先週も取り上げたラオスのダム決壊事故について、報道などをベースに、本日は現時点で判明している事実関係をまとめておきたいと思います。
目次
ラオスのダム決壊事故の続報
「セウォル号事件」とは、2014年4月16日午前、韓国・全羅南道珍島郡にある観梅島の沖合で、韓国の船会社が運営するフェリー船「セウォル号」が沈没した「事件」のことを指しています。しかし、この事件は、過積載に違法改造、検査の形骸化など、まさに「起こるべくして起きた事件」です。
この事件について、なぜ私が「事故」ではなく「事件」と呼んでいるのか、あるいはなぜ「怒るべくして起きた事件」だと考えているのかについて、詳細は『歴史に沈む韓国』などで触れていますので、どうぞ参考にして下さい。
ところで、先週、ラオスで発生したダムの決壊事故のその後の様子を眺めていると、どうも2014年4月に発生したセウォル号事件とよく似ているように思えてなりません。
この「ラオスのダム決壊事故」について、当ウェブサイトでは先週の『韓国企業が関わるラオスのダム決壊事故に見る中央日報の報道』で第1報をお伝えしています。
しかし、その後報じられている内容をまとめていくと、さまざまな意味で、まさにセウォル号事件の悪夢を思い起こさせる出来事が多々あります。そこで、客観的な報道をベースに、現時点で判明している事実関係を列挙しておきましょう。
セウォル号との類似点
韓国人の責任者が真っ先に逃げた?
まず、「史上最悪級の事故」が発生した際に、「責任者が真っ先に逃げた」という点が、過去の事例と瓜二つです。セウォル号事件のときには傾く船体から船長を筆頭とする船員たちが真っ先に逃亡しましたが、今回の事故でも、韓国人職員53人が全員、事前に避難していた疑いが出ています。
ラオスダム決壊、4日前から兆候…「韓国職員53人は避難したが…」(2018年07月26日07時56分付 中央日報日本語版より)
記事には色々と書かれていますが、結論的には今回のダム決壊で犠牲になった韓国人職員はゼロ人だった、ということです。それも、現地の村の住人を含めた人々が大量に行方不明になっているにも関わらず、です。
当ウェブサイトの先週の記事でも、おもに外信が「ダムの決壊の兆候は事前に見られていたのに、コンソーシアム側が周囲の村に避難を呼び掛けるのが極端に遅れた」ことが被害を拡大した原因であると伝えています。
今回の事故についても、行動だけを見ると、韓国人職員が現場を逃れたのは、ダム決壊よりも前の時点です。ということは、ダム決壊の兆候について掴んでいながら、それを伝え、コントロールする義務を放棄して、自分たちだけ逃亡したのではないか、という疑いを持たれても文句は言えません。
その意味で、「責任者が真っ先に逃亡する」という点で、セウォル号の「事件」とそっくりではないかと思わざるを得ないのです。
ダムの決壊原因は?
次に、ダムの決壊原因は「想定を超えて降り続いた大雨」なのか、それとも「ずさんな建築」なのか、その両方なのかについては、原因の究明が課題となるでしょう。これについて、建設に関わっていた韓国大手財閥SKグループのSK建設などは、「大雨が原因だ」としています。
しかし、次の日本経済新聞(電子版)の報道によれば、ラオスのエネルギー・鉱業相のカンマニー・インティラート氏は、26日の時点で「基準に満たない低水準の建設が事故の原因」だとする見方を示し、韓国企業側の主張と真っ向から対立しています。
ラオスのダム決壊「基準に満たない建設が原因」 ラオスエネルギー相(2018/7/27 23:25付 日本経済新聞電子版より)
もちろん、現時点では真相究明よりも被害者の救助と支援の方が優先課題ですが、この「事故初期段階で事故の原因を巡る言い訳」という構図も、セウォル号とそっくりです。というのも、セウォル号沈没事件の際も、当初、フェリー会社側は過積載などの事実を隠していたからです。
セウォル号が転覆した当時、現場海域は天候も良く、視界も良好で、水深も十分でした。このことから、悪天候による転覆・座礁ではない、ということは当初から明白であり、その後の調査で、
- 同号にはバラスト水が不足しており、また、転覆時点で上限値の4倍近い貨物が過積載されていた
- セウォル号はもともと日本製の中古フェリー船を買ってきたものだが、韓国側に引き渡されたあとに改造が施されたために重心が高くなっていた
- 転覆時に実際に操舵していたのは船長ではなく、未熟練の三等航海士だった
などの事実が判明しています。自然に考えて、未熟な三等航海士が操舵ミスを行い、バランスを崩して転覆したと結論付けるのが妥当でしょう。ちなみに「韓国軍の潜水艦と衝突した」だの、(理屈は知りませんが)「日本の安倍政権の陰謀だ」だのといった「陰謀論」が出てくる余地などありません。
支援は遅れ、犠牲者数はどんどん増える
一方、今回の事故が発生したラオスでは、情報が出てくるのが非常に遅く、先週金曜日の時点で、すでに「犠牲者数は公式発表(金曜日時点で27人)をはるかに上回るとの情報も出ています。
ラオス・ダム決壊 死者は公式発表よりも多い可能性=NGOや地元住民(2018年07月27日付 BBC日本語版より)
そして、支援活動が遅れていることが気がかりです。現地で外国メディアの取材が許されていないため、事故の被害の詳細については今ひとつ正確に伝わっていませんが、それでもBBCによれば、「激流があっという間に家を押し流してしまった」という状況だそうです。
この点も、支援・救助などの初動が遅れ、どんどんと犠牲者が増えて行ったセウォル号の事件を思い起こします。もちろん、今回、支援・救助を行う責任を有しているのは、事故が発生したラオスやカンボジアなどの当局ですが、それでも、想定外の事故に支援が及んでいないという点については深刻です。
これから何をすべきなのか?
ラオスが韓国政府の支援を拒絶し、日本に支援要請?
ところで、記事自体はやや古いのですが、こんな情報もあります。
政府、ラオスのダムの事故救助隊、ラオス政府の承認なく本陣派遣支障(2018. 07. 26. 10:39付 アジアトゥデイより【原文朝鮮語】)
これは、韓国政府が派遣を決定した事故救助隊の受入を、ラオス政府が拒絶している、というものです。先週木曜日の時点の情報によると、「軍用機などを利用するため、出発の前にラオス政府の承認が必要だが、ラオス政府が受け入れを渋っている」、という状況にあるのだそうです。
ラオス政府が韓国の支援隊の受入を拒絶している理由は定かではありませんし、また、現時点での最新状況はこれと変わっているかもしれません。ただ、自然に考えて、ラオス政府が今回の災害の被害を少なく見せようとしていて、外国の支援の受入に消極的であるという可能性があることは否定できません。
ところで、ラオス政府は日本に対する支援要請を行っており、これを受けてわが国の外務省は、7月25日の時点でラオスに対する緊急援助を表明しています。
ラオスにおける水害被害に対する緊急援助(2018/07/25付 外務省HPより)
この支援の内容は、JICAを通じてテント、毛布等の緊急援助物資を提供するというものですが、現時点で支援に「自衛隊の派遣」などは含まれていません。わが国としてももっとできることはないのか、日本国民の1人として、気が気ではなりません。
1人でも多くの方々の無事を心から祈る
さて、先ほど紹介したBBC日本語版の記事のリンクに、娘さんが行方不明になったというご夫婦の話が出てきます。私自身も幼い娘を持つ立場として、悲しさと憤りを感じざるを得ません。外国のご夫婦の話ですが、「もし自分の身の上に降りかかったら」と想像すると、身が引き裂かれる思いがします。
わが国も自然災害が多い国ですから、他人事ではありません。つい先日、わが国でも大規模な洪水被害が生じたばかりですし、似たような自然災害は次々と発生するに違いありません。災害に対する備えと、災害が発生した時の支援体制について、国民レベルで意識する必要があります。
そして、事故にお見舞いの意思を示すのに国境はありません。とにかく私が一番祈りたいことは、とにかく1人でも多くの方々が無事でいることであり、その次に被災地の一刻も早い復旧と復興です。そのことを、改めて申し添えておきたいと思います。
最後は事故の原因の徹底した究明が必要
ただ、現段階で議論すべきではないかもしれませんが、最終的には事故の原因を徹底的に究明しなければなりません。人類の歴史は失敗の歴史です。日本でも米国でも、信じられないような大事故が各地で発生して来ました。このこと自体は、ある意味で仕方がない話です。
しかし、同じ失敗を繰り返せば、それは「愚か者」です。逆に、大きな事故という失敗を繰り返さないためには、その事故の原因を徹底的に究明し、知識として残すしかありません。
まずは行方不明者の捜索と被災者の手当て、そして現地の復旧と復興が重要であることは言うまでもありませんが、人類のために、落ち着いた時点で「科学的に」、徹底的に原因の究明を行うべきです。
しかし、私が一番懸念しているのは、まさにこの点にあります。どうもセウォル号事件でいまだに「セウォル号が沈没したのは韓国の軍艦と衝突したから」だの、「アベの呪い」だの、非科学的な俗信、迷信が出てくるようです。
ましてや、事故を発生させたのが、「原因究明」が「罪の糾弾」と同じ意味を持ってしまう国の企業ですから、ますます原因究明がいい加減になってしまうのではないかとの懸念を抱かざるを得ません。
私の懸念が杞憂だったら良いのですが…。
View Comments (10)
< 更新ありがとうございます。
< ラオスのセナムノイ ダムが決壊しました。韓国のSK建設と韓国西部電力による施工です。未だに救援活動は難航しているようで、詳細が日本のメディアに逐一報道されている様子はありません。
< ここで【韓国】が絡んでいるから、即非難する訳ではありません。しかし、残念ながらあの国がタッチすると、結果は最悪になります。フェリー、橋、高層ビル、自動車、高速鉄道、、、およそまともに完成、事故無し記録更新中なんてモノは、一切ありません。
< この決壊したダムの遥か奥地に、ナムニアップダムが日本の関西電力、大林組施工で作られています。完成パースを見ると、韓国式ダムとは規模も違う、あの壮麗な「黒四ダム」を彷彿とさせます。堤の道路は半蒼穹型、
< 出力は29万KW/h、貯水量は22億立方米、これは黒四ダムの11倍にあたります。来年春完成予定ですが、韓国としては、絶対工期で負けたくなかったのがミエミエ。「パリパリ精神」で、突貫やっつけ仕事をやった。
< で、工期短縮ボーナスを2,000万ドル受けている。今回の事故後の見舞金が1,000万ドルと聞くと、『貰った分のたった半分か!怒!』と更に腹が立ちますね。
< もう韓国に、公共も私有も含めて『構造物』を作らせてはいけない。ダム、トンネル、橋、鉄道、高速道、高層ビル、自動車、船、飛行機、ヘリ、あらゆる機械文明のものを、触らせては他国に被害が及ぶ。
< その最大の原因は、『責任を負わない』体質です。【ええかげん】【手抜き】【逃げる】【他人のせいにする】。施工が不備なものに信頼は置けません。多分、今回は想定外の雨量というでしょう。
< 韓国人朝鮮人はその昔、水車小屋も作れなかった。その後は模倣だけ。こんな民族に、貧困国につけ込んで、インフラ整備など、すべて無しにすべき。出来れば日本が肩代わりしてやって欲しいです。 以上。
ラオス自体も結局スターリニズムの抜けない汚職大国。
公式発表27人って、中国共産党の真似ですよ。
しかし、これで人がいいというか間抜けな国がODAでダムを作り直すフラグが立ってしましましたねえ。
他のダムも出来上がったし、こっちもよろしくとか平気で言いそう。
朝日新聞が、こんなニュースを報じています。
https://www.asahi.com/articles/ASL7Y5JPSL7YUHBI01J.html
ラオスのダム決壊受け、韓国政府が国際緊急援助隊を派遣
でもって、ラオスのことを他にどんな風に報じているのだろうと関連ニュースというのを見たのですが見出し
>関連ニュース
>チャイナスタンダード 世界を席巻する中国式
>もしカジノが来たら? シンガポールと韓国にみる光と影
>自由なる「国家」リベルランドって?バルカン半島に建国
>済州島にイエメン人難民申請者が殺到 住民とトラブルも
>押しつけた棒、女性は気絶…ISで拷問、報復恐れる日々
どこに関連性がw。使えないサイトだなあ・・・。
一応Googleでsite: http://www.asahi.comでもニュース検索してみましたが、これを含めて4本のみ。
一本は「あのタイのNavy Sealsが!」とかどうでもいい記事で、興味自体がないようです。
あと産経は意味深なニュースを出しています。
https://www.sankei.com/world/news/180729/wor1807290030-n1.html
ラオスのダム決壊による死者は9人 地元当局が「27人死亡」から修正
この状況でまさかの下方修正。
不謹慎ですが笑ったのがこれ
https://www.nna.jp/news/show/1793690
北朝鮮がラオスへ見舞い電、ダム決壊受け
さすが平壌共同発!!仕事してたんですねw
タグが誤認識されてしまいました。site:のリンクのところは無視してください。
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
ほう、SK建設ってダム建設分野で韓国「1位の会社」らしいですね。
http://japanese.joins.com/article/519/243519.html
SK建設がだめなら韓国の別の建設会社に韓国政府がフォローを依頼するしかないでしょう。
さて、2位以下の会社はどれだけ優秀なのか楽しみです。
朝鮮戦争でも、北朝鮮軍がソウルに迫ってくると、李承晩大統領は政府も議会も軍も国民も放り出して、自分一人逃げ出しましたからね。途中で舞い戻りましたが、米軍の参戦がなければ、間違いなく北朝鮮に捉えられて処刑だったでしょう。朝鮮戦争の間、米軍の第8軍司令官マシュー・リッジウェイ将軍は、李承晩と韓国軍のだらしなさに手を焼き、回顧録で酷評しています。朝鮮戦争で戦況が逆転すると、今度は金日成が、首都を放棄して中朝国境目指して逃亡しましたが。
リーダーとなると、大統領でも船長でも途端に両班になって、ふんぞり返るが責任からは逃げるというのが、あの国のデフォのようです。
戦争に負けながら、逃げるどころか実権がないにも関わらず再び日本国をまとめ上げ、国民を復興へと歩ませたもうた昭和天皇とは、なんという違いか。昭和天皇こそ、20世紀最大の政治指導者だという長谷川慶太郎の指摘は、まさに正しい。
なるほど参考になる
この記事も面白いですよ。レコチャイですw
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https://www.recordchina.co.jp/b628818-s0-c30-d0135.html
ラオスのダム決壊に「人的要素」か、韓国は救援も遅れ―中国メディア
記事は「事故発生後、駐ラオス中国大使館は真っ先に現地の中国企業に対して安全調査を命じるとともに、被災地への可能な限りの支援を求めた。中国企業はこれに応じ、人員や物資を被災地に送り込んでいる。25日には、ラオスで人道主義に基づく任務に当たっていた人民解放軍医療部隊から32人のメンバーが選ばれ、国際救援隊として被災地入りすることが伝えられた」としている。
一方で韓国については、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が25日に30人規模の救援隊派遣を命じ、外交当局が同日午後に「24時間以内に出発する」としたものの、「26日になっても被災地で韓国の救援隊員の姿を確認することができない」とする海外メディアの報道を紹介した。
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ラオス政府が韓国人医療部隊の受け入れに難色を示したせいもあるんですが、「ほれみろ大人しく中国様のインフラ支配を受けていれば良かったのに」と言わんばかり。
またこちらの個人ジャーナリストのまとめもよく整理されていて良かったです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180731-00091318/
韓国・SK建設のダム決壊は天災、それとも人災「水力発電立国」目指すラオスで死者・不明140人
ラオス災害に関しては大手国内メディアは、また「報道しない自由」ですか?と言わんばかりに無関心ですね。
ところで、ダム板に行って勉強させていただきましたが、そもそも「ダムが豪雨で決壊」というのはダムの設計概念からしてあり得ないことなのだそうです。
というのもダムの機能は水を貯めて、放流することですが、入ってくる水量は、そのまま緊急放流する能力を持っているのが大前提で、豪雨で決壊する構造の「堤防」とは、まったく違うものだと言うことなんだそうです。
日本の今回の豪雨被害でも、この緊急放流が行われて、下流で死者が出たというので、避難誘導が適切だったか、地味に問題になっています。
ま、韓国が作っていたのは、「名状しがたいダムの様ななにか」だったということですね。
またレコチャイで申し訳ありませんが、日本のマスコミが報道しない自由を発動中な模様なので致し方ありません。
https://www.recordchina.co.jp/b629700-s0-c10-d0035.html
ラオスのダム決壊、「現場に復旧用装備がなかった」と判明=韓国ネット「安全を無視して工事?」「国の恥さらし」
個人のジャーナリストが孤軍奮闘しています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/dandoyasuharu/20180801-00091429/
ラオス決壊は土のダムで越流させた設計と管理ミス
越流させる設計(越流ダム)ではないので設計ミスではなくて、放流させなかったミスなのでは。
福一のベント操作の議論を思い出させます。
もっとも崩壊したのは越流のせいだけではなくて、施行の問題が大だったとは思いますが。
これまたすごいのが来ました。
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/31215.html
ラオスダム流失事故、背後には「メコン川開発問題」が隠れている
楽韓さんのところで既に取り上げられていますが、もうただただ卑怯。
またゲスいのが来ました。またまたレコチャイさんです。やっぱり偏向してても違った視点があるのは強い。
http://www.recordchina.co.jp/b629699-s0-c30-d0135.html
ラオスのダム決壊、韓国企業「ラオス政府や住民の意識の低さが被害拡大の原因」―韓国メディア