【夕刊】北朝鮮のわかりやすい時間稼ぎ

北朝鮮の「核凍結」とやらは、どうせ時間稼ぎに違いない――、そう思います。ただ、国際情勢が急に動いているのに、日本の国会はいったい何をやっているのかと呆れてしまいます。

またしても時間稼ぎか?

金正恩の唐突な発表

いくつかのメディアの報道によれば、北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)が「核実験場を閉鎖し、長距離弾道ミサイルの発射実験を長期間停止する」、と言い出しました。

非常に大きなニュースであるためか、米国ではウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)、ワシントンポスト(WP)なども日本時間の本日、大々的にこれを取り上げています。

North Korea’s Kim Strikes Milder Tone on Nuclear Tests, Detainees(米国夏時間2018/04/20(金) 21:37付=日本時間2018/04/21(土) 10:37付 WSJオンラインより)
North Korea says it will suspend nuclear and missile tests, shut down test site(米国夏時間2018/04/20(金) 19:53付=日本時間2018/04/21(土) 08:53付 WPより)

これらの報道をまとめると、金正恩は土曜日以降、核・ミサイルの実験を停止するとともに、過去6回の核実験が行われた実験場を閉鎖すると述べたそうです。この一見すると「唐突」な発表について、どう読むべきでしょうか?

WSJは

(He) hinted that he didn’t intend to give up his nuclear arsenal—at least not immediately.(金正恩はこのように発表したものの、)少なくとも直ちに核兵器を放棄するという意思がないことを示唆した。

としていますが、私もこの意見に全く同感です。要するに、これまでにさんざん、時間稼ぎをして来たので、ある程度、核・ミサイル開発の成果が出ているということでしょう。そして、米国に対して核放棄の「ふりをする」ことで、米朝首脳会談を有利に運びたいという意図がアリアリです。

なぜこのタイミングなのか?

ただ、唐突なのはこの「内容」ではなく、「タイミング」です。

金正恩が土曜日になって、唐突に核放棄の「ふり」をした理由は、ドナルド・トランプ米大統領が安倍晋三総理大臣との会見の席で、金正恩との米朝首脳会談に「実りがない」場合は「すぐに席を蹴って出ていく」と述べたことが効いていると考えられます。

Trump Says He’ll Walk Out of a Planned Meeting With Kim if It Is ‘Not Fruitful’(米国夏時間2018/04/18(水) 20:41付=日本時間2018/04/19(木) 09:41付 WSJオンラインより)

要するに、金正恩はトランプ氏の「意志の強さ」を見極めようとしているのだと思います。金正恩自身、「核放棄に応じたリビアの末路」という先例については研究し尽くしているはずです。最終的に金正恩が核放棄に応じるとは思えません。

しかし、トランプ大統領の異例に強い調子に怖気づいたのか、来週の南北首脳会談を控えたタイミングで、核実験の中断を言い出したというのが実情に近いでしょう。

米朝首脳会談はシンガポール?

ところで、冒頭に引用したWSJの記事によれば、6月までに行われるとされる米朝首脳会談の場所を巡っては、いくつかの候補が上がっているそうです。

  • 米朝双方からできるだけ中立的な場所を選定しようと調整している
  • 北朝鮮にとって「パトロン」的立場にある中国は除外されている
  • 米国の同盟国で北朝鮮の核武装解除を強硬に主張している日本も除外されている
  • よって、欧州のどこか(ジュネーブなど)、東南アジア(シンガポールなど)が候補地だ

関係者の話を総合すると、有力候補地はシンガポールかジュネーブとされているようですが、北朝鮮の航空能力のなさを考えると、ジュネーブは遠すぎるような気がします。そのように考えたら、現在のところ、最も有力な開催地は東南アジアのどこか(例:シンガポールかマレーシア)あたりではないかと思います。

それにしても、こんな大事な局面に、どうして日本の国会は「もりかけ・セクハラ・日報問題」という下らないものを追いかけているのでしょうか?野党は本当に税金の無駄だと思うのは私だけではないのかもしれません。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. きゃん より:

    夕刊拝読いたしました。もりかけ、セクハラ、審議拒否とも、枝野氏、福山氏、長妻氏、福島瑞穂氏など朝鮮系帰化が囁かれる議員が主導しています。北朝鮮の核武装解除を強硬に主張している日本に対して、「お国のために形振り構わず」のように思えます。

  2. めがねのおやじ より:

     < 夕刊の配信ありがとうございます。
     < 金正恩が突如表明しましたね。突如というか、日米会談での両国の堅固な一致、トランプ大統領の『会談で結果が得られないなら途中で席を立つ』が効いてます。しかし、今更『核開発止めます』と言われても誰が信用するか。正日、日成の代からこれこそが唯一の切り札のくせに(笑)。絶対やめませんね。止めた途端、国内の求心力も落ち、側近にクーデター起こされるか、米軍の攻撃受けてオワリ。正恩は走り続けるか亡命するかしかありません。見方を変えると、ある程度、小型化までは行かなくとも、「メドがついた」のかも。但し小型化後の打ち上げは実験できてないので、いきなり実戦に使うと、発射場で点火~発射後2分以内で弾頭にトラブルがあったら、それこそ国ごと滅亡です。
     < 金正恩の表明で気になるのは、『核実験場を廃止し、長距離弾道ミサイルの発射を中止する』という点です。では米国との会談で、この文面のままなら、IRBMなど短~中距離ミサイルは残るのか、という事。まさか安倍首相も念押ししていると思いますが、対象は「すべての核弾頭ミサイル」です。中距離まで残したら日本は全域、サイパン、グアム辺りも射程内、絶対に「すべての」しかありません。
     < いくら北朝鮮がそういう和平っぽいことを言っても、時間稼ぎにしか見えません。会談を前に『ダメ元』でも交渉を少しでも有利に運びたいあがきですね。そうやって見ると、北はかなり追い込まれていると見える。南北会談ごときは、北に追従する文が日米等自由主義国側の足を引っ張る事をせぬか、それだけです。内容などどうでもいい。
     < 会談場所はジュネーブかシンガポール有力とのこと。悲しいかな金正恩は鉄路では北京まで行けても、旅客機、輸送機はロートルのソ連製かの短距離型しかない。見栄張りだから遠くには行けないとは言えず、仕方なくシンガポールか因縁のマレーシアでしょう。兄が殺された場所を開催国が案内するのはどうかな?あ、国会は野党が『夜盗』なんで、まともな審議できません。こんな連中、総選挙して殲滅という手もアリですな。
     < 失礼します。

  3. 団塊 より:

    >核実験場を閉鎖する

    いうのは、水爆爆発に成功した結果、山体崩壊でとうの昔に山の下に埋もれ閉鎖というか消失してしまった核実験場のこと。
    で、あり、これから新しい核実験場を作るぞという宣言でしょ。。

    水爆実験で原爆の1000倍の破壊力という水爆の爆発に成功したら山そのものが崩壊し地下の核実験場も崩壊して核物質も核爆弾も埋もれ誘爆・破壊され原爆開発ロシア人科学者&技術者の100人が死に何もかもが山に潰され埋もれ死んでしまった。助けに入った100人の兵士も死んだ。この核実験場は、もう、どうしようもない。

    木が根こそぎ剥がれ山の表面を崩れ落ちる山崩れは凄まじいが、北朝鮮の山体崩壊はそんなもんじゃない、
    ・山そのものがグシャと潰れた。
    ・山を掘った横穴縦穴の核実験場全てがグシャっと潰れ、空間はない。
    ・それまで原爆を作っていた空間も水爆を保管していた空間も全て岩石で土で埋って空間はもうない。

  4. 団塊 より:

    ミサイル発射は、できないんですよ。日米の締め付けが厳しすぎて石油が手に入らないから、極端な電力不足だ。

    力不足じゃ電気をやたら喰うミサイル発射の準備ができない。

    居場所を特定されないように発射台の車両を長距離移動しなければならないが、そのガソリンや軽油がないんでしょうね。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

団塊 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告