X

徴用工判決で大使一時帰国か 日韓新共同宣言無期限延期も?

韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、読売新聞は韓国で30日に予定されている「徴用工を巡る大法院判決」を前に、日本政府内で国際司法裁判所(ICJ)への提訴の準備に加え、大使の一時帰国措置などが検討されていると報じたそうです。私は、韓国で理不尽な判決が下される可能性はかなり高いと見ているのですが、日本政府は少なくとも「日韓新共同宣言」の無期限見送りなどを発動するのではないでしょうか?

徴用工訴訟のインパクト

今月30日に、韓国で「徴用工を巡る大法院(最高裁)判決」が予定されているという話題については、つい先日も『「韓国を」追いつめる事になる韓国最高裁の徴用工判決』のなかで取り上げました。

ちなみに、記事のタイトルは、元外交官として知られる某著名人のブログの『安倍政権を追いつめる事になる韓国最高裁の徴用工判決』というタイトルから拝借しました(笑)。

それはさておき、なぜこの判決が「韓国を」追いつめることになるのでしょうか?

それは、仮にこの判決で日本企業敗訴が言い渡された場合、1965年の日韓請求権協定を、韓国の司法が堂々と破った、という実績につながるからです。そうなれば、韓国は日本企業にとって、あまりにもリーガル・リスクが高すぎる国に化けます。

それだけではありません。もし韓国政府がこの判決に対し、きちんと動こうとしなかった場合には、日本政府は間違いなく、韓国政府を国際司法裁判所(ICJ)に対して提訴するでしょう。

ただし、次の韓国メディア『中央日報』(日本語版)の説明によると、韓国はICJの強制管轄権関連の選択議定書に加入していないため、日本政府がICJに付託しても、韓国政府がこれに応じなければ審理は始まらないとされています。

韓国大法院の強制徴用判決控え…日本「企業の賠償確定ならICJ提訴」(2018年10月08日07時33分付 中央日報日本語版より)

しかし、かりにそうだとしても、日本が韓国をICJに提訴すること自体、国際社会に対して「韓国は国際的なルールに従わない国だ」と宣伝する効果はありますし、現在の安倍政権だと、国際世論を喚起して韓国を追い詰める可能性はなきにしもあらずです。

日本が再び追加措置?

中央日報が報じた「読売新聞の記事」

こうしたなか、この徴用工訴訟を巡り、昨日はこんな記事も出ていました。

日本「徴用裁判、国際司法裁判所に提出する文書検討」(2018年10月22日08時52分付 中央日報日本語版より)

これによると、「日本の読売新聞の報道」として、日本政府側が韓国をICJ提訴するための文書の作成と担当職員の増員に着手している、としています(ただ、該当する読売新聞の記事をネットで探してみたのですが、残念ながら読売の記事は見つけられませんでした)。

中央日報はまた、「読売新聞の報道」を引用する形で、30日に下される判決が不当であった場合には、韓国政府の対応次第では、政府間協議の停止や駐韓大使の一時帰国なども検討していると報じています。

情報源が孫引きであるため、報道が正しいのかという点については、やや割引いて考える必要はあるかもしれません。しかし、これらの措置については、すでに前例があることも見逃せません。

過去の慰安婦像への対抗措置

その具体的な前例とは、2016年12月末に、釜山にある日本総領事館前に慰安婦像が設置されてしまった際に、2017年1月6日に日本政府が発動した4項目の対抗措置です。このうち、とくに重要なものは、次の3点です。

  • 韓国大使及び在釜山総領事の一時帰国
  • 日韓通貨スワップの協議の中断
  • 日韓ハイレベル経済協議の延期

このうち最初の措置は、あくまでも「大使の一時帰国」であって、「大使の召還」ではありません。ただ、「大使の召還」だと国交断絶の一歩手前だと言われることもあるようですが、「大使の一時帰国」も相当に深刻な措置です。

それだけではなく、このときの駐韓大使の一時帰国措置は同年4月4日まで約3ヵ月間も続き、その間の日韓両国政府間の対話チャネルは減少した格好となりました。私の記憶にある限り、駐韓大使を3ヵ月間も一時帰国させるというのは、日本の対韓外交史で異例なことです。

また、日韓ハイレベル協議は、1998年に行われた小渕恵三元首相と金大中(きん・だいちゅう)韓国元大統領の「日韓共同宣言」の付属文書により、日韓の経済関係について次官級が包括的に協議する枠組みですが、2016年1月8日の第14回協議を最後に、現時点まで途絶えている状況です。

さらに、日韓通貨スワップ協定は、『日韓スワップ「500億ドル」の怪』でも触れたとおり、韓国側では一時、「日本が多額のドルを融通してくれるに違いない!」といった期待が広まった代物ですが、結局、現在に至るまで再開されていません。

ウィーン条約第22条第2項を読んでみよう

あくまでも私の理解ですが、2017年1月の対抗措置は、あとから振り返れば、日韓関係が「特別な二国間関係」ではなくなり、「単なる普通の隣国関係」に変わった瞬間だったのかもしれません。

通常の国だと、大使館や領事館の前に、自国を公然と侮辱する銅像を建てられれば、激怒します。いや、そもそもそんな銅像を建てること自体、「外交に関するウィーン条約」に違反する行為です。

ちなみに、同条約(正式名称は『外交関係ウィーン条約及び紛争の義務的解決選択議定書』)の第22条第2項には、こうあります。

接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害または公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。

「接受国」とは、この場合は韓国政府のことです。

つまり、外国公館の威厳を侵害する構築物が設置された場合には、「外交に関するウィーン条約第22条第2項」に基づいて、ただちにこれを撤去する責任が韓国政府には存在しているのです。

なお、この条約は英語版 “Vienna Convention on Diplomatic Relations, 1961” でも、

The receiving State is under a special duty to take all appropriate steps to protect the premises of the mission against any intrusion or damage and to prevent any disturbance of the peace of the mission or impairment of its dignity.(※下線部は引用者による加工)

とあります。

つまり、このときの日本の対抗措置は、国際法に従った慰安婦像の撤去義務を韓国政府が果たそうとしないということを、国際社会に対して広く伝えることに寄与したといえるでしょう。

ドライな関係が良いと思います

日韓の特別な関係

ところで、日韓両国が国交を回復したのは1965年のことです。

当時の日本は、「東側諸国」、「共産圏」の脅威を肌で感じていましたし、核武装し、北方領土などを公然と不法占拠し続けるソ連は不気味な存在でした。そんな日本にとって韓国は、「防共」という意味では死活的に重要な相手国として認識されていたことも事実でしょう。

また、当時の韓国には、朴正煕(ぼく・せいき)大統領自身を含め、日本帝国陸軍・帝国海軍出身者や帝国大学出身者も多く、日本語を理解する世代が現役で活躍していました。このため、当時の日本政府関係者にとっては、韓国政府の高官らは「親戚」「旧友」のような親しみがあったのかもしれません。

当然、日韓関係もドライな隣国関係というよりは、むしろ、「家族を助ける」かのようなウェットさがあったのではないでしょうか?実際、日本から韓国に対して渡された、有償無償、有形無形の莫大な支援は、世界の最貧国水準にあった韓国経済を、あっという間に先進国水準に引き上げることに寄与しました。

反日は酷くなるばかり

しかし、それと同時に韓国政府は、国民に対してはきっちりと反日教育を施し、こうした理不尽なまでの反日感情が韓国社会に定着し、ときとして歴史的事実を捏造してまで日本を批判するという韓国の反日の原型が形成されてきたことも事実でしょう。

韓国の反日感情は、むしろ戦後からの時間が経過するにつれて酷くなっています。

つい先日も発生した旭日旗騒動のいざこざについては『「普通の関係」に戸惑う韓国:観艦式で将軍旗、日本に逆ギレ』などでも取り上げたとおりですが、韓国社会で初めて旭日旗に対する反発が生じたのは、終戦直後の1945年ではなく、終戦から66年経過した2011年のことです。

こうした理不尽な反日は、結局のところ、韓国社会で「日本だったらどんなにバカにしても絶対に怒らないから」という勘違いが定着していることに起因するのだと思います。

無理な特別扱いは続かない

もちろん、仲が良い国であれば、何でもかんでも杓子定規に決めるのは冷たいと思いますし、日韓の過去に照らして、韓国人が日本に対して「植民地支配の記憶」を共有することを求めてくる気持ちに寄り添う姿勢も大切だ、という議論は成り立ちます。

しかし、現在の日韓関係は、すでに「仲が良い国同士」の関係から大きく逸脱していることも見逃せません。もし友好国であれば、「慰安婦問題」「徴用工問題」などのウソを広めて相手国を糾弾したりしませんし、現在の韓国の反日は、明らかに常軌を逸しています。

そう考えていくならば、もし日本政府が「韓国がもう良いというまで謝る」という姿勢を見せた場合、日本国民から強い怒りが日本政府にぶつけられることになるでしょうし、「韓国に謝るべき」などの理不尽な主張をする新聞があれば、日本国民の読者は離れていくはずです。

いや、すでに慰安婦問題を捏造した朝日新聞社に対する日本国民の怒りは強く、私自身も普段から当ウェブサイトで「朝日新聞は廃刊すべし」、「朝日新聞社は倒産すべし」と、朝日新聞の不買を提唱しているほどです。

結局のところ、無理に韓国を特別扱いしようとしたら、どこかで外交が破綻するのも当たり前の話なのです。

見どころは2つ

さて、見どころは2つあります。

1つ目の見どころは、まずは30日に、どんな判決が下るか、です。

もし、「日本企業は道義的に責任があるが、賠償義務は韓国政府にある」といった判決になれば、両者痛み分けのようなかたちで、日韓関係を決定的に破壊することは避けられるでしょう。

しかし、それだと韓国国民が納得しないかもしれません。いや、少なくとも韓国のマスコミは判決に関わった最高裁判事を手厳しく批判するでしょうし、判事らが社会的に抹殺されるリスクもありますし、最悪の場合、判事らが韓国国民から暴行を受ける可能性だって否定できません。

このため、「両者痛み分け」という形での判決が下される可能性は、それほど高くありません。結局のところ、「日本の戦犯企業は徴用工被害者とその親族に賠償をしろ」、「賠償をさせるために日本企業の在韓国資産を凍結する」、といった判決が下る可能性の方が高いような気がしてなりません。

そうなった場合に、2つ目の見どころは、韓国政府がそれを無効化する措置を打ち出して来るかどうか、です。

ただ、先日も主張しましたが、現在の韓国政府・文在寅(ぶん・ざいいん)政権は、反日で暴走する世論を、もはやコントロールすらできていない、「史上まれに見る無能な政府」だと思います。おそらく、文在寅政府には当事者能力などありません。

そうなれば、日本政府は文在寅政権発足後、初の大使の一時帰国措置などを発動する可能性が濃厚ですし、日韓の対話も滞るかもしれません。

おそらくその対象としては、「日韓新共同宣言構想」の凍結が考えられます。

この「日韓新共同宣言構想」については今年7月時点で当ウェブサイトでも『共同通信が報道した「日韓新共同宣言」構想、その背景は?』で触れていますが、当時は「小渕恵三・金大中宣言から20周年の節目となる10月をめどに新共同宣言が発表されるのではないか」と見られていました。

しかし、現時点までで宣言の取りまとめが終わったという報道は見掛けませんが、もしかしたら、徴用工訴訟を契機に、「新共同宣言」の発表を無期限中断するつもりかもしれません。

こうした私自身の読みは当たるのでしょうか?

とりあえずは、30日をじっくりと待ちたいと思います。

新宿会計士:

View Comments (7)

  •  この徴用工問題は一般市民の間では全くと言っていいほど話題に上りません。つまり、殆どの人が関心がないか嘘だと思っています。仮に原告勝訴で賠償命令が出たとしたら、今度は誹謗中傷が原告側に集中するでしょう。その理由は慰安婦問題と異なり、韓国内で大きな市民権を得てないからです。しかも、原告側で騒いでいるのが韓国労組の連中であるため、一般市民は面白くないと思います。
     この問題は判決の内容もさることながら、判決が出た後の韓国社会の動向がさらに気になります。

     駄文にて失礼いたします

    • >>その韓国の労組は力が強い、所謂韓国では上位者にあたる存在ですから韓国国民は直接的な行動は絶対とらないでしょう。むしろそんなことをすれば徹底的に排除されかねないので内心がどうであれ労組に迎合してしまうと思われます。

  • 実は徴用工裁判は、日本国内でも裁判を行っています。
    そのことについて解説しているサイトがあったのですが、これ。

    http://www.asahi-net.or.jp/~hn3t-oikw/kaihou/No_39/039_06.html
    三菱広島・元徴用工被爆者裁判の現時点での法理論上の争点について
    足立修一弁護士

    あれ・・・なんか記憶に引っかかると思ってググったらこの人か!!

    光市母子殺害事件
    差し戻されたため開かれた2007年5月24日の広島高裁での初公判弁護で女性の殺害を「母に対する人恋しさに起因する母胎回帰」「殺人ではなく傷害致死」、殺害後の強姦行為を「死後の暴行は、生(せい)をつぎ込んで復活させるための魔術というべき儀式」、と論じた。検察側が「美人の主婦を物色した」と主張する、被告が会社の作業服を着てアパートを戸別に回った行為を、「会社を欠勤した罪悪感をまぎらわすための仕事のまねごと、つまりママゴト」、殺害した赤ん坊を床に叩き付けたのは「ままごと遊び」などとして死刑回避のために責任能力が無いようにするための主張をして弁護した。被害者の夫には「怒りを超えて失笑」、「死刑廃止活動に裁判を利用している」などと批判された。元少年が友人にあてた「少年法では死刑にならない。自分は7年経ったら仮釈放になる」という手紙の証拠からも他の弁護士にも批判されて、死刑廃止活動としての裁判利用で世論やマスコミでも批判された[3][4][5]。そのため2007年9月には、2007年5月27日放送の「たかじんのそこまで言って委員会」で橋下徹が同事件の弁護士に対し懲戒請求を行う旨の発言に対したため被告人弁護士らの主張に世間の批判が集まっていたこともあり約8000件近い請求が来た[6]。懲戒請求により業務を妨害されたとして、弁護団の今枝仁ら3人と共に橋下徹に対し損害賠償訴訟を起こした
    ------------------------------------------------
    こういう人しか受任しない様な代物だったようですね。

  • >当然、日韓関係もドライな隣国関係というよりは、むしろ、「家族を助ける」かのようなウェットさがあったのではないでしょうか?

    これは私の聞いた話で裏は取れていませんが
    当時というか最近でも日韓併合時の学友であったかたたちの同窓会もありましたし、
    外交で訪日したとき、日本のことを韓国は「内地」と呼んで支援を要請していたとのこと。
    「内地はなぜ韓国を支援しないのかっ」のように。
    日韓は異常な関係だったのです。

  • < 『日韓新共同宣言』などと、韓国との関係をさらに深めようとする行動は、大反対です。いちいち、そういう宣言を作らねばならないと言うのが、既にギスギスした関係ということ。相手に守る気が無いし。

    < 韓国と蜜月時代を作ろうと、考えている日本側は、官僚やマスゴミら日本共産党、立憲、国民民主支持者らでしょう。要は安倍倒しなら何でもいいんです。本当に親善を深めたいのは、極一部の親韓派、反日日本人(ホンマに日本人か?笑)、ぐらいかと思う(笑)。

    < 韓国の最高裁も、愚民の手前まさか玉虫色判決は出せないでしょう。

    < 『元徴用工の訴えは理解出来るし、日本政府にも伝える。が、65年の日韓基本条約で個人賠償責任は問わない事になっている。よって賠償額は韓国政府が払う』な〜んて言ったら、弱腰外交を文や康は叩かれる事間違いなし!(笑)ローソクかハンストでしょう。何を仕出かすか分からん暴徒は、夫人や親族を狙うかも知れない。

    < 愚民達を黙らすには、意識として常に下のはずの『日本落とし』しかありません。ガス抜きね。

    < 日本はそこまで読んで大使を召還する。或いは無期限日本に出張させる。

    < これが第1弾。第2弾はビザ免除は15日以内に変更、外務省による韓国渡航情報をツーランク上げ、『渡航注意、不必要な韓国行きは控える!』。第3弾はスワップは未来永劫無し、第4弾は経済危機はお互いに自助努力で乗り切り、関わり合わないと宣誓する。ーーーぐらいのパンチでいかがでしょうか?私は個人的にはこれでもまだゆるゆるだと思いますが(大笑)。

    • > 『元徴用工の訴えは理解出来るし、日本政府にも伝える。が、65年の日韓基本条約で個人賠償責任は問わない事になっている。よって賠償額は韓国政府が払う』な〜んて言ったら、弱腰外交を文や康は叩かれる事間違いなし!

      目的は”金をせびること&日本を貶めること”の南朝鮮政府と”甘い汁を吸いたい&お手てつないで仲良く取り繕う事が国を滅ぼしても外交だ”と考えている日本の売国政治家&官僚は上記の線でまとめようと画策し、裏で「日本から金をせびろう」、「キックバックを懐に入れよう」と企んでいると邪推しています。

      判決と表面的なアクションだけでなく、金の流れにも注目したいですね。