昨日、毎日新聞の6月の内閣支持率が発表されました。これを見て私は、新聞やテレビがいっしょうけんめい「もりかけ問題」の火を点けようとしていても、次第に人々がそれに騙されなくなりつつあるのではないかと思うようになりました。
目次
「もりかけ問題」の進展
「もりかけ問題」の「もやもや感」
「もりかけ問題」とは、「安倍晋三総理大臣が友人の経営する学校法人に何らかの違法な便宜を図った疑い」のことですが、マス・メディアや野党政治家の皆さんが1年半近くも騒いでいるにも関わらず、肝心の「安倍総理が不正行為に関わった決定的証拠」は、現在に至るまでただの1件も出て来ていません。
しかし、マス・メディアの報道の仕方は、「印象操作、切り貼り、論点ズラシ」で一貫しています。これは、もともとマス・メディア自身が問題にしていた内容がインターネット上で論破されたら、「次はこれ」、「次はこれ」、といった具合に、どんどんと論点をずらしていくやり方です。
実際、加計学園による獣医学部新設を巡っては、愛媛県が5月21日に、「加計学園の加計孝太郎理事長が2015年2月25日に安倍総理と会った」とする内容の書面(というよりも怪文書)を国会に対して提出したことで、マス・メディア(とくに朝日新聞)は「疑惑はますます深まった」と大騒ぎしました。
これを受けて、今月19日に加計理事長は記者会見を開き、愛媛県の文書に記載されていた内容を否定しましたが、この「怪文書」を国会に提出した張本人である愛媛県の中村時広理事は、「安倍総理と面会したのを否定するならそのことを立証しろ」と要求しました。
加計理事長説明に「もやもや感」=中村愛媛知事、面会否定の立証要求(2018/06/20-19:21付 時事通信より)
呆れて物が言えません。
日本は法治国家であり、法治国家である以上、「疑いがある」ならば「その疑いは事実だ」と立証する責任があるのは、「疑いがある」と主張する側、すなわち中村知事の側です。それなのに、中村知事は「疑われている側が無実であると証明しろ」という無茶苦茶なことを主張しているのです。
また、前川喜平・前文科省事務次官も、加計理事長に対して「うその上塗り」と批判したそうです。
「うその上塗り」と前川喜平氏(2018/6/20 14:45付 共同通信より)
しかし、むしろ文部科学省こそ、加計学園による獣医学部新設を違法に妨害して来たという疑いがありますし、前川前次官は違法天下りの斡旋疑惑や少女買春疑惑など、素行にもさまざまな問題がありました。どうして司直がこの人物を「犯罪容疑者」として捜査しないのかが、私には不思議でなりません。
印象操作で「とにかく怪しい」
あらためて申し上げます。
「加計学園問題」とは、「岡山県にある学校法人加計学園が法律で禁止された獣医学部の新設を、加計理事長の友人である安倍晋三氏が内閣総理大臣としての権限を悪用してゴリ押しした」ことであり、もしそれが事実ならば、初めて安倍総理が「有罪」となる話です。
しかし、そもそも「獣医学部の新設を禁止した法律」などなく、加計学園「問題」なるものは、最初から成立しないのです。
いや、むしろ「獣医学部の新設を受け付けない」とする文部科学省の行政こそが法律違反であり、また、加計学園による獣医学部新設を公然と妨害し続けた前川喜平・前文科省事務次官、玉木雄一郎衆議院議員らの方こそが、獣医師会などと結託していたという「汚職疑惑」を抱えています。
しかし、マス・メディアの報道は、
- 「安倍総理は加計孝太郎理事長とお友達だった!何か違法行為があったに違いない、怪しい!!」
に始まって、そもそも論として違法行為が成り立たないという点について、主にインターネット上で論破された時点で
- 「2015年2月25日に安倍総理が加計理事長と密会していた!怪しい!!」
- 「安倍総理と加計理事長は会っていないと言い張っているが、証拠はない!怪しい!!」
- 「安倍総理と加計理事長は絶対に何かを隠しているはずだ!怪しい!!」
などと、どんどん論点をずらしていくという手法です。挙句の果てに野党は麻生太郎副総理兼財相の辞任を求めて自分たちで勝手に国会をサボり、そのくせ「審議時間が足りなくなった」と言っては国会の会期延長に反対する、といった始末です。
こんな野党議員らに、1人あたり1.1億円を超える人件費が浪費されていると思うと、日本国民の1人としては、本当に腹が立つ限りです(試算の根拠は『国会議員の1人当たり給料をねちねち計算してみた』をご参照ください)。
そして、こうしたマス・メディアの報道姿勢や野党の審議拒否などを見ていると、私たち国民をバカにするのにもほどがあると思います。「国民の敵」とは、まさにマス・メディアと野党議員にこそ当てはまる表現ではないでしょうか?
世論調査と「もりかけ問題」
もりかけ問題の影響力
しかし、もっぱら新聞やテレビなどから情報を得ている人たちの中には、確かに「安倍総理は怪しい」と思ってしまう人たちがいても不思議ではありません。この、オールド・メディアから情報を得ていて、インターネットに疎い人たちのことを、本稿では「情報弱者層」と呼びたいと思います。
実際、新聞・テレビなどのマス・メディアの報道は、こうした「情報弱者層」にはダイレクトに悪影響を与えているらしく、昨年7月と今年4月に、それぞれマス・メディアが実施する世論調査で、内閣支持率が急落したことが確認できます(図表1、図表2)。
図表1 2017年7月における安倍政権に対する支持率
媒体と調査実施日 | 支持 | 不支持 |
---|---|---|
読売新聞(7/7~9) | 36% | 52% |
朝日新聞(7/8~9) | 33% | 47% |
毎日新聞(7/22~23) | 26% | 56% |
日経・テレ東(7/21~23) | 39% | 52% |
NHK(7/7~9) | 35% | 48% |
共同通信(7/15~16) | 35.8% | 53.1% |
産経・FNN(7/22~23) | 34.7% | 56.1% |
ニコニコ動画(7/20) | 51.7% | 24.1% |
(【出所】各社報道より著者作成)
図表2 2018年4月における安倍政権に対する支持率
メディアと調査日 | 支持率 | 不支持率 |
---|---|---|
共同通信(4/14~15) | 37.0%(▲5.4) | 52.6%(+5.1) |
NNN(4/13~15) | 26.7%(▲3.6) | 53.4%(+0.4) |
朝日新聞(4/14~15) | 31%(±0) | 52%(+4) |
毎日新聞(4/21~22) | 30%(▲3) | 49%(+2) |
読売新聞(4/20~22) | 39%(▲3) | 53%(増減不明) |
ニコニコ動画(4/17) | 54.6%(▲1.6) | 22.6%(+1.9) |
(【出所】各社報道より著者作成。カッコ内は前回調査からの増減)
図表1、図表2ともに、ニコニコ動画の調査を除けば、いずれも不支持率が支持率を大きく上回っており、また、不支持率が過半数に達しているという調査も散見されます。ニコニコ動画の調査を除けば、いずれのメディアにおいても、加計学園「問題」や森友学園問題が、明らかに悪影響を与えた格好です。
最新支持率調査:毎日新聞が「軌道修正」?
ところが、今月に入ると6月12日に米朝首脳会談が開かれたことなどを受け、支持率が軒並み回復しています。昨日までに、毎日新聞とニコニコ動画の調査が出揃ったので、これらをあわせると、主要メディアの6月の世論調査結果は、図表3のとおりです。
図表3 最新の内閣支持率の調査結果
メディアと調査日 | 支持 | 不支持 |
---|---|---|
共同通信(6/16~17) | 44.9%(+6.0) | 43.2(▲7.1) |
朝日新聞(6/16~17) | 38%(+2) | 45%(+1) |
読売新聞(6/15~17) | 45%(+3) | 44%(▲3) |
産経新聞・FNN(6/16~17) | 44.6%(+4.8) | 45.6%(▲2.9) |
NNN(6/15~17) | 39.4(+7.0) | 41.9%(▲8.7) |
ANN(6/16~17) | 39.4(+5.3) | 44.5%(▲6.6) |
毎日新聞(6/23~24) | 36%(+5) | 40%(▲8) |
ニコニコ動画(6/21 21:46) | 56.5%(▲0.4) | 19.5%(▲0.6) |
(【出所】各社報道より著者作成。カッコ内は前回調査からの増減)
このうち、一番驚き、呆れるのは、昨日公表された毎日新聞の調査結果でしょう。これによると、支持率は5%ポイント上昇して36%となる一方、不支持率は何と8%ポイントも低下して40%となりました。先月は17%ポイントだった支持率と不支持率の差は、わずか4%ポイントに迫っています。
毎日新聞調査による支持率と不支持率の差:5月は17%ポイント→6月は4%ポイントに激減
人為的な操作が一切加えられていないのだとしたら、わずか1ヵ月で支持率と不支持率の差が一気に13%ポイントも縮まった理由は、いったい何なのでしょうか?あるいは毎日新聞の世論調査はサンプル数が少なすぎて毎月大きく変動する、ということなのでしょうか?
叩き続けなければ支持率は「戻る」
これに対する私の仮説を提示しておきたいと思います。
簡単に申し上げれば、マス・メディアが安倍政権を叩き続けなければ、安倍政権に対する支持率は「あるべき水準に戻る」、というものです。マス・メディアが5月に「加計理事長が安倍総理と密会していた」という疑惑を演じようとしたものの、米朝首脳会談でこのネタが吹き飛ばされてしまった、ということです。
もっと言えば、マス・メディアが世論調査の対象としている母集団には、「情報弱者層」がかなりの割合で含まれている可能性があります。その証拠が、ニコニコ動画による世論調査結果です。
ニコニコの調査によれば、今月の内閣支持率は56.5%で、前月比0.4%ポイント低下しているものの、少なくとも昨年7月以降、一貫して50%の水準を超えており、既存メディアの調査結果は明らかに異なっています。
さらに不支持率については、0.6%ポイントという小幅な下落となったものの、ついに20%の大台を割り込んでおり、この点においても既存メディアの調査結果とは極めて大きな差異を示しています。
私は「ニコニコ動画の調査が正しい」、「既存メディアの調査が間違っている」と決めつけるつもりはありません。しかし、このように大きな差異が生じる理由は、おそらく両者の調査対象となる母集団の属性が、大きく異なっていることに求められると考えています。
ニコニコ動画はインターネット調査であり、この調査に回答している人たちは、少なくともインターネットに接続している状態にあります。つまり、定義上、少なくとも本稿に言う「情報弱者層」は、母集団には1人も含まれていません。
必然的に、マス・メディアによる「印象操作、切り貼り、論点ズラシ」に騙される人の数は、既存メディアが調査対象にしている母集団と比べて圧倒的に少ないと想定して良いでしょう。これこそが、「既存メディアの支持率が大きく変動する」理由であり、「ニコニコ動画の支持率は大きく変動しない」理由なのです。
さらば新聞・テレビ
折しも先週、当ウェブサイトでは、『【夕刊】既得権にまみれたNHKと「NHKの映らないテレビ」』、『押し紙、再販、記者クラブ。今に通じる過去の議論』、『【夕刊】NHKが潰すワンセグ携帯』など、メディアの問題をずいぶんと取り上げました。
新聞、テレビの場合は、いずれも「昔から存在する媒体」ですが、これに対してインターネットは「最新のテクノロジー」です。新聞、テレビは、利便性ではインターネットに絶対に勝てません。それなのに、新聞社、テレビ局には、いまだに特権意識が蔓延し、自分たちが消費者から見放されつつあることに気付いません。
新聞だと手がインクで汚れますし、あっという間に情報は古くなりますが、スマートフォンだと手も汚れませんし、情報はすぐにアップデートされます。テレビの場合は放送時間にテレビの前に座っておく必要がありますが、インターネットにはその必要がありません。
「もりかけ問題」と世論調査結果を眺めて私が感じるのは、新聞とテレビが時代に取り残されていく一方である、ということです。野党議員の皆さんも、マス・メディアと一体となって与党の足を引っ張るという今の姿勢を改めないと、今後、ますますジリ貧になっていくと思うのですが、いかがでしょうか?
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財務省マスメディア癒着説に立てば、消費税は予定通りとした直後に風向きが変わりましたね。
メディアによる世論調査の問題点の最たるものは、偏った母集団(サンプリング対象:固定電話and/or携帯電話を所有する人)からの抽出であることを、あたかも国民全体が母集団であるかのように思わせていることですね。バイアスがかかっているにもかかわらず、国民全体の意見のように主張する。当然、現実と乖離した主張になってしまいます。
究極の世論調査である国政選挙のときに、内閣支持、不支持の投票を行えば、本当の内閣支持率が出るでしょうね。内閣総辞職の時には使えませんが。