朝日新聞社、単体の中間決算は営業赤字に転落
朝日新聞社の2020年3月期・中間決算が、単体ベースで営業赤字に転落したようです。ただ、これについて決算ハイライトを見ていると、単体売上高が増加(=増収)の一方で、営業利益がマイナス(つまり営業損失)に転落していることが確認できます(=減益)。この単体決算における「増収減益」の正体は定かではありませんが、いずれにせよ、「本業」(?)である新聞発行事業が苦境に陥っている可能性は濃厚といえるでしょう(もっとも、同社はすでに不動産が「本業」のようになりつつあるようですが…)。
朝日新聞社、新聞事業で16億円の費用増?
本日の「小ネタ」です。
大阪の朝日放送グループホールディングス株式会社が11月25日付で発表した『親会社等の決算に関するお知らせ』によれば、株式会社朝日新聞社の2020年3月期・中間決算(未監査ベース)が営業赤字に転落したようです(図表1)。
図表1 朝日新聞社の単体決算ハイライト(金額単位:百万円)
項目 | 2019年9月期 | 2018年9月期 | 増減 |
---|---|---|---|
売上高 | 120,828 | 120,555 | 273 |
営業利益 | ▲339 | 962 | ▲1,301 |
経常利益 | 1,933 | 3,305 | ▲1,372 |
中間純利益 | 12,801 | 2,621 | 10,180 |
総資産 | 432,908 | 420,273 | 12,635 |
純資産 | 225,553 | 214,181 | 11,372 |
(【出所】朝日新聞社決算短信)
営業利益が約13億円、経常利益が約14億円減少する一方、売上高についてはプラス2.7億円とごくわずかながら増加しているため、損益計算書の構造上、売上原価か販管費のいずれかが約16億円増えたという計算です。
といっても、従業員のリストラに伴う退職金の積み増しなどは、一般に営業外費用や特別損失に計上されるため、この16億円という金額が何を意味するのかについては、この開示資料だけだと明らかではありません。
さらに、不思議なことに中間純利益は前期比で100億円以上の大幅なプラスとなっており、何らかの資産売却などによる「益出し」オペレーションが行われた可能性が濃厚です(後述するとおり、その正体は、おそらく子会社に対する資産の売却でしょう)。
朝日新聞社が半期報告書を公表するのは2019年12月11日を予定しているのだそうですので、これについて詳しく知りたければ12月11日以降、同社の半報で確認する必要がありそうです。
連結決算については売上高が43億円の減少
その一方で、連結決算については、営業利益、経常利益、中間純利益(正確には「親会社株主に帰属する中間純利益」)の各段階利益はいずれも黒字を維持していますが、それでも各段階での減少が続いています(図表2)。
図表2 朝日新聞社の連結決算ハイライト(金額単位:百万円)
項目 | 2019年9月期 | 2018年9月期 | 増減 |
---|---|---|---|
売上高 | 179,411 | 183,741 | ▲4,330 |
営業利益 | 653 | 3,002 | ▲2,349 |
経常利益 | 2,969 | 5,854 | ▲2,885 |
中間純利益 | 1,428 | 4,514 | ▲3,086 |
総資産 | 609,731 | 614,114 | ▲4,383 |
純資産 | 382,943 | 382,368 | 575 |
(【出所】朝日新聞社決算短信)
連結ベースでみれば、売上高は43億円減少する一方、営業利益、経常利益はそれぞれ23億円、29億円の減少に留まっているため、売上原価または販管費において20億円程度、経費の圧縮が行われている計算です。
ただし、先ほどみた単体決算では、売上原価または販管費において経費が16億円程度増えているため、連結相殺等を無視すれば、ざっくり親会社以外(つまり「朝日新聞」の発行事業以外の事業セグメント)で36億円程度の経費削減が行われた、ということだと考えて良いでしょう。
また、単体決算で中間純利益が大きなプラスになっていましたが、連結ベースだとこれが消えています。ということは、先ほど確認した「100億円を超える増益」は、連結集団内の資産の売買(つまり朝日新聞社から子会社等に対する資産譲渡)によって発生したものである、と結論付けて良いでしょう。
財務は安定的
もっとも、この単体決算の赤字転落をもって、ただちに「朝日新聞社が経営危機に陥った」と考えるのは性急です。というのも、以前も『「朝日新聞不動産」(?)の財務諸表分析』でも報告したとおり、朝日新聞社の財務状態はきわめて健全であり、倒産とは無縁に近い状態にあるからです。
「朝日新聞不動産」(?)の財務諸表分析(2019/07/17 12:00付 当ウェブサイトより)
これを家計に例えてみれば、次のような状況だといえるでしょう。
- 昔は年間5000万円という、非常に高い給料をもらっていたAさんという人がいた。
- このAさんは高給をもらっていたため、贅沢ぐせが身に着いてしまい、年間の生活費は3~4000万円に達している。
- 最近、Aさんの給料は3000万円台にまで下がったのに、年間の生活費の水準は相変わらず3~4000万円台であるため、貯金もできなくなり、給料だけだと赤字になる年もある。
- ただし、このAさんは昔の高い給料のおかげで、たくさんの賃貸不動産物件を保有していて、毎年100万円の賃料収入が入ってくる。
2019年3月期に関しては、「本業」(?)であるメディア事業のセグメント売上高はで年間3343億円でしたが、経費(売上原価+販管費)が3324億円と非常に高く、セグメント営業利益は19億円(つまりセグメント売上高の0.6%)に過ぎません。
しかし、同じく2019年3月期においては、不動産部門ではセグメント売上高が371億円、セグメント営業利益が68億円であるため、いわば、新聞事業が赤字に転落しそうになっても、不動産事業がしっかり下支えしてくれているのです。
これに加えて、いざとなれば朝日新聞社が保有しているさまざまな資産を切り売りし、新聞事業を身の丈にあわせてうまく縮小し、人材のリストラを敢行していけば、朝日新聞社は何とか生きながらえていくことはできるはずです。
(※もっとも、一般にマスコミ業界の記者は、頭は悪いくせにプライドだけは高いというケースも多いため、新聞社が記者らの賃下げやリストラを敢行していくことができるのかどうかはよくわかりませんが…。)
安定的な基盤がない新聞社はどうするのか?
ただし、ここでふとした疑問が出て来ます。
朝日新聞社のように過去の栄光で巨額の優良資産を築き上げている会社や、NHKのように法律の規定でどんなに粗悪な番組を作っていても必ず年間7000億円前後の売上が入ってくる会社ならともかく、経営に余裕がない某社、あるいは地方紙などは、これからいったいどうするつもりなのでしょうか。
(※余談ですが、NHKの財務分析については下記記事もご参照ください。)
NHKこそ「みなさまの敵」 財務的には超優良企業(2019/06/27 05:00付 当ウェブサイトより)
おそらく、新聞業界は再販価格制度や宅配制度、軽減税率制度や記者クラブ制度などの既得権にまみれているためか、滅多なことでは倒産しないと思うのですが、それでも昨今のネット社会化の進展にともない、新聞経営はこれから苦境に陥ることはあっても、楽になることはないと思います。
ちなみに、今年の8月には、広告業大手の株式会社電通が2019年上半期において、12億円の中間純損失を計上しているようです(※IFRSベース)。
電通の19年1~6月期、最終損益88.6%減12億円の赤字(2019/8/7 15:32付 日本経済新聞電子版より)
なお、余談ですが、このリンク先の日経電子版記事は、企業が公表した決算発表資料からAIが自動作成したそうです。正直、新聞記事など警察発表や官公庁発表などをベースに、AIで自動作成できる時代がやってきた、ということですね。
もっとも、この記事には
「最終損益が前年同期比88.6%減の12億円の赤字(前年同期は107億円の黒字)となった。」
という意味不明な文章も含まれているため、「AIもまだまだだな」、と思ってしまいます(※いや、新聞記事には人間の記者が執筆した文章にも意味不明なくだりが多々含まれているため、レベル的には大差ないというべきでしょうか…)。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
まだまだ、潰れるには程遠い赤字ですよね。
報道記事機械生成プログラムはまだまだ性能改善途上ですが、「まるで本職が執筆したかのようなもっともらしさ」を編み出したことが以前ニュース記事になっていました。自分は英文海外報道で目にしています。事実をひとつだけ平易な文章にして入力すると、過去記事データベースを類語検索および類推演繹の糧としながら、報道機関特有の言い回し規則をもってして作文するというものです。出力として得られる報道記事もどきはまるででたらめで脈絡がなく論旨もありませんからお笑いネタとして楽しむ範囲においては無害ですが、息をのむような突飛かつリアリティあるフェイクを作り出すこともあると本職記者が注目行へ具体的なコメントしていました。天声人語風メーカー? 記者一人分の人件費節約くらいの性能は達成できているのではないしょうか。
個人的には朝日新聞は今は亡きプラウダと同水準ほどに信憑性のおけるある種のクオリティペーパーと見ています。
私としてはこの素晴らしい新聞社が誤報や虚報、捏造からこじつけにでっちあげまで好き放題に報道できることこそが不愉快ながらも善悪はさて置いて日本社会の自由度を示すバロメーターと考えています。
つまり彼らの言う「日本の右傾化」は、彼らが自由に報道できなくなれば危機感を抱かざるを得ません。しかし、現時点では実に楽し気且つ自信に溢れて社会の木鐸を自認している彼らを見るにつけ彼らの跳梁跋扈を許すほど自由に溢るる日本社会の健全性を見出す他ありません。
かつて報道機関が権力に屈し戦時政権を支持せざるを得なかった歴史を見れば、自由な報道の重要性は言うまでもありませんが、それにしても昨今の左翼的傾向のある新聞等の軟弱化や日和見等の怯懦な傾向を見るにつけプラウダならプラウダとして機関紙らしく今少し気概をもって虚報に勤しんでほしいと思わざるを得ません。
権力に勇ましく対抗して廃刊となるならいざしらず、誰からも見向きもされず滅ぶなどと情けない末期を迎えては自称または半島から名指しで進歩的とされる新聞の名折れでしょう。
最近、朝日新聞の販売店は、昼と夜は出前館のデリバリーをしているそうなので、そのうち運送業(ただしラストワンマイル限定?)になるんじゃないの?
更新ありがとうございます。
万歳!やっと追い詰めましたね(笑)。
営業利益で単年度3億3,900万円の赤字、昨年度比では13億円のマイナス!目に見えて減ってます。新聞事業が足を引っ張るとは、最高の展開ですね。
私が週1で利用の地下鉄コンビニで驚いた事。新聞は何部も渦巻きにして、コンビニの入り口前のスタンド売りが普通でしたが、部数減で4つ折りで畳んで販売しています。つまり題字下トップの1面が見れます。
それとフェイシング。以前は朝日、地元紙がダントツ多かったのに、なんと今は産経、地元紙、読売がほぼ横一線。ややその順か。毎日は1列だけ(笑)。駅売りだからか?家庭ではまだ地元紙、朝日、読売の順かもしれません。
とにかく朝日の凋落は嬉しいですし、影響力が下がり、嘘書いても相手にしない日が来て欲しいですね。
不動産収入も詐欺的な築地の国有地取得のおかげです。
産廃だらけの森友の土地と違って、こちら銀座に隣接する超一等地を遺跡がああって開発できないある意味森友以上のクソ土地と交換取得です。
朝日新聞の詐欺的国有地取得
http://www.bestbookweb.com/verdad/article.php?id=20170503
慰安婦捏造報道で日本国の名誉と国民多大な損害を与えたので、築地の土地は召し上げて欲しい。
「まだだ、まだ終わらんよ」ですね。実にしぶとい。体力の無い産経新聞や毎日新聞は潰れても、朝日は生き残りそうです。もしかしたら日本に残る最後の新聞社になるかもしれません。そうなったら本当に活字を詠む人はいなくなって、新聞紙とチラシが必要だとか言う人のためのセルロース繊維配達業になるかもしれません。
ところで、「洋服の青山」でおなじみの青山商事がアメリカン・イーグルの全店閉鎖を発表しています。理由は売上げ不振だそうで。日本政府によるクールビズの推進などでスーツが売れなくなっている中、経営の多角化を図ってカジュアル部門を強化したのが裏目に出た恰好です。
アパレル業界は慢性的に不況ですが、その中でも米国系のSPAは日本市場が苦手ですね。GAPも赤字続きですからいつ撤退しても不思議ではありません。彼らに共通しているのは、日本市場に向き合った製品を作らないこと、価格対品質のバランスが悪いこと、しょっちゅうセールをやるので正価を信用できないこと、などです。特に日本人の体型を全く考慮しないのは、自動車産業と同じ傲慢さと怠慢さを感じる所です。欧州のZARAやH&Mが健闘しているのも自動車業界に似ています。
とにかく、市場で淘汰が起こるのは健全なことです。マスコミ業界にも淘汰が起こるような仕組み作りが必要です。
言葉足らずだったかもしれません。青山商事は米国アメリカンイーグル アウトフィッターズの日本におけるフランチャイズを展開していました。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
朝日新聞社員のアイデンティティは、「朝日新聞は日本のオピニオンリ
ーダーで、日本社会から尊敬されるべき存在であり、場合によっては総理
大臣に辞任させることもできる」というものでは、ないでしょうか。しか
し、そのアイデンティティが怪しくなってきています。そのため、埋め合
わせとして、赤字でも給与を上げていく可能性もあると、思います。(そ
のために、新聞代を値上げする可能性すらあります)
だから、「モリカケ問題」で総理辞任を言い渡したのに、辞任しなかっ
た安倍総理を目の敵にしているのでは、ないでしょうか。
蛇足ですが、韓国のアイデンティティは「道徳的に下の日本を、いずれ
従わせること」で、日本の憲法9条信者のアイデンティティは「憲法9条が
あるから、日本は平和なので、憲法9条を守っている限り、戦争は起こら
ない」と、いうものではないでしょうか。そのため、韓国にしても、朝日
新聞人にしても、憲法9条信者にしても、自身のアイデンティティを揺るが
せかねない、安倍総理を嫌っているのでは、ないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
「最終損益が前年同期比88.6%減の12億円の赤字(前年同期は107億円の黒字)となった。」
推測ですが、{1-(|-12億|÷|107億|)}×100 (%)では無からうかと思ひます。
縦棒は絶對値です。小數點以下が合ひませんが、億以下が丸められてゐる所爲でせう。
赤字轉落した時には0(ゼロ)で-100%と見れぱ-111.4%とした方が良い樣にも思へますが赤字轉落の前年比をどう表記するのが正しいのかは知りません。
いづれにせよAIの中に前述の式が這入つてゐるのでは無いかとと思はれます。
彼ら、いつまで今のような姿勢を続けますかね?
潰れる直前になっても。いや、潰れても、自分達に非があるとは考えないのかも?
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
URC様へ
>いや、潰れても、自分達に非があるとは考えないのかも?
根拠なきプライドだけは高いので、自分だけは、寸前に別のところから
スカウトされる、と思い込んでいるのかも。
駄文にて失礼しました。
なんとなくですが、売上高の微増は販売店へのゴリ押し〔卸値改定〕によるもの。16億円のコストアップは物流経費〔運送契約料〕改定によるものではないのでしょうか?
17年10月のヤマト便料金改定を機に、どこもかしこも値上げしてしまいましたからね。
私んちの店にも小さな雑誌コーナーがあるのですが、年度替りから運送料の値上がりを理由に仕入れ値〔仕切率〕がアップしてしまいました。
ですので、新聞業界でも物流コストのアップを価格転嫁しきれない実状が存在するのではないかと思ってます。
紙媒体である以上、配送業者の選別はできるにしても配送自体を無くすことはできないのですから・・。
****
正解は、
=〔−12−107〕÷107×100でしょうか?
AIの計算は、変ですよね。
>16億円のコストアップは物流経費〔運送契約料〕改定によるものではないのでしょうか?
物流経費は最低運賃を守らなければいけないからアップ
その経費増に対して販売報奨金的な要素で値引き対応するから収入も増えるという寸法ですね
とはいえ今時不動産業で高給の記者を抱え続けるのは難しいのでジリ貧でしょうね。
記者のリストラもあるでしょうし、報道ヘリをやめたりって影響はありそうな予感です。
まあ、自業自得ですね。
なるべくしてなった結果かと。
別に新聞社が倒産したところで日本経済はビクとも揺らがないし。
このまま衰退してもらって欲しい所です。
電通の強みはテレビのプライムタイム枠を押さえているところです。今はプライムタイムにスポンサーがつきません。
新聞も同じこと。
広告費の美味しいところをガッツリおさえて儲けていたのが今やお荷物になってきました。
ついに。という感じです。
インターネット広告は後発で海外に進出してきたのですがこれまたうまくいっていません。