【夕刊】どうして日韓で真逆の内容になるのか?
産業バルブ関税を巡るWTO訴訟で、日本側のメディアは「日本勝訴」、韓国側のメディアは「韓国勝訴」と報じています。残念ながら私自身には、WTOの原文を読んでどちらが正しいと判断することはできませんが、今回の騒動での雑感を記しておきたいと思います。
いまひとつすっきりしないニュース
WTO訴訟巡る日韓の報道合戦
本日までの日本のメディア各社による報道によると、世界貿易機関(WTO)は12日、産業用バルブを巡る日韓の貿易紛争を巡り、日本の勝訴を認定しました。
日本が韓国に一審勝訴、産業バルブ関税上げ WTO(2018/4/12 23:13付 日本経済新聞電子版より)
韓国のバルブ課税は違反 WTO報告書、日本勝訴(2018.4.13 01:24付 産経ニュースより)
韓国の反ダンピング課税は「違反」=日本製空気圧バルブ-WTOが認定(2018/04/13-00:38付 時事通信より)
日経、産経、時事通信など、複数のメディアが報じている内容を要約すれば、2015年8月に韓国政府が日本製の空気圧伝送用バルブに対し、「不当に安く輸入され自国産業に損害を与えた」として、通常8%の関税に、11.66%か22.77%の追加関税を上乗せする措置を適用。
これに対して日本政府側はこの関税措置をWTO違反として提訴したもので、WTO側は日本側の主張をほぼ認め、「韓国企業に及んだ損害や因果関係の説明に問題がある」と指摘。日本製品が韓国製品と比べて高性能であり、韓国の主張はあたらないと認定したとしています。
ところが、本日の韓国メディア『中央日報』は、同じニュースを日本に対する「判定勝ち」と報じています。
韓国、空気圧バルブの反ダンピング紛争WTO1審で日本に「判定勝ち」(2018年04月13日10時17分付 中央日報日本語版より)
中央日報の主張は、こうです。
- 韓国が日本との空気圧バルブ反ダンピング関税紛争における大部分の主要争点で勝訴した
- WTOは13件の争点のうち10件で韓国側の主張を認めた
- ただし、WTOは価格圧迫に関連する一部の調査方式は、WTO協定に外れる部分があるとした
- 韓国政府は一部敗訴した争点に対して上訴を検討する方針を明らかにした
つまり、争点は全部で13件あり、そのうち10件で韓国側の主張が認められたので、一種の判定勝ちだ、というわけです。そして、韓国政府は「一部敗訴した争点に関して」、WTOで上訴を検討している、ということです。
また、『聯合ニュース』英語版も同様に、WTOのパネルで勝訴したと報じています。
S. Korea partially wins WTO ruling on pneumatic valve duties(2018/04/13 10:18付 聯合ニュース英語版より)
正直、現段階では日韓両国以外の第三国のメディアがこれについて報じていないため、現在わかるのは、「日韓両国で真逆の内容が報じられている」、という事実です。
WTO勧告の内容
これは日本側、韓国側の報道のいずれが正しいのでしょうか?
WTO issues panel report regarding Korean duties on pneumatic valves from Japan(2018/04/12付 WTOウェブサイトより)
リンク先には合計150ページにも及ぶPDFファイルが掲載されていますが、結論部分のみを抜き出した3ページ分のPDFファイルの末尾には、次の文章があります。
“Pursuant to Article 19.1 of the DSU, having found that Korea acted inconsistently with certain provisions of the Anti-Dumping Agreement, we recommend that Korea bring its measures into conformity with its obligations under that Agreement.” (仮訳)「「紛争解決のための規則と手続の解釈(DSU)」第19.1条に従い、韓国は反ダンピング協定における一定条項と矛盾する行動を行っていると認め、我々は韓国がその措置を協定に基づく義務に適合させるよう、修正することを勧告する。」
WTOの報告書は、報告書セクション8.1において、8つの争点については日本側が提起した内容について判断せずに却下すると指摘。ただ、セクション8.2において、それ以外の6つの争点について検討すると表明し、セクション8.3が日本敗訴部分、セクション8.4が日本勝訴部分です。
おそらく、中央日報が報じた「争点は全部で13個あり、うち10個で韓国が勝利した」という下りは、結論のセクション8.1~8.3のことを指しているのでしょう。
専門用語が多すぎるので難しい
ただし、正直、今回のWTO報告書は、専門用語(あるいは条文番号)が多すぎて、私のような「通商問題の門外漢」にとっては、読み込むのにかなりハードルが高いことも事実です。なぜなら、きちんと判断したければ、それぞれの条文に何が明記されているかを調べなければならないからです。
このため、私にわかることは、「いくつかの論点で日本が敗訴し(あるいは日本の請求が棄却され)、ほかの論点では日本が勝利した」という事実であり、また、韓国側が「DSU第19.1条」に基づく是正勧告を受けた、という事実だけです。
さすがに何の解説もなしに、通商問題の専門用語(というよりも条文の羅列)をちりばめられた文章を読んで理解するというのは、正直、極めて困難です。したがって、「事実上の日本の勝利」という日本のメディアの報道が正しいのか、「韓国の判定勝ち」という韓国メディアの報道が正しいのかについては、私には判断できません。この点については素直に認めたいと思います。
国際ルールに引きずり出すのは良いこと
ただ、今回のニュースについては、今ひとつすっきりしませんが、1つだけ私が感じたことがあります。それは、韓国との争いについては日韓両国間で解決するのではなく、いっそのこと、国際的なルールで裁く方が良いのではないか、という点です。
先日も福島県を含めた8県からの水産物の禁輸措置を巡り、韓国がWTOで敗訴したばかりですが、日韓両国で解決するのではなく、とにかく国際社会において大々的に「韓国がルール違反国家である」ということを見せつけるのが大事です。
韓国側で聯合ニュースが英語版で「韓国勝利」と報じた理由も、実は、韓国が国際社会で非難されることを極端に恐れているという証拠と見るべきかもしれません。
いずれにせよ、ルール違反を続ける韓国に対しては、日本は「誠心誠意、二ヵ国間で話し合いを続ける」という今までのやり方ではなく、ドライに国際ルールで裁くというのが正しいのではないかと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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>ルール違反を続ける韓国に対しては、日本は「誠心誠意、二ヵ国間で話し合いを続ける」という今までのやり方ではなく、ドライに国際ルールで裁くというのが正しいのではないかと思います。
まったくその通りです! 即そうするべきです。
私も門外漢なので正確なことは言えませんが、韓国側の実質的勝利というのは疑わしいと思います。
日本が「韓国のやり方は、プロセスも結果も無茶苦茶」と訴えたのに対し、「プロセスが無茶とは言えないが、結果は不当なので是正すべし」って判断が下されたように見えます。
提出した証拠の大部分は証拠能力不十分で却下されたが、有効な証拠もあり結果有罪となったのを「却下された証拠が多いから実質無罪」と言ってるのに等しいのでは。
< 夕刊の更新ありがとうございます。アノ国とやり合うのは1対1では、どうにでもとれるような言い様で、結果として日本が辛酸を舐めることが多いです。どう贔屓目に韓国の言い分を聞いても、日本側が正しいという場合(ほとんどの場合そうなんだが)でも、なんだかんだと屁理屈を捏ね、日本が被害者になります。
< こういうヤカラにはWTO等、公平な第3者に委ねた方がいい。しかし裁判所の方達は韓国、中国の異常なやり口は知ってるだろうに、でも北東アジアの事だから、イマイチ被害者の立場が分かってないように思う。日本が100%丸〃勝ち、韓国の訴え0%という事は殆ど期待できませんが、日韓だけで合意してあとで蒸し返すような蛮国人ですから、70対30で日本の優勢勝ちで十分だと思います。とにかく韓国よ、裁判所に出て来いと。引っ張り出すゾ!と。すべて徹底的にオープンで提訴する。いわば『決闘』ですな。決闘は逃げられない。『受けて立つ』のが常識です。僅差、少差の勝ちでも拾っていくのが賢明と思います。
< 失礼します。
中央日報や聯合ニュースをよく読んでみると、ダンピングの調査方法に不備な部分は見られないが、得られたデータに不備があり、被害を受けたとはいえない。ということで敗訴になったのだと思います。これに対して即上訴するのは韓国の常套手段で特許問題でサムソンがよく遣ります。特に相手が日本だと狂ったようになります。全く面倒くさい国です。
補足です。
いちおう本文では「日本側が勝訴したとする日本メディアの報道と、韓国側が勝訴したとする韓国メディアの報道の、いずれが正確であるかについては、これといった確証が持てない」というような言い方をしました。しかし、WTO勧告書の最終行に「韓国は~をすべきである」という文章があるため、実質的には日本側の勝利ということでほぼ間違いないのだろうな、という気がしています。
なお、一部には「韓国側が勝訴したとする韓国側の報道はウソでした」と断言しているウェブサイトもありますが、それらのウェブサイトが「韓国側の報道がウソだ」と断言する根拠については、あまり正しいとは言えないようです。私に言わせれば、「そこまで断言しちゃって大丈夫なのかな?」という気もするのですが、そこは他ウェブサイト様のご判断なので、これ以上は申し上げません。
引続き当ウェブサイトのご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
日韓間のWTO提訴ネタといえば!
コレもあるじゃな!
2013年9月東日本8都県の全水産物(加工品含めた)の輸入禁止措置についても、
この間、WTOにて、日本完全勝訴の評定が出たけど…。
たしか、これ、バ韓国が上訴しようとしているみたいだが、結果は変わらないダロ!
でも、油断は禁物じゃがな!!
追伸:東京に2020夏季オリンピック開催地招致の最終決定の数日前に、それを妨害するかのように、
あのバ・韓国が、政府ぐるみでやりやがった件だ!
東京都民の一人として、言葉で表せないレベルの怒りと憤りがある!