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岩屋防衛相の「問題発言」 日本の思いが韓国に届かないわけ

朝日新聞は昨日の電子版記事で、火器管制レーダー照射事件以来途絶えていた日韓の防衛交流が復活すると報じました。これを受けて韓国メディア『中央日報』(日本語版)にも関連記事が掲載されています。とくに、岩屋防衛相が、日韓間で「しっかりと意思の疎通を図っていく環境が徐々に生まれつつある」と述べたとされる点について、一部の読者からは批判の意見も書き込まれていますが、私が考える岩屋氏の「問題発言」はこの部分ではなく、むしろ「日本の思いは韓国に伝わっていると思う」と述べたくだりの方ではないかと思います。

日米韓3ヵ国連携の破綻を誰が言い出すか

昨年12月20日に発生したとされる、韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊P1哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件を巡っては、結局、現時点に至るまで、韓国側からの謝罪はなされていませんし、それどころか、「むしろ海自機が低空威嚇飛行してきた」と、責任を日本になすりつけて来ています。

日本国民の1人としての正直な感想を申し上げれば、私はこうした韓国の不誠実な対応に対し、腹が立って仕方がありませんし、ガツンと鉄槌を下してほしいという気持ちが非常に強いことも事実です。

ただ、『名著『米韓同盟消滅』でレーダー照射問題を読み解いてみる』などでも申し上げたとおり、私自身は、日韓双方(あるいはこれに米国を加えた3ヵ国)が、「米韓同盟」「日米韓3ヵ国連携」という枠組みの破綻を「誰が言い出すか」というゲームを行っていると考えています。

もしこの私自身の仮説が正しければ、韓国に対して腹が立つという気持ちをグッとこらえ、表面上は「日米韓3ヵ国連携が大切だ」などと言いながら、来たるべき「日韓関係破綻」に向けて、粛々と準備を進めるべき局面です。

もちろん、日本は韓国を経済的に破綻させるだけの能力を持っていますし、韓国の不法行為に対して、いずれ何らかの経済制裁を発動するタイミングは到来するでしょう。

また、最近の韓国の情勢を眺めていると、韓国自身が北朝鮮の核武装を幇助している疑いは濃厚であり、「日本政府による経済制裁」以前に、わが国は官民挙げて、徐々に韓国から距離を置くという措置を始めるべきでしょう。

中央日報「岩屋氏:意思疎通を図る環境作られる」

ただ、現段階では、あくまでも表面上は「日米韓3ヵ国連携が大切だ」と言い続けるのは有益ですし、毒にも薬にもならない最低限の日韓防衛交流を続ける分には悪い話ではありません。

そして、少なくとも現在の日本の防衛省は、表面上で見る限り、「日米韓3ヵ国連携が大切だ」という姿勢を崩していないように見受けられます。その証拠が、昨日、朝日新聞に掲載された、この記事です。

海自セミナーに韓国参加 レーダー問題後の交流公表は初(2019年2月19日17時35分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

『朝日新聞デジタル』(日本語版)によると、海上自衛隊幹部学校が25日から開く「アジア太平洋諸国海軍大学セミナー」に、中国から6年ぶりに海軍大佐1人が参加するほか、韓国からも海軍中佐1人が参加するのだそうです。

このセミナーは(おそらくアジアを中心とする)18ヵ国の海軍大学教官らを招いたもので、今年で22回目を迎えるのだそうですが、朝日新聞は「昨年12月の(レーダー照射)問題発生以来、海自が日韓の防衛交流を公表するのは初めて」としています。

この朝日新聞の報道が事実かどうかは、現時点ではよくわかりません。

ただ、この朝日新聞の19日の報道を受け、韓国メディア『中央日報』(日本語版)にも、こんな記事が掲載されています。

海上自衛隊の国際行事に韓国海軍参加へ…レーダー問題後初めて(2019年02月20日11時25分付 中央日報日本語版より)

(※中央日報は「日本で開かれる海上自衛隊主催の国際行事に韓国海軍の幹部が参加すると、朝日新聞が20日報じた」と記載していますが、日付がずれている理由は、ウェブ版と紙媒体の掲載タイミングの違いによるものだと思います。)

中央日報はこの朝日新聞の報道をベースとしつつ、次のような情報を付け加えています。

岩屋毅防衛相は韓日間の防衛協力が改善する兆しが表れていると述べた。岩屋防衛相は19日の記者会見で、韓国側から目につく反応はないとし、「疎通を図る環境が徐々に作られている」と主張したと、日本メディアは伝えた。

なんと、岩屋氏が韓国との意思「疎通を図る環境が徐々に作られている」などと述べた、ということです。何と弱腰なのでしょうか!そして、『中央日報』(日本語版)の読者コメント欄には、

何しに来るの? 岩屋お前は馬鹿か?」(※原文ママ)

という具合に、岩屋防衛相や日本政府の姿勢を批判する意見もあります。

少なくとも、この記事を読んだ人としては、「韓国からあれだけ非道の限りを尽くされておきながら、岩屋(氏)はこの期に及んで韓国に恩恵を与えようとするのか?」という疑問符が浮かびます。

岩屋氏の正確な発言

では、実際に岩屋氏は、どういう文脈で「意思疎通を図る文脈が徐々に作られている」と述べたのでしょうか?

防衛大臣記者会見(平成31年2月19日(09:34~10:24))

2月19日の記者会見は、米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する長い質問のやり取りが収録されていて、極左メディアによるものと思われる不毛な質問などが延々と繰り返されているのですが、それらをすべて削除して、韓国との関係に関するものだけを抽出すると、次のとおりです(それでも長文ですが…)。

Q:韓国艦艇によるレーダー照射事案について伺います。昨年12月20日の発生から間もなく2カ月、防衛省として最終見解を公表してから明後日で1カ月となります。大臣はこの間、再発防止の重要性を強調されてこられましたけれども、その取組の進捗状況、また今後の日韓の防衛協力の見通しについてお聞かせください。

A:この問題については、先にお示しをした最終見解に尽きておりまして、私どもとしては、韓国側にレーダー照射の事実を認め、再発防止を図られたいということを申し上げております。この姿勢に変わりはありません。一方、この地域の安全保障を考えた時に、やはり、日韓、あるいは日米韓の連携というのは極めて重要なことだと思っておりますので、レーダー事案については、しっかりと私どもの考えを伝えた上で、防衛交流については、適宜適切に判断して、できるものは続けていくという方針で取り組んでおります。おそらく、韓国サイドにも私どもの思いは届いているのではないかと思いますので、先般のようなことが二度と起こらないようにしていくと同時に、防衛交流は、適宜適切に行っていきたい、続けていきたいと思っています。

Q:韓国の報道ですが、1月下旬に韓国の国防部と外交部の幹部が日本の国連軍の後方基地を30日から31日の日程で訪れるという報道がありました。日米韓の3者で火器管制レーダーの問題が討議される見通しというのが報じられていたのですが、事実関係は如何でしょうか。

A:報道については承知をしておりますが、本件は基本的に外交当局間のやり取りであるために、防衛省からお答えするのは控えるべきものだと思いますけれども、先月末、金泰珍韓国外交部北米局長による国連軍後方司令部訪問のための訪日の際に、日米韓3ヶ国の関係者による意見交換が行われたという事実はない、というふうに承知しております。

Q:日韓関係ですが、先ほど大臣は防衛協力の重要性について、韓国サイドに思いは届いているのではないかという御発言がありましたが、この数週間の間に大臣から御覧になって、日韓関係改善に向けた糸口と言いますか、そういったものは見えているでしょうか。

A:日韓の間には、他の外交案件もあります。それらはどちらかというと、更に厳しい方向に残念ながら向かっていると思います。しかし、その中にあっても、防衛当局間は意思の疎通ができている必要があると思っておりますので、私どもはそういう考えでおります。そして、韓国サイドからもレーダー照射等に関して、ここのところ目立った御発言はないと思っておりますので、しっかりと意思の疎通を図っていく環境が徐々に生まれつつあるのではないかと思っております。

Q:意思の疎通ができている必要があるとおっしゃられましたけれども、現状意思の疎通ができているとお考えなのか、意思の疎通ができる環境が生まれつつあるということですが、韓国側から再発防止に何も言及がないまま、また、そのやり取りが活発になっているということは望ましい、あるいはあり得べしといったお考えなのでしょうか。

A:防衛交流について適宜適切に判断していくと申し上げましたが、例えば、今後、行われるADMMプラスの専門部会による演習等については、釜山に海上自衛隊の自衛艦が入港しないものの、その後のプログラムには参加するということを決めましたが、そういうやり取りを日韓の防衛当局間で様々行っておりまして、そこに障害があるというわけではございませんので、そういった意味で意思の疎通は図られているということだと思います。後段の御質問は何でしたか。

Q:意思の疎通を図っていく環境だということでしたけれども、韓国側は再発防止策やそういったことを示さないまま、そのまま元に戻っていくことはあり得べしことなのでしょうか。

A:再発防止を強く求めるという、我々の姿勢に何ら変化はありませんが、防衛交流できるものはやっていく、つまりお互いに意見交換をする、意思疎通をするパイプがなければ、そういった問題についても答えが出てこないと思いますので、当然のことながら、あのような事案が二度と起こらないように引き続き求めていきたいと思っております。

岩屋氏は、確かに「しっかりと意思の疎通を図っていく環境が徐々に生まれつつある」と発言しています。ただし、文章を読んでいただければわかるとおり、日韓関係は「更に厳しい方向に残念ながら向かっている」などと述べており、文脈上は「日韓関係が厳しい中で意思疎通は必要だ」、くらいに考えて良いでしょう。

また、防衛省HPにて全文を読んでいただければわかりますが、岩屋氏は法令を正確に理解し、記者団による悪意のある質問についてもうまくかわすなど、受け答えは非常に秀逸ですし、該当する下りについても「日本が日米韓連携を破壊した」と言われないように、うまく流したものだ、という見方もできるでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ただ、岩屋氏の発言を眺めていると、レーダー照射事件などを巡り、「韓国サイドにも私どもの思いは届いているのではないか」などと述べている点については、私としては看過できません。これは、「日本から韓国との関係を壊すつもりはない」という気持ちのあらわれかもしれませんが、正直、「言いすぎ」だと思います。

私に言わせれば、あきらかに韓国当局に「日本の思い」は届いていません。いや、文在寅(ぶん・ざいいんん)大統領自身を含めた「ともに民主党」などの関係者らは、日本との関係を、むしろ積極的に破壊しようとしているといえます。

だからこそ、国会議長が「戦犯の息子の日王」などという、とんでもない侮辱発言を行うのではないでしょうか?

いまや、韓国は「無法国家」に成り果てた感があります。その「無法国家」に対して「私たちの思いが届いているに違いない」などと述べるのは、日本政府の閣僚として適切な対応なのかどうか、岩屋防衛大臣、いや、安倍総理を含めた閣僚の皆さまには、いま一度考えて頂きたいと思います。

新宿会計士:

View Comments (33)

  • >>確かに「しっかりと意思の疎通を図っていく環境が徐々に生まれつつある」と発言しています。ただし、文章を読んでいただければわかるとおり、日韓関係は「更に厳しい方向に残念ながら向かっている」などと述べており、文脈上は「日韓関係が厳しい中で意思疎通は必要だ」、くらいに考えて良いでしょう。

    問題がないわけではないですが、概ねこれには同意です。
    なら後の
    「韓国サイドにも私どもの思いは届いているのではないか
    という部分も単体で考えるのではなく、文脈から考えればよいのではないかと思います。
    そうすれば、厳しいながら意思疎通は(表面上だけでも)必要だという思いは届いたと思うということだと思います。
    なんらかのリップサービスはあったかもしれないですが個人的にはそこまで看過できないという程ではないのではとは思います。

  • ロックオンされると!!  次に起こる事態は!!!

    映画ではスティンガーだが、艦載はシースパローと状況は違ってきますが
    撃墜されるかもしれないという恐怖は同じようなのでは

    London Has Fallen 2016ヨリ
    https://www.youtube.com/watch?v=DXmbN1SZpqk

    現場で日本国の防衛を担う自衛隊哨戒機の乗組員の身になって
    その心情にに思いを寄せると 政府の対応は情けない

    哨戒機がロックオンされた!という報に接したときに真っ先に思い浮かべたのが
    この映画のシーンです。その当時あっちこちのサイトのコメント欄に張り付けました。

    何事も忘れやすいお人よしのニッポン人に警鐘として
    リメンバー・ザ・レーダー照射
    種火として残して置くことは重要と感じます。

    私はこの映画を見た時、主人公に感情移入していたこともあり、かなり衝撃的なシーンでした。

  • 思いなんか届いているわけがないじゃないのw
    こんな甘っちょろい防衛大臣でいいのかね

  • この手のマスゴミの切り貼りは、最近もネットでは既に話題になっていましたが、産経新聞も取り上げました。

    https://www.sankei.com/sports/news/190214/spo1902140029-n1.html
    「がっかり」だけではなかった 桜田五輪相発言全文

    まあ、これで闘わないで謝罪した桜田五輪相はそもそも政治家失格ですけどね。
    失言が問題というより、筋が通っていない人格ですから。

  • 今日の自衛隊機行方不明、隊員海上で発見はキナ臭いね。韓国の駆逐艦が撃墜した可能性は無いのか?あったら激変だね。

  • 益々御盛況おめでとうございます。今や韓国発のネタは強烈です。ただ以前よりかの国には反日と用日しかないと見ているので大きな変化はないですね。リップサービスや曖昧さははすぐ歪曲して解釈されるので真意はともかく失言に分類されるでしょう。

  • 岩屋防衛大臣の発言は「韓国向け」のつもりなのでしょうが、国内向けとしてはダメダメです。しかも「韓国向け」としても通じていません。

    国内向けとして何がダメかというと、国民の怒りを感じての発言とは見えないからです。国民の怒りを感じてもいないし、国民の怒りを代弁するつもりもないし、国民の怒りをなだめるつもりもなく、ひたすら韓国との関係をどうするかだけに腐心しています。大臣職としてはそれでもよいのですが、政治家としては、次の選挙で得票が減りますし、所属政党である自民党の支持率を下げます。

    まあ、思う思わないの主観の問題ですが、「私は」岩屋防衛大臣はやや無能だと思います。

  • 岩屋防衛相は、立場上、言えることと、言えないことが、あるのでしょうね。それを弱腰となじるのは、無責任だと思いますよ。
    小野寺前防衛相が、任を離れて、今まで言えなかったであろう思いを少しづつ(それも抑えてですが)口にされていることと対照的です。(笑)
    Web主さんは、とっくにお気付きだと思いますが、自称慰安婦問題についても、自称徴用工問題についても、レーザー照射問題についても、日本政府はそのスタンスを一切変えていません。

    >その「無法国家」に対して「私たちの思いが届いているに違いない」などと述べるのは、

    メッセージだと思いますよ。韓国に対してではなく、同盟国アメリカに対して「私たちは、出来得る限りの努力を韓国にしました。」という。

    日本政府は、そして、岩屋防衛相は、目下、アメリカの回答待ちなのだと推察しています。(推察ですがね。笑。)

    •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

       希望的観測かもしれませんが、岩屋防衛相がアメリカ向けのメッセージ
      として発言しているのは、あり得ることです。しかし、それだけではない
      と思います。それは

      ①今後の米朝首脳会談や米中貿易協議がどうなるか分からない以上、日韓
      の対話窓口を日本側から潰すのを避けたから。(勿論、窓口があったから
      と言って、問題解決にはならないし、対話で問題解決するつもりは、ない
      のかもしれませんが、あれば今後に役立つこともあります)

      ②まだまだ、日本国内には日韓が完全に切れることに戸惑いを感じる人も
      います。その人向けに防衛相の責務として、対話窓口が残っていることを
      示すため。(もしかしたら、安倍内閣の中でも、今後の日韓関係について
      決断できていない人がいるにかもしれません。以外と岩屋防衛相本人かも)

       駄文にて失礼しました。

  • 米国との連携もあるでしょうから防衛相の立場で言える事は限られているのかも知れませんが、国民目線ではもっと強い姿勢を見せて欲しいと感じますし、国会でもその辺を的確に指摘できる野党が必要だと思います。

  • 更新ありがとうございます。

    岩屋大臣の答弁を見ていますと、誘導尋問のような悪質な記者に対して、極力、地雷を踏まないよう言葉を選んで話していると感じました。

    前後の脈略ナシでは、韓国に甘い、ややおもねった発言と見れるでしょう。個人のキャラクターの差と言えばそれまでですが、最重要なポストだけに、コワモテの失言王よりもマシじゃないでしょうか。

    『韓国サイドにも我々の思いが届いているのではないか』との【失言】、私には「日本の受け入れ難い振る舞いを、韓国はするな!」程度に解釈しています。まあ、もうちょっとドスの効いた方を防衛大臣にすれば良かったかも知れませんけでも。

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