当ウェブサイトでは以前から、マスコミが特権的にさまざまな情報を独占し、自分たちの良いように情報を歪めて垂れ流してきた時代が終焉を迎えつつあると申し上げて来ました。先日の『新聞社説のブログ化と「素人は情報発信するな」の間違い』では、「知的訓練を受けていない素人が情報発信するな」といわんばかりの論説を紹介したこともあるのですが、むしろマスコミや、マスコミが持て囃す「知識人」らの方こそ、知的訓練ができていないのではないかと思わざるを得ない事例が相次いでいるようです。

「知的訓練」ができていない人たち？

先日の『新聞社説のブログ化と「素人は情報発信するな」の間違い』では、今から10年近く前に読売新聞に掲載された評論家による、「知的訓練を受けていない人が発信する楽しみを覚えた」とする論評を紹介しました。

早い話が、「ネット時代が到来しても、責任あるマスコミが権威を持つ社会でなければならず、大衆は新聞や本を軽視してはならない」、「知的訓練を受けていない一般大衆は情報発信してはならない」、とでも言いたいかのような論調です。

こうした主張は、端的にいえば、大変な思い上がりだと思います。

もちろん、世の中には「知的訓練を受けた人」とそうでない人がいることは間違いありませんし、『ウェブ評論家が不適切動画に対する企業の対応を支持する理由』でも述べたとおり、ときとしてツイッターを使い、とんでもない動画、写真などを配信する者たちが出現することもあります。

しかし、マスコミ関係者、あるいはマスコミに持て囃される人たちが「知的訓練を受けているか」といえば、それはそれで別問題でしょう。

昨日の『あいちトリエンナーレの企画中止にネットの威力を見る』では、公費の補助を受けたイベントで日本人に対するヘイトではないかと思しき展示がなされたという事件を紹介しましたが、まことに失礼ながら、問題の展示の関係者たちが「知的訓練」を受けた人であるとは思えません。

というのも、インターネット上で流れている彼らの発言を見ると、ダブルスタンダード、ご都合主義のオンパレードであり、到底「議論」するという姿勢ではないからです。ツイッター上で話題になっていたツイートを１つだけ再掲しておきましょう。

遺族の気持ちを逆撫でする、共同通信社大阪社会部

この「あいちトリエンナーレ事件」については、昨日詳しく触れましたので、本稿では繰り返しません。

こうしたなか、本日はどうしても報告しておきたい話題がいくつか出て来ました。

以前、『京アニ事件とマスコミ取材の二次被害が酷い』のなかで、先月、京都アニメーション（京アニ）のスタジオが放火された事件を巡り、京アニ側がマスコミに対し、「関係者に対する直接の取材等を控えてほしい」という内容の報道発表を行った、という話題を取り上げました。

繰り返しになりますが、この京アニ放火事件は、志ある若い人たちの将来が閉ざされたという意味で、本当に痛ましく、悲しい事件であり、犠牲となられた方々のご冥福と、負傷された方々の１日も早いご快癒を心の底から祈りたいと思います。

こうしたなか、京アニ側は先月、マスコミに対し、「当面の間、直接の取材を控えてほしい」「実名報道を控えてほしい」とする要望を発しています。

7月18日に発生した事件について（初出7月21日、改訂7月24日）（2019年07月24日 19時00分付　京アニＨＰより）

一部分だけ抜粋します。

当面の間、弊社、弊社社員及び弊社社員のご家族・ご親族、ご遺族及びご友人、弊社お取引先等に対する直接のご取材等はお控えいただきますよう、お願い申し上げます。／なお、弊社は警察及び報道に対し、本件に関する実名報道をお控えいただくよう、書面で申入れをしております。／遭難した弊社社員の氏名等につきましては、ご家族・ご親族、ご遺族のご意向を最優先とさせていただきつつ、少なくともお弔いが終えられるまでの間は、弊社より公表する予定はございません。

あたりまえの要望です。

ただでさえ、多くの方々が突然の被害に苦しんでいるのです。そこに塩を塗り込むかのようなマスコミ取材と報道がなされれば、それはまさに「二次被害」です。

ところが、この「二次被害を与える」と宣言したメディアが出現しました。

共同通信です。

共同通信社大阪社会部は８月２日付で、『京都アニメーションの事件でお亡くなりになった方のご家族や親友の皆様へ』と題した文書を公表。

「共同通信社では、今回の事件で犠牲になられたアニメーターの方々、お一人お一人について取材を進めています。（中略）だからこそ『死者35人』という数字だけで終わらせたくありません」

などと述べているのです。

ちなみに連絡先は「共同通信社大阪社会部」、メールアドレスは 20190718@kyodonews.jp だそうですが、私はこのメールアドレス宛てに、京アニのプレスリリースをそのまま送りつけてやりたい気持ちでいっぱいです。

共同通信さんは日本語が読めないのですか？

ずばり申し上げます。

共同通信社大阪社会部の皆さんは、日本語が読めないのでしょうか？

そういえば、今から約１年前、共同通信の新人記者が地震直後の大阪で、犠牲者が出たマンションnい押し掛け取材をした、という話題を紹介しました（『災害報道の共同通信の新人記者は被害者ではなく立派な加害者』参照）。

そういえば、問題の記者も、まさに共同通信社大阪社会部所属の力丸将之記者（当時25）でした。

力丸記者は、地震の犠牲者が居住していたマンションを「最上階から１部屋ずつ訪ね歩く『ローラー作戦』」によって強引に取材したものの、途中でマンション自治組合の理事男性に遭遇したときのエピソードを次のように記載しています。

「『君らマスコミももう少し住民の気持ちを考えたらどうなんや。人間のやることやないで』。理事の発言は正論に思えた。しかし、私たちは犠牲者の遺族の証言を取りに行くのが仕事。『申し訳なく思いますが、遺族の声や犠牲者の人となりを全国に伝えるのが私たちの仕事です』。精いっぱい反論したが、『では、君をつまみ出すのが私の仕事だ』と退去命令を受けた。返す言葉もなく撤収した。」（※下線部は引用者による加工）

この力丸記者、理事から「人間のやることじゃない」という言葉を聞きながら、「私たちは犠牲者の遺族の証言を取りに行くのが仕事」と勝手に決めつけているのですが、まさに「言葉が通じない人間」の実例を見る思いがします。

力丸記者が現在も共同通信社に在籍しているのかどうかは存じ上げませんが、間違いなく、一般国民の意識とはずいぶんと大きなズレがあると言わざるを得ないでしょう。

世耕大臣、キレる！

さて、昨日の『常軌逸する日本ヘイト　韓国はセルフ経済制裁を望むのか？』では、北京のＲＣＥＰ閣僚会合で韓国の代表者がＲＣＥＰとまったく関係のない発言を行い、これに対して世耕経産相が反論した、という話題を紹介しました。

この話題を巡り、共同通信は土曜日夜、こんな記事を配信しました。

日韓、RCEP閣僚会合でも応酬／輸出規制強化巡り（2019/8/3 18:41付　共同通信より）

共同通信の記事のタイトルは「日韓がＲＣＥＰ会合でも応酬を交わした」とするものであり、また、中国の胡春華（こ・しゅんか）副首相も「名指しを避けながら、日韓問題がＲＣＥＰを停滞させることに危機感を示した」、などと述べています。

これについて、世耕氏はご自身のツイッターで、共同通信を名指しし、強く批判されています。

また共同通信。／RCEPでの胡副首相講演に関し「輸出規制強化を巡り日韓両国が対立する中、(中略)名指しは避けながら、日韓問題がＲＣＥＰ交渉を停滞させることに危機感を示した」と配信。／講演の該当部分を貼っておくが、どう解釈したら「日韓問題に危機感を示した」ことになるのか？／講演は明らかに大詰めを迎えたRCEP交渉全般について述べているものであり、その場にいた誰一人として日韓のことに言及したとは思っていないだろう。/ 共同通信は歪曲した報道はやめて欲しい。

（2019/08/04 15:30付　ツイッターなどを統合）

世耕氏は具体的な証拠を挙げて、共同通信の報道が「歪曲」だと指摘しているのですが、状況から判断する限り、おそらく世耕氏の説明に分がありそうです。

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いずれにせよ、マスコミが情報を独占的し、好きなように歪曲して垂れ流してきた時代は終焉を迎えつつあります。とくに政治家が直接、ツイッターなどを使って情報発信する時代が到来したことにより、マスコミの虚報、誤報のたぐいは情報の一次ソースレベルで正されるようになりました。

さらに、現代では一般人が気軽に情報発信できるため、マスコミが人々の気持ちを踏みにじりながら強引に取材をしている姿があっという間に人々に共有されるようになったというのも興味深い点ではないかと思います。

当ウェブサイトの場合も、マスコミ（とくに新聞やテレビ）に取り上げられたことは（私が知る限りは）ただの１回もありませんが、何も宣伝したわけでもないのに、いつのまにか月間数百万ページビュー（ＰＶ）をいただくサイトになってしまいました。

このこと自体、マスコミが社会的な権威を失っているという重要な証拠の１つであるように思えてならないのです。