日本の外務省高官が訪韓 外務省は韓国に変な譲歩をするな

昨日の午後から、「今週末(あるいは来週)、韓国・ソウルで日韓外務省の局長級協議が実施される」といった報道が、日韓両国のメディアから相次いでいます。報道だけでは、いかなる目的でこの協議が行われるのかは、必ずしも定かではありません。また、今回の協議が韓国側から日本に泣きついてきたものなのか、日本が申し入れたものなのかもわかりません。いずれにせよ、金杉憲治氏が訪韓するという報道が事実だとすれば、外務省としては韓国に変な譲歩をしないよう、くれぐれも留意してほしいと思います。

「日韓局長級協議」報道をどう読むか?

昨日、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に、こんな記事が掲載されていました。

今週末にも韓日局長級協議 強制徴用判決問題を集中議論か(2018.12.20 15:02付 聯合ニュース日本語版より)

聯合ニュースによれば、いわゆる「徴用工判決」を巡り、日韓両国の外交当局が「早ければ今週末にも局長級協議を開く」方針だとしています。そのうえで聯合ニュースは、韓国外交部の当局者による次の発言を紹介しています。

といっても、聯合ニュースの記事のもとになったのは朝日新聞による『徴用工、日韓局長が今週末協議』(2018/12/20 5:00付報道、ただし有料)という記事のようですが、聯合ニュースはこれについて韓国政府外交部にコメントを求めたところ、

具体的な事項については日本側と調整中だ/韓国政府は大法院判決の問題を含む両国関係の諸般の懸案について、日本とさまざまなレベルでコミュニケーションを続けている

との回答があったと指摘。

朝日新聞の記事を引用する形で、「今週末に」ソウルで韓国外交部の金容吉(きん・ようきつ)東北アジア局長と日本の金杉憲治・外務省アジア大洋州局長が協議を行う予定だとしています。

さらに、この報道のあと、日本の時事通信も、同じ話題を報じています。

来週初めに日韓局長級協議=徴用工問題など論議(2018年12月20日19時10分付 時事通信より)

時事通信によれば、韓国の外交部報道官が20日の記者会見で「日本政府と局長級協議を行う方向で調整している」と述べたとしつつ、ほかにも「複数の関係筋」の話として、23~25日に訪韓する金杉憲治アジア大洋州局長が24日頃に韓国側の金容吉・東北アジア局長らと会う見込みとしています。

これらの2つのニュースを読み比べると、「いつ会うか」という時点は異なっていますが(聯合ニュースだと「今週末」、時事通信のニュースだと「24日頃」)、金杉憲治氏と金容吉氏が会うという点については一致しています。

日韓の複数のメディアが報じた以上、「日韓局長が会談する」という点については、おそらく間違いないと見るべきでしょう。

金杉氏といえば「仏頂面の握手」

さて、金杉憲治氏といえば、韓国側当局者と仏頂面で握手をしているシーンを思い出します。これは、今年1月に金杉氏が北朝鮮情勢などについて意見交換をするために韓国を訪れた際のものですが、会談の冒頭で相手がニコニコしているのに対し、金杉氏は不機嫌そうな仏頂面です。

当時、韓国側は2015年12月の日韓慰安婦合意を蒸し返そうとしていて、日本政府側は韓国に対し、かなりのフラストレーションを感じていた時期でもあります。

それでも「北朝鮮情勢については韓国とちゃんと話し合わなければならない」という判断もあったのかもしれませんが、金杉氏の表情からは「韓国の当局者と話し合うのも嫌だが仕方がない」という雰囲気を感じるのは私だけではないでしょう。

では、この1年前と比べ、現在はどういう状況なのでしょうか?

まず、2月には平昌(へいしょう)冬季五輪の開会式で、日本の安倍晋三総理大臣や米国のマイク・ペンス副大統領を「だまし討ち」的に北朝鮮の代表者と無理やり会わせようとして不興を買うという不祥事をしでかします。

次に、4月には第1回目の南北首脳会談を実施。文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は北の残虐な独裁者・金正恩(きん・しょうおん)と手を取り合うシーンを、全世界に向けて発信。

また、日韓関係を巡っては10月11日の韓国・済州島の海軍基地で行われた国際観艦式で、日本に対して旭日旗を掲揚しないように求めるなどの非常識な要求を突き付けたことで、却って韓国は全世界から失笑を買うという事態に陥りました。

さらに、10月30日の徴用工判決、11月21日の慰安婦財団解散発表など、日韓関係を巡ってはもはや破綻寸前の状況にあります。

金杉氏が12月24日に韓国側の高官と会ったところで、何か前向きな話ができる状況であるとは到底思えないのです。もしかしたら、冒頭の握手すらないのかもしれませんね。

何を話すのか?

余談が過ぎましたが、一応、「何について話すのか」について考えてみましょう。

といっても、別に私は金杉氏の個人的な知り合いではありませんので、金杉氏に直接電話を掛けて確認する、ということはできません。あくまでも、「これまでの状況から金杉氏が相手とどのようなことを話すか」について考えてみたいと思います。

日本の外務省はいままで、ともすれば「日本が相手に対して折れれば万事うまく行く」、などと考えていたふしがあります。また、韓国側もこうした日本の「外交事なかれ主義」に対し、密かに期待しているのも事実でしょう。

ここで参考になるのが、今月初旬、朝日新聞ソウル支局長の牧野愛博氏が執筆した、次の記事です。

徴用工、複数の対応案浮上 韓国政府、基金活用や判決履行支持…(2018年12月5日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

牧野氏によれば、韓国政府内では現在、「徴用工判決」を巡っては、おおきく3つの案が検討されているのだそうです。

  • 基金の設立
  • 韓国国内の判決の履行
  • 国際仲介・裁判

このなかで韓国政府にとって一番都合が良いのは「基金の設立」です。おそらく、韓国側は「(自称元徴用工らに対する)和解・癒やしのための財団を設立するから、日本政府にも少しだけで良いから出資して欲しい」などと要求するつもりではないでしょうか?

しかし、11月に慰安婦財団の解散を一方的に宣言してしまった韓国のことです。

金杉氏の回答次第では、日本国民の怒りが日本政府に向かう可能性もありますので、金杉氏としてはこうした提案に乗ること自体は不可能でしょう。

一方、韓国国内で判決の履行をすることになれば、それこそ日韓関係は破綻してしまうかもしれません。そこで、金杉氏が今回、韓国を訪れるのは、「判決の履行をすれば日韓関係は終了するぞ」という最終通告、という可能性も浮上するのです。

あるいは、「いっそのこと国際裁判をやろうか」という提案をするのかもしれません。

いずれにせよ、金杉氏には韓国に対して下手なことを伝達して日本の国益を損ねるということをしないよう、くれぐれも注意していただきたいと思います。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 韓国在住日本人 より:

     現在の日本の世論を考えた場合、下手な駆け引きは出来ないと推測します。従って、会談後の談話と日本政府の行動が問題であり、まだ会談をする前段階ですから見守りたいと思います。

     スレとは関係ありませんが、本日よりしばし帰国します。久々に日本の食事を食べたいです。

     駄文にて失礼します。

    1. 引きこもり中年 より:

       独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

       残念ながら、日本外務省は外務省という村、または外務省内部の部局と
      いう村の和を守るためなら、(できるかどうかは分かりませんが)総理
      官邸とは関係なしに、韓国に対して譲歩の約束をしかねない存在であると
      思います。なぜなら、自分の村に対しての責任はあっても、日本国民に
      対しての責任はないからです。そして、ないはずの日本国民への責任を取
      らされる状況になれば、誰に責任があるかで揉める事態になります。(も
      しかしたら、日本企業の企業不正と同じく、村の空気の責任として、個人
      が責任を問われることを避けようとすることも考えられます)

      駄文にて失礼しました。

      1. 阿野煮鱒 より:

        おっしゃるとおり省益のためなら国を売るのも辞さないのが外務省です。これまでは、まんまと国民を騙して国を売ってきました。しかし、今回はそうは行きません。もしも韓国に譲歩した合意を取りまとめてきたら、外務省は国民の怒りを浴びて火だるまになります。

        私はそういう事態が起こることも悪くないかな、と思います。官僚にこれまでのやり方は通用しないことを体で分からせる必要があるからです。一度大火傷していただきたい。

        1. 鞍馬天狗 より:

          阿野煮鱒さんへ

          >省益のためなら国を売るのも辞さないのが外務省
          真珠湾攻撃の宣戦布告遅延の責任からして、蒸し返す必要が有ると思うよ
          一度、害務省は解体再編すべきだ
          岩倉具視からして売国奴だったと思ってるし
          日韓併合の責任も、西郷どんの”征韓論”を潰したのも岩倉具視だと思ってる
          戦争の責任を一切取らずに、生き残るってる組織は害務省だけだ

  2. 詠み人知らず より:

    何を話すか?
    最後通告のような気がします。

    話は変わりますが、もし韓国政府が差し押さえを容認した場合には、韓国に条約、約束をを守らない国とのレッテルが貼られることになります。
    約束を重視する国がそのような韓国に対してスワップを継続するか疑問のところです。
    もちろん、約束を守らない国とのスワップはリスク大なので破棄にもっていかせるような工作を日本政府がしてるとは全然思っていません。。。

  3. 匿名 より:

    Gは第六の国民の敵では

    1. 引きこもり中年 より:

       独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

       日本の外務省は、戦前の苦い記憶から(総理大臣以下の政治家も含めて)
      外務省以外のものが、外交に関与すること自体を(できれば)禁止したい
      と考えているのでは、ないでしょうか。
       もちろん、外交官が結果を出せば問題ないのですが、外交というものは
      100%こちらの要求を呑ませることは滅多にありません。そのため、不
      満足な結果がでるのが、当たり前だと開き直っているように見受けられま
      す。
       また、日本の外交官は、(同じ外交的失敗するのでも)戦略的な狙いは
      国益に沿っているが、相手国の圧力に負けて失敗する外交官と、国益より
      も(OBも含めて)外務省村の和を優先して国益を損ねる外交官に(単純
      にいって)分けらると思います。
       (韓国との交渉も含めて)日本の外交は、(外務省の役人がどうかは別
      にして)外交ができる外交官に任せたいものです。もっとも、私には数値
      化が難しい外交の評価を、どうすればよいのかは分かりません。
       どうにかして、国民の敵である外務省と、外交ができる外務省に分けた
      いものです。

      駄文にて失礼しました。

      1. 鞍馬天狗 より:

        引きこもり中年さんへ

        岩倉具視以来ズット、害務省は反日組織だよ
        西郷どんの”征韓論”を潰し、日韓併合をやったのは
        岩倉具視と害務省の責任だ
        太平洋戦争に至るまでの経過も害務省の作為を感じるし
        米国への宣戦布告文をポッケナイナイしたのも害務省だ
        一度、解体再編しないと駄目だ

  4. めがねのおやじ より:

    < 更新ありがとうございます。

    < しかし、何故わざわざ日本代表が韓国に行かねばならんのだ?向こうから来いよッ。椅子の高さと品質に差を付けれたのに(笑)

    < 仏頂面の金杉局長、今回もしかめっ面て頼んます。どうせ、韓国からのオネダリ要求か、北の時間稼ぎか。

    < せっかく来たんだ。土産は用意されてるんだろうな!まさか手ぶらで帰すことはありえないゾッ』ぐらいカマしてヨ!金杉さん。お願いします。このタイミングで行く必要は、無いと思うけど。

  5. 匿名 より:

    やはり狙いは基金の設立ですよね…仮に日本企業の基金出資が1%だったとしても、『日本に金を出させた』という事実さえあれば十分に国内世論に対応できるという考えではないでしょうか。
    そしてそれなら日本が呑んでくれるという公算があるように思えます。
    今後に及んでこんな案が出る時点で事態を完全に甘く見ているという証左でもありますが…

    1. chemist より:

      結局のところ、これに関しての韓国の本音は、お金に余裕ないから日韓請求権協定を何とかして日本に追加で支払をさせようという話で、ここだけ切り取って考えると、日本としてはなんとしても「賠償」などといった言葉でお金は出せないと思う。
      企業でも政府でもいいから「賠償」名目でお金を出すと、日韓請求権協定(+日韓基本条約)に実績という穴が空いて、請求され続ける道を開くことになる。

      お金を払うこと自体は、いろいろな名目で行われてきたことだからともかくとして、この「賠償に応じた」という穴が空く事態は絶対に看過できないってのが日本政府の考えじゃないのかなと。

      ですから、基金にお金を出すのはともかく、その名目とかは十分に精査しておく必要があるかと思います。

      まあ、北朝鮮制裁の流れを見ると、今の状況で韓国にお金を渡すこと自体、特ア以外誰もいいとは思わないと思いますし、払わないに越したことはないでしょうけど。

  6. りょうちん より:

    こちらに韓国との外交的往来が俯瞰できますが

    https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/visit/index.html

    とくに上位の外交会談でオーバーライドされないかぎり、「在韓公館長会議の出席」は例年業務でしょう。
    何を話すかはともかく、なぜ行くかに関しては深い意味はないと思います。
    竹島訓練の抗議が風物詩なのも確認できますなw

  7. 泣ける より:

    韓国軍艦による自衛隊機照射事件発生

    このことはマスコミも大々的に取り上げてもらいたいし
    首相官邸・自民党・公明党も対応策及び公式見解を発表して欲しいところ

    いよいよ風雲急を告げてきた

    しっかりした対応がない状況なら 日本の行く末が心配

  8. りょうちん より:

    https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122203784&g=pol
    政府、レーダー照射の再発防止要求へ=局長が23日に訪韓、説明に納得せず

    >既に複数のルートを通じて抗議の意を伝えており、金杉氏も厳しい姿勢で会談に臨むとみられる。

    ホントかなあ・・・。
    ちゃんと「お仕事」してきて欲しいものですが。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告