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野田聖子さん、総裁選の前に「GACKTコイン」の説明は?

最近の野田聖子氏といえば「GACKTコイン」でおなじみの仮想通貨・スピンドルの違法販売を連想してしまいます。ただ、マス・メディア各社は「報道しない自由」を乱用し、野田氏の疑惑を一切追及している気配がないのですが、そうしている間にも問題の仮想通貨業者が日本拠点を畳んでしまったようです。本日は、「ブラック社」の報道発表と新聞記事、法律の条文をベースに、現時点で明らかになっている事実とそうでない事実について、整理しておきたいと思います。

まだやってたの?

相次ぐ虚報、捏造報道で、いまやすっかり「国民の敵」と化した感がある朝日新聞に昨日、私としては非常に興味深い記事が掲載されていました。野田聖子総務相が「推薦人集めで苦戦している」とする記事です。

野田総務相、推薦人集めで苦戦 20人確保「至難の業」(2018年8月21日00時15分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

私などこの記事を読んで、まっさきに抱いた感想は、

あれ?まだやってたの?

です。

朝日新聞によると野田氏は20日、自民党総裁選に立候補するために必要な推薦人20人確保が難航している状況を「記者団に対して」明らかにしたのだそうですが、私が見たところ、朝日新聞以外には毎日新聞が記事にしているくらいで、そのほかのメディアの報道は見当たりません。

私自身、自民党総裁選は安倍総理と石破茂・元自民党幹事長の「一騎打ち」となる可能性が極めて高く、かつ、見どころは「安倍総理がどれだけの圧倒的差を付けて石破氏を打ち負かすか」だと思っていますが、それでも朝日新聞によると野田氏は「まだ一騎打ちと決まったわけではない」と述べたのだとか。

ちなみに朝日新聞によれば、

首相が、自衛隊明記などを盛り込んだ自民党憲法改正案の「次の国会」への提出をめざす考えを示したことについては、「いま、この国にとって必要なことが憲法改正かどうかというと、世論調査でも(優先順位は)大変低い」と指摘。経済政策や外交に優先的に取り組むべきだと主張した。」(下線部は引用者による加工)

としているのですが、改憲を否定すること自体、自民党の党員としては絶対にあるまじき行為です。1人の有権者としてのざっくばらんな感想を申し上げるならば、「野田聖子氏は総裁選後、石破茂氏と一緒に、とっとと自民党を出て行ってほしい」とすら思います。

ブラック社のウェブサイトを読む

GACKTコインの説明はまだですか?

さて、野田聖子氏といえば、通称「GACKTコイン」こと「スピンドル(SPINDLE)」との関連性が報じられていますが、なぜかご本人はダンマリを決め込んでおり、かつ、マス・メディア各社もこの件について追跡取材、報道をほとんど行っている様子がありません。

スピンドルを取り扱っている会社が、「株式会社BLACK STAR&CO」です。本稿では便宜上、「ブラック社」とでも呼びたいと思います。そして、スピンドルと深くかかわっているのが、著名人でシンガーソングライターの “GACKT” こと大城ガクト氏であることから、ネット上では「GACKTコイン」と俗称されています。

つまり、

  • 大城ガクト氏が「アドバイザー」として、スピンドルに密接に関わってきた
  • スピンドルを取り扱うブラック社と野田聖子氏の事務所が親しい関係にある

という2点については、のちほど示すリンクなどを辿って行けば、客観的事実としてブラック社自身が認めていることがご確認いただけると思います。

ところで、この疑惑を最初に報道したのは、意外なことに、実は朝日新聞です。

野田氏側、金融庁に説明要求 仮想通貨調査対象業者伴い(2018年7月19日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

朝日新聞の記事では

野田聖子総務相の事務所が今年1月、無登録での仮想通貨交換業の疑いで金融庁から調査を受けていた企画会社の関係者を同席させたうえで、金融庁の担当者を呼び、庁としてのスタンスなどを説明させていたことがわかった

とあります。ブラック社という社名、スピンドルという具体的なコインの名前、大城ガクト氏という個人名については伏せられていますが、これについてはブラック社自身が後日、この記事に言う「企画会社」が自社のことであると認めるプレス・リリースを発しています。

朝日新聞の報道を要約すると、

  • 1月12日…金融庁が、ブラック社に対し資金決済法違反の疑いがあると通告し、書面での回答を求める
  • 1月中旬…野田聖子氏の事務所が金融庁に対して説明を求め、「相談者」としてブラック社関係者が同席することを伝える
  • 1月30日…金融庁担当者が議員会館を訪問し、野田氏の秘書とブラック社の関係者に対し、仮想通貨を発行して資金を集める際の規制についての金融庁のスタンスなどを説明
  • 2月下旬…金融庁はブラック社に対し、資金決済法に抵触するため仮想通貨の販売を行わないよう行政指導した

という流れです。

非常に不思議なブラック社ウェブサイト

これについて公正を期するために、この報道について、当事者であるブラック社のウェブサイトを確認してみましょう。ただ、同社ウェブサイトは実に奇妙です。というのも、トップページは物凄く重たい画面(※クリック中位)であり、なぜか英語で表示されています。また、言語の選択ができるのですが、選択できるのは

  • 英語
  • 中国語(簡体字)
  • 韓国語

の3ヵ国語であり、日本語の選択はできません。

ところが、別にブラック社は「外資系」というわけでもなさそうです。というのも、私が見たところ12人の「メンバー/アドバイザー」のうち9人(すなわち全体の4分の3)は日本人だからです(そのうち1人が大城ガクト氏で、肩書きは “Asia Strategic Advisor” と記載されています)。

ところが、さらに興味深いことに、「英語版のニュース・リリース」を選んでみると、7月20日以降、すべてのニュース・リリースが英語ではなく日本語です。

  • 2018.08.09 BLACKSTAR&CO. 本社移転ならびに日本オフィス閉鎖のお知らせ(PDF)
  • 2018.08.09 報道機関よりいただきました質問状に対する回答 その2(PDF)
  • 2018.08.08 金融庁監督局総務課仮想通貨モニタリングチーム兼関東財務局理財部金融監督第6課並びに金融庁総合政策局フィンテックモニタリング室からの回答について(PDF)
  • 2018.08.01 当社に対する一部報道について(PDF)
  • 2018.07.31 報道機関よりいただきました質問状に対する回答(PDF)
  • 2018.07.20 7 月19 日付朝日新聞朝刊記事についてのご報告 (PDF)

まず、ブラック社は7月19日の朝日新聞朝刊の報道を受けて、ウェブサイト上、『7月19日付朝日新聞朝刊記事についてのご報告』と題する書面を公表。金融庁担当者とのミーティングについては次のように説明しています。

弊社が取り扱う仮想通貨 SPINDLE は、弁護士の法務意見を得た上で適法な事業運営を行なっております。平成30 年 1 月 12 日付にて関東財務局より送付いただきました文書においていくつかのご指摘を頂きましたところ、弊社が複数の弁護士より得ておりました法務意見と異なる見解でありましたため、事実関係を法務意見書を添えて平成 30 年 1 月 24 日付関東財務局宛て郵送にて報告の上、仮想通貨を取り巻く法規制やガイドラインについて関東財務局の考えをご教示いただくべく、平成 30 年 1 月 30 日付野田事務所にて、ご指導を賜った次第です。

つまり、野田聖子氏の事務所で金融庁の担当官から説明を聞いたという事実については、ブラック社としては認めているのです。

ただし、朝日新聞が「行政指導を受けた」と報じたくだりについて、ブラック社は

一部報道機関において、BLACK STAR&CO. 社が金融庁若しくは関東財務局より行政処分を受けたかのような内容の報道がありました。これについて、BLACK STAR&CO. 社が過去において一切の行政処分を受けた事実がないことを本書面にてお伝えいたします。このような報道を行なわれました報道機関に対しましては、本書をもって強く抗議申し上げ、記事の訂正をお願いし、以後、慎重な事実確認と正確な報道を心掛けていただきますよう重ねてお願い申し上げます。

と否定しています。

この点、確かに現時点に至るまで、ブラック社に対する資金決済法に基づく行政処分は出ていません。

しかし、この「一部報道機関」が仮に先ほどの朝日新聞の記事を指すならば、この点については、ブラック社の認識間違いです。なぜなら、朝日新聞の報道をよく読むと、記事原文は「行政処分」ではなく「行政指導」になっているからです。

金融庁による「行政処分」とは、法令に基づいて事業者に対し、強制力を伴った何らかの処分を下すことであり、これに対し「行政指導」とは、強制力のない指導、勧告のたぐいに過ぎません。その意味で、朝日新聞の報道は間違っているとは言えません。

事実関係をたぐっていく

ところで、インターネット上では、「GACKTコインと野田聖子(氏)は密接につながっている!」「何か不正があったのではないか?」といった指摘も見られるのですが、せっかくブラック社のウェブサイトを眺めたので、もう1つ、興味深いPDFファイルを眺めてみたいと思います。

これは、7月31日付で公表されている『報道機関よりいただきました質問状に対する回答』と称する書面です。これは、新聞社2社、雑誌社2社、個人のフリージャーナリスト1名からの質問について回答するというものです。

以下、私が興味を感じた質問と、それに対する回答を列挙してみましょう。

たとえば、「野田事務所が関わった経緯について教えてください」という質問に対しては、

弊社の社員が野田事務所に所属する秘書に個人的な相談を行ない、形式的なやり取りに留まらず仮想通貨に関する関東財務局の率直な考えを聞く機会があればと話したことから、このような場を設けて頂きました。

金融庁からの説明の場に、野田総務相の夫であります文信様も同席されていましたでしょうか」という質問に対しては

野田文信氏の同席はありません。

文信様からスピンドルを勧められる方がいることを確認しております。文信様が営業活動ななど貴社との関わりについて教えて頂けないでしょうか」という質問に対しては

ご質問にお書きいただきました「勧められる」という行為が具体的にどのような行為であるかがわかりかねますが、弊社と野田文信氏の間には何らの契約関係も存在せず、よって弊社ではその個人的な活動について、ご質問頂きました事実の有無を含めて把握をしておりません

野田聖子総務大臣の夫・文信氏が、BLACKSTARもしくはSPINDLEのプロジェクトに関与している事実はありますか。」という質問に対しては、

アドバイザーであるGACKT氏の知人であると報告を受けておりますが、弊社並びにSPINDLEとの契約関係や資本関係といった具体的関係はありません。

といった具合です。

客観的事実関係

現時点で判明している事実関係

さて、私自身、8月10日時点で『野田聖子氏のGACKTコイン疑惑をスルーするマスコミの怪』という記事の中で、この問題に言及してみました。

その際に調べた内容と、ブラック社のウェブサイトから得た情報を情報を総合すれば、客観的事実関係と憶測については、次のとおりに整理できるでしょう。

違法な仮想通貨販売に抵触する疑いがあること
  • 朝日新聞報道によると、ブラック社は昨年10月頃から独自の仮想通貨「スピンドル」を日本国内において販売していた
  • 仮想通貨「スピンドル」を運営する「ブラック社」は、日本国内において資金決済法に基づく仮想通貨交換業者としての免許を受けていない
  • 資金決済法上、内閣総理大臣(実際には金融庁)の登録を受けた者でなければ、仮想通貨交換業そのものを営むことができない(資金決済法第63条の2)
人間関係
  • スピンドルの販売にはシンガーソングライターのGACKTこと大城ガクト氏がアドバイザーとして関わっている
  • 今年1月30日、ブラック社の代表ら2人が野田聖子事務所にて金融庁の担当官から直接、説明を受けた
  • ブラック社はGACKT氏自身が野田聖子氏の夫である野田文信氏の知人であると認識している
行政処分と犯罪
  • 金融庁が現時点までに、ブラック社に対して資金決済法に基づく行政処分を下した事実はない
  • 検察庁が現時点までに、ブラック社に対して資金決済法違反に基づき刑事告訴した事実はない
  • 朝日新聞は金融庁がブラック社に対し今年2月に行政「指導」を行ったと報じている

ブラック社は資金決済法違反だったのか?

現時点までに入手した情報によれば、ブラック社としては昨年10月頃から仮想通貨「スピンドル」の販売を日本国内において行っていたことは間違いないのですが、ここでいう「販売」の定義が問題になります。というのも、資金決済法上の「仮想通貨交換」に該当すれば、間違いなく、法律違反だからです。

ここで、『資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)』の原文を読んでみましょう。

第63条の2(仮想通貨交換業者の登録)

仮想通貨交換業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行ってはならない。

第107条(罰則)

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(略)五 第六十三条の二の登録を受けないで仮想通貨交換業を行った者(略)

第2条(定義)第7項

この法律において「仮想通貨交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「仮想通貨の交換等」とは、第一号及び第二号に掲げる行為をいう。

一 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換

二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理

三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。

この条文だけを素直に読むと、ブラック社が行った行為(仮想通貨「スピンドル」の一般への販売)は第2条第7項第1号にいう「仮想通貨の交換等」に該当します。そして、第63条の2に定める「仮想通貨交換業者の登録」に違反しているため、第107条第5号の刑事罰が科せられるおそれがあります。

私が見たところ、ブラック社のウェブサイトには、この点に関する正面からの回答はないようですが、ブラック社に取材を申し込んだ4社・1個人は、この「資金決済法違反」という論点について気付かなかったのでしょうか?それとも単にブラック社がスルーしたのでしょうか?

わからないことはわからない

一方、ブラック社の説明だとすっきり納得できない部分も多々あります。

たとえば、野田聖子氏の事務所でわざわざ金融庁の担当官を呼びつけて「説明」させたこと自体、金融庁に対する「圧力」ではないか、との報道があることも事実ですが、この点についてはむしろ、ブラック社の回答から白黒つけること自体が筋違いというものでしょう。

また、野田聖子氏の夫である野田文信氏がGACKTこと大城ガクト氏と個人的な知り合いだったという点についてはブラック社が認めていますが、「野田文信氏が反社会的勢力と付き合いがある」といった一部のウェブサイトの主張については、客観的な資料で裏付けを取ることはできません。

もちろん、野田聖子氏という、自民党総裁選に出馬を目指しているほどの人物が、仮想通貨「スピンドル」の一般顧客への販売という「違法行為」を行った会社の人間を自らの事務所に招き入れ、金融庁の担当官と引き合わせたこと自体、行動としては極めて不適切です。

ただ、この点についても、彼女に対して「疑われている方がけしからん」、「無実であることを証明しろ」と要求するのは、やはり無理があります。それだと「もりかけ問題」とまったく同じ構造になってしまうからです。よって、現時点における結論としては、「わからないことはわからない」、と言わざるを得ません。

総裁選後に摘発か?

ただ、仮に今回の事例が資金決済法違反だったとすれば、これは非常に大きな問題です。

金融庁としても、金融行政を司る官庁として、仮想通貨「NEM」の流出事件以来、何かと社会的批判を浴びています。今回のスピンドルの件についても、うやむやにしてしまえば、一般国民からの信頼をさらになくすことに繋がります。

また、「JR東海のリニア新設工事を巡る談合疑惑」など、かなり無理がある犯罪をでっち上げている検察当局としても、今回のスピンドル事件については、検察に対する国民の信頼を取り戻す貴重なチャンスではないでしょうか?

とくに、「もりかけ問題」で情報を報道機関に漏らしていた疑いがある山本真千子氏のように、検察当局には何かと問題のある人物が多く、かつ、これだけインターネットが普及した世の中ですから、マス・メディアが検察の不祥事を隠蔽しようとしても、隠蔽し切れません。

今回の野田聖子氏の疑惑や、『文科省汚職と吉田・羽田両議員の疑惑、現時点での検証結果』でも指摘した立憲民主党の吉田統彦(よしだ・つねひこ)衆議院議員、国民民主党の羽田雄一郎参議院議員の疑惑などについても、検察がスルーするならば、ネットの批判は今度こそ検察に向かいます。

(というか、私自身が検察を批判していくつもりです。)

もっとも、現時点でこの事件を大々的に摘発すると、自民党総裁選に影響する、という判断が検察側にある可能性も否定できません。もし検察がこのように考えているのならば、9月の自民党総裁選が終わった後で、大掛かりな捜査が行われるのかもしれません。

だからこそ、ブラック社は日本拠点を畳んで英国に逃げたのかもしれませんが…。

新宿会計士:

View Comments (1)

  • 総裁選に出馬すると言うことは、すなわち総理大臣を目指すということなのでしょうが、そもそもこの方が閣僚になっていたという時点で自民党の内部の統制がおかしくなっているという証拠だと思います。
    昔の自民党なら、国会議員本人が元ヤクザでも、大臣にはしないくらいの良識があった。
    小泉首相の祖父は元ヤクザでしたが、逓信大臣になったときも、相当、「え、おれが大臣なんかなっちゃってもいいの」的な葛藤があったようです。まあ戦前はマスゴミが根掘り葉掘り攻撃する様な風潮はなく、また庶民からの人気もあったからこそでしょう。
    野田夫の場合、更生した人間にまで責めるのはどうかと思うので元ヤクザということよりも、現在でも半グレのようなヤクザもどきなことが問題。