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「河野太郎防衛相」という観測記事をどう読むか

数日前から、内閣改造に関わる話題が増えて来ました。本日は産経ニュースに、河野太郎外相が防衛相に就任するとの観測記事が出ていますが、これについてはどう考えるべきでしょうか。また、世耕弘成経産相は昨日、「意味深」なツイートを発信していますが、これについても気になるところです(もちろん、現時点で観測報道を元に、ああだ、こうだと論評するのは尚早かもしれませんが…)。

「無礼な河野太郎を更迭せよ!」

先週、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、こんな記事が掲載されました。

韓経:「無礼な発言」河野外相の交代が有力…韓日関係の影響「触覚」(2019年09月04日11時39分付 中央日報日本語版より)

これは、韓国側が自称元徴用工問題について、日韓請求権協定に基づく解決手続を一切無視したことを受けて、河野太郎外相が韓国の駐日大使を外務省に呼んで強く抗議した件(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』参照)と絡め、「河野外相が交代する」と述べた記事です(オリジナル記事を配信したのは韓国経済新聞=韓経)。

韓経は河野氏の発言について、「韓日葛藤が高まっている中で韓国に無礼な発言を吐き出した」、「当時日本国内でも河野外相の発言が侍のように『上の人』が一般民である『下の人』に使う言葉を国際関係で使ったという批判が多かった」、などと批判。

さらに、立憲民主党の枝野幸男代表が

河野外相が妥協の余地のあるようなことがあったにもかかわらず、韓国のプライドを傷つけるようなやり方でやるのは、明らかに外務大臣の外交の失敗

などと述べたしたことも、河野氏が外相を「更迭」されるとの韓経なりの観測を支えているものです。

これについては『河野太郎外相の交代論、いったいどこから?』でも報告したとおり、ちゃんと発言を読み返せばわかりますが、べつに河野氏は「上の人が一般民である下の人に使う言葉を韓国大使に投げかけた」わけではありません。

また、河野外相が交代するにしても、それは河野氏が韓国に無礼な発言を吐いたからだと現時点で結論付けるのは早急過ぎます。いずれにせよ、河野氏が交代するのかどうか、またその狙いについては、その後の河野氏の処遇などを見ないと、なんとも判断できないことは間違いありません。

河野氏は防衛相に?その狙いとは…

ところで、水曜日に予定されている内閣改造については、昨日の『【内閣改造】野党・マスコミ総崩れ 緊張感欠く自民党』でも取り上げました。

三々五々ですが、その「続報」があります。

河野氏、防衛相への起用検討 国交相に公明・赤羽氏 自民・森山国対委員長は再任(2019.9.8 05:00付 産経ニュースより)

今朝の産経ニュースによると、安倍晋三総理大臣は河野太郎外相の防衛相への起用を検討しているのだそうです。具体的には、

河野氏は、いわゆる徴用工訴訟をめぐり、国際法違反の状態を続ける韓国政府に是正を求め続けた。首相は毅然とした対応を評価している。また、米国のポンペオ国務長官らとは厚い信頼関係を築いている。

としており、韓国が先月、日本との包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)破棄を決定したことを受け、「不協和音が目立っている日米韓の安全保障協力の強化を図る狙い」もある、などとしています。

この報道が事実なのかどうかはわかりませんし、また、仮にこれが事実だったとして、河野氏を防衛省に起用する狙いが「日米韓3ヵ国連携の強化」を図るためなのかどうかはよくわかりません。

ただ、これはこれで、可能性としてはそれなりに高いと思います。

そもそも論として、外相と防衛相はセットのようなものであり、実際、日本は米国をはじめ、外交、国防上重要な相手国とは「2+2会合」を頻繁に開催しています。

岩屋毅・現防衛大臣が無能だとは言いませんが、今年6月に「官邸の意向を無視して」日韓防衛相会談を実施したとされていることについては、安倍総理の不興を買った、という説を耳にしたこともあります(※ただし、これに関する情報源はどこかの動画サイトですので、確実なものとは限りませんが…)。

この点、河野氏は2年少々の外相時代を通じ、中国や韓国に対して言うべきことをきっちりと主張するとともに、少なくとも変な妥協をしていないという点については、安倍総理がそれなりに高く評価しているのかもしれません。

(もっとも、河野氏が外相時代に、入国ビザの問題を片づけてほしかったところですが、この点については次期外相に期待することにしましょう。)

日韓GSOMIAは防衛問題

さて、昨年秋口以降、文在寅(ぶん・ざいいん)政権下の韓国が、日本に対して実に多岐にわたる嫌がらせ、不法行為を仕掛けて来たことと、これに対して日本がどう対処して来たか(あるいはこれからどう対処すべきか)を検討することは、今後の日本の外交を占ううえで重要です。

たとえば自称元徴用工判決問題におもに対処するのは外務省ですが、韓国に対する輸出管理を巡っては経済産業省、資本取引や支払いの制限については財務省、日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)に関しては防衛省、と、さまざまな省庁が対応しなければなりません。

そのように考えていくと、今後、日韓外交が「総力戦」とならざるを得ないなかで、省庁横断的に強く連携していかねばなりませんし、この2年間、外交の現場で陣頭指揮を取ってきた河野氏は、財相、経産相、防衛相のいずれかに就任しても良いでしょう。

もっとも、現在の安倍政権が実質的な「安倍・麻生連立政権」であることを考えると、副総理と財相と金融担当相は麻生太郎総理の指定ポジションのようなものですし、また、河野氏は緊縮財政的な政策姿勢が目に付くため、この点が「アベノミクス」に反している(ように見える)という事情もあります。

このように考えていけば、防衛相というポストは、日本の国益に加え、河野氏自身のステップアップという意味でも適切なポジションの1つであることは間違いないでしょう。

(個人的には、いまから2年後の自民党総裁選で安倍総理ではなく麻生総理が出馬し、「安倍・麻生連立政権」の枠組みが維持されるのも面白いかな、と思っていますが、さすがにそれは考え過ぎでしょうか。)

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、河野氏と並んで、困難な日韓問題をうまくハンドリングして来た世耕弘成経産相についても、「留任観測」、「交代観測」がともに出ているようです。

こうしたなか、昨日、世耕氏は日ASEAN経済大臣会合で共同議長を務めたとして、「ASEANの経済・貿易担当大臣たちとずいぶんと深い人間関係を築いてきた」とするツイートを発信されました。

「3年間で深い協力関係を築いてきた」とは、実に意味深なツイートですが、これも、世耕氏が今回の共同議長をご自身の経産相としての任務の総仕上げに位置付けている証拠でしょうか。

個人的には、世耕氏には経産相を続けて頂きたい気持ちが半分、経産相以外の要職を務めて頂きたい気持ちが半分、といったところでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (28)

  • 本文3行目の”施行弘成経産相”は変換ミスと思われます。人名なので早めの訂正をお願いします。

  • 国務大臣という要職を経験しても、成長できない人と、経験を深めて着々と実績を積み上げる人がいますね。河野太郎氏、世耕弘成氏は、後者であり実力を発揮して日本に貢献していただきました。

    岩屋さんは、ねえ… 余計な事をしないだけマシとすら言えない、余計なこともした人ですから。とはいえ、致命的なミスには至っていませんから、「FCレーダー商社事件以来、ストレスの多い職務が続き、お疲れ様でした」と申し上げます。

    菅義偉氏も、総務大臣を経験済みです。ポスト安倍の人材が揃いつつあります。

  • 岩屋大臣は致命的にNGではないと思いますが、防衛相は今は重要閣僚ですから、もっといい人材に回っても全く不思議ではないです。
    留任の方がいろんな意味でリスクがあると思いますが。

    宇都防衛政務官、とか流れたりして。

    • 岩屋氏は防衛相どころか、国務大臣としても、致命的にNGですよ。
      国益最優先という職務よりも、「なかよしこよしの良い面をしたい」という己の信条を優先させ、その結果、国益を損ないました。
      敵国に攻め込まれても「敵国だろうが、世界中の人に対して、自分だけは良い人と思われたい」という個人的な欲を優先させて、防衛命令を出さないでみすみす国民を殺させて国土を奪われても、何もしないようなのは防衛大臣として相応しいといえますか?
      いつ何時、こんな事態が起きてもおかしくないような状態なのに、平和ボケした、有事に国益最優先という覚悟を持てないようなのを国務大臣にはできません。

      これは防衛大臣だけに限りません。法務大臣など、他の国務大臣には言える事です。
      よくある例として、死刑執行命令を出す職務のある法務大臣に、死刑反対という信条を持つ者が就任して、死刑反対という己の信条を優先して、死刑執行命令を出さなかったというものもあります。これも日本の国益を損なっています。
      ただ、最近の安倍政権では、敬虔なカトリックの信者でありながら、個人の信条よりも法務大臣としての職責を優先したというような、法務大臣としても立派な人を任命したりしていますので、それなりに安倍政権の人事は信用してもいいのではないかと思います。蓋を開けてみないと分からない所がありますからね。岩屋氏は信用を得るせっかくのチャンスをふいにしました。

      • >岩屋氏は防衛相どころか、国務大臣としても、致命的にNGですよ。

        全面的に同意です。親韓かどうかという以前の問題として、世の中の流れを読む力や、自分の行動を他の人(日本国民、韓国などの外国の政府の人間などなど)が見たらどう思うか、自分を効果的に演出する方法といった政治家として必要とされる能力が致命的なほどありません。大した政治家にはなれないでしょう。

  • いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    管理人様>そもそも論として、外相と防衛相はセットのようなものであり、実際、日本は米国をはじめ、外交、国防上重要な相手国とは「2+2会合」を頻繁に開催しています。

    可能性は低いと思いますが、もし安倍総理が河野外相を防衛大臣と兼任させるならば半島有事の可能性が日本人が思うより高いと言うことでしょう。

    非常時は日本人はするべきか国民の間で議論の必要があるかもしれません。
    まあ、マスゴミに期待はムダですが。

    以上です。駄文失礼しました。

    • 誤∶非常時は日本人はするべきか国民の間で議論の必要があるかもしれません。

      正∶非常時は日本人は何をするべきか国民の間で議論の必要があるかもしれません。

      脱字失礼しました。

  • >これに関する情報源はどこかの動画サイト

    宇都議員のビデオレターじゃなくて?

  • 更新ありがとうございます。

    南朝鮮の河野外務大臣「更迭」みたいな報道は、願望半分、憎たらしさ半分、親父とまるっきり似てない事、更に×印なんでしょう。

    安倍首相は『河野外務大臣の毅然とした対応を評価している。また、米国のポンペオ国務長官らとは厚い信頼関係を築いている。』(会計士さんより)。

    「防衛大臣、河野氏!」産経の報道だから政府系のリークでしょう。これは固い(笑)。岩屋氏は平均以下ボーダーより下ぐらいだし、実現したら1億倍良い選択です。世耕大臣は留任して欲しいです。

    • 外相、防衛相、経済産業相の3つのポストだけの話です。
      河野さんが、防衛大臣になるのは、韓国嫌がるでしょうね。そこで世耕さんが、外務大臣にすると、より韓国嫌がるでしょう。
      外相説が出ている茂木さんを経産大臣にしておけば、収まりが良いなと思います。
      あ、岩屋さんは、お疲れ様でした。

  • 国務大臣を任免し、組閣する権限は内閣総理大臣に付随します。
    外野があれこれ言うことは自由でしょうが、人事内容が公式に発表されるまでは、内部情報が外部に漏れることはタブーのはずでしょう。
    まるで、内部情報が官邸から漏れ出てきたかのように報道を繰り返すメディアには、やはり不信感しかありません。
    河野外務大臣の去就に関しては、ノーコメントです。

  • >(個人的には、いまから2年後の自民党総裁選で安倍総理ではなく麻生総理が出馬し、「安倍・麻生連立政権」の枠組みが維持されるのも面白いかな、と思っていますが、さすがにそれは考え過ぎでしょうか。)

    安倍氏と麻生氏をニコイチみたいに勘違いしてる人を結構見ますが、
    (管理人氏がそうだとは言いません)
    経済政策については正反対です。麻生氏は増税派で経済オンチで、
    財務省のボスを気取る、実質的には財務省のパシリです。

    まず、なぜ悪夢の民主党政権は誕生してしまったのでしょうか?
    麻生政権がリーマンショックの処理を誤り、金融政策皆無で財政だけぶっ込み、
    円高不況を起こし、自民党から民心が離れ、あんなものが生まれてしまったのです
    「マスゴミが漢字の読みとか、揚げ足取りしたから負けた」という人が居ますがウソです。
    景気悪化したから負けたのです。安倍氏はあんなにマスゴミに無茶な攻撃をされているのに、
    支持率は下がりません。景気が良いからです。
    なので「マスゴミのせいで麻生は下野させられた」は明確にウソです。

    麻生氏は経済オンチの戦犯です。現在も増税派です。経済を何にも分かっちゃいないのです。
    何にも学習していない。完全に財務省に丸め込まれている。
    第二次麻生政権なんてできたら、財務省はすぐに13%を策動するでしょう。
    その麻生氏に政権運営の為に増税に応じてしまう安倍氏も罪深いのですがね。

    まあ弁舌がカタルシスを呼ぶところなど、良い点が皆無とは言いませんがね。
    今までの罪業が深すぎる

    • ミナミ様へ

      麻生氏は増税派で経済オンチで戦犯ですか…
      まあ、ミナミ様の立場からすれば、麻生太郎を『戦犯』にしたくなるのもわからないでもありません。

      麻生氏が本当に増税派なのかはわかりません。
      ただ、民主党政権が消費税増税を決めたことを、アメリカからクルーグマン教授やスティグリッツ教授まで呼びこんで今まで増税延期を決めて来ました。これは麻生氏の手柄でもあるでしょう。
      また、麻生氏が本当に経済オンチであるならば、次のような解説はできないでしょう。

      https://logmi.jp/business/articles/14626

      難しいことを、多くの人々に簡単に説明出来るのは、本当に理解している人物しかできない特権です。
      自分は、麻生氏は経済を本当に理解しているようにしか見えませんけどね…

    • ミナミ さま

      >安倍氏と麻生氏をニコイチみたいに勘違いしてる人を結構見ます

      私も勘違いしている人間の一人で、会計士さんがおっしゃるように
      >現在の安倍政権が実質的な「安倍・麻生連立政権」である
      と見ています。
      安倍政権がこれだけ長期安定政権になったのは、麻生氏とタッグを組んだことが成功だったと思っています。

      >麻生氏は経済オンチの戦犯です。現在も増税派です。
      >経済を何にも分かっちゃいないのです。

      すみません、私も経済のことは何も分からない人間で、ここらについてはコメントできません。なら口はさむなよと思われるかもしれませんが、個人的にずっとニコイチでやってるなと思ってきたものですからお許しください。

  • ジャーナリスト長谷川幸洋氏が国家安全保障局と外務省の関係を解説して居る。

    >>【ニュースの核心】韓国“トンデモ政権”と中国“微笑外交”に適任かも? 安倍政権「情報と諜報のプロ」抜擢のウラ https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190908/pol1909080001-n1.html
    一般に「外交は外務省の専権事項」と思われがちだが、実は、首相が議長を務める国家安全保障会議(NSC)が最高の意思決定機関であり、「国家安全保障局長は事務方トップ」という位置付けである。
    外務省は面白くないはずだ。これまで、外務省出身の谷内氏が局長を務めていたから、「外務省と国家安保局長は一体」というイメージが強かった。そこに、警察庁出身の北村氏が就くとなると「ポストを奪われた」と感じてもおかしくない。

    更に阿比留瑠比氏の解説 >>【正論10月号】特集・韓国大統領 なんとも事大主義で夜郎自大
    日本政府側はすでに、韓国の異質な対日姿勢は文政権だけの一過性にとどまらないことを学んでいる。程度の差こそあれ、歴代政権がずっとそうだったと、改めてこれまで韓国を優遇してきたことの過ちを反省しているのである。ある意味、韓国という国自体を見切ったとも言えよう。

    日本は変わった、人事もそれなりと言った処では無いでしょうか。

    • >これまで、外務省出身の谷内氏が局長を務めていたから、「外務省と国家安保局長は一体」というイメージが強かった。そこに、警察庁出身の北村氏が就くとなると「ポストを奪われた」と感じてもおかしくない。

      国連軍司令官
      米韓連合司令官
      在韓米軍司令官

      を米軍出身者が兼ねていたから問題なかったのに、米韓連合司令官だけ分けようとして軋轢が起こりそうな話と似てますね。

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