実勢為替レートが安定している,と考えられます。
公定レートは1ウオン=1円くらい,実勢レートは1ウオン=80円だとして,公定価格で米1kg=70円という相場は,昔の途上国なら妥当な線でしょう。ただし,北朝鮮のように2重価格だと,ヤミ市場のほうに米が流れて,配給米を確保するのは苦労するでしょう。特に,共同農場から家族単位の責任生産性に変わって,生産量は増えても,ヤミ米に流れる割合も増えて,配給用の米の徴収逃れが増えていると思われ,食料不足というのも割り引いて考える必要があると思います。いずれにせよ,北朝鮮の市民経済は,政府がコントロールできない人民元などの外貨に依存しているわけで,ウオンは主役ではないでしょう。
関係ないですが,日本の戦後の予算封鎖のとき,物資不足が戦争中より激しくなりましたが,国内に本当に物資がなくなったのではなくて,円が一時的に通貨として機能しなくなったので,商品に価格がなくなり,物流が止まったからだ,と言われています。
愛読者様
わかりやすい考察をありがとうございます。
おっしゃる通り、マクロ的にはウォンの供給が給与支払い等に限られれば流通量がほぼ一定であれば確かに対ドル、対人民元相場も安定しますね。カネ不足に陥っているのは、社会主義国を掲げる当局がマネーサプライを増やす必要性を理解してないのでしょう。まあ、闇市から自然発生した経済なので放置してるだけかもしれませんけど。
個人レベルでも配給や税金にはウォン、闇市での売買は人民元、と両方が必要となると、為替リスクを考慮してバランス良く保有するでしょう。ちょうどいい比率も経験則でわかると思いますので、それが一般化すれば相場は自然と安定しますね。
配給品と闇市の価格差、北朝鮮ウォンと人民元の為替レートと考えなければならないパラメーターが多くて混乱しそうですが、北朝鮮ではそれが日常なのでしょうね。
すみません。また消し忘れてました。
誤「マクロ的にはウォンの供給が給与支払い等に限られれば流通量がほぼ一定であれば確かに対ドル、対人民元相場も安定しますね。」
正「マクロ的にはウォンの供給が給与支払い等に限られれば流通量がほぼ一定となり、対ドル、対人民元相場も安定しますね。」
北朝鮮には行ったことがないのでよく分からないのですが,旧ソ連時代のソ連の商店というのは「日本や欧米の商店」のイメージとはかけ離れた事務所のようなところで「配給所」と呼ぶほうがぴったりしていました。看板もショーウインドーもなく,窓やドアの隙間から中を覗くと,奥のほうに商品が積み上げてあって,お客さんは直接商品に手を触れることができず,店員さんに頼んで(お金と配給券を見せて?)商品を取ってもらう。そもそも,現地ガイドさんに教えてもらわないと,それが商店であるとは分からない。北朝鮮の「商店」もそんな感じかなと想像しています。
外国人は「ベリョースカ」という外貨ショップでのみ買い物ができ,こっちは欧米の商店に近い。美術館や地下鉄はルーブル払いで,その中のショップもルーブルで買えました。あと,外国人を見つけると,ヤミ商人が「テンダラー」とか言って商品を見せて声をかけてきた。出国時もルーブルを外貨に戻してくれなくて,ベリョースカの店員が商品を持ってきて,無理矢理買わされた。でも。決して貧しい国には見えませんでした。
北朝鮮の市場は,たぶん,貧相なフリーマーケットのようなものかな,と想像しています。
昔は通貨が弱い国に旅行するときは,1~10ドル札を大量に持っていきましたが,最近はカードが普及してきて,そういう地域も少なくなったように感じます。中国は行く毎に大変化していて驚かされましたし。簡単には崩壊しないでしょう。
>ちなみに、独裁者らが一番嫌うのは、「議論」です。
ついでに自称元日本軍慰安婦や自称元徴用工なんかもですね(*・ω・)ノ
「被害者を疑うのか、このヒトデナシめ!良心が痛まないのか!」とかが決め台詞(-_-;)
北朝鮮産米とトウモロコシ。物価は安定している。制裁は効いてない。
X制裁は効いてない。
○制裁していない。むしろ援助している。
北朝鮮、農業生産が過去10年間で最低に。1000万人以上が食料不足 | World Food Programme(2019年5月3日)
https://ja.wfp.org/news/after-worst-harvest-ten-years-10-million-people-dprk-face-imminent-food-shortages
北朝鮮、支援要員の削減を国連に要求 「敵対勢力が政治問題化」 – ロイター(2019年9月5日)
https://jp.reuters.com/article/northkorea-aid-un-idJPKCN1VQ0HL
(コメ主注:国連は透明性確保のため査察している。ただし7日前に事前通知)
国際機関の北朝鮮支援事業 今年拠出金は韓国が最大 | 聯合ニュース(2019.10.22)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191022001700882
北朝鮮人道支援の手続き迅速化 承認「10日以内」に―国連安保理:時事ドットコム(2019年12月03日)
ttps://www.jiji.com/jc/article?k=2019120300161&g=int
「北朝鮮への人道支援をめぐり、安保理決議の制裁対象から除外する手続きが『大幅に改善された』…審査が迅速化し、申請の大多数は5~10営業日以内に承認されている」
年初は1千万人以上が食料不足なのになんで食糧価格は「安定」しているの?
北朝鮮食糧支援は急拡大しているのになんで食糧価格は「安定」しているの?
とりあえず制裁効いてない派は食料支援派とディベートしてほしいw
また燃料価格が乱高下後安定ということは「リテール市場」が小さいことと、むしろ介入の疑いがあると見るべきだろう。
介入余力が「あるかどうか」わかるだけで「どれくらい」残っているかは市場からは分からない。
独裁政権なら物価は統制できそうだからいくらでも誤魔化せそうだからね。
輸出入の量が調べられれば一番説得力ありそう。
まあ、経済制裁は来年から本格化するしそれで1年くらい様子を見る必要はある。
「制裁は効果がないからすべきではない」というのは間違いなく北朝鮮側の人。じゃあどんな制裁ならいいの?と言えば 「話し合いで解決すべきだ」という決まり文句。
アジアエクスプレスの記事です。
<北朝鮮内部>また大停電 北部では「電気ゼロ」地域も 金正恩氏も「国の電力網破綻する」と不法使用統制と節電指示
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191229-00010000-asiap-kr
その他の国民に、電気の供給が滞っているのは、制裁の効果かと思います。平壌は、どうなのかは、分かりません。
北朝鮮の場合、いくら平民が塗炭の苦しみを被ろうが、ピクリとも動きません。
問題は、ノーメンクラツーラの生活水準であり、国連の経済制裁リストに贅沢品がずらずら載りまくりなのはそれを米国がよくわかっているからです。
そういえば、弾道ミサイル開発に成功した技術者に外国製の高級腕時計を配布するプロパガンダ動画が公開されていましたが、いまだに高級腕時計のストックがあったのかと驚きましたw
ぁ です。
「制裁が、すくなくとも北朝鮮国民レベルでは、実感される状況ではないこと」については、おおむね共通認識としていただけたと思います。
過去1年で、北朝鮮の輸入はほとんど減っていないが、輸出は半減した、みたいな記事を見たことがありました(ソース名失念)。
だとするならば、ああ見えて金正恩は国民思いで、必死に外貨準備を切り崩しながら国民の需要に応え続けていて、その結果が物価の安定にもつながっているのかな、というのが一つの仮説でしょう。
でも、このようなやり方では、早晩、外貨準備が底を突くでしょうし、そのことはなによりも先にドルや中国元の市場価格が敏感に察知するはずです。(私はマーケットメカニズムを信頼しています)
しかし現実には、その兆候が何一つ現れていないのです。
ですから、金正恩が国民思いで外貨準備をすり減らしながら生活必需品の輸入を維持しつづけているという仮説は却下されます。
そうすると、考えられることは一つです。
輸出減による外貨の目減りを上まわる「非合法手段による外貨獲得」がなされているということです。
「制裁が効いていない」のですから、金正恩が悲鳴を上げるまで、もっと強力に制裁すべきだと思いますし、麻薬やIT犯罪や偽札などの、金正恩の本丸にこそ直接ダメージを与えられるような、有効な攻撃手段を講ずる必要があると思います。
あるいは南朝鮮からの「ミカン箱に入った贈り物」なんかも、阻止すべきものだと思います。