【昼刊】自分で経済支援の芽を潰す北朝鮮

当ウェブサイトではこれまで、朝日新聞を「慰安婦捏造新聞」などと称して批判して来ましたが、ごくたま~には、朝日新聞を褒めてみたいと思います。朝日新聞のソウル支局長である牧野愛博氏が発信する優れたスクープ記事を発見したからです。

朝日新聞に優れた記事!

スクープを連発する、朝日新聞の牧野愛博氏

北朝鮮核問題を含めた朝鮮半島の様々な問題を巡っては最近、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)と並んで、不思議なことに、朝日新聞からさまざまな「特ダネ」情報が出て来ます。今年5月に、こんな報道がありました。

韓国大統領府が朝日新聞を無期限の出入り禁止処分に(2018.5.18 22:54付 産経ニュースより)

これは、韓国大統領府が5月18日で、朝日新聞に対して無期限の出入り禁止処分を通告した、とするものです。産経ニュースはこれについて、朝日新聞が同日付の朝刊で、「韓国政府が4月末に北朝鮮の核兵器や核物質の国外搬出案を米国に提案していた」と報じたことを受けた措置だとしています。

国内メディアに対して直接的な言論統制をすれば国際的な批判を浴びることから、外国メディアを槍玉に挙げることで、間接的な脅しをしようとする趣旨でしょうか?もしそうだとしたら、この唐突な出入り禁止処分は、いかにも韓国政府らしい姑息な手段です。

(※余談ですが、産経新聞社の加藤達也・ソウル支局長【当時】を朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領【当時】に対する名誉棄損の疑いで刑事告訴したのも、外国メディアを槍玉に挙げて国内の言論を統制しようとした、というものではないかと思います。)

それはさておき、朝日新聞といえば慰安婦捏造報道を筆頭に、「事実ではないこと」を捏造して報道する「ウソの新聞」として、いまやすっかり有名になっている感があります。しかし、どうも朝日新聞のソウル支局長の牧野愛博氏は、次の記事も含め、わりと凄いスクープを連発している人物です。

米、核技術者の移住やデータ廃棄要求 北朝鮮は難色か(2018年5月10日05時04分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

5月10日付の記事では、米国側が北朝鮮の核開発のデータを廃棄させるとともに、核技術者を海外移住させることを北朝鮮に要求したと報じています。実際、核のCVID  ((CVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)のこと。))  を求めるのであれば、核技術者ごと北朝鮮から除去することが必要でしょう。

なぜなら、北朝鮮から核兵器、核燃料を除去したとしても、データや技術者などのノウハウが残ってしまっている状態だと、核拡散が生じかねないからです。しかも牧野氏は、「核開発に携わった最大で数千人ともされる技術者を海外に移住させる」と具体的な人数まで挙げています。

こんな記事、ほかのメディアからはなかなか出て来ません。実際、朝日新聞(というよりも牧野氏)が出禁処分になった理由は、牧野氏は韓国政府(あるいは韓国軍?)とのコネクションが相当に深く、韓国政府が危機感を覚えたからなのかもしれません。

牧野氏「拉致問題解決済み」

その牧野氏が昨日の夜、ソウル発でもう1つ、非常に示唆に富んだ記事を発信しています。

「拉致問題は解決済み」北朝鮮の金英哲氏 5月米側に(2018年7月3日18時24分付 朝日新聞デジタル日本語版より)

これは、北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)の「側近」とされる、朝鮮労働党副委員長の金英哲(きん・えいてつ)が5月末にニューヨークを訪問した際、マイク・ポンペオ米国務長官に対し、日本人拉致問題を「解決済みだ」と伝えていた、とするスクープです。

もちろん、北朝鮮側は、公式メディアなどを通じ、拉致問題は「解決済み」との主張を繰り返していますが、ポイントは、「金英哲」という具体的な高官の名前と、「5月末の訪米時」というタイミングが明示されている、という点にあります。

私が知る限り、6月12日の米朝首脳会談前後で、北朝鮮側から米国側に「拉致問題は解決済みだ」と伝達された、という情報は、これが初めてです。韓国大統領府から出禁になっていながらも情報を取ってくる取材力というのはすごいと思います。

なお、牧野氏はこの情報について、「今後の日朝交渉で有利な状況をつくるため、最も強硬な姿勢を示して日本に譲歩を促す狙い」がありそうだと述べていますが、この点についてはそのとおりでしょう。むしろ「最も強硬な姿勢を示して日本に譲歩を促す」というのは、北朝鮮と韓国の常套手段だからです。

愚かなのは北朝鮮の方?

韓国との交渉で煮え湯を飲んだ安倍政権

ところで、私の理解が正しければ、安倍政権は韓国との交渉に、これまで、相当に煮え湯を飲まされてきました。

たとえば、いまからちょうど3年前の2015年7月には、日本政府が明治期の産業革命関連施設を世界遺産登録しようとしていたときに、韓国政府が「朝鮮人強制徴用工問題」なるものを持ち出してきて、これを妨害しました。

また、2015年12月には、いわゆる「従軍慰安婦問題」について、日本政府側が事実上の和解金として10億円を支払うなどの措置により、「最終的かつ不可逆的な解決」で日韓両国外相が合意したにも関わらず、政権交代後の昨年12月に、文在寅(ぶん・ざいいん)政権が「再交渉」を言い出しました。

ただ、安倍政権は2015年7月と12月には失敗したものの、その後は韓国に対し、微動だにしない外交を続けています。

まず、2016年12月末に、釜山の日本総領事館前の公道上に、日本を侮辱する慰安婦像が設置された際には、その1週間後の2017年1月6日に、大使・総領事の一時帰国や日韓ハイレベル経済対話の中断、日韓通貨スワップ再開交渉の停止などの措置を発動。

また、文在寅政権誕生後の2017年12月に、韓国政府が設置した「慰安婦合意タスクフォース」の答申が出た際も、日本政府は「慰安婦合意は1ミリも動かない」とする立場を堅持し、慰安婦合意見直しの動きを拒絶しました。

このように考えていけば、「最も強硬な姿勢を示して日本の譲歩を促す」という、朝鮮民族特有のチンピラじみた恫喝術も、日本政府側が1ミリも動かなければ済む話です。

北朝鮮との交渉は?

北朝鮮との交渉も、実は、これとまったく同じです。

北朝鮮側が繰り返し、「拉致問題は完全に解決済み」と主張し続けていることは事実ですが、これは朝日新聞の牧野氏が主張するとおり、「最も強硬な姿勢を示して日本の譲歩を促す」という姿勢にほかなりません。

北朝鮮の狙いは、ずばり、「段階的経済支援」にあります。つまり、核兵器を持ったままの状態で米朝交渉を進めつつ、日本とは日本人拉致問題を巡って恫喝外交を推し進め、「拉致被害者を返してほしければ、まずは経済制裁を解除せよ」と要求する、という格好です。

これに対する日本政府の対応は、どうあるべきでしょうか?

1人も帰ってこないよりも、1人でも多くの拉致被害者が帰ってくるならば儲けもの。だから北朝鮮の言い分を全面的に飲みましょう

となるべきでしょうか?

私はこうした意見には反対です。日本はあくまでも、原則的な立場として、次の2点を繰り返すべきです。

  • 核兵器、ミサイル、生物・化学兵器その他の大量破壊兵器のCVID
  • 日本国民が納得できるよう、日本人拉致事件の全容を解明し、解決すること

日本が北朝鮮の「復興支援」を行うのは、この2点の両方が達成されたあとの話です。

実は、ここで北朝鮮政府が愚かな点が1つあります。それは、現在の日本ではインターネットが急速に普及しつつあることであり、これにより日本は民意が支配する国になりつつある、という点です。仮に安倍政権が北朝鮮の恫喝に負けて、拉致問題などで変な譲歩をしたら、安倍政権が倒れます。

安倍政権としても、この問題を巡って北朝鮮に対し、何らかの譲歩をすることなどできないのです。

落としどころは金王朝の解体

現状を改めて整理しましょう。

日本側は北朝鮮の大量破壊兵器のCVIDと拉致事件の全容解明・完全解決を求めています。これに対して北朝鮮側は大量破壊兵器を持ったままで、日本の経済制裁の解除と経済支援を求めています。また、北朝鮮にとって拉致事件とは、日本に対する交渉材料と見ている節があります。

しかし、日本にとって拉致被害者の帰国は、日本国民全体の願いであり、これを政治利用する北朝鮮という国の不誠実さは許せませんし、北朝鮮の金王朝が存在する限りは、拉致問題が日本国民のすべてに納得いくように解決されることは難しいでしょう。

このように考えていけば、結局、「金王朝が存続したままで、大量破壊兵器のCVIDと拉致事件の全容解明・完全解決が図られ、日本からの経済支援が行われる」、というシナリオは、非常に考え辛いのです。いや、日本政府がそうしようとしても、日本国民がそれを許すとは思えません。

このように考えていけば、一番すっきりした落としどころとは、金王朝の解体に他ならないのです。

金正恩個人を逮捕・拘束するのか、現地で殺害するのか、それとも平和裏にヨーロッパあたりに亡命してもらうのかはわかりませんが、少なくとも北朝鮮が金正恩の支配する国であり続ける限り、日本人拉致問題の解決は不可能ですし、大量破壊兵器のCVIDも実現しないと私は見ているのです。

ということは、現在、安倍政権が北朝鮮に対して加えている「最大限の圧力」は、北朝鮮の体制が崩壊するまで続けられるべきです。

もちろん、北朝鮮には中国やロシア、さらに最近は韓国という「金づる」がありますので、日本だけが経済制裁を続けても、北朝鮮の体制を崩壊させることは難しいかもしれませんが、少なくとも現状で北朝鮮に何らかの支援を与えるのは尚早であるという点については間違いないでしょう。

このように考えたら、北朝鮮が「拉致問題は解決済みだ」と強弁することは、いわば、自分で日本からの経済支援の芽を潰しているのと全く同じことだと考えるのは、私だけではないと思うのです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。

    < その話題の北朝鮮拉致、日本人抑留について、つい最近私は衝撃的な出会いをしました(少し大袈裟かな)。仮にお名前をAさんとしておきます。私が末端の助手として勤務する病院の患者さんです。その方が入院され、名前を知った時、私の頭は驚きどころか、雷が落ちた気持ちでした。『この名前、聞いたことがある!確か北に捕えられた、、、』。Aさんは、かなり高齢ですが意思疎通はハッキリ出来、体調に問題ありません。私から声掛けすべきか躊躇しました。昔の事を思い出すのは嫌でしょう。それに見知らぬ奴に根掘り葉掘り聞かれるのも嫌でしょう。機嫌を損ねられたらどうしよう、、。

    < でも、どうしても一言『お疲れ様でした。大変苦労されましたね』と伝えたかったので、誰も周りに居ない時を見計らって数日後、話しかけました。例え周りに誰か居て聞かれても、今の若い先生、看護師、療法士らはチンプンカンプン、何も知りません。でも、できるだけご本人を緊張させないように気を遣いました。

    私   『あのう、Aさん、大変失礼なものの言い方ですが、ずっと前、北朝鮮に捕えられた日本人の方がいました。その方のお名前がAさんとまったく同じなんですが、お知り合いではないでしょうか?』
    Aさん  『えっ。え、なに?』『あの、、、それは何で知っているんですか?』
    私   『いや、私はその方面にシロートながら首を突っ込み、北朝鮮に捕えられた方のお名前で、特徴があったので覚えてたんです。ご健在ならAさんぐらいの歳恰好かなと思いまして。すみません』。
    Aさん  『それは私ですよ。よく覚えてましたね。ここの病院には、誰一人その事を話してないのに』
    私   『エッ!ご本人?やはりというか、私も驚いてます。北に拉致されたり拿捕された方のお名前は、だいたい覚えてるんです。酷い事しますよね。あれは漁船でしたか?』
    Aさん  『いえ商船です』(冷凍船)
    私   『皆さん日本に帰国出来たんですか?』
    Aさん  『はい。できました。あの時はね、K(自民党の派閥領袖)が動いたんですよ』(Kも少しは良い事したんだな。←ボソッと独り言)。
    私   『長い事、抑留されてましたね?』
    Aさん  『うーん。そうやねえ』
    私   『今も北朝鮮にはたくさんの日本人がいますよね?』
    Aさん  『はい。あっこ(北朝鮮)はね、無茶苦茶ですわ』

    < Aさんは元商船の船長。北の策略に嵌り、北朝鮮の港で拿捕された。一般船員は保釈されたが、Aさんと機関長はスパイ容疑で解放されなかった。ロクな審議、弁護人もおらず、また自白の強要、脅迫、泣き落としで身の危険を感じたため、容疑を認めざるを得なかった。

    < そして教化労働15年を宣告された。Aさんが日本に戻れた詳細は省きますが、実に7年間も抑留、教化所暮らしだ。頭がおかしくなっても不思議ではない。また、北で起きた事、見た事は他言するなと出国時、北朝鮮がクギを刺した。日本の自宅も調べていたようだ。実際、長い間その「約束」も守った。

    < Aさんと話し終え、『本当にご苦労様でした。話を聞かせていただき、ありがとうございました』と言った。別れてから、不意に涙がこみ上げてきました。今まで以上に【北朝鮮に対する激しい怒り、無垢な日本人の運命を翻弄した金一族。決して許すまいぞッ】と心の中で誓いました。まだ幽閉されている拉致被害者の皆さん、『拉致は解決済み』などと妄言を繰り返す北朝鮮。最後の一人の消息判明するまで、ビタ一文与えてはいけない。是非、憲法改正し、戦える軍力を法制化し、軍事力使用してでも奪還して欲しいです。     以上。

  2. 農家の三男坊 より:

    産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久さんがJBpressにおいて”拉致事件は後回し?北との国交樹立を唱える議員たち”として「日朝国交正常化推進議員連盟」の活動に警鐘を鳴らしています。この議連の名簿を見ると菅直人、福島瑞穂、辻本清美等の錚々たる”似非人権派”議員の名前に交じって中谷元議員の名前がありその会合に石破茂議員が出席していたりして”どういうつもりだ!お前たちは人非人か!”と罵倒したくなったところです。

    ”利権を求めているのでしょうが絶対許せません”

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