いよいよ本格的に日韓関係が変質してきた証拠の1つを発見しました。「言論NPO」という団体が毎年実施してきた「日韓未来対話」なる会合が、今年は資金不足のため開催できないかもしれない、というのです。言論NPOは予定されている会合を2ヵ月後に控え、今週、緊急で「寄付のお願い」というページを設けて寄付を募っているのですが、そんなことをする必要はありません。なぜなら、「日本側で寄付が集まらなくて会合が開催できずに流れてしまう」という状況が発生すれば、そのこと自体、韓国に対する日本という国全体としての意思を示すことができるからです。
目次
言論NPOの悲痛な叫び
「日韓未来対話」が開催できない?
昨日、読者コメント欄で「実行委員」様から教えて頂いた話題があります。
「言論NPO」という団体が今年6月22日に開催する予定の「日韓未来対話」の開催が危ぶまれているのだそうです。
「第7回日韓未来対話」開催のため緊急ご寄付のお願い(2019/04/24付 言論NPOウェブサイトより)
言論NPOによれば、この会合は「日韓関係が悪化した2013年に言論NPOと韓国の東アジア研究院によって創設され」たものだそうで、今年で第7回目を迎える予定なのだとか。
また、会合に先立ち、言論NPOは東アジア研究院と共同で世論調査を実施しているのだそうですが、確かに私自身、過去に同団体が実施していると思しき世論調査を見たことはあります。
ただ、この団体は
「悪化する日韓関係の影響を受けて、寄付金が減少しており、今年の対話の開催が困難な状況になっています」「開催まで2カ月を切りましたが、今日現在、寄付金がほとんど集まらず、対話の開催自体が危ぶまれています」
としたうえで、寄付を呼び掛けているのです。
「草の根」で変質する日韓関係
このような呼びかけがなされること自体、まさにこの1年間で、日韓関係を巡る現状が大きく変質してきている証拠でしょう。
言論NPOによれば、この会合は毎年、日韓双方で交互に開催されているそうです。
昨年6月22日の『第6回日韓未来対話』は韓国の首都・ソウルで開催されていますので、今年は日本の番だと思うのですが、昨年は開催するだけの資金が集まったのに、今年はそれが集まらないというのは、非常に危機的な状況といえるかもしれません。
同団体はこの会合の収支報告書を公表していないようですが、おそらく、韓国で開催される年は会員らのソウルへの出張旅費が発生する一方、日本で開催される年は出張旅費が発生しないはずです。
日本で開催されるはずの今年の会合が開催できないほど財政的に困窮しているということであれば、これはかなり危機的な状況ではないでしょうか。
あるいは、前回までの会合で発生していたかもしれない繰越金などを充当しても会場を借りるための費用が足りないということかもしれませんし、言論NPOが自分たちの懐を痛めてまで開催できないという判断をしているのかもしれません。
ただ、言論NPOが「開催できない」「寄付金がほとんど集まっていない」と述べていることを見ると、やはり、昨年までは寄付をしていた人や企業が寄付をとりやめた、ということなのかもしれません。
企業は寄付をするのか?
この「日韓未来対話」に、具体的に誰がいくらの寄付をしているのかについて調べてみたのですが、その情報は私が調べた限り、言論NPOのサイトで見つけることはできませんでした。
その代わり、時事通信がこんな記事を報じています。
「日韓未来対話」開催微妙に=関係悪化で寄付集まらず(2019年04月26日14時19分付 時事通信より)
記事の中に、こんなくだりがあります。
「悪化する日韓関係の影響で企業などから寄付金が集まらず、開催が危ぶまれる状況になっている」(※下線部は引用者による加工)
ということは、個人だけでなく企業もこの会合に寄付金を出していたのでしょう。
想像するに、韓国でビジネスを行っている企業が、数万円、あるいは数百万円という単位でポンとカネを出していたのではないでしょうか。
では、なぜ今年は企業などからの寄付金が集まらないのでしょうか?
これについては、逆に問いかけたいと思います。
「なぜあなたたちはこの状況で企業からの寄付金が集まると思っているのですか?」
と。
日本企業を怒らせたのは誰でしたっけ?
日本の組織は「継続性」を重視する
これについて考える前に、日本の役所や大企業など、「日本型の組織」の特徴を考えておきましょう。
日本の大企業で働いたことがある方なら何となく理解されていると思いますが、日本の組織は「継続性」を重視します。いったん決まったことであれば、よっぽどのことがない限り、毎年それを継続する、という習性があるのです。
大企業を最初に動かすためにはかなりのエネルギーが必要ですが、いったん「それをやる」ということが決まれば、あとは惰性で毎年、それを継続するという傾向があるのです(※これは私自身にも経験があるのですが、諸般の事情により、具体的な事例をこちらに記載することは控えます)。
言論NPOによると、この会合は「日韓両国間に横たわる様々な課題に取り組み、日韓関係の発展と課題解決に取り組む日韓間で唯一の、課題解決型・公開型の民間対話」という位置付けだそうですが、いかにも大企業が好みそうな総花的なお題目が散りばめられています。
そして、大企業は「日韓関係の諸問題の解決に貢献する」という総論に賛成し(というか騙され)て、このような会合に巨額の寄付金を毎年ポンポンと拠出していたのでしょう。
ただ、日本の大企業が得てして「惰性」で動くことが多いことも事実ですが、それと同時に、いったん方向性が決まれば、あっという間に行動を変える、という習性もあります。
たとえば、最近の事例だと、「アカウンタビリティ(説明責任)」という単語が好まれます。これは、「自社の活動を株主や社会全体に対してきちんと説明すること」という意味ですが、何か問題が起こりそうになったときにそなえ、今まで惰性で行っている活動を一斉に見直す、という行動に出るのです。
日韓関係には「よっぽどのこと」が発生した!
今回の会合についても、同じことがいえます。
日本企業としては「よっぽどのこと」が発生しない限り、惰性で行動を継続する傾向があるのですが、「よっぽどのこと」が発生した場合、話は変わってきます。
おそらく、会合が始まった2013年当初は、「日韓関係が悪化しそうになっているからこそ、問題を解決するためには対話が必要だ」といった総論的なお題目に大企業の経営者あたりが感化され、株主から預かった貴重なカネを惜しげもなく「日韓未来対話」という名のドブに捨てていたのだと思います。
しかし、さすがに昨今の環境で、このような会合に貴重なカネを拠出するのは、単に「ドブにカネを捨てる」以上のことが発生します。それは、万が一、ある企業がこの会合に寄付金を拠出していたことがバレたら、株主からも社会からも叩かれ、その会社の製品の不買運動までが発生するかもしれないからです。
企業人も合理的ですから、貴重なカネを払ってまで自社の評判を下げるような行動があるとしたら、それをやめるのは当然過ぎる話でしょう。
そのきっかけはいくつかあるのですが、なんといっても大きいのは「徴用工判決問題」です。
具体的にいえば、韓国の自称元徴用工らが起こした一連の「徴用工訴訟」で、昨年10月30日に、新日鐵住金(現・日本製鉄)が韓国の最高裁に当たる「大法院」で敗訴したことをきっかけに、日本企業敗訴判決が相次いでいる問題のことですが、日本企業にとっては、これは非常に大きな脅威です。
日韓基本条約と日韓請求権協定は、日韓関係の法的基盤の基本であり、韓国とビジネスをする日本企業の利益を守るという側面もありました。だからこそ、日韓関係が政治レベル、国民感情レベルで悪化しても、企業レベルでは韓国とのビジネスを継続することを、経済性のみで判断し、決断してきたのです。
しかし、いくら経済面で韓国に優位性があったとしても、もし日本企業が合理的な判断を下すならば、今後は日本企業としても、「法的基盤の崩落」をビジネスリスクとして織り込まざるを得なくなります。
つまり、相手の国は国際法を無視して日本企業にわけのわからない損害賠償を命じる可能性が出てきたわけですし、もし自社がそのような訴訟の被害に遭ったとしても、日本政府としては守り切れないからです。
WTO敗訴判決の思わぬ効果
これに加えて、最近の日韓関係では、もう1つの「事件」が発生しました。
韓国政府が2013年9月に日本の福島県など8県の水産物の輸入を禁止した措置を巡り、WTOは日本政府の訴えを事実上退け、韓国側の事実上の逆転勝訴を言い渡したのです。
これについて当ウェブサイトでは『WTO敗訴は日本に手痛い打撃だが、過度に悲観する必要もない』のなかで、「後世からは、日韓関係が崩壊に向かうなかで発生したさまざまな出来事の1つとして記憶されるのではないか」と申し上げました。
しかし、もう1つ、重要な意味があります。
それは、国際社会が必ずしも法律を守る日本の味方となってくれないかのうせいがある、という事実です。
もし日本政府が今回の「徴用工判決」を巡り、国際司法裁判所(ICJ)などで韓国と国際訴訟をやることになり、日本政府側が敗北でもしようものなら、今後、韓国は日本企業から損害賠償金を取りたい放題取れる、ということになりかねません。
もしそんなことになれば、どうなるでしょうか?
「日本政府は日本企業を守り切れない」、「日本企業は韓国から自衛する必要性が出てくる」、ということです。あるいは、現時点において、すでにそのリスクを日本企業が織り込み始めているのかもしれません。
これからもっと悪化する
会合の開催見送りは「兆候」の1つに過ぎない
日本の大企業経営者は今まで、惰性で「日韓関係は大事だね」、「日韓が未来志向で動くためには民間の会合も大事だね」、「じゃぁうちの会社も今年も昨年と同額の100万円を寄付しようか」、などと短絡的に考えていた可能性があります。
しかし、さすがに昨今の状況で下手な会合にカネを拠出すれば、株主から何を言われるかわからない、ということに気付いたのかもしれません。
おそらく、日本人の多くは、韓国とは「対話」をしても無駄だ、ということに、やっと気付いたのではないかと思います。
徴用工判決問題などは、その判決が出る前の時点から、日本側の識者らは韓国側の知人・友人らに対し、「この判決が出ると本当に日韓関係が壊れるかもしれない」と警告して来ました(関連する報道は検索すればいまでもいくつか見つかると思います)。
しかし、そのような対話が行われていたにも関わらず、結局、判決は出てしまったのです。
これには、日韓関係の未来を信じて真摯に韓国との対話に取り組んできた人ほど、落胆も大きかったのではないでしょうか?
韓国の本質は「ウソツキ国家」
それだけではありません。
昨年12月20日に発生した、韓国海軍駆逐艦による自衛隊哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件も、日本の一般国民の間で韓国に対する不信感を高める事件だったことは間違いないでしょう。
この事件を巡っては、「日本の排他的経済水域(EEZ)内で韓国軍が自衛隊機に準戦闘行為を仕掛けてきた」という点の深刻さもさることながら、「その海域で韓国の海軍がいったい何をしていたのか」という不信感も、日本の「知韓派」の間で強まったのではないでしょうか?
それだけではありません。
韓国政府は当初、わけのわからない言い訳に終始していたものの、途中から「やってない」とウソをつき、さらには「むしろ日本が低空威嚇飛行を仕掛けてきた」などとする逆ギレに転じました。韓国がいう「やってない」という主張がウソだという証拠が、あれだけたくさん突き付けられているにも関わらず、です。
私自身、レーダー照射事件そのものよりも、むしろその後の韓国の国を挙げた異常な行動が、多くの日本の一般国民に強く認識されたことの方が、重大な意味を持っていると考えているのです。
言論NPOの思い上がり
さて、冒頭に紹介した言論NPOの説明文にも、実は非常に大きな問題があります。
言論NPOによれば、問題の会合の目的については、次のように説明されています。
「未来志向でオープンな議論を行い、メディアを通じて両国民に発信することによって、世論を動かすことにより状況を変えることを目的に開催している」(※下線部は引用者による加工)
「世論を動かす」!
何ともまた思い上がった発想です。
現代社会はインターネット環境が普及し、また、韓国メディアも日本語版ウェブサイトを通じて日本人に対してダイレクトに情報を発信していますし、その気になれば韓国メディアの韓国語版のニューズサイトをウェブ翻訳しながら読むことだって可能です。
もはやマスコミなどが「報道しない自由」を駆使するなどして韓国の悪行を隠すことができなくなったのと同様、言論NPOごとき団体が発信する歪んだ情報でなくても、あるがままの韓国の姿が日本国民にダイレクトに伝わっているのです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ただ、言論NPOがこの会合を開催しようとして、結果的に開催できなかったという事実が残ることは、非常に良いことです。なぜなら、「資金不足で開催できない」という事実自体が、日本から韓国に対する、きわめて重要なメッセージだからです。
だいいち、今まで日韓が対話をして、何か日韓間のトラブルを未然に防ぐことができたかといえば、その答えは「NO」です。
むしろ日本は韓国を「戦略的に放置」し、韓国が日本企業に対して異常な行動を取り続けることで、日本企業が自衛的に韓国とのビジネスを絞るなどの形での「セルフ経済制裁」が実現することの方が大切ではないかと思います。
また、日本政府はなぜか韓国に対する積極的な経済制裁には乗り出していませんが、目に見えないところで韓国企業に対する行政手続の厳格化などの「サイレント型経済制裁」を強化しているとの報道もありますし、韓国が困ったときにわざと助けないという「消極的経済制裁」も発動されるでしょう。
それに案外、日本にとって韓国のビジネス上のつながりは大きくありません(『「カネ」から眺めた日韓関係:日本にとって韓国は2%の国』参照)。
日本が韓国から距離を置くことは、歴史の必然のようなものなのかもしれませんね。
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日本はサイレントマジョリティの国かもしれませんね。
はっきり見えないながらも、じわりじわりと日本人の中に韓国は信用できない国という評価が浸透していき、それが少しずつ具体的な行動として表れていく。歩みは遅いですが着実で揺るぎない面があるかと思います。
余談ですが、私の祖母は「アメリカと戦争をしたって勝てるわけがない。」と言っていたそうです。ひょっとするとそれが当時の日本のサイレントマジョリティだったのかもしれません。
原爆を2発も落とされて徹底的にいたぶられたのに、日本にアメリカへの恨みが残っておらず、むしろ親米的であるのは、そういうサイレントマジョリティが存在したせいなのかもしれないと思ったりもします。
最後になりますが、25日に小生のブログの韓国関係の記事を紹介させていただきましたが、お陰様ででたくさんの方にお越しいただいています。新宿会計士さんの威力の凄まじさを感じさせられました。
これからも秀逸な記事で我々の気付きを促していただければ幸いです。
約束を守らない国と対話しても無意味でしょ。そこで何か決まっても韓国側はそれに従わないことがわかっているので努力がすべて無駄になる。
どうせ儲けが出ないからやりたくなくなったんでしょう。
「開催しないけど今までもらった寄付金はそのまま持ち去りますよ」という前振りではないでしょうか。
イベントへの賛否はともかくも、主催団体として資金計画が温すぎるってことですよね、昨今の日韓関係を考えれば予想できない事態ではなかったでしょうに。
厳しい日本の世論を変えたいのは韓国(人)やそのシンパの国内政党・団体だろうから、そっち方面に集中的かつ強力に“おねだり”すればいいんじゃないの?(笑)
「言論NPO」の「日韓未来対話」が資金不足に陥っている件、大変感慨深く読ませてもらいました。
日本人も、ついに覚醒したのかもしれません。
あれほどの事件が連続して、それでも寄付金を出すとなれば、よほどの間抜けな個人か惰性で予算を組んでいる企業かと個人的には思いますが、強固な親韓派層はもともと多くなかったということなのでしょうか?
ただ、日本人はすぐに忘れてしまう傾向があるので(この辺りはお隣さんとは真逆)、数年経って「日韓友好」などと言いだす個人や団体が息を吹き返さないように、隣国の習性についての周知徹底を継続しないといけないと思います。
その点では、次から次に刺激を与えてくれる(!)文大統領には感謝しないといけません。勲章でもあげないといけないかも。
旭日章ですね
>旭日章ですね
彼らの大好きなデザインですものね。
座布団一枚!
嘘一等旭日大綬章ですな。
私の様な単純な人間とは違い、いつも冷静な新宿会計士様の文章にも最近は徐々に怒りや苛立ちが滲み出て来ている様に見えますね。
日常では口に出す事が出来なくとも、おそらくは日本人のほぼ全てが特定亜細亜の某隣獄に同じ様に思っているのでしょう。
個人の経験談で恐縮ですが、私がまだ若い空挺隊員であった時に見た第1空挺団普通科群の某中隊が(現在は普通科群は発展解消し大隊編成になりました)行っていた待ち伏せの訓練を思い出します。私とて空挺の陸曹(軍曹)一般人とはまるで違う観察力があったのですが道路沿いに小隊単位で展開した隊員達の姿は車両を運転していた私にはおよそ30mに近づく迄確認出来ませんでした。気がつくと死地にいました。
隣国との関係が同じ様な状況に思えます。ただ隣国は訓練中の空挺隊員とは違い何の注意もなく幾重にも張られた大規模な罠にイケイケで突っ込んで行っている様に思います。
駄文にて失礼しました。
空挺ってすごいね。音もたてずに人を殺せそう。私には無理だな。
韓国の企業が金を出せば良いじゃんね。
百聞は一見に如かず
百見は一考に如かず
百考は一行に如かず
百行は一効に如かず
百効は一幸に如かず
百幸は一皇に如かず
聞くだけでなく、実際に見てみないとわからない 見るだけでなく、考えないと意味がない 考えるだけでなく、行動するべきである 行動するだけでなく、成果を出さなければならない 成果をあげるだけでなく、それが幸せや喜びにつながらなければならない 自分だけだなく、みんなの幸せを考えることが大事
「言論NPO」の「日韓未来対話」が資金不足となり、中断されることは大変意味があると思います。
みんなの幸せを考えることが大事ですから・・・・関わりあいたくないもん!
ありがとうございます。
勉強になりました。
ノートにメモしました。
まだ二ヶ月も先の話です。今時韓国に工場を建てる企業もあるくらいですから、気前よく寄付金を出してくれる企業が表れるかもしれません。
この連休中に日本人が渡航する外国の第一位は韓国だそうです。日本人が一番好きな外国は韓国と言うことになります。個人でも寄付金を出してくれる人がいるかもしれません。
私は、実際に「日韓未来対話」が中止と発表されるまで、悲観的に未来を予想します。
企業が金を出すのは単に嫌がらせをしないで下さいと言う事では無いですかね、未来志向で実績が有れば株主にも説得は十分可能に成るでしょう。
企業は未来志向では無くなってきていると言う事と、口先未来志向とはソリが合わないのは主さんの仰有る通りだと思います。