ビジネスを知らない記者が「日本は蚊帳の外」と無知を晒す
当ウェブサイトでは昨日、『【昼刊】おカネから見た北朝鮮の非核化』のなかで、韓国メディアが報じた北朝鮮の非核化コストに関する話題を紹介しました。ところが、日本でも、明らかに国際金融を知らない記者が「日本が440兆円の巨額の需要を逃す」という、無知の極みともいうべき記事を執筆しているようです。
目次
続:核放棄のコスト
巨額の復興負担という「珍説」
昨日掲載した『【昼刊】おカネから見た北朝鮮の非核化』のなかで、韓国メディア『中央日報』(日本語版)が報じた、次の記事を紹介しました。
韓経:北朝鮮の核廃棄に数百兆ウォン必要…韓国が70%以上抱える可能性も(2018年06月05日10時44分付 中央日報日本語版より)
この記事は、もともとは『韓国経済新聞』に掲載されたもので、北朝鮮の核廃棄を「北朝鮮からの核の運搬コスト」、「核放棄に対する見返りとしての北朝鮮への経済支援」という2つの要素に分け、今後10年間で2兆ドル(約220兆円)というとてつもないコストが掛かる、という試算を報じたものです。
これに対する私の見解は、昨日述べたとおり、「北朝鮮の金王朝の存続を前提とした試算に意味はない」というものです。核放棄の見返りとして北朝鮮に220兆円も与えるくらいなら、日本が核武装するか、それともいっそのこと、戦費を負担して米軍に朝鮮半島を焦土にしてもらう方が安いかもしれません。
日本メディアにも「日本が蚊帳の外」論を発見
ただ、私たち日本人も、韓国メディアのことを笑っていられません。これをさらに上回る支離滅裂な記事が、わが国のメディアである『日刊ゲンダイ』(電子版)に掲載されたからです。私の文責で要約すれば、「日本は北朝鮮復興ビジネスで蚊帳の外に置かれ、カネだけ出してお終いになる」、という主張です。
逃す需要は440兆円 日本は北朝鮮復興ビジネスでも蚊帳の外(2018年6月7日付 日刊ゲンダイDIGITALより)
日刊ゲンダイのロジックについて、詳しく知りたい方は日刊ゲンダイの記事を直接読んで頂きたいと思います。ただ、あらかじめお断りしておきますと、内容はかなり支離滅裂であり、「読んで時間を無駄にした」と私に文句を言われても困ります。あくまでも自己責任でお読みください。
この記事の主張をヒトコトで要約すれば、次の「元外交官の天木直人氏」の発言です。
「安倍政権の北に対する敵視政策が完全に裏目に出ている。安倍政権が続く限り、北は日本の投資ビジネスなど認めるはずがない。戦後賠償を要求されて終わりですよ」(※以下では、「元外交官の天木直人氏」が日刊ゲンダイが報じたとおりに発言したものと仮定して議論を進めます。)
安倍政権が北に対する「最大限の圧力」を掲げてきたことは、事実です。北朝鮮が核や大量破壊兵器のCVID ((CVIDとは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)のこと。)) と日本人拉致事件の完全解決に応じない限り、日本としては「最大限の圧力」を継続するでしょうし、また、継続しなければなりません。
しかし、「元外交官の天木直人氏」によれば、「安倍政権が続く限り、北朝鮮は日本の投資ビジネスを認めない」、「戦後賠償を要求されて終わり」、ということです。戦後賠償を要求されたとしても、支払わなければ済む話ではないかと思うのですが、本当にこの人物は「元外交官」なのでしょうか?
「日本が蚊帳の外」論の的外れぶり
北朝鮮の核開発問題を議論するうえで、絶対に忘れてはならない事実があります。それは、北朝鮮が1990年代の「6ヵ国協議」を皮切りに、「援助をくれたら核放棄に応じる」と約束したくせに、その約束を破り、国際社会を騙して核開発を続けて来た、という事実です。
これに対して、安倍総理は昨年9月の国連総会演説で、次のように述べました。
「議長、同僚の皆様、国際社会は北朝鮮に対し、1994年からの十有余年、最初は枠組み合意、次には六者会合によりながら、辛抱強く、対話の努力を続けたのであります。/しかし我々が思い知ったのは、対話が続いた間、北朝鮮は、核、ミサイルの開発を、諦めるつもりなど、まるで、持ち合わせていなかったということであります。/対話とは、北朝鮮にとって、我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。/何よりそれを、次の事実が証明します。/すなわち1994年、北朝鮮に核兵器はなく、弾道ミサイルの技術も、成熟に程遠かった。それが今、水爆と、ICBMを手に入れようとしているのです。/対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。/何の成算あって、我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。/北朝鮮に、全ての核、弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、放棄させなくてはなりません。/そのため必要なのは、対話ではない。圧力なのです。」
とてつもない説得力です。
日米両国やG7諸国の北朝鮮に対する態度が「圧力の強化」で一致しているのは、ひとえに、安倍総理のこの国連総会演説に象徴される、一貫した姿勢にあると考えて良いでしょう。中国やロシアでさえ、昨年の安保理決議では北朝鮮制裁に渋々ながらも従ったほどです。
むしろ、日本が主導する厳しい圧力にあらゆるチャネルを使って反発しているのが北朝鮮であり、日本が主導する国際社会の結束を乱そうとしている国が韓国であり、日本国内で「もりかけ」で安倍政権の足を引っ張っているのが朝日新聞を筆頭とする「マスゴミ」 ((マスゴミとは、もともとは「ゴミのような情報しかながさないマス・メディア」に対する、一般国民の怒りを込めたネット・スラング。最近では日常生活でも「マスゴミ」という用語を耳にするようになりつつある気がします。)) や野党議員ではないかと思います。
金銭面での「蚊帳の外」なら大歓迎
経済記事なのに専門用語が出てこない
ところで、日刊ゲンダイを含め、日本のマス・メディア産業関係者の中に、ビジネスの現場を知っている人が極端に少ないような気がするのは、私だけではないと思います。
ビジネスの世界では、「おカネを出す」というのは、「相手にコミットする」ということです。たとえば、韓国が1965年の日韓基本条約で日本から得たのは、「無償支援」だけではなく、「有償支援」、つまり円借款などの融資でした。
円借款とは、ごくわかりやすくいえば、「日本が相手国に日本円を貸してあげる」という契約です。「日本円を貸す」ということは、そのおカネを借り入れた国は、「日本企業に対して」ビジネスを発注する、ということにならざるを得ません。
もし日刊ゲンダイの主張どおり、日本が復興ビジネスから排除されるということであれば、円借款が北朝鮮に流れることはない、という意味です。果たして日刊ゲンダイの記者様は、このことの意味を理解したうえで、「日本は蚊帳の外」と議論しているのでしょうか?
日刊ゲンダイの記事に「ODA(政府開発援助)」や「円借款」、「ADB(アジア開発銀行)」などの専門用語が一切出てこない時点で、どうも日刊ゲンダイの記者様には基本的な国際金融支援やインフラビジネスに関する知識が決定的に欠落しているようにしか思えないのです。
ビジネスで信頼できないなら相手にするな
何より重要な点は、もし万が一、日本が北朝鮮に円借款を提供する場合、北朝鮮に貸したおカネが返って来るかどうか、という点にあります。そのためには、北朝鮮が国際法と契約をしっかり守る国である、という確証がなければなりません。
この点、いかがでしょうか?まともなビジネスをやっている人であれば、北朝鮮のようなリスクの高い国に投資をするには、日本政府による保証が必要です。いや、もちろん、日本政府の保証がなくても北朝鮮に投資するという企業はあるかもしれませんが、日本企業が北朝鮮に単独投資するのは危険です。
北朝鮮のことですから、仮に日本企業が巨額投資を行い、最新鋭の工場・設備を北朝鮮領内に作ったとしても、あとになってから「過去の戦時賠償が終わっていない」などと難癖を付けられて、これらの設備を北朝鮮に没収されるのが関の山でしょう。
このように考えると、金正恩(きん・しょうおん)一味が北朝鮮の権力を握り続けるのであれば、仮に北朝鮮が核・大量破壊兵器のCVIDと日本人拉致問題の完全解決に協力すると確約したとしても、日本としては極力、北朝鮮の復興支援には関わらないのが正解です。
逆に、ビジネスマンの立場からすれば、日本が北朝鮮に関わって良いとすれば、金正恩が排除され、北朝鮮がまともな法治国家となるという合理的な確証が得られたときに限られるべきだと思います。そうでない限りは、日本は「復興ビジネス」という「甘言」に騙されるべきではありません。
そのことを、強く主張しておきたいと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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前提として「荒廃」があって「復興」があるものと思っています。
北朝鮮「復興」ビジネスってあの国が「荒廃」しているような言い方ですよね?
これから「荒廃」するのでしょうか?
まあ、極東アジア一帯で、最凶最悪レベルといわれる
あの凶悪な活火山である『白頭山(朝鮮民族発祥の山と謳っている)』が、
破局的かつカタストロフィー的な超大規模噴火した後で、なら、いいんじゃないか?
「荒廃」というよりも、『灰燼』からの『復興』という意味ではないのか?
北朝鮮「復興」ビジネスという本当の意味は…。
たしか、地質学的にも、火山学的にも、あの山の破局噴火で、一度、朝鮮半島に住む方たちが、過去に死んでるような調査研究結果があるらしいんだけど…。
また、日本の北海道のある場所にも、その白頭山の噴火によるものと思われる『火山灰』が降り積もってできた層が確認されているみたいだし…。