X

NHKの肥大化を巡る東洋経済の特集記事に対する雑感

本稿は「NHK問題」を巡るちょっとした小ネタです。

NHKは国民の敵

当ウェブサイトでは以前から『NHKこそ「みなさまの敵」 財務的には超優良企業』などで、NHKという組織そのものの問題点を指摘して来ました。

簡単にいえば、国民からなかば強引に徴収した受信料を溜め込み、それにより職員に対して破格の人件費を支払うなど、乱脈な経営をしており、しかもこれに対して私たち有権者による監視の目が行き届かない、という問題点です。

NHKの『平成30年度連結財務諸表』などの開示資料によれば、NHKは企業集団内に、およそ1.1兆円の金融資産を溜め込んでいます(図表)

図表 連結決算上の金融資産等(2019年3月末基準)
勘定科目 金額(百万円) 記載箇所
①現金及び預金 129,631 連結B/S・流動資産
②有価証券 303,901 連結B/S・流動資産
③長期保有有価証券 129,871 連結B/S・固定資産
④建設積立資産 170,729 連結B/S・特定資産
⑤年金資産 408,493 退職給付関連注記
合計 1,142,625

(【出所】NHKの『平成30年度連結財務諸表』より著者作成)

もちろん、これらの金融資産は、NHK職員等の退職給付に充てられるための4000億円という非常識に高額な年金資産なども含めた金額ですが、少なくとも国民から高額な受信料を事実上、半ば強制的に集金しておきながら、これほどまでに巨額の資産を溜め込んでいることは事実なのです。

また、NHKが所有している資産は、金融資産だけではないはずであり、なかでもとくに評価額が大きいと考えられるのは不動産です。

NHKは物件明細を開示していないため、NHKが保有する不動産の時価の実態はよくわかりませんが、少なくとも渋谷の一等地にある放送センターの敷地は82,645平米です(※2016年8月30日付NHK『放送センター建替基本計画の概要』参照)。

国税庁が公表する路線価(平成30年基準)によれば、NHKの土地の路線価はざっくり平米あたり180万円だそうですが、これに82,645平米を掛けると1484億円(!)です(ちなみにNHKの単体財務諸表上、土地の帳簿価額は486億円に過ぎません)。

NHKは全国各地の一等地に土地や建物などの優良不動産を大量保有していると想定されますが、彼らが保有するこれらの不動産を時価に引き直せば、やはり兆円単位の資産を保有しているのではないかと疑われます。

そして、それらのなかには放送事業に使用するものだけでなく、当然、NHK職員様たちのための超豪奢な社宅、レクリエーション施設、宿泊施設などが含まれているのではないかと疑うのが当然でしょう(※NHKがそれらに関する情報を開示していない以上、私たち庶民の側にもそれを疑う権利はあります)。

東洋経済オンラインが「NHKの問題点」

『東洋経済オンライン』に本日、こんな記事を発見しました。

NHK「受信料7000億円」肥大化に募る厳しい視線/受信料徴収に巨額経費が使われる深刻な矛盾(2019/11/18 5:00付 東洋経済オンラインより)

当ウェブサイトの文責で記事の内容を要約し、箇条書きにすると、次のとおりです。

  • 11月8日、総務省はNHKに対し、インターネット同時配信事業の実施基準案の再検討を要請するとともに、高市早苗総務相は並行して受信料収入の適正な水準など3つの分野について改革を進める方針を明らかにした
  • NHKが受信料徴収を積極的に進めていることに加え、放送法の規定を合憲とする2017年12月の判決などによる受信料支払い率の上昇を背景に、NHKの受信料は5年連続で過去最高を更新し、2018年には7000億円を超えた
  • しかし「NHKから国民を守る党(N国党)」の躍進に見られるように、NHKの振る舞いに対する不満は大きい

…。

大手メディアで堂々とNHK問題について議論される日が来るとは、正直、なかなか新鮮な気持ちがしますね。

もちろん、リンク先の記事ではNHKの財務面の問題点(1兆円を超える金融資産を溜め込んでいる問題、人件費が高過ぎる問題など)については触れられておらず、また、NHKがしばしば発生させる職員によるさまざまな不祥事、NHKの報道する内容の偏向ぶりといった問題点もスルーされています。

その意味では、しょせんは既存メディアとしての限界点かと思いますが、それでも堂々とこの問題が『週刊東洋経済』という経済誌に掲載されたこと自体は評価して良いと思います。

本質は解体かスクランブル化

もっとも、東洋経済で触れられている内容は、NHK改革としては極めて不十分です。

その一例は、元総務相政務官でもある自民党の小林史明・衆議院議員が東洋経済に対して述べたとされる、「受信料制限」です。

これは、NHKが受け取れる受信料総額を決めておき、支払い率が上昇すれば1人あたりの負担が下がる、という仕組みだそうですが、ハッキリ申し上げて「お話にならない」提案です。

NHKの本質的な問題点とは、「消費者に支持されているわけでもないくせに、正当な経済競争によらずに年間7000億円という巨額の売上を得ていること」であり、「消費者が『不視聴』という手段でNHKを倒産させることができないこと」です。

そうであるならば、この点に斬り込まなければ議論としては不完全燃焼でしょう。

もちろん、「公共放送が必要だ」、「採算を気にしないで良質な教育番組などを提供する存在が必要だ」、といった主張があることは事実ですし、それなりに合理性はあります。

しかし、それを担う組織がNHKである必要はありません。

つまり、「公共放送としての役割」と「NHKそのものの組織の問題」は分けて論じなければならないと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (25)

  • >高市早苗総務相は並行して受信料収入の適正な水準など
    >3つの分野について改革を進める方針を明らかにした

    所管大臣ですので「改革を進める方針」には肯きますが、
    それより以前に国会議員であるのですから、
    NHKに「改革」すべき問題があるなら、
    法改正も視野に入れて国会で議論すべきだと思いますよ。
    所管大臣として仕事しているポーズ、
    つまりお為ごかしをしているようにも見えます。

  • 受信料で制作したコンテンツを独占販売する一方、国民には一切見返りのないNHKエンタープライズやNHK出版などの関連子会社の問題もありますので、解体しかないと考えます。

  • NHKは放送法を楯に受信料を税金のごとく(強制)徴収していますが、法自体がザルです。

    放送法第64条第1項に「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定され、NHKを見る見ないにかかわらず、NHK放送が受信できるTVを設置した者は受信契約を結ぶ必要があります。

    が、問題はここ。
    最高裁判決でも受信契約を義務付けた放送法の規定は合憲と判断しましたが、法には「いつまでに締結」しなければならないか、また「契約しない場合の罰則」の記載もありません。

    受信料は受信規約という別の定めによって支払うことになっているからです。

    それを逆手に取り不払いの前の段階、すなわち受信契約を結ばない人達が相当数います。
    結ばなければ受信料は発生しないからです。

    私はそもそも、TVが貴重だった時代に定められた、この古い放送法の改正を行うべきと思っています。

    そして、いっそ国営放送にする(税金化)、見たい人にだけ料金を支払わせる(スクランブル化)などの検討も同時に行い、甘い汁を吸いまくっている偏向報道集団である犬HKをぶっ潰したい(注:〇国党信者ではありません)。

    • 新茶狼様

      放送法第64条第1項が時代にそぐわず受信料問題の元凶であり、この法律の改正が最優先事項であること、とても同意します。

      そもそもなぜこの法律ができたのか、立法趣旨が気になったので調べてみました。
      放送法・受信料関連規定の成立過程 - NHK
      https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2014_05/20140503.pdf

      「調べてみた」と言いながら、まだ深く読み込んではいません。
      ざっと読んだ程度ですが、なかなか興味深い内容だと思います。GHQもからんできますし。
      興味のあるかたはじっくり読み込んでみるのもいいかもしれません。

      • 匿名 様

        コメント&同意いただきありがとうございます。

        なかなか凄い文献を見つけましたね。

        ざっと見ましたが、書いてあることは真っ当で受信料制度の歴史を知るには良い教材と思います。

        みんなで受信料のことを勉強して犬HKをぶっ潰しましょう。
        (くどいようですが私はN〇党信者ではありません)

  • NHKの放送で、受信料でないと運営できない放送なんてそんなにないはずです。ですので、必要な放送にのみ受信料を充当し、あとは商業広告で運営するようにすれば、今でも受信料はすぐに1/10位にできるのではないでしょうか?

    さらに受信料徴収の費用もバカにならないはずなので、受信料を税金で肩代わりするとか、TV消費税(TV販売代金に受信料分を一括で上乗せ)で徴収するとか、できないんですかね?それで多少、徴収額に誤差がでてもいいと思いますよ。

    ホント、NHKの地上+BSで年間3万円くらい?も払うなんてバカバカしくって。しかもNHKなんて殆ど観てませんよ。(怒)

  • そういえば今日、NHKを見ていたら番組の狭間でこんなアピールしてました。

    ・消費税が10%上がったが、NHKは受信料を上げません。
    ・NHKは頑張って、2%の値下げを実施しました。
    ・今後とも受信料制度にご理解をお願いします。

    受信料を2%も値下げできた根拠の説明はありません。

    出精値引き、というやつでしょうか。(笑)

  • そういえば、NHKが少し前今治タオルの風評被害を撒き散らした際にNHKをさして「公害放送」と評したネットの書き込みがありましたね。

  • NHKは報道部門と我が国の古典芸能に関する制作部門(と僻地の学校などの為に現在でも必要ならば教育放送部門)だけを国営にして、それら国営放送の職員には国家公務員としての制約と賃金・退職金等の規定(当然、国籍は日本のみ)を適用し、残りの部分は完全民営化(代々木の放送センターなど、従来のNHKの施設の使用を続ける場合には市価に即した賃貸料あるいは使用料の負担)するのが良いと考えます。

    スポーツ放送や、芸能プロや電通に大量のお金を還流させているドラマやバラエティや語学放送の仮面を被った芸能番組に強制的に徴収した受信料を回す必要はありません。そういう番組を作って芸能プロや電通を儲けさせたいのならば、民放として勝手にやれば良いのです。

    さらに言えば、日本におけるマスメディアの健全化のために「マスメディア集中排除法」とでも呼ぶべき法律を定めて、NHKに限らずマスコミ全体を解体すべきです。即ち、従来の日本のマスコミに見られる、

     新聞社 → ラジオ局 → テレビ局

    という垂直統合を法律で禁止し、持ち合いを法律で排除して新聞とテレビとの間で相互監視・相互批判を自由にできるようにする必要があります。

    また、同法によって単なる広告代理店と呼ぶには肥大化し過ぎ力を持ち過ぎてしまった電通を一旦は強制的に国営化した上で分割して互いのシェアの上限に法的制約を課した(破れば懲罰的な額の罰金を解消するまで徴収し続ける)上で再民営化し、我が国の広告代理店業界が1社独占状態にならないようにする必要があります。

    同時に、マスコミの偏向報道や愚劣な番組を法的に禁止し、今のBPOのような業界側の自主規制でなく業界を排除して政府と国民との側だけで選んだ審査員による報道・番組チェック機関の設立と、違反とされた場合の罰則(罰金や訂正報道の規模のルールだけでなく影響が大きい場合や悪質な場合には刑事罰も含む)も同法で定めねばなりません。

    勿論、それと並行して電波事業利益還元法とでもいうべき法律で、テレビ・ラジオ・携帯通信に関しては電波オークションを実施する仕組みも作らねばなりません。

    とにかく、NHKだけでなくマスコミと電通による寡占体制とそれによる相互批判の欠落は目に余ります。この寡占状態を法律によって完全に解体してマスコミ同士の相互批判が当たり前になるようなメディアシステムへと全面的に作り直すことが今後の我が国にとっては不可欠です。

  • 本文中の「NHK職員様たちのための」の下りの「様」にはおもわず笑ってしまいました。さすが新宿先生!と思いますwww(笑いごとでないとお叱りを受けそうですが)
    やはり既存メディアでNHKに切り込むのはこのあたりまでが限界でしょう。他メディア、芸能界、はたまた政界・財界まで、NHKには忖度するしかありません。私も記事を読んでみましたが、もう少し踏み込んでほしかったのが本音です。それでも確かに今までを考えれば一歩なのかもしれませんね。
    電力会社もそうですが、NHKは特に王侯貴族ぶりがひどいです。ある程度は見て見ぬふりをしてましたが、ワンセグあたりから、やりすぎだと思うようになりました。
    私の勝手な意見ですが、技術的には可能であるにもかかわらず、NHKはスクランブル放送には踏み切らないでしょう。受信料が不安ですから。やはりNHKは解体しかありません。もうホント公共放送やめて国営放送にしましょうよ。。。

  • 真偽の程は判りませんが、「AM放送から民放を追い出して、NHK(とJH)がAM放送帯を独占する。」という計画があるとか。

    民間のAM放送局のFM転換に熱心な訳は、それが狙いだったのか???

    AM放送は、受信に電力を要さない放送ですので、災害対応とかを考えると、民放AM局には、追い出される事なく居座って頂きたいのですが。

    • 災害報道はNHK1局がやれば十分だと思います。民放は必要ない。ですから、今後のAM放送を災害時のためと位置付けるならば、NHKラジオ1局だけで良い。

      民放の災害「報道」は率直に言って迷惑、それも大変な迷惑なのですよ。お馬鹿タレントたちを並べて下らんおしゃべりをさせるしか能のないバラエティ番組で「うわぁ凄いことになってますねえ」とかいう中身のない発言に合わせるインパクトのある絵面を撮るために低空にヘリを何機も飛ばして災害救助の邪魔をしているだけですからね。

      ですから災害報道はNHK1局あれば十分です、というよりも災害報道はNHK1局だけに制限したほうが良い。報道ヘリもNHKのヘリが代表取材として撮影した映像や写真を民間報道機関(民放だけでなく新聞社も)が使えば宜しい。

      その災害時の報道活動において救援活動側(自衛隊や消防など)とか管理側(地方行政機関)などとの調整をスムーズに行うためにも、NHKの報道部門(と必要ならば伝統芸能など少数の部門)は国営放送化する必要があるのです。そしてそうすれば、NHK職員を国家公務員として日本国籍を強制できるので、在日外国人による反日かつ偏向and/or捏造たっぷりの報道や番組作りを徹底的に排除することも可能になります。そのためにもNHKの解体と報道部門の国有化(のみならずマスコミや広告代理業の健全化)のための新法を制定することが不可欠です。

      • > NHKラジオ1局だけで良い。

        > インパクトのある絵面を撮るため

        何でラジオ局が絵面を撮るの? テレビの見過ぎで混乱して居られるのかな?
        どこの被災地の話をして居られるのでしょうか?

        NHKは地元に密着していない、というか、転勤族は東京の方ばかり見て仕事しているので、災害報道では役立たずだった。
        阪神大震災で役に立ったのは、AM神戸と、地元のコミュニティーFM局です。ラジオ局に関してはNHKではありません。

        日頃から地元に密着していないのに、災害時だけ密着するなんて不可能な事。

  • いつも記事やコメント欄を拝見し、勉強させてもらっております。

    専門知識はありませんが、世界では「電波オークション」があるそうです。
    日本だけが導入していないとか? それを使えばコリア放送協会なん簡単に解体できるのではないでしょうか?

1 2