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あまりに惜しい鈴置説の「最終回」 鈴置先生に感謝します

かねてから日経ビジネスオンラインに連載されていた、日本経済新聞社の元編集委員でもある鈴置高史氏が執筆していた『早読み深読み朝鮮半島』シリーズが、本日の記事をもって終了するそうです。鈴置氏は日本を代表する「コリア・ウォッチャー」であるとともに、いわば「日本の宝」のような人材ですが、願わくば鈴置説をどこかほかのプラットフォームで読み続けたいものです。

鈴置氏の連載終了を惜しむ

当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』は「韓国専門サイト」のつもりではありませんが、どうしても最近、韓国の方から日韓関係を破壊しようとする動きが相次いでいるので、韓国について取り上げる機会が急増しています。

こうしたなか、私自身が非常に参考にしているウェブサイトがいくつかあるのですが、このなかで特に有用性が高いのが、日本経済新聞社の元編集委員でもある鈴置高史氏が執筆していた『早読み深読み朝鮮半島』シリーズです。

「執筆していた」と過去形で申し上げる理由は、本日付で掲載された次の記事が、最終回だからです。

韓国はレミングの群れだ(2019/01/08付 日経ビジネスオンラインより)

同記事の末尾には、

今回で「早読み 深読み 朝鮮半島」の連載を終えます。2012年1月以降、7年間も続けることができたのは、ひとえに熱心に読んで下さった皆さまのおかげです。本当にありがとうございました。

とあります。

非常に残念です。

当ウェブサイトでは以前から、「日経ビジネスオンラインの記事を読むためには日経ID等の取得など面倒な手続きが必要だが、鈴置高史氏の記事を読むためだけでも、それをやる価値がある」と申し上げて来ましたが、同連載が終了してしまうと、日経ビジネスオンラインも読者がガクンと減るのではないでしょうか?

(※もっとも、ジャーナリストの福島香織氏による『チャイナ・ゴシップス』シリーズやノンフィクション作家の松浦晋也氏による『介護生活敗戦記』など、ほかにも優れたシリーズはありますが…。)

最終回も読みごたえ十分

「レミングの群れ」とは?

さて、今回の鈴置説では、タイトルに「レミングの群れ」とあります。

鈴置氏によると、この「レミングの群れ」とは、韓国の保守系言論サイト『趙甲済ドットコム』の金泌材記者が2016年11月16日付で記した『「レミング効果」に見る「韓国人の群衆心理」』(※韓国語)という記事にあった表現だそうです。

「レミングの群れ」とは、小動物・レミングが「集団自殺する」とされていることを例えた表現です(もっとも、一部のウェブサイトには「レミングが集団自殺するというのは俗説だ」という指摘もありますが、ここではあくまでも「もののたとえ」として使っているという点が重要です)。

現在の韓国は、まさに「レミングの群れ」――そこから転じて「集団で奈落の底に落ちていく状態」――と呼ぶのにふさわしいでしょう。

今回の記事では、鈴置氏の記事を愛読している韓国の識者Aさんからが鈴置氏に対し、メールで「現在の韓国は、1960年に李承晩政権が倒れた直後の混乱状況に似ている」と述べた、というところから始まります。

考えてみれば、当時の混乱については、1961年5月に、少将だった朴正煕(ぼく・せいき)が軍事クーデターを起こし政権を打倒したことで収束しました。しかし、現在の韓国では、朴正煕に相当する人材がいないという問題があります。

クーデターしか混乱を収拾する手段がないというのも悲しい話ですが、現在の韓国には、そのクーデターですら発生させるだけの能力を持った人材、組織が存在しない、ということです。

レーダー照射に見る事態収拾能力のなさ

こうしたなかで昨年12月20日に発生したのが、韓国海軍の駆逐艦による海自所属哨戒機に対するレーダー照射事件です。

不思議なことに、韓国政府は本件を巡る言い分が二転三転しているだけでなく、最近では「自衛隊機にレーダーを照射した事実はない」などと言い張るとともに、「むしろ自衛隊機が先に威嚇飛行をしてきたのが問題だ」と「逆ギレ」する始末です。

これについて鈴置氏は、韓国メディアの関係者らの間で、自国政府に対する不信感が募っているとしつつも、それと同時に韓国メディアが自国政府に対する疑惑を一切報じていないと指摘。「事実の追及は放っておいて世論を煽り続けている」と厳しく指弾します。

この「事実の追及を放っておいて日本に対する敵愾心を煽る」というのは、まさに韓国が「レミングの集団」となっている重要な原因の1つでしょう。鈴置氏はこれについて、

こんなメディアのいい加減な姿勢がレーダー照射問題をはじめ、内政、外交のありとあらゆる面で韓国を苦境に落とし込んでいるのです。

と断じていますが、まったくその通りでしょう。

いや、私に言わせれば、こうした姿勢は「いい加減」であるだけでなく、「無責任」ですらあります。

ただ、レーダー照射事件はあくまでも「氷山の一角」であって、韓国では一事が万事、「事実を無視して感情で議論する」という傾向があります。

たとえば、「徴用工判決」(韓国の大法院が昨年10月30日、自称元徴用工らの訴えを認め、日本企業に損害賠償を命じた事件)などは、韓国が国内の国民情緒を優先するあまり、国際法をないがしろにするという無責任な国であるという事実を如実に示したものだと言えます。

日本人の「覚悟」が問われる

韓国は「奈落の底へ」

そして、鈴置説の記事の末尾は圧巻です。私の文責で箇条書きにすると、次のとおりです。

  • 米国からは同盟を打ち切られそうになっている。
  • 次に、日韓関係が悪化する中で発生したレーダー照射事件。
  • 日韓関係が悪化すれば米国との同盟はさらに危うくなる。
  • 人権蹂躙国家である北朝鮮の核武装を幇助する文在寅政権。
  • 北朝鮮だけでなく韓国も「危険な国家」と認定され始めた。
  • 国が危機にあるというのに指導層は権力闘争に没頭する。
  • 国民は政府やメディアに扇動され、「積幣清算」や「反日」に浮かれる。

そのうえで鈴置氏は、現在の韓国について、次のように断じます。

国が奈落の底に堕ちて行くのに、見動きがとれないのです。

韓国にはまことに失礼ながら、私はこの文章を読んで、李氏朝鮮末期の状態を思い出してしまいました。

あくまでも私の歴史観で恐縮ですが、日本が1894年の日清戦争、1904年の日露戦争に巻き込まれたのは、李氏朝鮮のふらふらした態度と無関係ではありませんでした。李朝末期、朝鮮(あるいは「大韓帝国」)は、清に近寄ったり、ロシアに近寄ったり、日本に近寄ったりしていたからです。

結局、日清戦争とは「東学党の乱」などを受けた朝鮮半島情勢の混乱に日清両国が介入したことが遠因ですし、日露戦争についても朝鮮半島を含めた日露間の勢力争いが深く関係しています。

現代日本への教訓:覚悟固めよ

こうしたなか、現代日本に教訓があるとしたら、やはりヨコ軸(地政学的なつながり)とタテ軸(歴史的なつながり)の双方を大切にすべきでしょう。

具体的には、歴史的に見て、朝鮮半島に独立の国家が存在した場合、周辺国の戦乱を誘うことが多い、という事実です。

古くは白村江の戦い(西暦663年、唐・新羅連合軍と日本・百済連合軍の戦い)、最近だと朝鮮戦争(1950年~53年、米韓連合軍と北朝鮮・中国義勇軍などの戦い)がその典型例ですが、あのちっぽけな半島を巡り、多くの血が流されてきたという事実を、決して軽視すべきではありません。

理想論をいうならば、朝鮮半島情勢には関わるべきではありません。しかし、地政学的に見て、日本が朝鮮半島情勢と無関係でいることは困難です。今回の記事でも、末尾で鈴置氏は次のように指摘しています。

今回の記事で紹介したAさんの指摘通り、2019年の朝鮮半島は劇的な展開が予想されます。その際、日本も何らかの形で巻き込まれるのは確実です。覚悟を固める時が来ました

まったくそのとおりでしょう。

鈴置先生への御礼

さて、今回の鈴置氏の記事で、1点、驚くべき点があります。

それは、まことに名誉なことに、ブロガーのシンシアリーさんと並んで、当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』への謝辞を頂いたのです。

『新宿会計士の政治経済評論』というサイトを主宰される公認会計士さん。日本の危機を防ごうと、専門知識をフルに発揮した評論を書いておられます。『通貨スワップと為替スワップについて、改めて確認してみる』など、大いに参考にさせていただきました。

鈴置先生。

「大いに参考にさせていただいていた」のはむしろ私の方です。

いや、「参考にさせていただく」という表現ではなく、この場合は「勉強させていただいた」という方が正確な表現でしょう。本当に感謝の言葉しかありません。

そして、鈴置氏は2018年12月14日に参議院議員会館で開かれた国際セミナー「激動する朝鮮半島情勢の下で拉致被害者救出を考える」を取材された際に、拉致被害者の家族の方々からも愛読者の方から声を掛けられたそうです。

とくに、北朝鮮による日本人拉致問題への対処は、私たち日本国民一人ひとりが「自分の問題」として受け止めなければなりません。

このように考えていくならば、まだまだ勉強させていただくことが必要であり、私はどこか他のプラットフォームなどでも、是非、鈴置氏の韓国論を読みつづけたいと思っていますし、同じように思っている日本国民は多いのではないでしょうか?

いずれにせよ、鈴置先生、日経ビジネスオンラインでの連載、本当にありがとうございました。

新宿会計士:

View Comments (27)

  • 私は、鈴置先生の韓国論を読み始めてわずか二ヶ月なのですが、その深い洞察に感銘を強く受けた者です。鈴置先生のご意見を、もはや伺うことが出来ないのかと思うと、誠に誠に残念です。

    年齢的には鈴置先生と同じ私ですが、今まで続けて来た楽器製作の仕事を、満足のいくレベルでは最早、出来ないことを二年前に実感しました。そこで仕事を趣味に切り替え、更に全く異なる分野のボランティアを始めています。

    しかしながら鈴置先生の様な極めて高い、ご見識を発表されるのには、常人の知識収集レベルでは不可能である事も理解
    出来ますので、どこか他のサイトで拝見したいという希望はありますが、まずはゆっくりと、お休み頂いてから機会がございましたら、また拝読させてください。これまでの、ご活動に敬意を表し、深く御礼申し上げて拙文を閉じさせて頂きます。

  • 早読み深読み朝鮮半島シリーズですが、会計士様のブログ紹介を契機にNBOへ登録し、毎回勉強していたので、突然の連載終了が残念でなりません。今後も何らかの形で情報発信されていく事を期待して止みません。

  • 一流は一流を知る、ということでしょう。

    本サイトが今後も左右バランスの取れた情報発信の最前線であることを強く望みます。

    その一言が心を震わし、知的好奇心を刺激する。

    オールドメディアと一線を画す書き手と読み手の交流、これこそが旧メディアには実現不可のイベントであり、一方通行にならない「知」への探求につながります。

    書いてあることの全てを支持することはできませんし、それを望んでないことも管理者の優れているところです。何に共感し、何に反対しているのか、その根拠は何か、「知」を動員し思考する。
    私を含め、多くの日本人は旧メディアから垂れ流されるone wayの情報に長い間漬かってきました。
    それはぬるま湯で居心地は悪くはなかったかもしれません。

    今、我々はお風呂から出て、着物を身に着けるべきときが来たのでしょう。

    駄文、失礼致します。

  • * 更新ありがとうございます。

    * 毎回読み応えのある鈴置氏の『〜朝鮮半島』が最終回とは残念です。今からが、本チャンなのに、、と思う方は多いでしょう。『韓国は集団自殺のレミングの群れ』言いえて妙です。

    *しかし、何らかの形で、『日本が巻き込まれる』とはっきり言われると、ちょっとドッキリします。鈴置氏の終了、ご自分の意志なのか?と変に勘繰ったりしてしまいます。でも、何処かの媒体で、また熱筆を振るわれると思います。 以上。

  • 鈴置先生もここの読者だったのかwww今までありがとうございました。分析記事面白かったです。

    自分はみずき氏のブログとここのブログ、鈴置先生の分析記事が対南朝鮮観として大変役に立ってきたのでそのうちの1つが無くなるのは大変残念です。ですが大分連中の魂胆が分かったので十分かなと思ってるこの頃。

    新北朝鮮の政治家は反米&反日&親中、親米政治家は親米&用日もしくは反日&親中、しかし日本から見れば両方ともクズで対南朝鮮外交は妥協はしてはいけないと大変よく学べました。
    本当に今までありがとうございました。

  • しかし、これから朝鮮半島情勢が本格的に動こうかというこのタイミングでなぜ連載を惜しまれながら終了されたのでしょうか。

    1. もう韓国には匙を投げた。
    2. とある筋から、公的なアドバイザーの依頼等を受けて、自由な言論活動を自粛せざるを得なかった。

    1.は考えにくく、2. じゃないのかなあ。

  •  小生は鈴置氏の記事を3年以上も拝読しております。室谷氏、黒田氏と並び所謂知韓派の重鎮だと思います。このような方々が意見を述べられなくなるのは非常に残念です。小生が韓国に在住していることもあり、今後ともどこかで韓国に対する見解を述べて頂けるよう期待しております。

     駄文にて失礼します

  • 鈴置さんのコラムから飛んできました。
    スワップのくだり参考になりました!

    鈴置さんは絶望的な朝鮮半島情勢に無念の断筆宣言にも思えてしまう無念さも感じました。
    しかし遠藤誉さんと言い「超」一人者が連載から離れていくのは寂しいです。

    • 私も非常に残念に思っております。

      特に、遠藤誉氏は鈴置氏の南北朝鮮の動向予測と違いまして、出自から基本的には中国を愛し中共に疑義を呈しているものであり、

      中国・中共の内部情報から過去・現在・未来動向の解説をしていらっしゃると。

      もちろん、福島氏の現代中国の社会状況解説も、大変参考になるのですが。

      一方、外務省の某OBの安倍氏非難のための中国・南北朝鮮の弁護記事はどの社も取上げなくなると良いのですが。

  • 毎々の執筆、ありがとうございます。

    鈴置先生の「早読み深読み朝鮮半島」の執筆が終わってしまったこと、残念でなりません。
    様々な考察、知見を元に執筆されており、小生も勉強をさせていただいておりました。
    今後もどこかで意見を拝聴できれば幸いに存じます。

    さて、小生はこのシリーズの終了を「鈴置先生は朝鮮半島における最終形態の姿が見えて、執筆する意味がなくなった」のではないかと推察しました。
    最近の南北朝鮮は一体化して動いていると感じられますし、日米から離反、レッドチームの一員として機能しているように思うのです。
    新宿会計士様のおっしゃる様に、今の日本には「資本主義グループの国防最前線」としての覚悟が求められているのかと思います。

    今年は半島で大きな動きがあると予測できますので、生で見れる事に幸せを感じたいと思います。
    (当然、日本も巻き込まれるでしょうが。)

    失礼致しました。

    追伸:新宿会計士様、先日は小生のコメント投稿ミスの修正にお手を煩わせてしまい、申し訳ありません。ありがとうございました。

  • どこに鈴置氏が、執筆やめたと言ってるか教えて欲しい。もしかして誰も読んでないんじゃない?

    • 名無し 様

      コメント大変ありがとうございます。
      さきほど他の方にも発生しましたが、問題のないコメントが勝手に「スパム」判定されるケースが増えております。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした。
      引き続きご愛読とお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

    • 名無し様

      今回、鈴置氏が執筆を終了するのは、「早読み深読み朝鮮半島」についてです。
      出処: https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/010700211/?P=4

      文末に「連載を終了する」とありますから、この「早読み深読み朝鮮半島」を終了するという事なのでしょう。
      もしかしたら別のところで連載を継続する可能性も無くはないですが、それであれば「こちらでの掲載を終了する」等の記述になろうかと思います。

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