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AIIB格付問題と銀行規制を考える

世界的な格付業者にして、怪しげな格付を連発している会社がムーディーズです。この会社は先日、中国が主導するAIIBに対し、最上級の格付を付与しました。このことは間接的に、日本国民の税金による負担を増やす恐れがあります。本日はこの論点について、金融行政との関係を踏まえて解説したいと思います。

AIIBが格付取得の衝撃

本日は米韓首脳会談をテーマに執筆しようと思っていたのですが、執筆時間の都合で、明日に回したいと思います。そのかわり、本日は6月29日に緊急寄稿した『【速報】AIIBが最高格付取得の意味』の続きを説明したいと思います。

不可解なムーディーズの格付基準

世界的な格付業者の一つであるムーディーズ(Moody’s)は6月29日、中国が主導する国際開発銀行(MDB)である「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に対し、「Aaa・安定的」という最高の格付を付与しました。

Moody’s assigns first-time Aaa issuer rating to Asian Infrastructure Investment Bank; outlook stable(2017/06/29付 Moody’sウェブサイトより)

同社によると、AIIBに対して最高格付を付与した主な理由は、次のとおりです(カッコ内は著者による仮訳)。

  • The rating reflects Moody’s assessment of AIIB’s current and future creditworthiness, as it ramps up its operations over the next 5-10 years.(この格付は今後5~10年かけて成長が見込まれるAIIBの現時点および将来の信用力に対するムーディーズによる評価を反映したものである。)
  • The Aaa rating takes into account the strength of AIIB’s governance frameworks, including its policies on risk management, capital adequacy and liquidity.(Aaaという格付はAIIBのガバナンスのフレームワークの強さを反映したものであり、これにはリスク管理に関する方針や資本の十分さ、流動性も加味されている。)
  • Very robust capital adequacy will support AIIB’s credit profile.(非常に堅調な資本の充実度がAIIBの信用評価を裏付けている。)
  • We expect AIIB’s liquidity position to be as strong as that of other highly rated multilateral development banks (MDBs).(我々はAIIBの流動性ポジションについても高格付を取得する国際開発銀行(MDB)として相応しいと考えている。)
  • The availability of substantial callable capital illustrates the contractual and extraordinary support Moody’s expects would be forthcoming in extremis.(万が一の苦境の際であっても、AIIBには出資約束資本の契約上の調達能力がある。)

しかし、ここでいう「ガバナンスのフレームワークの強さ」とは、いったい何を指しているのでしょうか?理事会がどこで行われているかもよくわからないし、意思決定プロセスも不透明なこのMDBに、どのような「強さ」があるというのでしょうか?私には全く意味が分かりません。

余談ですが、私は個人的に、ムーディーズ社の格付そのものに対し、昔からさまざまな疑念を抱いています。その一例が日本国債の格付です。ムーディーズは日本国債(Japan sovereign)の格付をA1(シングルA+に相当)に設定していますが、全く意味がわかりません。なぜなら、日本国債は外貨建て(例:米ドル建て)で発行されておらず、発行残高の全額が円建てであり、「国債のデフォルト」ということ自体があり得ないからです。

もっとも、財務省あたりは増税という世論を醸成する目的で、「日本は財政危機にある」という虚構をでっち上げるために「外国の格付業者」という「外圧」を使っている節もあります。日本政府はムーディーズを論破しようと思えばできるのに、わざと放置しているのには、そういう背景もあるのかもしれません。

いずれにせよ、ムーディーズの格付は基本的な財務分析すらできていないのではないかとすら感じます。

AIIBの財務諸表を眺める

さて、AIIBは2016年12月基準の財務諸表を公表しています(図表1)。

図表1 AIIBの2016年12月基準の貸借対照表
区分 勘定科目 金額(千ドル)
資産の部 現金・現金同等物 1,281,992
定期預金 2,292,141
売買目的投資 3,179,873
共同案件預託金 23,623
貸出金(償却原価区分) 9,553
払込資本未収入金 11,007,227
その他資産 958
資産合計 17,795,367
負債の部 その他負債 5,538
資本の部 払込済資本 18,065,400
払込差額準備金 (282,868)
留保利益 7,297
資本合計 17,789,829
負債資本合計 17,795,367

(【出所】AIIBのアニュアル・レポートのP29より著者作成)

非常にシンプルなバランスシートです。

少なくとも2016年12月末時点では、AIIBは払込資本だけで運営されており、貸出金(※償却原価区分とされるローン)の金額は100万ドル弱に過ぎません。そして、余ったお金をキャッシュや定期預金、あるいは「売買目的投資」(Investment at FVTPL)で保有しているという状況にあります。

さらに、AIIBの2016年12月末時点における払込予定資本総額は900億ドル少々でしたが、これに対する資本金の金額はその20%にあたる約180億ドルであり、しかも110億ドルを超える未収入金が発生しているため、実際に払込が行われている金額は実質的に70億ドル少々に過ぎません。つまり、出資履行済額は全体の7.8%に過ぎないのです(図表2)。

図表2 AIIBの払込済資本は2016年末で7.8%だった
項目 金額(千ドル) 備考
出資約束額…① 90,327,000 2016年12月末の加盟国50ヵ国の合計
貸借対照表上の資本金…② 18,065,400 ②÷①=20%
貸借対照表上の未収入金…③ 11,007,227 110億ドルの未収入金のうち、中国が32%を占める
実質的な資本金…④=②-③ 7,058,173 ④÷①≒7.8%

(【出所】AIIBのニュース・リリースおよび貸借対照表より著者作成)

報道によれば、AIIBは現時点ですでに80ヵ国が加盟しており、出資額も930億ドル程度にまで膨らんでいたはずです。しかし、少なくとも2016年12月時点では、実際に払込が行われた資本金額は全体の7.8%の71億ドル弱に過ぎず、しかも、その71億ドルのうち大部分が、実際の貸出に回らずに預金や有価証券などで運用されているというのが実態なのです(図表3)。

図表3 払込金71億ドルの使途
項目 金額(千ドル) 全体の割合
本業であるはずの貸出金と預託金 33,176 0.47%
現金、預金、有価証券など 6,754,006 95.69%
営業経費等 270,991 3.84%
合計 7,058,173 100%

つまり、AIIBが客観的に開示しているデータからは、

払込済資本が出資約束額の7%に過ぎず、実際に貸出に回っている金額はさらにその0.5%に過ぎない!

という事実が判明するのです。

もっとも、このデータは2016年12月末時点のものであり、貸出金の金額は、現時点ではもう少し増えていると考えられます。ただ、私が先日、『華々しいAIIB、実態は「鳴かず飛ばず」』と題した記事の中で指摘したとおり、少なくとも2016年6月19日時点で、

  • AIIBへの加盟国は80ヵ国ではなく、56ヵ国である
  • AIIBの融資承認済み案件は13件、金額は21.75億ドルに過ぎない
  • 承認済み案件13件のうち単独案件は3件に過ぎない

という事実については、AIIBを議論する際にきちんと踏まえておくべきでしょう。

銀行自己資本比率規制とは?

バーゼルⅢと自己資本比率規制

さて、「AIIBが適格外部格付を取得した」という点は、AIIBがこれから業容を拡大していくなかで、非常に重要な意味を持ちます。というのも、「アジア最大の債権国」である日本では、銀行等の金融機関が巨額の資金を余らせており、少しでも良い利回りの円建ての債券が発行されたら、それに群がるように投資家の資金が殺到するからです。

ここで、重要な要因が「バーゼル規制」です。

そもそも、銀行などの金融機関は民間企業ですが、「一般大衆から預金を受け入れ、貸出金や有価証券といった投融資を通じて信用創造を行い、為替・振替等の決済システムの一翼を担う」という意味で、非常に重要な社会的機能を担っています。これが「預金取扱金融機関の3大機能」です(図表4)。

図表4 預金取扱金融機関の3大機能
機能 概要 備考
受信機能 預金または定期積金の受入 銀行等に預け入れられた預金は社会的には現金と同等の意味を持つ
与信機能 資金の貸付け、手形の割引 銀行等の金融機関が集めたお金を資金需要者(産業)に貸し出す機能
決済機能 為替取引 振込、決済などの機能

ということは、銀行等金融機関が倒産してしまうと、甚大な社会的影響が生じることになります。

それだけではありません。金融システムのグローバル化が進んだ昨今、どこかの国で金融不安が発生したら、あっという間に世界中に金融危機が伝播してしまうこともあります。2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した危機はその典型例でしょう。

そこで、先進国を中心とする世界中の金融規制当局がスイス連邦バーゼル市にある国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)に集まり、金融規制の在り方を議論している委員会があります。それが「バーゼル銀行監督委員会」(Basel Committee on Banking Suprevison, BCBS)です。そして、BCBSが策定するルールが「バーゼル規制」と呼ばれており、現在のバーゼル規制は2007年に導入された「バーゼルⅡ」規制の上に、2010年に導入された「バーゼルⅢ」規制を重ねるという格好になっているのです。

バーゼル規制下では、銀行等金融機関に対し、次の計算式で求まる自己資本比率を8%以上とすることを最低規制として課しています。

自己資本比率=自己資本÷リスク・アセット等

また、日本国内では、外国に支店を持っている金融機関(国際統一基準行)とは別に、外国に支店を持っていない金融機関(国内基準行)に対するルールを別途策定しており、そのルール・ブックは「銀行自己資本告示」に示されています。

リスク・ウェイトとは?

ここで重要な考え方が「リスク・ウェイト」です。

一般事業会社の財務分析と異なり、銀行等金融機関の場合、「自己資本比率」の分母は総資産ではなく、「リスク・アセット等」です。そして、投資対象の「リスク・ウェイト」が高ければ高いほど、分母の金額が大きくなる(すなわち自己資本比率が低下する)、という格好となっています。

信用リスク・アセットの計算方式には、大きく分けて「標準的手法(SA)」と「内部格付手法(IRB)」がありますが、ここでは標準的手法の方式をベースに、リスク・アセットの考え方のごく一部を紹介しましょう。

このリスク・アセットは、格付が良くなればなるほど小さく計算される仕組みであり、次のリスク・アセット表を参照します(図表5)。

図表5 リスク・ウェイトの判定ルール
種類 格付区分
中央政府及び中央銀行向けエクスポージャー(第56条第1項) AAA~AA- 0
A+~A- 20
BBB+~BBB- 50
BB+~BB- 100
B+~B- 100
B-未満 150
国際開発銀行向けエクスポージャー(第60条第1項) AAA~AA- 20
A+~BBB- 50
BB+~BB- 100
B+~B- 100
B-未満 150
地方公共団体向け・外国公共部門向け・金融機関向けエクスポージャー(第58条・第59条・第63条第1項第1号) AAA~AA- 20
A+~A- 50
BBB+~B- 100
B-未満 150
法人向けエクスポージャー(第65条) AAA~AA- 20
A+~A- 50
BBB+~BBB- 100
BB+~BB- 100
BB-未満 150

(【出所】銀行告示等より著者作成)

たとえば、外国の政府等が発行した債券を購入している場合、その国の政府の格付が「AA-」までであれば、リスク・ウェイトはゼロ%、すなわち信用リスク・アセットの計算上は、「お金を貸していないのと同じ状態」であるとしてカウントすることが可能です。また、国際開発銀行(MDB)、地方政府・地公体、法人・企業の場合も、外部格付が「AA-」までであれば、リスク・ウェイトは20%で済むのです。

一方、無格付の場合は、リスク・ウェイトは100%とされています。

ここで、自己資本額が100の銀行が1,000の資産を保有している場合、リスク・ウェイトによって、自己資本比率がどのように変化するかを数値例で確認してみましょう(図表6)。

図表6 リスク・ウェイトと数値例(投資額を10,000、自己資本額を100とする)
リスク・ウェイト リスク・アセット 自己資本比率
20% 200 50%
50% 500 25%
100% 1,000 10%

つまり、リスク・ウェイトが上がれば上がるほど、同じ投資額であっても自己資本比率は低下してしまうのです。

AIIBが100%から20%リスク・ウェイトになったこと

これまで、AIIBは適格格付機関(ECAI)から信用格付を取得していませんでした。この状態で、AIIBが発行した債券に対して適用されるリスク・ウェイトは100%です。

しかし、日本国内においても「適格格付機関」として指定されているムーディーズがAIIBに対し、Aaa(AAAに相当)の格付を付与したことで、外部格付準拠方式におけるAIIBのリスク・ウェイトは20%となりました。つまり、信用リスク・アセットが一挙に5分の1に圧縮された格好となったのです。

図表1で確認したとおり、現時点でAIIBは債券を発行していませんし、図表2で確認したとおり、払込金は資本金の7%少々に過ぎず、貸出金も全く増えていません。ただ、将来、AIIBが金利ダンピング競争を仕掛け、世銀やアジア開発銀行(ADB)などから融資案件を不当にかっさらうような事態が生じてくると、話は全く変わってきます。

AIIBは高格付を背景に、巨額の債券を調達する可能性があるからです。

その際、中国に一番近くて、一番発展している資本市場といえば、東京市場です。つまり、日本の都銀、地銀、信用金庫、農協などの資金が狙われるのです。

ただ、ムーディーズが最高格付を付与したといっても、AIIBは胴元が胴元だけに、その信用力には非常に怪しいものがあります。万が一、AIIBが日本の金融機関から巨額の資金を調達し、その資金が返済不能になったとした時には、いったい何が起こるのでしょうか?

金融機関は預金保険法に基づき、日本国民の税金で救済される!

先ほども申しあげたとおり、銀行等の金融機関は、民間企業です。このため、経営に失敗すれば倒産するということもあり得ますし、とくに国際統一基準行の場合は、CoCo債(ココさい)と俗称される証券(AT1証券、T2証券)の資本算入を認めることで、経営破綻の際に投資家に損失を負わせる仕組みが導入されています。

ただ、やはり銀行等金融機関が経営破綻すれば、金融システムが大混乱に陥りかねません。なぜなら、預金者が銀行に預けているお金が「とりっぱぐれる」ことになってしまい、金融システムに対する人々の信頼までが損なわれかねないからです。

日本の場合は金融庁が銀行業・信用金庫業などに免許を付与し、普段から監督するという制度を取っていますが、それでも経営破綻しそうになってしまえば、経営破綻する前に資金援助をする仕組みがあります。その一つが預金保険法の支援措置です(図表6)。

図表6 預金保険法の支援措置の例
措置 条文の記載抜粋 対象となる金融機関
第一号措置 株式等の引受 銀行、信金、信組、労金、それらの系統上部団体等
第二号措置 資金援助の認定
第三号措置 特別危機管理措置(預金保険法第111条~119条)の認定
特定第一号措置 金融機関「等」に対して行う資金貸付、特定株式引受の認定 上記に加え、銀行持株会社、保険会社等を含む
特定第二号措置 金融機関「等」に対して行う、特別監視及び特定資金援助の特定認定

(【出所】預金保険法第102条第1項、第126条の2第1項より著者作成。なお、農林水産系金融機関の救済スキームは預金保険法ではなく別の制度に基づいているが、ここでは記載を省略している)

つまり、経営破綻の危機に瀕した銀行等に対して、株式等の引受、資金援助、特別危機管理措置などを取ることで、経営破綻を回避しようとする仕組みです。

日本では、過去に乱脈融資で経営破綻させた事例(いわゆるペイオフの事例)は、戦後では日本振興銀行の事例しかありません。逆にいえば、それ以外の経営破綻の事例においては、いずれも預金保険法上の措置が発動され、預金は全額が守られています。

勝手に買って勝手に倒産しろ、ではない!

つまり、日本の民間金融機関がAIIBの発行する債券を取得し、巨額の損失を蒙り、それによって倒産するリスクが発生すれば、最終的に日本国民の貴重な血税でその銀行を救済することになるのです。

一般に「民間企業は国の許可を得ずに、自分の判断で勝手に投資し、経営判断が失敗した場合には倒産してしまえば良い」とされており、これが経済学の鉄則ですが、銀行等金融機関の場合は、「勝手に投資して勝手に倒産して良い」、という話にはならないのです。

さて、リスク・ウェイトの議論に戻ります。

AIIBは現状、資本市場で債券を発行していませんが、他の代表的なMDBは、世銀にしろADBにしろ、債券を発行して民間から資金を調達しています。日本の銀行告示上、次の14のMDBについては、格付がなくてもリスク・ウェイトはゼロ%であるとされます(銀行告示第1条第36号、第60条第2項。図表7)。

図表7 日本の告示上、「ゼロ%リスク・ウェイト」が適用されるMDB
銀行名 英語名と略称 設立年月 日本の加盟
国際復興開発銀行 International Bank for Reconstruction and Development, IBRD 1945年12月 1952年8月
国際金融公社 International Finance Corporation, IFC 1960年9月 最初から
多数国間投資保証機関 Multilateral Investment Guarantee Agency, MIGA 1988年4月 最初から
アジア開発銀行 Asian Development Bank, ADB 1968年8月 最初から
アフリカ開発銀行 African Development Bank, AfDB 1964年9月 1983年2月
欧州復興開発銀行 European Bank for Reconstruction and Development, EBRD 1991年3月 最初から
米州開発銀行 Inter-American Development Bank, IDB 1959年12月 1976年7月
欧州投資銀行 European Investment Bank, EIB 1957年3月 未加盟
欧州投資基金 European Investment Fund, EIF 1992年12月 未加盟
北欧投資銀行 Nordic Investment Bank, NIB 1976年12月 未加盟
カリブ開発銀行 Caribean Development Bank, CDB 1970年1月 未加盟
イスラム開発銀行 Islamic Development Bank, IDB 1973年12月 未加盟
予防接種のための国際金融ファシリティ International Finance Facility for Immunisation, IFFIm 2006年6月 未加盟
欧州評議会開発銀行 Council of Europe Development Bank, CEB 1956年4月 未加盟

つまり、日本の銀行等金融機関がこれらの14のMDBが発行する債券を購入する場合、外部格付が存在しようがしまいが、リスク・ウェイトはゼロ%が適用されます。これに対し、AIIBが発行する債券を購入した場合のリスク・ウェイトは20%ですので、100%から圧縮されたとはいえ、日本の銀行がAIIB債を取得するには、まだそれなりにハードルはあるかもしれません。

日本はどう対処すべきか?

もちろん、日本は法治主義国です。このため、金融庁が個別の銀行等金融機関に対し、「AIIBが発行する債券を買うな!」などと「命令」することはできません。もし日本の銀行等金融機関がAIIB債を購入するなら、ルールに従って粛々とリスク・ウェイトを判定している限り、金融庁としては文句のつけようがないからです。同様に、韓国あたりの金融機関が発行した債券を日本の銀行等金融機関がドカ買いしていることも事実ですが、同じ理由で、金融庁としては「韓国みたいな危ない国の債券を買うな!」と「命令」はできません。そして、「買うな」という「命令」はできないため、高利回りに釣られて怪しげな債券を買う銀行は後を絶たないのです。

このような状況に陥っている最大の理由とは、日銀が行う異次元緩和(QQE)の影響により、日本国内の利回りが極端に低下(あるいはマイナス化)し、日本の銀行が買える資産が金融市場から消滅してしまったからです。しかし、日銀がQQEを行っている影響で、むしろ日本の債券市場には国債不足という状況が生じています。

ということで、日本が国を挙げてやらねばならないことは、ただ一つしかありません。それは、

「国債の増発」

です。私の試算では、400~500兆円程度は国債を発行しても、金利が極端に上昇することはありません。そして、日本国債の発行量が増え、日銀がマイナス金利政策をやめれば、金利もある程度正常化し、景気も回復します。手っ取り早く「教育国債」あたりを発行するのが良いと思います。

そして、そうすることで日本の銀行がAIIB債などの怪しげな金融商品に手を出さなくて済む状況にしなければなりません。その意味で、日本の経済を低迷させている最大の戦犯は増税原理主義を掲げる財務省と、財務省が垂れ流すプロパガンダを無批判に広めるマス・メディアなのです。

 

新宿会計士:

View Comments (30)

  • なるほどAIIBの利回りにつられる可能性が十二分に存在しそれを止める為には国内の金融機関が満足するだけの金融商品を回さないといけないのですか、しっかしこれは中国に上手くやられましたね……
    まさかこんなやり方で日本から資金を集めるとは……それだけAIIbを軌道に乗せたいって事でしょうが迷惑な事です。
    政府が新しい金融商品を国内で作って回そうとしたら間違いなく野党やメディアが批判しだすかもしれませんし、発端のムーディーズも間違いなく政治の影響下にあるのでしょう。今中国の経済は危機に瀕してますが日本は巻き込まれない為にも早急に日本政府が動く必要があるでしょう。

  • AIIBは高利回りの債券を発行するんじゃないかな。それで世界中にインフラ整備をする。もちろん、受注するのは中国企業。相手国が返済できるかどうかなんか関係ない。鉄鋼などの生産余力が大きすぎるので、とにかく何かを作る。ADBがとっても手出しをできない案件でも関係ない。相手国が返済不能になったら、港だろうが島だろうが砲艦外交で接収する。そのためにも空母は必要なんだな。中国なら砲艦外交で相手国から強制的に取り立てることができるだろうが、日本や欧州、アメリカですらこの手法はとれないな。このためにも中国は空母をどんどん作るんじゃないかな。

  • はい。まさに私が言いたかったことを代弁して頂きありがとうございます。要するにモラルハザードの問題なのです。

    我が国の告示上aiibはゼロ%R/Wの適用からは明示的に除外されていますが、外格が付いてしまうとR/Wは100%から20%に落ちてしまいます。この外格と格付け対比高い利回りに惹かれてポンチスキームみたいなaiibに多くの銀行が騙されるのを危惧しているのです。

    先日の私のコメントにあった預金保険制度についても触れて頂きありがとうございます。

    余談ですが会計士さんの持論にある日韓スワップも、銀行が韓国ネームの糞な債券買っているからこそ、日韓通貨スワップが日本側から忖度されていたのだという事情があります。

    • ふぁっ!それ初耳すぎて驚愕なんだが⁉️
      はぁーー日韓通貨スワップにはそんな理由があったのか、まさかとは思うけどそこの大手の某金融機関さんは自民の親中派辺りと密接な関係じゃないよね……ちょっと日本の裏側の世界見た気分で最悪なんだが……

      銀行員さんと会計士さんのお陰で例え大手の銀行でもしっかりと選ばなきゃ危険だと身にしみたよありがとうございます。
      あと非国民さんの中国による砲艦外交も大真面目に想定したほうがいいかもしれないね。
      今中国は労働力と鉄鋼(モノ)を大量に不良在庫で抱えているから海外にそれを吐き出すのがAIIBとシルクロード構想な訳で更にそれを成立させる為の軍事力か………東南アジアの国々と軍事同盟大真面目に必要かなぁ

      アメリカもいい加減に中国に丸め込まれるのどうにかしてほしいですね!上記の3つが成立して機能したらもう日本だけじゃ止められませんよ!それに北朝鮮だっていったいどうするのか……
      反日教育を行なっている中国の最終目標は間違いなく日本を屈服させる事でしょうしどうすれば良いのか…

  • ムーディーズの格付けについて、次のような記事が有りました。

    麻生太郎財務相は30日の閣議後会見で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、米格付け大手、ムーディーズ・インベスターズ・サービスから最上位の格付け「Aaa(トリプルA)」を取得したことについて、
    「(南アフリカの)ボツワナより日本の国債が低いと出したのは確かムーディーズじゃなかったか。
    その程度のところ(が出した格付け)だと思っている。他に興味はない」と、一笑に付した。

    先生と銀行員様の説明で、AIIBの胡散臭ささが良くわかりました。日本の銀行が騙されないのを祈るばかりです。

  • 何このマニアックな記事wwwただのネトウヨさんには絶対に書けない記事だなw
    中国のAIIBの話って要するに日本の銀行が今までの5倍は債権を買えるようになったってことでしょ?そのうちAIIBは債権出すだろうからそうなったら日本の銀行がそれを買うだろうってことで、そうなると金融庁はそれを止められないから監督で厳しくするにも限度があるってか。
    全く困った問題だね。どうして新聞はこの問題をこういう角度から報じないんだろ?

  • 本日も目からウロコでした。そのようにして日本の金融機関からお金がかすめ取られていくのですね。
    一預金者として、金融機関の資産内訳をしっかりチェックしていかなければ…

  • Moody's の英文のコメントですが、読んでいて頭がくらくらしてきました。 どれだけお金を積まれたか
    知りませんが、ここまで手放しで持ち上げるものですか ?

    The Aaa rating takes into account the strength of AIIB’s governance frameworks, including its policies on risk management, capital adequacy and liquidity

    上記のコメントは一体どこを調査して出てくるのか、当ブログ主さんでなくても素人の私ですら
    意味不明です。 又2回 expect と言う単語が出てきますが、期待を込めて言われても困ります。
    (尤も日本語の語感とは違って expect には demand と言うニュアンスもあるので単なる期待だけ
    ではないでしょうが.. )
    この記事を受けて朝日がそのうちに、上から目線で "既に最上位の格付けを取ったAIIB に対して
    日本もそろそろ本気に取り組んでアジアの膨大な開発案件に加わるべきではないか。 日本が一緒に
    アジアの発展に取り組めば中国だけでは躊躇しているアジア諸国も安心して受け入れるのではないのか。
    延いては 緊張が続いている尖閣諸島の緩和或いは解決につながるのではないか。近隣諸国と
    角突き合わせているだけではなく平和的に解決を図るべきではないのか”
    麻生さんがどこまで財務省の連中を指導できるか分かりませんが、先行きくらい気分になります。

  • MとかMとかMとか日本の銀行は、大手すべてがシナ国や南鮮国をそうやって支えてるのでしょうか。ハァ〜〜ため息しか出ませんな。所轄官庁も見て見ぬふりか。

  • まぁボツワナはアフリカでもトップクラスの成功した国ですから、Moody'sがボツワナを高評価するのは理解しますがAIIBに関しては頭がおかしいとしか思えませんね。

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