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どうなった「蚊帳の外」論 今、安倍総理が金正恩と会う理由

どうしても本日中に触れておきたい話題があります。それは、安倍晋三総理大臣が日曜日、北朝鮮による日本人拉致事件の被害者のご家族に対し、「条件を付けずに金氏(※金正恩のこと)と会って、率直に話をしたい」と述べた、というものです。これについては唐突感があるという方も多いと思いますが、一部メディアや一部ジャーナリストらが昨年の米朝首脳会談以前にしきりに主張していた「日本蚊帳の外論」とも関係があるように思えてなりません。

安倍総理「金(正恩)氏と率直に話したい」

共同通信によれば、安倍晋三総理大臣が日曜日、北朝鮮による日本人拉致事件の被害者のご家族と都内で面会し、拉致問題に関し「安倍内閣で解決する。被害者と家族が抱き合う日まで、使命は終わらない」としたうえで、「条件を付けずに金氏と会って、率直に話をしたい」と述べたそうです。

安倍首相、拉致家族と面会/「金氏と率直に話したい」(2019/5/19 16:26 16:48付 共同通信より)

共同通信はまた、25日に来日するドナルド・J・トランプ米大統領と拉致被害者のご家族らが再び面会することについて、安倍総理が「大統領が是非力になりたいとの気持ちを持っている」と明らかにしたとしています。

拉致問題の完全解決を待ち焦がれるご家族の心境を思うと、本当に胸が痛みますし、あらためて拉致事件の経緯を振り返ると、本当にどうしようもない憤りが募ります。

本件について一番悪いのは、もちろん、北朝鮮という犯罪者集団であり、ことに、拉致事件以外にもさまざまな人道上・国際法上の犯罪行為を行ってきた金日成(きん・にっせい)、金正日(きん・しょうにち)、金正恩(きん・しょうおん)という3代に及ぶ独裁者こそ、もっとも罪深い者たちです。

ただ、拉致事件を長年放置してきた日本政府や政治家らにも重大な責任があることは間違いありませんし、現在、日本政府の最高責任者である総理大臣として行政を預かっている安倍晋三氏にこそ、「拉致問題解決」という決意があると信じたいところです。

日本だけが「蚊帳の外」論、どうなった?

日本のメディアの報道に慣れていると、とくに今から1年前、米朝首脳会談直前では「日本は蚊帳の外に置かれている」という「蚊帳の外」論をよく見かけました。その典型例が、昨年4月に『週刊朝日』に掲載された、ジャーナリスト・田原総一朗氏の次の論考でしょう。

田原総一朗「北朝鮮問題で蚊帳の外の安倍政権。さらにトランプ・リスクも」(2018.4.11 07:00付 AERA.dotより)

田原氏は昨年4月の時点で、「もりかけ問題」で安倍政権への支持率が下がらなかったことを「あり得べからざること」と決めつけたうえで、北朝鮮が韓国、米国、中国の首脳などと相次いで会談するという状況を「日本は蚊帳の外」「ジャパン・パッシング」と述べているのです。

そのうえで、田原氏は米国が中国に対して仕掛けている貿易戦争を巡って、「日本を除外してくれるだろう」という日本政府の楽観に対し、

ところが、トランプ氏は、“安倍首相らは、こんなに長い間、米国をうまくだませたなんて信じられない”とほくそ笑んでいる、そんな日々はもう終わりだ、と言い放って、いわば日本を見捨てたのである。

と述べたうえで、日米首脳会談の結果次第では安倍総理の(9月の自民党総裁選への)「3選の可能性が消える」、などと結論付けています。

ただ、こうした「論考」(※このハチャメチャな文章を、私は「論考」と呼びたくもありませんが…)に見る「日本だけが『蚊帳の外』論」は、一部のメディアでは好んで用いられていた考え方です。

敵対的な相手とは「相手が弱ったときに会う」のが鉄則

ところで、冷静に考えていくと、このタイミングで安倍総理が金正恩との「条件なしの会談」に言及するのは、唐突感もありますし、不思議な気もします。

しかし、外交の世界では、安倍総理の行動はまったくおかしなものではありません。なぜなら、「相手が敵対的であればあるほど、相手が弱ったときに会う」というのが、外交の世界の鉄則だからです。

改めて指摘するまでもありませんが、現在、北朝鮮は国連などの国際社会から経済制裁を受けています。

その経済制裁により、北朝鮮がどの程度「困っている」のかはよくわかりませんが、次の2本の記事から判断する限り、少なくとも今年2月の米朝首脳会談直前の時点では、「さほど困っていない」という可能性もあったようです。

北朝鮮内部の「肉声」を聞く――制裁は特権層を直撃 揺れる金正恩政権(2019/02/23 8:44付 Yahoo!ニュースより)
北朝鮮経済、制裁にどう耐えているのか/コメの価格は安定し、制裁強化後に上昇していたガソリン価格も下がった(2019 年 2 月 26 日 15:47 JST付 WSJ日本版より)

これらの記事が執筆された2月時点では、少なくともコメ価格や北朝鮮ウォン(KPW)の対米ドル闇相場は安定していたそうですが、その直後の2月28日には米朝首脳会談が決裂。

いずれにせよ、現在の北朝鮮の状況を正確に把握することは困難ですが、北朝鮮に対する制裁は解除されていませんし、瀬取りの監視活動などはむしろ強化されており、また、今月には米国が北朝鮮の貨物船を拿捕するなどしたことは事実です。

よって、現在の北朝鮮が置かれた状況は、少なくとも1年前と比べて、さらに悪化している可能性もあります。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ところで、意外なようですが、私自身は、この田原氏の「論考」とも呼べない論考を、ときどきは読むようにしています。というのも、これを読んでいたら、北朝鮮の考え方が少しだけわかる気がするからです。

そんな田原氏が、「日本蚊帳の外」論をぶち上げた約2ヵ月後に、同じく『週刊朝日』に掲載した「論考」(?)が、これです。

田原総一朗「米朝『ディール』で費用負担迫られる安倍首相」(2018.6.20 07:00付 AERA.dotより)

田原氏はこの論考のなかで、「非核化作業の費用負担となると、拉致問題の解決以前ということになる」として、日本が蚊帳の外に置かれていることで、「朝鮮半島の将来を決める会議」からは日本が除外され、費用負担だけは日本に求められる、と主張したかったようです。

そういえば、田原氏のこの論考のなかで直接は触れられていませんが、当時、「日本蚊帳の外」論を主張する人たちの間では、「蚊帳の外に置かれないように、安倍総理は今すぐ金正恩と日朝首脳会談をすべきだ」、といった主張が見られたことも事実でしょう。

「このままだと蚊帳の外」、「請求書だけが日本に廻ってくるのが嫌ならば、今すぐ安倍総理は日朝首脳会談に応じろ」、といった主張です。

とても当たり前の話ですが、日本の意見がまったく通らない話に日本が「カネを出す」いわれもありませんし、北朝鮮による拉致事件という懸案を抱えたままの状況で、日本が北朝鮮に何らかの譲歩をするといういわれもありません。

しかし、昨年の時点だと、北朝鮮はまだ米国との「対話モード」に入っていて、強気でした。そんな状態で譲歩させられるおそれがあるならば、安倍総理は下手に金正恩と会うべきではありませんでしたし、実際に安倍総理が昨年の時点で金正恩と会わなかったことは正解だったと思います。

その意味で、北朝鮮がいよいよ「どん詰まり」となってきた今こそ、まずは安倍総理が虚心坦懐に金正恩と会うこと自体は、悪いことではないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (8)

  • 新宿会計士様の仰られるように「蚊帳の外に置かれないように、安倍総理は今すぐ金正恩と日朝首脳会談をすべきだ」に対して、日本がカネや譲歩を行う必要は全くないと思います。ただ、今の北朝鮮は「相手が敵対的であればあるほど、相手が弱ったときに会う」と言う面では過去最大級の困難に置かれているのは間違いないです。(特に中国、ロシアの北朝鮮への擁護が減って、最近の拿捕に見られるようにある意味準戦争行為を実行できる環境が整ったこと)
    安倍総理が今のタイミングで会談に言及した理由に、さらに大胆に付け加えるのであれば、
    1.韓国が北朝鮮からアメリカとの交渉仲介役として用を成さなくなり、北朝鮮は別の仲介役として日本が候補として高くなった。(中国、ロシアはアメリカとの関係が極端に悪化していて、アメリカへの仲介役に不適である。それに対して安倍総理がトランプ大統領と連絡を高頻度で行えている。)
    2.拉致被害者の帰還に対する見返りとして、「大きな」提示をするために参院選でその見返り内容に対する国民への同意を取れる。
    3.見返り内容は、北朝鮮の金正恩の独裁体制から魅力がある内容でなければ効果がなく、それは「体制保証」に近いものと推察されるが、核放棄の撤回や核開発に繋がる資金の流れを緩める行為は日本、アメリカならず国際社会で許容できるものでなく、それに代わるものが必要。(経済制裁は維持しながら核放棄の交渉は継続される)
    4.体制保証に繋がるものとして日本が提示できるのは、アメリカと協調した(アメリカを日本が説得する役を受け持つ)北朝鮮の国家承認である。
      (日米から見た韓国の価値低下、さらには米韓同盟破棄も見据えた韓国切り離しが現実性を帯びてきている今こそ韓国の反発を無視できる)
    を予想しています。拉致被害者救済には、いかに相手に非があろうとも何かしらの対価を提示しなければ、現実問題として解決できるものではないので、それをできるカードとして「北朝鮮の国家承認」は飛びすぎた発想でしょうか。
    いずれにしても、「日本の蚊帳の外論」は全く当てはまらない状況と思います。

  • 朝鮮半島問題においては、蚊帳の外にいることが肝要と思います。
    運転席に座るなどもってのほか。絶対に当事者になってはいけません。

    安倍総理が条件なしで会うと言っていることに批判もあるようですが、それは間違いと思います。
    とかく拉致問題や核放棄を前提でなければいけないみたいな論調が多いのは、肝心なことを見逃しています。
    条件というのは日本の要求だけではありません。前提条件を付けてしまば、そこに北朝鮮の要求も入り込む余地が出てきてしまいます。

    日本の譲歩を前提とした会談ではないというところが大事ではないでしょうか。
    拉致被害者の帰還と核放棄。これを直接談判すればいいのです。そこに北朝鮮が条件を付けてくるのなら途中で席を立ってもいい。

    困っているのは北朝鮮であって日本ではないのだから、主導権を握った状態で何ら事前の言質も与えずに要求を突きつけるのがベストでしょう。
    これは韓国に対しても同様ですね。G20で会談してあげればいい。2分間だけ。挨拶して遺憾の意を伝える。あとはひとりでメシ食って帰れと。

    メンツを潰して懲らしめろと言ってるわけではありません。
    彼らが理解できるプロトコルでやらなければ伝わらないだろうと考えるのです。
    トランプさんというかアメリカは、朝鮮半島的な小中華の価値観をよく理解していると思いますよ。

    • ラスタ様

      同感です。蚊帳の外は、悪い事ではありません。北朝鮮復興に巨大な金がかかることは、明白です。お金持参して仲間に入れてもらおうとするのは、ドラえもんに出てくるスネ夫みたいなもんです。お金は、拉致者帰還との交換です。その後は朝鮮との断絶が肝要です。韓国を見ればわかります。強請集りは永遠です。中途半端な利権にスケベ心を出すから痛い目に合うんです。朝鮮半島と交流を断つことで日本は困りませんよ。火病に付き合うくらいなら、豊かではなくても穏やかな国を目指しましょう。

  • ≫ところで、意外なようですが、私自身は、この田原氏の「論考」とも呼べない論考を、ときどきは読むようにしています。というのも、これを読んでいたら、北朝鮮の考え方が少しだけわかる気がするからです。

    新宿会計士様はわざとかもしれないし、何か、大きな勘違いをされているのかもしれません。
    田原総一朗氏は北朝鮮とは何のつながりもありません。
    彼の論旨など、北朝鮮を判断するのに何の役にも立ちません。北朝鮮と何の縁もないのに、何故か北朝鮮の肩を持ち、北朝鮮を持ち上げるかのような報道の仕方をする。同時に安倍総理を呪い、日本を嘲笑うかのような論考を垂れ流しにします。ハンギョレとつながりをつけている山口二郎氏もこの類いでしょう。
    同様に、中共や韓国の肩を持ち、中共や韓国に多大な好意を持っているかのような報道をメディアはします。ファーウェイをわざと持ち上げて、シナの技術力が世界最先端であるかのような報道をしています。
    鳩山由紀夫はアイフォンを通して、ファーウェイを持ち上げるコメントを出していますが、これもひとつの芸なのでしょう。メディアは首相経験者まで芸人にして遊んでいるのでしょう。首相経験者までが芸人になるのに、田原氏や山口氏が芸人にならないわけがない。
    こうしたフリをしている芸人まがいの論者やメディアは、日本にあまりにも多いようです。欧米もまた、日本と同様です。

    2月の米朝首脳会談前には、NHKを始め各メディアは、何故か金正恩を善玉のように扱い、同盟国の大統領であるトランプを悪玉のように扱いました。これはメディアが北朝鮮と深い関係にあり、アメリカよりも北朝鮮を擁護したいがためでしょうか?
    自分はそうは考えません。日本の視聴者を煙に巻き、北朝鮮と深いつながりがあるかのような演技をしているのだと考えています。今もそうです。そのためにわざと、ゴミのような論考を垂れ流しにします。
    あのサンデーモーニングですら、論者は北朝鮮の肩を持つかのようなコメントを述べながら、バックでは金日成広場での軍事パレードの様子とミサイル発射の映像を恐怖感を煽るように繰り返し流しています。
    北朝鮮のことを聞くなら、アントニオ猪木やデヴィ夫人、テリー伊藤氏などに聞く方が早いでしょうが、メディアは北朝鮮に関して質問することはありません。本物のプロパガンダを流されることがわかっているからでしょう。
    視聴者に対してテレビや新聞は、『この報道はあまりにもおかしいぞ。具体例をあげずに、感情論だけを述べていますよ。気付けよ。気付けよ』というサインを自らしょっちゅう出しています。

    メディアの本音は、むしろネットの方で流すようにしているようです。すぐにネット上で、メディアの報道内容を否定する情報が流され、そのためのスレッドが立ち、コメントマンに否定させて馬鹿にさせる。これでひとつの流れです。メディアとネットは一心同体。何も対立なんかしてません。対立しているフリはします。
    これを指摘するから、自分は他のコメント者の目の敵です。(笑)

    日本に北朝鮮シンパは数多いですが、メディアからは続々と排除されてきています。NHKや朝日新聞などは、過去に職員の大量解雇を行っています。メディアに顔出しできる北朝鮮シンパは、芸能人くらいしか残っていないようです。
    あ、鳩山は芸人ですが、菅直人の方は『本物』のようです。

  • そもそも「日本パッシング」なるハナシについては、広く事実誤認されていると思います。
    これを言い出したのは韓国メディアです。もともと「韓国パッシング」というハナシがあって、それに対する韓国人特有の「自分の弱点を他人に投影する」という習性からなあ発したのが日本パッシング論です。
    当時の経緯を振り返っていただくとご理解いただけると思います。

    • hiwochan さん

      おっしゃるとおりですね。かなりの方が気がついておられるかもしれませんが、韓国は周囲から自分の悪口(弱点、欠点等)を言われると、決まってそれを周囲を非難するときにオウム返しに投げ返してきますね。

      例えば日本から、韓国はゴールポストを動かすと非難されると、何かの機会に「日本はゴールポストを動かすな」と言ってきます。実際に相手がどうであるかということとは余り関係がなくて、言われたら言い返すというだけの話なのですが、妙に癪に障ります。我々日本人は朝鮮人のようなアホではないと思っていますからね。もちろん韓国は相手がカチンと来ることを承知で煽るために言ってくるのですが。

      引っかかってはいけないのですよね。朝鮮人の手口ですから。

  • 私が言うのはですが、Web主さんがご紹介された田原氏や忘れたころにプライムニュースに出演される木村氏などは、おばさんの目から見ても論説者として限界の域だと思います。
    本人には、判らないのでしょうが、壮年の頃の活躍を知っている者から見ると、痛々しさを感じるほどです。
    完全引退とは言わなくても、休業期間を設けたほうが復活のチャンスがあるやもしれません。

    さて、北朝鮮ですが、「条件を付けずに金正恩と会う」と言って差し上げた日本に対して、向こうが条件を付けてきました(笑)。まあ、そういった民族ですから、日本政府は織り込み済みでしょうね。無視でよろしいかと。
    仲介してくれたアメリカに対する申し開きもありますので、向こうが喚き終わったら、「こちらが条件を付けずにと会う。というのは、そちらの条件を呑むということではない。」でよろしいかと。
    北朝鮮は拉致被害者のことで、日本の足元を見ている気でしょうが、冷静になりましょう。残酷だとは存じますが、彼らが拉致被害者をその生死にかかわらず素直に返還するとは言えないからです。
    彼ら半島人は、トランプ流に頭に銃を突きつけなければ回答しません。日本はまさか同じ手を使うことはできませんが、日本には話を聞いてもらうことはできるが、交渉はできない。とはっきり、認識させましょう。
    これは、北朝鮮のみならず韓国に対しても同じことです。安倍さんには、日本の政治家の底力を見せていただきたいと思っています。

  • 安倍総理の国際的な信頼の源は「ブレないこと」だと思います。

    「自ら〔自国〕の言質には責任を持つ」とのスタンスで一貫しているからです。

    半島との対峙においても「河野談話」や「平壌宣言」を無かったことにはせずに、それらを飲み込んだうえでの最善手を模索しています。

    平壌宣言は「その後の核実験により反故にされた」との見方もできるのですが、拉致問題解決や非核化実現の糸口になるのであればと、使える交渉カードとして残してるのだと思います。

    おそらく「自らの言質には責任を持つ」との流れだと北朝鮮の非核化費用は日本が負担することになると思うのですが、これらは本来、北朝鮮が負担すべき費用です。

    それらも踏まえたうえで、双方が適切であると納得できる国交正常化交渉であることを望みます。

    平壌宣言は、国交正常化に向けた双方の基本認識を確認したに過ぎず、過去の清算・経済協力・安全保障・文化交流についての具体的な対処策は、国交正常化交渉の過程で取り決めることになってます。

    ま、現段階では北朝鮮が交渉のテーブルに着くかどうかの問題なんですけどね。〔弱ってるタイミングでの呼びかけは最適だと思います。〕