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麻生総理、中国念頭に「借り手卒業」を促す 当然すぎる発言

昨日、フィジーで開かれたアジア開発銀行(ADB)の総会で、麻生太郎総理が中国を念頭に「借り手卒業」に言及したそうです。呆れたことに、中国は自身でAIIBという怪しい国際開発銀行を設立しておきながら、ADBから「低利優遇融資」を受けているのだそうですが、麻生総理の発言は至極当然のことでしょう。こうしたなか、AIIBが設立される4年前ごろ、「日本はAIIBというバスに乗り遅れるべきではない」といった言説を述べていた人たちは、現在の惨状についてどう考えているのか、聞いてみたい気がします。

AIIBの惨状とADBの安定感

中国が主導して設立された国際開発銀行である「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」は、設立から今年で4年が経過するそうです。

ただ、『「バスに乗り遅れた日本」と鳴かず飛ばずのAIIBの現状』で報告したとおり、出資自体は順調に集まっているものの、国際開発銀行の「本業」である途上国向けインフラ融資は、ほぼ「鳴かず飛ばず」の状況にあります。

というのも、AIIBの累計の融資承認件数は昨年12月末時点で34件に過ぎず、AIIBの2018年9月末時点の貸借対照表(※非監査ベース)で確認できる貸出金の額も12億ドル弱と、出資総額(約1000億ドル弱)の1%強に過ぎません。

私を含めた意地が悪い人間にいわせれば、AIIBとは「アジア・インチキ・イカサマ銀行」の略ではないか、との観測もあるようですが、ふたを開けてみれば、「インチキ」に引っかかる国はほとんど存在していない、ということではないかと思います。

ためしに、融資承認件数を、日米が主導する「アジア開発銀行(ADB)」と比較してみましょう。

ADB対AIIB 融資承認件数
  • 2016年…357件 対 8件(44.6倍)
  • 2017年…312件 対 15件(20.8倍)
  • 2018年…382件 対 11件(34.7倍)

まったくお話になりませんね。

麻生総理「借り手卒業を」

こうしたなか、昨日の日経(電子版)によると、安倍政権下で副総理兼財相を務める麻生太郎総理は4日、フィジーで開かれたADBの総会で、中国を念頭に「所得基準に達した国々は(借り手からの)卒業への具体的な道筋を議論していくべきだ」と述べたのだそうです。

中国に「借り手」卒業促す、融資拡大警戒 アジア開銀(2019/5/4 21:00付 日本経済新聞電子版より)

日経によると、麻生総理が発言した「所得基準」とは、国民所得が1人あたり6795ドル以下の国に低利優遇金利を適用するという基準のことだそうですが、中国はすでに1万6800ドルで、「すでに基準の2.5倍」だとしています。

中国は自身がADBから低利融資を受けつつ、AIIBという新たな国際開発銀行を組織して、「一帯一路構想」を推進するというのも、理屈に合いません。

それに、以前、『【夕刊】AIIBと中国に開発援助の資格はあるのか?』で紹介したとおり、中国が援助した資金で建設されたスリランカ南部の「ハンバントタ港」は、中国が2017年に借金のカタとして99年間にわたる租借権を得てしまいました。

このように、「発展途上国が返しきれない強引な融資を行い、借金のカタに諸外国に事実上の領土を獲得し、自国の影響力を拡大する」という手法は、歴史教科書に出て来る東インド会社の行動とそっくりではないでしょうか。

実際、日経によると、麻生総理はADB総会でアジア各国がどこからいくらおカネを借りているかを明確にすることが必要だと述べたそうです。該当する下りは、次のとおりです。

麻生氏はADB総会で、世銀や国際通貨基金(IMF)と連携してアジア各国がどこからいくらお金を借りているかを明確にすることも求めた。6月に日本で開くG20財務相会議では、「債務の持続可能性」を巡る問題の解決策を見いだせるかも焦点の一つになる。

これも、明らかに中国の「新植民地主義」を牽制する発言と見るべきでしょう。

ノウハウ自体が「虎の子」

さて、途上国インフラ金融という分野では、日本が一日の長を持っており、日本が非常に強い分野の1つでもあります。

これについては、今から4年前、AIIBが設立されるときに日本がこれに参加しなかったことを、一部の「識者」(?)が舌鋒鋭く批判していました。

ただ、国際開発銀行というものは、「設立しておカネを集めたらすぐに営業できる」、というシンプルなものではありません。現実には、融資のノウハウ、インフラに関するニーズや知識、債務国の財政状態の文責技法など、まさに「ノウハウの塊」なのです。

このノウハウは、いわば、貴重な虎の子でもありますし、日本企業のコンソーシアムが海外でインフラ輸出をするうえでセットとなるものでもあります。

私個人的には、日本企業が1990年代から2000年代を通じて、中国にこぞって投資を行い、日本国全体の「チャイナ・リスク」を高めることにつながったという点を、日本はもっと反省すべきだと考えています。

AIIBに日本が参加するかどうかという視点についても、基本的には日本の国益の最大化に寄与するかどうか、そして融資を受ける相手国のためになっているかどうかという視点から、厳しく査定するのが筋合いではないかと思うのです。

新宿会計士:

View Comments (17)

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     4年前に、「日本もAIIBに参加すべき」と言っていた人は、この麻生発言
    を受けて

    ①「麻生発言は間違っている。辞任すべき」と言い出すか。

    または
    ②「そんなことは、内心では前々から思っていた」と言い出すか。

    または
    ③麻生発言を全く無視する。
     
    かの、どれかだと思います。

     駄文にて失礼しました。

  • 中国へのODAが無くなるときに「ODAが無くなってもADBの融資が残っているから実質的に意味ない」と批判する人がいましたが、それへの回答ですね。

  • 下記のようなびっくりニュースをみつけました。
    ////////////////////////////
    「一帯一路、沖縄活用を」 知事、訪中時に提案  中国副首相も賛同 定例会見で明言
    2019年4月27日 05:00   琉球新報

    玉城デニー知事は26日の定例記者会見で、河野洋平元外相が会長を務める日本国際貿易促進協会の訪中団の一員として16~19日に訪中した際、面談した胡春華副首相に対し「中国政府の提唱する広域経済圏構想『一帯一路』に関する日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と提案したことを明らかにした。胡副首相は「沖縄を活用することに賛同する」と述べたという。
    https://ryukyushimpo.jp/news/entry-909978.html
    ///////////////////////////////
    「沖縄を活用しろと、中国に提案」。ありゃー
    正真正銘の左翼。

    •  「左翼」は国益の実現を図るという目的の下での政策手法・政治的主張の違いに対してポジショニングを示す概念。

       したがって、そもそも日本の国益を損ね利敵行為を企てる玉城や野党を「左翼」というのは間違いで「(反日)サヨク」もしくは「売国奴」が相応しい。

       地球広しといえど、自国を売りまくる勢力が合法的政党として存在し国会に議席を有し与党経験すらあるのは日本と韓国だけでしょう。情けない限り。

  • AIIB設立以前から、中国はODAを受けつつ第三国への開発投資に着手し「実質的に他人の資金で自国の影響力を高める二面政策」でした。
    「借り手卒業」を促す麻生副総理の発言は当然だと思います。

    ADBの資金は、真にその支援を必要としている国・地域で活用して欲しいですね。
    *****

    ですけど、考え方によってはAIIBによる投資案件は、ADBの融資承認が得られなかったものなのかも知れません。(初めから、サラ金で金策するのもは居ないですからね。)
    それならば、採算性が見込まれないと判断されたにもかかわらずの事業着手なのだから、「AIIB資金の借り手責任も小さくない」とも言えます。

    いずれにしても、サラ金業者に低利資金を提供してるようなADBの現況は、早急に解消するべきではあるんですけどね。

    • 賛成。貸すほどお金があるならADBの融資は全額返済すべき。お金がない国はいっぱいあるので、そちらに回すのが当然。

  • 更新ありがとうございます。

    AIIBが鳴かず飛ばず、「アジア・インチキ・イカサマ・銀行」の名にふさわしく、サッパリのようです。貸し出し総額12億ドルって超少な過ぎじゃないですか。

    ADBはアジア発展途上国中心に貢献してますが、それでも出資金は十分ではない。アジアの旺盛な開発から見ると、出資額が足らないように思います。しかし、ADBから融資を受けるには、審査が厳しい事、スタートする迄に時間が掛かる事、報告等も義務付けられる等、借り手にはハードルが高い面もあるようです。

    でもAIIBのように、甘言で籠絡し国の領土を半永久的に取られたり、高利でクビを回らなくさせ、言う事を聞かせるという邪な気持ちはありません。中国はADBの出資率が低い(確か6%前後)事も不満だった。日米が共に15.7%ですから。

    あとADBは日本の建設業らの受注は、意識的に低くしてます。としか思えない。僅か1.0%以下、0.6%とかです。もうちょっと10%あっても良いだろうに。日本は欲を出さないんだな。そこまでへりくだる事は無いと思いますがね。

    さて、あの当時、識者はAIIBに不参加の日本を何と言ってたでしょうか?(笑)まず朝日新聞社さん、どうぞ!
    『AIIB不参加は、日米が孤立する道だ』(オマエは中国人か?)
    『対米追従で良いのか?』(他に無いやろ)。

    次に大和総研のシニアマネージャー。名前は情けで記しません。
    『日本が入らない選択は、難しい。中に入ってから修正を言うべきだ』(さすが倒産した株屋出身)

    最後に東京理科大教授(当時)のO女史。
    『入らなければ、日系企業の将来におけるビジネスチャンスの拡大に影響が無いと言い切れるか』(もっとハッキリ言ってくれよ)。

    以上でした。識者てのは、テキトーな事言ってカネになるんだ〜(笑)。信用しません。

    • >識者てのは、テキトーな事言ってカネになるんだ〜(笑)。信用しません。

      仰る通りです。これだから、マスコミと、それに同調する御用学者が信用されないわけですね。
      だれがどのようないい加減なコメントをしたかを記録されている方がいらっしゃると、後々役に立ちますね。

  • 麻生さん、貸す方が問題でしょ(笑)

    低利で借りた金を、高利で貸す・・・商売の基本でしょ。

    だいたいODAの時も思ったんですが、なんで、中国に貸すかなぁ?

    どこが貧乏なのよ(笑)

    サッカー中国スーパーリーグ見てみなさいよ、どのチームもJリーグより金持ちだから(笑)

    融資した責任者を処分しなさい。

  • 麻生大臣の弁、正論と言えば正論、今更ながらって感もありますが、事前に中国の財務相と会談してるってことだから、そのときにこのことは言い渡してるんでしょう。それにしても、これまでの日本政府の中国に対する注文の付け方に比べると、いやに上から目線的な物言いに感じるのは私だけでしょうか。シュウが粗雑な対外膨張政策をとって反発を招くから、日本からまでこんなこと言われなきゃいけなくなるんだと、政権内部の批判勢力の声を高める効果でも狙っているんだ、なんてのは穿ちすぎた見方かな。

    ところで日中間の経済問題で、ADBの貸付金利なんかより喫緊の対立点は、やはり米中の5Gを巡る覇権争いに日本がどういう立場をとるかということじゃないかと思います。常識的には、政府のプロパガンダか、お目こぼしにあずかった情報以外は外に出さないおたくのネットと、インフラ基盤を一体化するなんてことはありえませんよと(機密情報抜き取りツールだろうなんて言うと角が立つから、そこのところは置いといて)通告すべきなんでしょうが、それで今後の対中関係をうまくマネージできるものなのかどうか。一度そういう話題も、このサイトで採り上げてもらえればと思います。

    • 5Gに対する日本の官民の姿勢は、情報発信が少なくて見えにくいですよね。

      自動運転の要になる通信インフラとのことで、様々なところが実用化に向けて動いていますが、そういう応用部分ではなく、規格やデバイスや基地局整備計画などの情報が少なくて、少し心配になっています。

    • ちょっと古いですが、

      *18年2月、ファーウェイは23年までの5年間で30億ポンド(約4400億円)を英国に投資すると表明〔雇用は最大400名〕
      *19年4月23日、英国の政府は、同国の5Gネットワークの一部の中核的でない部分に関してファーウェイ(Huawei)をサプライヤーとして認めることになった。・・とのこと。

      英国は、外国資本の参入に抵抗が無い風土のようですので、与し易いのかもですね。

      英国には揺れて欲しくないんですけどね〔ちょっと心配・・。〕

      • カズ様

        少し前までなら、こういう問題。イギリスはアメリカとキチッとスクラム組んで、対処していたはずなんでしょうがね。別に戦争しようってんじゃないブレグジット問題一つで、国論の統一も出来ぬままグダグダ状態を続けてるんではね。一方のアメリカも、オレッちの技術を盗んだとファーウェイを責め立てるばっかりで、次世代通信をどういう方向にもっていこうとしてるのか、一向に世界に明らかにしない。本当なら同盟諸国間の国際会議でも開いて、互恵的で開かれた環境のイメージってのを早急に作り上げるべきところなんだろうけど、まあTPPから抜けたことを自慢にしているような大統領を頂いている間は無理か。

  • 日本人が総裁をやってるけど あの総裁の言ってること日本政府と逆だよね。早く首にしないとね。チャイナの肩もってる日本人がここにもいる。チャイナに肩入れする理由があるはず。

  • 対中ODAをやっとこさ終了したばっかりの(まだ続行中のモノもあるが)日本が偉そうに言えない面もあるね。

  • 「アジアで海軍力による現状変更を試み国」であり「多民族国家でありながら陸軍力による少数民族へのエスノクレンジングを行っている国」が「金融による現状変更を試みる国」であるわけですから資金源を断つのは当然ではないでしょうか?
    この国はあからさまに世界の覇権を求めている訳ですから、覇権国にふさわしい品位を持つべきであり、それは国内の民族間の協調、諸外国に対する協和の姿勢、恥を知る国民性を育む事が第一ではないでしょうか?さすれば、人口の多い国ですから300年後には国家と漢族が望む覇権国の地位を手に入れる事が可能であると思います。
    それまでは、世界の事は他国に任せ国家破綻せぬ様、国土の自然が荒廃せぬ様、地球の環境を破壊せぬ様に国を治め他の民族、他の国家から軽蔑されない国家を経営される事を望みます。
    まあ、300年後は私には私を含め今を生きている全ての世代には関係無いので、それまでは分をわきまえて高利貸しや暴力団の様な事はせず他人様に迷惑を掛けないでいてください。