本日4本目の話題は「日本と朝鮮半島の関係」に関するものです。連日、似たような話題が続いてしまって恐縮ですが、それでも「今この瞬間、北朝鮮や韓国のメディアが日本をどう評価しているのか」という点については、きちんと記録しておく必要があると思うのです。
日本を批判するのは南北共通
北朝鮮メディアの日本批判
最近、韓国のメディアを眺めていると、「日本が朝鮮半島問題で孤立している」、「蚊帳の外だ」といった議論を見かけることが増えて来ました。昨日、『【夕刊】「蚊帳の外」にいるのはむしろ韓国』でも紹介した、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された次の記事などがその典型例です。
北朝鮮「核試験場廃棄儀式」に韓国記者団8人を招待…ジャパンパッシング露骨化(2018年05月16日07時25分付 中央日報日本語版より)
詳しい内容については昨日触れたとおりなので、ここでは繰り返しませんが、私にいわせれば「朝鮮半島問題で孤立しているのはむしろ韓国の方ではないか」と思います。ただ、日本を強く批判する報道を掲載するのは、韓国メディアだけではありません。北朝鮮メディアも同様です。
韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)によれば、昨日、北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』に「日本が孤立を免れる道は対北敵視政策を放棄するしかない」とする論評が掲載されたのだそうです。
北朝鮮紙「日本が孤立免れる道は対北敵視政策の放棄」(2018/05/16 11:17付 聯合ニュース日本語版より)
「日本が孤立を免れるためには、対北朝鮮敵視政策を放棄することだ」?
はて、いつ日本が孤立したのでしょうか?
米国は北朝鮮に対し、核・ミサイル・大量破壊兵器のCVID(※)と日本人拉致事件の完全解決を求めており、かつ、北朝鮮がそれを実現するまでは経済支援も行わず、「最大限の圧力」を維持する方針を明確に示しています。
(※「CVID」とは「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)の略称)
おそらくその理由は、安倍晋三総理大臣が4月に訪米し、ドナルド・トランプ大統領と直接会って、直接、北朝鮮に対する最大限の圧力維持の必要性を説き明かしたからでしょう(※もっとも、米国が北朝鮮に対して変な譲歩をする可能性はゼロではありませんが…)。
ついでに申し上げると、聯合ニュースも記事の末尾で、「日本が蚊帳の外にある」と主張しています。
「北朝鮮メディアはこれまで、日本の対北朝鮮政策をたびたび非難してきた。23~25日の間に実施するとしている北東部・豊渓里の核実験場廃棄を取材する国際記者団から日本を外すなど、日本を蚊帳の外に置く姿勢を露骨に示している。」
ただ、この豊渓里(ほうけいり)の核実験場の廃棄については、昨日申し上げたとおり、単なるパフォーマンスとみるべきであり、日本がこのパフォーマンス大会から外されたところで、日本に何か実害があるとも思えません。
北朝鮮がここまでしつこく日本を批判しているということは、むしろ日本が朝鮮半島問題における重要なプレイヤーである証拠でしょう。日本は粛々と、北朝鮮が嫌がる「最大限の圧力」を続け、北朝鮮を締め上げれば良いだけの話です。
「ハンギョレ新聞」はまるで北朝鮮のメディア
もっとも、「意味不明なロジックを持ち出して日本を叩く」という点に関して言えば、韓国国内にも、北朝鮮とさして変わらないメディアもあります。それが「左派メディア」とされる『ハンギョレ新聞』です。主義・主張を眺めていると、まるで朝鮮労働新聞の姉妹紙ではないかと思えてしまいます。
その実例が、次の記事でしょう。
日本外交青書「韓国が独島を不法占拠」…韓国たたきの総合版(2018-05-16 07:07付 ハンギョレ新聞日本語版より)
昨日、『【昼刊】外務省、遅まきながらも韓国を「単なる隣国」に格下げ』でも紹介しましたが、日本は今年版の外交青書のなかで、韓国を「重要な隣国」とした記述を削除しました。これについて、ハンギョレ新聞の記事の中では、「韓国に対して強硬な表現をはっきり増やした」と、かなり詳細に触れられています。
ハンギョレ新聞が「問題視」している内容を箇条書きにすると、次のとおりです。
- ①「韓国は重要な隣国」という表現を削除したこと
- ②「日本海が国際法的な唯一の呼称である」と記述するなど韓国に対し強硬な表現を増やしたこと
- ③竹島について、昨年までは使わなかった「韓国による不法占拠」という表現も入れたこと
- ④外交青書上、「日中関係改善」が強調され、日韓関係と対照的であること
このうち①については安倍政権による政治判断の問題であり、これを良いと見るか、悪いと見るかは日本国内でも意見が分かれるところでしょう(私はこの判断を支持します)。しかし、②、③については客観的な事実であり、むしろなぜ今までこの記述が入っていなかったのかが不思議です。
(※余談ですが、韓国政府側は「独島(※竹島のこと)に対する不当でとんでもない主張を繰り返すことは、未来志向的韓日関係の構築にまったく役に立たない」などと強く批判したそうですが、「不当でとんでもない主張を繰り返している」のは、日本ではなく韓国の方でしょう。)
いずれにせよ、北朝鮮や韓国のメディアの反応を見ていると、日韓関係、日朝関係については、韓国、北朝鮮から批判されるくらいのことをやっていたくらいでちょうど良いのではないかと思えるのです。
外交青書・記述抜粋
なお、外務省のウェブサイトに、今年版の『外交青書』のサマリー(※PDF)が出ています。ここから韓国に関する記述を抜粋しておきましょう。
「良好な日韓関係は、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠である。2015年に日韓国交正常化50周年を迎え、それ以降も、活発な日韓交流が行われており、2017年には日韓間の人の往来は過去最多となった。経済関係も緊密に推移している。政治面では、2017年5月に就任した文在寅大統領との間で、同年7月及び9月に首脳会談を行い、2018年2月には平昌冬季オリンピック競技大会の開会式の機会を捉えて安倍総理が訪韓し、首脳会談を行った。一方、2017年12月には、2015年の慰安婦問題に関する日韓合意について検討する「慰安婦合意検討タスクフォース」が報告書を発表し、2018年1月には韓国政府が日韓合意についての立場を発表した。韓国側が、日本側に更なる措置を求めるというようなことは日本として全く受け入れられるものではない。日本政府は、韓国が「最終的かつ不可逆的」な解決を確認した合意を着実に実施するよう引き続き強く求めていく考えである。日韓間には困難な問題も存在するが、これらを適切にマネージしつつ、日韓関係を未来志向で前に進めていくことが重要である。」(下線部は引用者による加工)
要するに、下線部に日韓関係の方針が示されていて、これは河野太郎外相などが発言した内容を、ほぼそのまま踏襲する内容です。そして、従来の「日韓友好」を前提とした記述と比べると、一歩踏み込んで、率直に日韓間に問題が存在することを認めたものであり、私はとりあえず歓迎したいと思います。
ただ、日韓関係については、もう少しきちんと議論しておく必要があります。本日、『緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版』という記事のなかで、朝鮮半島の将来について議論したばかりであり、テーマが連続して恐縮ではありますが、近日中に「望ましい日韓関係論」についてもアップデートしたいと思います。
引き続き当ウェブサイトをご愛読下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。
View Comments (1)
< 夕刊の発信ありがとうございます。
< 全体として、安倍首相の今年の所信表明に近い内容で、韓国に対し修飾語を付けず、『迷惑な隣国』という内容なので良いと思います。
< 但し外交青書のサマリーの下線引きの部分、やはりもう少し強く韓国には出て欲しいと言うのが私の考えです。『日韓間には困難な問題もあるが、これらを適切にマネージしつつ~』ないです。日本から手を差し伸べる必要なし。すべて韓国の言いがかり、捏造です。今までずっと韓国を甘やかしてきたから、ここまで図々しくなった。恩も礼も言わず、事あるごとに日本は謝罪するもんだから、つけあがった。韓国が対日史観の歴史教育を歪めてきたのがそもそもの間違い。李承晩、莫大な資産供与を日本から受けた朴正煕の罪は大きい。
< それと日韓どちらが言い始めたのかは不明ですが、『両国の未来志向を進めて行く必要がある』という一文。以前もあったように思いますが、未来関係は今よりショボイものになると確信しますので不要。また国内勢力では、朝日新聞の売春婦が少女慰安婦に捏造された事、社会党、社民党ら野党が韓国に配慮を言い出すとか(以前は北朝鮮押しで、韓国の事は評価してなかったはず)、保守政党の足を引っ張り続けた事、親韓企業、親韓保守系議員、在日、民団らの日本を侮蔑する行為。決して許せませんね。
< 北朝鮮メディアが日本を『蚊帳の外』と言うぐらいだから、相当困っているんでしょうね。恫喝(クチだけ達者)するのは得意ですから。もっと日本は徹底的に経済制裁、封鎖すれば宜しい。
< 失礼します。