【朝刊】北朝鮮のペースに絶対に乗るな

6月12日の米朝首脳会談から約1ヵ月が経過する中で、私が着目しているのは、2015年12月の「日韓慰安婦合意」の教訓です。韓国人、朝鮮人の行動パターンに照らし、国際合意とは破るためにあります。そうであれば、私たち日本としても、結論は決まっています。「絶対に北朝鮮のペースに乗らないこと」、です。

だいたい見えてきた

シンガポールで6月12日に行われた、米朝両国の歴史的な首脳会談から、もうすぐ1ヵ月が経過します。

この米朝首脳会談の直後、私自身は正直、意図を読みあぐねていたのも事実です。米朝首脳会談の翌日の『米朝共同宣言のまとめと所感』や『【昼刊】米朝首脳会談、真の成果は「時間稼ぎ」にあり?』では、どうもトランプ氏が北朝鮮に対し、変な譲歩を行ったようにも見えました。

ただ、それと同時に、北朝鮮の事実上の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)に共同文書へ署名させたこと自体に意味があるという点に加え、抽象的な共同声明ながらも、米国が経済制裁をまったく解除していないことなどを踏まえると、これは一種の「時間稼ぎ」ではないか、との仮説を提示しました。

この、私自身のやや苦し紛れの解説(というよりも仮説)が、しかし、実は正しかったのではないかと思えるようになりました。というのも、現在の米国が、北朝鮮核問題が片付いていないにも関わらず、中国との貿易戦争を開始したからです。

いや、もう少し正確に申し上げるならば、米国は現在、中国と北朝鮮とイランなどを、ほぼ同時に追いかけようとしています。中国に対しては通信機器メーカー「ZTE」に対する制裁や中国製品に対する輸入関税などで追い詰める一方、北朝鮮やイランには非核化を迫る、というものです。

つまり、米国・トランプ政権にとっては、「中国ファクター」「イラン・ファクター」などが存在するため、北朝鮮を追い詰めることに特化できないでいるのです。正直、現在の米国が、「三兎を追う者」になってしまっている節もあるのですが、それにしても実に悪いタイミングで中国に対する貿易戦争を始めたものだと思います。

このような視点を持つことで、おそらく、全体像がスッキリとつながるように思えるのです。

米国は北朝鮮を理解すべき

米朝交渉の長期間の停滞とすれ違い

ただし、中国とのかかわりで朝鮮半島問題の全体像を議論し始めると、どうしても話が長くなります。そこで、米中貿易戦争、あるいは米中覇権戦争などのテーマをめぐっては、別の機会に議論することとして、本稿では「ずばり、米朝間の交渉はどうなっているのか?」という点について絞って、議論してみたいと思います。

わが国のマス・メディアは、6月12日の米朝首脳会談以降、「米国と北朝鮮は対話ムードに入った」、「日本は蚊帳の外だ」などと連呼して来ました。なかでも6月27日の朝日新聞の社説は、むちゃくちゃなことを主張しています。

(社説)ミサイル防衛 陸上イージスは再考を(2018年6月27日05時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

朝日新聞は、日本が山口県などに配備を予定している陸上イージス(いわゆるイージス・アショア)を巡り、「米朝両国は対話ムードに入り、緊張は緩和される方向になった」などと決めつけ、「北朝鮮の脅威は低下している」から「配備を見直せ」などと要求しているのです。

しかし、朝日新聞が「緊張は緩和される方向になった」と主張している割には、米朝首脳会談後、しばらくの間、米朝両国間での交渉がパタッと止まっていたことについては、忘れてはなりません。とくに、米朝共同宣言の次の下りについては、1ヵ月近くの間、たなざらし状態にあったのです。

The United States and the DPRK commit to hold follow-on negotiations, led by the U.S. Secretary of State, Mike Pompeo, and a relevant high-level DPRK official, at the earliest possible date, to implement the outcomes of the U.S.–DPRK summit.(合衆国とDPRKは、可能な限り早い時点において、今回の米国・DPRK首脳会談の結果を実行に移すために、マイク・パンピーオ合衆国国務長官と、関連するDPRK当局の高官の主導により、これ以降の協議についても実施することを確約する。)

要するに、米国側はポンペオ国務長官、北朝鮮側は実務を取り仕切る高官が、それぞれ、米朝共同宣言の事項を実行に移すための実務的な協議を行う、と約束していたのに、肝心のポンペオ国務長官の訪朝自体が実現していなかったのです。

それがやっと実現したのが、先週末、つまり7月6日(金)から7日(土)にかけてです。合意文書に「可能な限り早い時点において」とあったにも関わらず、です。この不思議な停滞にこそ、米朝交渉の本質を読むカギが隠されているのだと思います。

何を交渉して来たのか?

では、具体的にポンペオ長官が「北朝鮮の高官」、すなわち金英哲(きん・えいてつ)とのあいだで、いかなる協議を行ったのでしょうか?

これについては、実は、よくわかっていません。

分かっていることといえば、ポンペオ長官が6日から7日にかけて北朝鮮を訪問したこと、ポンペオ長官と金英哲が、記者団の前では冗談を言い合うほどリラックスして見せたこと、そして、ポンペオ長官が北朝鮮を離れた直後に、北朝鮮が米国を批判したことくらいです。

ここで、『ポンペオ長官訪日の詳細を読む』でも紹介した報道を、もう一度、引用しておきたいと思います。

非核化まで制裁とポンペオ長官、「ギャングのような」要求と北朝鮮(2018年7月8日 12:16付 ロイターより)

ロイターによると、ポンペオ氏が北朝鮮を離れた直後に北朝鮮が出した声明の内容は、次のとおりです。

「(米国から北朝鮮に対し)一方的でギャングのような非核化要求(を突きつけられた)」「非核化への我々の意思が、揺らぎかねない危険な局面に直面することになった。」

私も未熟者ながらも「コリア・ウォッチャー」の1人ですが、一般的に朝鮮人・韓国人の行動パターンに照らすと、彼らが相手を口汚く罵るときは、得てして「自分たちにとって、何か都合が悪いことがあったとき」です。そして、おそらく今回の北朝鮮の声明も、このパターンではないかと思います。

もっと具体的に申し上げるならば、

シンガポールの米朝首脳会談の合意事項を、米国側が北朝鮮に対し、厳格に守らせようとした

ことに激怒しているのではないでしょうか?

約束を破る民族

慰安婦合意と構造は全く同じ

実は、この米朝共同声明を北朝鮮が誠実に履行するかどうかを判断するうえで参考になるのは、2015年12月28日の「日韓慰安婦合意」です。これは、日本の岸田文雄外相と韓国の尹炳世(いん・へいせい)外交部長官(※肩書はいずれも当時)が口頭で取り交わしたもので、要点は次の4つです。

  • ①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感し、安倍晋三総理大臣は日本国を代表して心からおわびと反省の気持ちを表明する。
  • ②韓国政府は元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府はその財団に対し、政府予算から10億円を一括で拠出する。
  • ③韓国政府は在韓国日本大使館前に慰安婦像が設置されている問題を巡って、適切に解決されるように努力する。
  • ④上記②の措置が実施されるとの前提で、日韓両国政府は、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認し、あわせて本問題について、国連等国際社会において互いに非難・批判することを控える。

このうち、①が日本政府、安倍総理の「気持ちの表明」ですが、重要なものは、「両国政府の行動」を示した②~④です。これは、日本政府、韓国政府それぞれに、次の義務を課すものです。

  • 日本政府側:政府予算から10億円を拠出することと、国連等国際社会において韓国を非難・批判しないこと
  • 韓国政府側:ソウルの日本大使館前の慰安婦像問題を適切に解決するよう努力することと、国連等国際社会において日本を非難・批判しないこと

日本政府側は、この義務を100%履行しました。具体的には、韓国政府が設立した財団に、政府予算から10億円を拠出しましたし、また、日本は少なくとも慰安婦問題を巡って韓国を国際社会において非難・批判したりしていません。

しかし、韓国側は、この義務をまったく履行していません。具体的には、ソウルの日本大使館前の慰安婦像は設置されたままですし、韓国政府は国連等国際社会において、日本を非難・批判しまくりです。例えば、次の韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の報道が参考になるでしょう。

慰安婦問題 「人権問題として位置付けられるよう準備」=韓国外相(2018/06/18 13:41付 聯合ニュース日本語版より)

これをどう考えるべきでしょうか?

韓国・朝鮮人にとっての「国際合意」とは?

ここからはあくまでも私自身の仮説ですが、韓国人や朝鮮人は、「国際合意」について、「相手だけが守る義務を負うもの」であり、「自分たちは守らなくても良い」、と考えている節があるのではないかと思うのです。

ポンペオ国務長官が北朝鮮で何を話して来たのか、その詳細については、よくわかりません。しかし、ワシントンポストの報道などによれば、国務省のヘザー・ナウアート(Heather Nauert)報道官は、今回のポンペオ長官の北朝鮮訪問目的は、次の3点だったと述べています。

  • 北朝鮮の完全なる非核化(the complete denuclearization of North Korea)
  • 軍事的安全の保障(security assurances)
  • 朝鮮戦争での米兵の遺骨返還(the repatriation of the remains of fallen U.S. soldiers from the Korean War)

(※なお、 “assurance” の本来の訳語は「保障」ではなく「保証」ですが、私は敢えてこの下りを「保」ではなく「保」と表記しています。その理由については、『日本が「蚊帳の外」だと言っていた人たちの言い訳が聞きたい』で述べていますので、そちらをご参照ください。)

この3つの目的のうち、最初の項目については、明らかに北朝鮮が「触れてほしくない」と思っている論点です。おそらく、ポンペオ氏は、「いの一番」にこの問題に触れたのではないでしょうか?だからこそ、北朝鮮が激怒したのだと思います。

しかし、米国にとっては「シンガポールの米朝首脳会談で大筋で合意したのだから、それを実現させるための具体的な方法の詳細を詰める」という態度を取るのは、ある意味で当たり前のことです。だからこそ、米国は「北朝鮮が激怒する理由がわからない」と反応するのだと思います。

一方、日本では、北朝鮮や韓国が国際的な約束をすぐに破る国であるという事実は、一般国民にも周知されつつあります。康京和(こう・きょうわ)韓国外国部長官が国際社会で慰安婦問題を蒸し返すと宣言したのは、明らかに慰安婦合意違反ですが、私たち日本人はもはやこの程度では驚きません。

ただ、「簡単に合意を破る」というのは、韓国人や朝鮮人にとっては当然かもしれませんが、米国や日本、その他の国際社会にとっては「当然」ではありません。合意を破ればいったい何が生じるのか、彼らはこれから身をもって知ることになると思います。

朝鮮人的交渉術

正面から文句を言うのは怖い

では、どうして北朝鮮はポンペオ氏が北朝鮮を離れてから文句を付けたのでしょうか?どうして金英哲はポンペオ氏に対し、直接、怒りをぶつけなかったのでしょうか?答えは簡単。ポンペオ氏のような大柄で強面の人物に対し、北朝鮮は怖くて直接、文句を言えなかったのだと思います。

北朝鮮は戦争も弱く、経済力もない、本当にどうしようもない国です。北朝鮮が、とくに首都・平壌(へいじょう)を含め、一見するとまともな生活を送っているかに見える理由は、単純に70年以上前の大日本帝国時代につくられたインフラを食い潰しているからにほかなりません。

また、北朝鮮を代表する旅客・貨物運搬船である万景峰(まんけいほう)号は、北朝鮮が自力でこしらえたものではありません。日本に居住する在日韓国・朝鮮人らの資金と日本の技術力により建造されたものです。

さらに、平壌に走る地下鉄は旧ソ連の技術協力で作られたものですし、北朝鮮の大規模な水力発電施設は彼らが蛇蝎のごとく嫌う旧大日本帝国時代の貴重な遺産です。このように考えていくと、北朝鮮は、本当に優れた相手に直面すると、とたんに震え上がってしまうのかもしれません。

つまり、相手の顔が見えなくなれば威勢の良いことを言うのは朝鮮人の特徴ですが、おそらく土曜日にポンペオ国務長官が「忘れ物をした」などと言って平壌に引き返せば、金英哲は失禁し、卒倒していたに違いありません。

北朝鮮が日本人拉致問題解決を主張する理由

ところで、北朝鮮の非核化問題を巡っては、対北朝鮮強硬派であるマイク・ポンペオ米国務長官、ジョン・ボルトン米大統領補佐官の両名が実務面を取り仕切っていると考えて良いと思います。このため、米国が北朝鮮に変な譲歩をする可能性は低いと見て良いと思います。

一時期、日本のマス・メディアでは、「日本が蚊帳の外に置かれ、ハシゴを外され、カネだけ負担させられるのが関の山だ」、「それが嫌ならいまから北朝鮮に敵対する姿勢をやめ、すぐに方針を変換して、北朝鮮と友好関係を築くべきだ」などとするトンチンカンな意見が幅を利かせていました。

こうした意見と並んで注目されてきたのが、北朝鮮側からの日本に対するメッセージです。北朝鮮は6月から7月にかけて、国営メディアなどを通じて、日本人拉致問題については「完全に解決済み」と述べて来ています。

しかし、これは本当に北朝鮮が「拉致問題は解決済み」と思っているからそう言っているのではありません。「自ら交渉のハードルを上げて、相手に対して譲歩を促す」という姿勢の表れです。

結論は決まっている

そうなってくれば、日本や米国が、北朝鮮に対してやらなければならないことは、ただ1つしかありません。それは、

相手のペースには絶対に乗らないこと

です。

米国が北朝鮮に突き付けるべきは、「6月12日の米朝共同声明で合意した、朝鮮半島(あるいは北朝鮮)の非核化に向けて、北朝鮮が具体的に努力すること」、という1点です。

また、日本が北朝鮮に突き付けるべきは、北朝鮮の非核化に加えて「北朝鮮による日本人拉致事件の被害者全員を日本に無事帰国させることと、日本国民が納得できるように、事件の全容を解明すること」という点です。

朝鮮半島の非核化の見返りは、米国は北朝鮮を攻撃しないことであり、日本人拉致事件解決の見返りは、日朝国交正常化と経済支援です。逆に、非核化がなければ米国の北朝鮮に対する安全保障はあり得ませんし、拉致事件解決がなければ日本はビタ1文、北朝鮮に支援を支払う必要はありません。

もちろん私は、安倍総理、河野外相が、2015年12月28日の「日韓慰安婦合意」の失敗を繰り返すほど愚かだとは思いません。とくに、韓国政府側が昨年末、日韓慰安婦合意を反故にしようとした際に、安倍政権が「合意は1ミリも動かない」と言い張り、これをまったく相手にしなかったのは賢明でした。

北朝鮮に対する対応も、これとまったく同じで良いでしょう。日本側は北朝鮮に対し、ただひたすら、「日本人拉致事件を日本国民すべてが納得できるように解決し、日本国民に対して誠意を見せろ」と言い張るべきなのです。

「拉致問題の完全な解決」とは、安倍政権が考えることではありません。金正恩が日本国民に対し、誠意を見せるべき問題なのです。私たち日本国民のレベルでも、有権者として、「現状では絶対に、北朝鮮に対する支援を支払うな」という注文を付けるほどの賢明さを持っておくべきでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 細かいですが より:

    >金英哲は失禁し、卒倒していたに違いありませ

    これ、こう書き直したら?

    金英哲は卒倒し、失禁していたに違いありませ

    オシッコを漏らして倒れるよりも倒れてオシッコを漏らすのがフツーだと思う。

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