北朝鮮リスクと韓国の6つの未来

朝鮮半島情勢の緊迫に加え、5月9日には韓国で大統領選が行われます。つまり、本日から約1か月間、朝鮮半島情勢からは目が離せない展開が続きそうです。そこで本日は、「北朝鮮ファクター」を織り込んだうえで、改めて「韓国を待ち受ける6つの未来」について、議論を展開しておきたいと思います。

北朝鮮ファクターを織り込む

私は今年2月頃まで、韓国(大韓民国Republic of Koreaあるいは南朝鮮South Korea)という国に待っている将来は、「①赤化統一、②中華属国化、③軍事クーデター」の3つのいずれかであろうと考えていました。ところが、3月10日に当時の朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領が韓国の憲法裁判所により罷免されたこと、および韓国国民の多くがこの決定を支持したことにより、これらのうち「③軍事クーデター」の可能性は極めて低くなったと考えています。

ということは、韓国に待っている将来は「①北朝鮮との赤化統一」か、「②中国の属国となる」か、そのいずれかだ、ということです。具体的には、①については「極端な親北派が大統領選を制し、自然と韓国社会が左傾化・転覆することを通じて、赤化統一が実現する」、というものであり、また、②については、「米韓軍事同盟が消滅し、軍事的にも経済的にも韓国が中国の影響下に入る」、というものです。

そのうえで私は、朴槿恵氏の後任大統領を決める5月9日(火)という日付については、「①赤化統一か、②中華属国化か」を、韓国国民が自ら決める重要な日付だと考えてきました。実際、その時点で出馬を表明していた有力候補者らの主張内容と支持率を見る限り、韓国の次期政権は、遅かれ早かれ、日米陣営から離反することは間違いないと判断せざるを得ない状況だったのです。

ところが、ここに一つ、「大番狂わせ」が生じました。それが、「北朝鮮ファクター」です。

もう少し厳密にいうならば、「北朝鮮を米国が攻撃する可能性」のことです。そして、この「北朝鮮ファクター」次第では、韓国の将来が大きく動くことになります。本日は、このあたりについて、最新の情報を基に、私の考え方をまとめておきたいと思います。

北朝鮮攻撃のパターン

唐突なシリア攻撃の狙いとは?

ドナルド・トランプ米大統領は先週、就任以来初となる米中首脳会談の当日に、シリア攻撃を決断しました(シリア攻撃に至るトランプ氏の行動については、つい先日も『シリア攻撃の振り返りとメディア雑感』の中で、時系列でまとめていますのでご参照ください)。しかもその際、トランプ氏はシリア攻撃については、事前に英国や日本などの同盟国には通告していたものの、どうやら中国に対しては通告していなかったようなのです。

そして、トランプ氏がシリア攻撃を決断した結果、米軍の実際の爆撃は、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席を迎えて、楽しいはずの晩餐会の最中に開始されました。ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されている、次の2つの動画を見ると、明らかに晩餐会の動画と比べ、翌日の習近平氏の顔色が悪くなっているように感じるのは私だけではないでしょう。

 

※もっとも、習近平氏はもともと顔色が悪い(ついでにいうと人相も悪い)のですが…

いずれにせよ、私は今回のトランプ氏の決断には、「限定的な攻撃を加えることによる、シリアに対する牽制」というだけでなく、「トランプ政権下での米国は大量破壊兵器を所持・使用する国に対する単独攻撃も辞さないとする意思を見せつけること」という目的があると見ています。もちろん、「見せつける」相手は、第一には北朝鮮ですが、「仮想敵国」である中国とロシアであり、さらには北朝鮮の直接的な脅威にさらされている日本と韓国です。

伏線はFTインタビュー

トランプ氏のこうした姿勢には、伏線があります。トランプ氏は4月3日、FTオンラインの単独インタビューに応じました。

Donald Trump in his own words(2017/04/03付 FTオンラインより)

記事の中では、次のような質疑が収録されています。

Are you going to talk about North Korea and a way forward there?

Yes, we will talk about North Korea. And China has great influence over North Korea. And China will either decide to help us with North Korea, or they won’t. And if they do that will be very good for China, and if they don’t it won’t be good for anyone.

How ambitious do you want to be with China? Could we see a grand bargain that solves North Korea, takes American troops off the Korean peninsula and really changes the landscape out there?

Well, if China is not going to solve North Korea, we will. That is all I am telling you.

意訳すると、トランプ氏の答えは、「中国は北朝鮮に大きな影響力を及ぼし得る。中国は北朝鮮問題を巡って米国を支援する立場を取ることも、そうしないこともできる。(しかし)もし中国が米国を支援しないのであれば、米国が(単独で)やるだろう」というものです。

WSJにも単独インタビュー

そして、昨日、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)英語版に、トランプ大統領が中国に対し、北朝鮮問題と通商問題のバーターでの解決を呼びかけた、とするインタビュー記事が掲載されています。

Trump Says He Offered China Better Trade Terms in Exchange for Help on North Korea(米国時間2017/04/12(水) 16:15付=日本時間2017/04/13(木) 05:15付 WSJオンラインより)

WSJによると、

President Donald Trump said Wednesday he has offered Chinese President Xi Jinping a more favorable trade deal for Beijing in exchange for his help on confronting the threat of North Korea.(ドナルド・トランプ大統領は水曜日、WSJとのインタビューに応じ、中国の習近平大統領との首脳会談の席上、北朝鮮の脅威という問題を解決に協力する場合には貿易摩擦問題での譲歩の用意があると提案したことを明らかにした。)

としていますが、いわば、「北朝鮮問題が解決するならば、中国との経済・貿易問題とバーターにしても良い」とする、強い意思表示だと見て良いでしょう。リンク先記事によれば、トランプ氏は先週の米中首脳会談で習近平氏に対し、「今年4月の為替操作国認定については見送る」「ただし、中国の対米黒字をこれ以上続けることはできないことを知るべきだ」と述べた、ということです。

現在、「ボール」は中国側に?

では、実際に米中首脳会談では、米中両国は北朝鮮を巡って、具体的に何らかの合意に達したのでしょうか?

これについては、当ウェブサイトでは既に『不毛な米中首脳会談受け、北朝鮮攻撃のリスク高まる』の中で申し上げたとおり、「目に見える成果はほぼ皆無だった」と見て良いでしょう。ただ、WSJオンラインに掲載されたトランプ氏の発言によれば、「経済・貿易問題と北朝鮮問題をバーターにする」などの提案がなされたそうです。ということは、むしろ、米中首脳会談では、何か具体的な成果があったというよりは、「まずは北朝鮮問題を巡るボールを中国側に渡した」という方が実情に近いのかもしれません。

米国は現在、原子力空母「カール・ビンソン」などの戦力を、朝鮮半島に差し向けています。つまり、

  • 4月3日のFTのインタビューでトランプ氏は、中国の協力が得られない場合、米国が単独で北朝鮮問題を解決すると述べている
  • 4月7日の米中首脳会談では、中国は北朝鮮問題の解決について、何らコミットをしていない(少なくともそのような報道発表はなされていない)
  • 現在、米軍が戦力を朝鮮半島周辺に集結させつつある

という客観的な事実を踏まえるならば、ほぼ間違いなく、米軍は北朝鮮に対する武力攻撃の準備に入っていると見るべきでしょう(実行するかどうかはともかくとして)。

北朝鮮攻撃の実際

北朝鮮攻撃のレベルとは?

ただ、ここで北朝鮮攻撃を巡って、2つの疑問が生じます。

1つ目は、本当に米国が北朝鮮攻撃に踏み切るのかどうか、という疑問であり、2つ目は、米国が北朝鮮攻撃に踏み切った場合、それはどの程度の攻撃となるのか、という疑問です。

このうち、1つ目の方の疑問については、ここ数日、メディアやブログ・サイト等でも精力的に取り上げられています。しかし、2つ目のの疑問(攻撃するならどの程度の攻撃とするのか)については、あまり議論されている形跡はありません。

私は、「米国が北朝鮮を攻撃するかどうか」そのものについても、もちろん大切なことだと考えています。しかし、現段階では、「米国が北朝鮮を攻撃するのかどうか」よりも、むしろ「攻撃をするならば、どのような攻撃をするのか」について議論する方が有益ではないでしょうか?

私はこれについて、いくつかのパターンに分けてシミュレーションすべきだと考えています。つまり、北朝鮮を完全に焦土化し、滅ぼしてしまうほどの攻撃なのか、あるいは今回のシリア攻撃のような、軍事拠点などに対する限定的な軍事攻撃に留まるのかによって、朝鮮半島の将来も大きく変わるからです。

北朝鮮焦土化作戦

まず、「米軍による攻撃」として、真っ先に考えられるパターンとは、北朝鮮を、それこそ「焦土」にしてしまうような全面攻撃です。北朝鮮の事実上の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)がどこに隠れているか分からないという点もさることながら、北朝鮮全土にミサイルが隠されているとみなし、それこそ北朝鮮全域を「しらみ潰し」に攻撃するだろう、という考え方です。

ただ、私はこのような攻撃が行われる可能性は、極めて低いと考えます。なぜなら、攻撃の効率が悪い(あるいは攻撃の費用対効果が低い)からです。ただでさえ北朝鮮は「世界の最貧国」であり、国土の山々も、あらかた「はげ山」となってしまっています。

もちろん、「北朝鮮の人民は洗脳されていて、それこそ北朝鮮全土を焦土にするくらいでないと攻撃の実効性は上がらない」などとする考え方もあるかもしれません。しかし、いきなり北朝鮮の全土を焼け野原にするだけの爆弾の雨を降らせると考えるのは、いささかやり過ぎでしょう。

限定的な攻撃に留まるのか?

当たり前の話ですが、戦争において重要なことは、「戦争をする目的」にあります。

私自身は米軍が北朝鮮攻撃に踏み切る可能性が高いと見ているものの、その理由は、米国が北朝鮮の所有する大量破壊兵器を除去することにあると考えているからです。そして、大量破壊兵器には大きく分けて、

  • ミサイルなどの大型の運搬器具
  • VXガスやサリンガスなどの生物・化学兵器

の2つの類型があります。このうち、生物・化学兵器については、それこそ北朝鮮全土をくまなく捜索しなければなりませんが、ミサイルなどの大型の兵器については、軍事偵察衛星などの情報により、それらの所在を特定することは可能でしょう。

ということは、大量破壊兵器のうち、当面の危機であるミサイルだけを破壊すれば済むのであれば、なにも大がかりな軍事侵攻を行う必要などありません。先日のシリア攻撃と同様に、北朝鮮が開発しているミサイルに対してのみ、トマホークを打ち込めば済む話です。

「斬首作戦」:金正恩の排除はなるか?

ただ、「大量破壊兵器を許さない」とする姿勢の米国が、ミサイルを除去することだけで満足するとも思えません。やはり、真の脅威は、ミサイルや核兵器などの開発を命じている金正恩というリーダーにあります。このように考えていくならば、米軍が金正恩の排除(いわゆる「斬首作戦」)を軍事作戦の目的に置くという可能性も十分にあるでしょう。

例えば、米国の諜報機関が金正恩の所在を特定し、ピンポイントで金正恩の身柄を確保することができれば、わざわざ大々的な軍事作戦を行う必要はないはずです。ただし、金正恩には「影武者」(姿も形もそっくりな金正恩のダミー)も複数名存在しているでしょうし、金正恩が隠れるための地下壕も、一説によると、北朝鮮全土で10か所近く存在するとの話も聞きます。

したがって、この作戦が成功するためには、北朝鮮内部に関する相当に詳細な情報と、相当に高い作戦遂行能力が求められるでしょう。

米中密約による「北朝鮮無血革命」

ところで、軍事作戦の目的を「金正恩の排除」に置くのであれば、米軍の軍事作戦を防ぐために、中国が介入する可能性も否定できません。先週の米中首脳会談の具体的な内容については、ほとんど公開されていませんが、実は金正恩排除に関する、何らかの「米中密約」が成立している可能性も否定できないでしょう。

ここでいう「米中密約」とは、例えば、中国側が北朝鮮を説得し、金正恩を平和裏に亡命させ、金正恩の後継者として中国の息が係ったものを北朝鮮に送り込む、というものです(これを「無血革命構想」とでも呼びましょう)。もしかすると、たとえば「4月15日までに中国主導の無血革命構想が成功した場合、米国は北朝鮮に攻め込まないが、それまでに成功しなかった場合には、米国は直ちに軍事作戦に移る」、などの「密約」が、先日、成立していたのかもしれません。

ただし、この「北朝鮮無血革命構想」については、私がいま、勝手に想像で書き上げた「陰謀論」に過ぎず、あまり信頼性が高いものとはいえません。

まとめ:4つのシナリオ

以上の「4つのシナリオ」をまとめておきましょう(図表1)。

図表1 北朝鮮を巡る「4つのシナリオ」
シナリオ概要備考
北朝鮮焦土化大量破壊兵器を完全に除去するために、北朝鮮全土を焦土化し、破壊する作戦の費用対効果が釣り合っておらず、また、北朝鮮からの反撃というリスクも高い
限定的な攻撃地表などに露出しているミサイルなどに焦点を絞って、ピンポイントで攻撃する北朝鮮という国家の消滅を意味するものではないため、比較的、北朝鮮からの反撃のリスクも低い
斬首作戦ピンポイントで金正恩を排除するために米軍(あるいは米国の工作員)が北朝鮮で活動する金正恩の所在を特定することが困難であることに加え、失敗した場合、北朝鮮からの猛烈な反撃を受ける危険性もある
無血革命何らかの「米中密約」に基づき、中国がお膳立てして、北朝鮮の最高指導者・金正恩を平和裏に外国に亡命させ、北朝鮮の政治体制を変革する、というシナリオ米中間で「密約」が成立していることがシナリオの前提条件であるが、先日の米中首脳会談でそのような合意が成立していると考えるには若干の無理がある

これらの選択肢を比べると、メディアや個人ブログ・サイトなどが好んで議論している「北朝鮮全土の焦土化」や「斬首作戦」などは、正直、やや現実離れしているような気もします。

私の目から見れば、やはり、「明らかな大量破壊兵器だけをピンポイントで狙った限定的な北朝鮮攻撃」を行いつつ、将来的には「無血革命による金正恩体制の除去」を狙う、というのが、一番現実的な選択肢であるようにも思えるのです。

韓国の6つの未来

北朝鮮の「現状維持シナリオ」とは?

以上を踏まえるならば、米国が北朝鮮への単独攻撃に踏み切る可能性が高まっていることは事実ですが、だからといって、「米軍が北朝鮮攻撃に踏み切れば、朝鮮半島(さらには日本)を巻き込んで、ただちに大々的な戦争が発生する」、という単純なものではないことも事実でしょう。つまり、米軍による北朝鮮攻撃が行われた場合であっても、北朝鮮が現状を維持する可能性は、ゼロではない、ということです。

ここで、「現状維持」シナリオとは、金正恩体制が維持され、引き続き北朝鮮が韓国にとっての脅威となり続けるシナリオです。具体的には、米軍が限定的な北朝鮮攻撃を行うものの、金正恩体制の除去にまでは至らない場合や、米軍が北朝鮮攻撃自体を見送ったような場合が考えられます。

そして、「北朝鮮ファクター」が存在しなければ、韓国の未来は以前私が考えていたものと同じになります。つまり、5月9日(火)に予定されている大統領選で、親北派の文在寅(ぶん・ざいいん)氏が当選すれば、かなりの確率で韓国は北朝鮮に取り込まれることになります。

ただ、極端な「親北派」である文在寅氏の当選が実現しなかったとしても、そのほかの有力候補者―たとえば安哲秀(あん・てっしゅう、または、あん・てつしゅう)氏や安熙正(あん・きせい)氏、さらには李在明(り・ざいめい、または、り・ざいみん)氏―あたりが当選しても、米韓同盟が現在よりも弱体化することは、ほぼ間違いありません。

とくに、中国は現在、朝鮮半島への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を阻止しようと躍起になっています。聞くところによれば、最近、中国国内では韓国旅行のパッケージツアーの販売が禁止されるなどの「嫌がらせ」が行われているそうですが、それだけではありません。中国のテレビ局に出演している「韓流スター」にモザイクが掛けられているとか、THAAD配備用地を提供したロッテの系列企業が営業禁止措置を受けているとか、そういった「地味な」経済制裁を受けているのだとか。

日本だと、この手の中国からの「嫌がらせ」に対しては、徹底的に「逆襲」します。しかし、韓国の場合、おそらく中国が怖いのか、経済制裁を解除してもらうために、THAADの配備を撤回する(もしくはそれに準じた譲歩をする)という可能性は十分にあるでしょう。

そうなれば、最悪の場合、米韓同盟が破棄されて、これに代わって中韓同盟が成立する可能性も十分にあると考えられます。

北朝鮮が消滅した場合は?

ただ、米軍の攻撃により、北朝鮮が消滅した場合には、また違った展開を考える必要があります。

この場合、朝鮮半島の全域が米国の影響下に入ることになります。当然、焦土と化した旧北朝鮮地域の面倒を見るのは、韓国でしょう。つまり、「米国主導での統一国家の成立」、です。

もっとも、このようなシナリオが実現したとしても、韓国は米国の後ろ盾をいつまでも持っておくとも考えられません。というのも、「朝鮮半島へのTHAAD配備にともなう経済面からの中国の締め付け」という状態は、まったく変わっていないからです。

このため、私たち日本にとって最悪のシナリオとは、米軍の攻撃により北朝鮮が消滅し、日本は復興資金を拠出させられ、さらに韓国が米国主導で「統一朝鮮」を作るものの、長期的には「統一朝鮮」が中国の属国となってしまう、ということです。つまり、お金だけ取られて、軍事的脅威を日本の対馬のすぐ目と鼻の先に出現させることになる、というシナリオです。このシナリオだけは避けなければなりません。

北朝鮮の消滅次第では違った展開が!

一方、同じ「北朝鮮消滅シナリオ」であっても、中国主導の「無血革命」によって北朝鮮の体制変更が実現した場合には、さらに違う展開が考えられます。具体的には、中国の後ろ盾を得て、朝鮮半島に統一国家が成立する、というシナリオです。

先ほど私は、「北朝鮮の無血革命を巡る米中密約が存在する可能性はゼロではない」と申し上げましたが、まさにこのシナリオでは、「朝鮮半島のことは中国に任せる」、ということになりかねません。さらに、米国が「北朝鮮無血革命」のバーター取引として、米韓同盟の破棄と朝鮮半島からの全面撤退を約束しているのだとしたら、韓国は、中国の後ろ盾を得て、平和裏に政権交代した北朝鮮との統一政府樹立に動くのかもしれません。

どのみち暗い韓国の未来

つまり、「北朝鮮ファクター」を考慮に入れたうえで、改めて韓国の未来を考えてみると、図表2のとおりです。

図表2 韓国の未来予想図
区分パターンシナリオ詳細
北朝鮮との統一シナリオ北朝鮮主導で赤化統一する北朝鮮が今回の危機を生き延び、韓国で親北派大統領が誕生し、朝鮮半島は北主導で赤化統一される
米国主導で焦土と化した北朝鮮を吸収する米軍の攻撃により北朝鮮が崩壊し、米国の命令により、韓国がなし崩し的に北朝鮮の面倒を見る
中国主導で平和裏に政権交代した北朝鮮と統一する米中密約により北朝鮮で平和裏に政権交代が発生し、中国の後ろ盾を得て南北統一国家が樹立される
南北分断継続シナリオ北朝鮮の現状の体制を残したままで、韓国が中華属国化する北朝鮮という体制が残ったままで、韓国が米韓同盟を破棄し、中韓同盟を成立させ、中国の事実上の属国となってしまう
韓国で軍事クーデターが発生する韓国で軍事独裁政権が成立し、民政を停止し、韓国の赤化統一や中華属国化を防ぐ
南北朝鮮を「クロス承認」する韓国は中国の属国となる一方、北朝鮮については日本と米国が国家承認する

つまり、今回アップデートしたシナリオは、大きく分けて、

  • 南北朝鮮が統一されるシナリオ
  • 南北分断が維持されるシナリオ

の2つに分かれます。そのうえで、「南北統一シナリオ」については、北朝鮮主導で統一されるのか、米国主導で統一されるのか、中国主導で統一されるのか、という違いはありますが、「韓国主導で統一される」、というシナリオは考えられません。つまり、3つのいずれのシナリオにおいても、韓国が主体的に朝鮮半島の新秩序構築に関わることはできない、という共通点があるのです。

一方、南北分断が維持されるシナリオについても3つ考えています。このうち、日本にとって一番厄介なシナリオは、「北朝鮮の現状の体制を残したままで、韓国が中華属国化する」ことです。というのも、北朝鮮が日米両国に敵対したままの状態で、韓国までが中国の属国となってしまうということになるからです。

一方、日米両国にとってのベスト・シナリオとは、韓国が軍事クーデターによって民政を停止することです。このようにすれば、衆愚政治により親北派・親中派の大統領が当選し、執政することを防ぐことができるため、じつは韓国自身にとっても最適なシナリオです。ただ、現在の韓国国民が、軍部によるクーデターを受容するとも思えません。さらに、韓国で軍政が成立すれば、中国が今まで以上に、韓国に対して強い圧力を掛けて来ることは間違いありません。経済面での中国からの締め付けに苦慮する現在の韓国が、これ以上、中国を刺激することに耐えられるとも思えません。やはり、軍事クーデター・シナリオは、非現実的でしょう。

「ウルトラC」はあるのか?

さて、ここまでで触れていないシナリオがあります。それは、「南北クロス承認シナリオ」です。

韓国で軍事クーデターが期待できない以上、本当の意味での「ウルトラC」は、じつは、この「南北相互承認シナリオ」です。具体的には、

  • 米韓同盟を破棄し、韓国を中国の勢力圏に譲る
  • 米国(と日本)が北朝鮮との国交を樹立する

というシナリオです。このシナリオは、現段階では最も「荒唐無稽」に見えますが、実は、実現可能性は決して低くないシナリオでもあります。なぜなら、意外と中国と北朝鮮は「同床異夢」だからです。

もちろん、日本人拉致問題を残したまま、日本が北朝鮮と国交を正常化するのはあり得ない話ではあります。しかし、北朝鮮が日本や米国との国交を正常化する意欲を見せ、拉致問題で何らかの進展が生じるのであれば、条件次第では限定的に日本と米国が北朝鮮を国家承認し、支援を与えることもあり得るでしょう。私はこれを、「軍事クーデター」に代わる「ウルトラC」と呼びたいと思います。

定期的なシミュレーションが大事

以上、韓国にとってはどれも暗い6つのシナリオを提示してみましたが、果たして私自身のこの予測は、どういう結論を迎えるのでしょうか?

一説によると、北朝鮮は1990年代に死んだ金日成(きん・にっせい)の誕生日とされる4月15日か、「朝鮮人民軍」なるものが創設されたとされる4月25日のいずれかに、核実験に踏み切る、との観測もあるようです。そうなれば、その前後に、米軍による北朝鮮攻撃が行われるリスクが高くなりそうです。

ただ、こうした「何が起こるか分からない状況」だからこそ、なおさら重要なのは、事態を冷静に分析することでしょう。私は、当初は「3つのシナリオ」を置いていたのですが、定期的にシミュレーションをアップデートしてきた結果、少しずつシナリオが増えて来たと思います。こうしたシナリオは、今後もアップデートしていきたいと考えています。

 

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 清明 より:

    いま、お昼の産経ニュース記事に、
    「米、北朝鮮への先制攻撃準備か 核実験敢行の確証得た段階で 米テレビ報道」
    ttp://www.sankei.com/world/news/170414/wor1704140028-n1.html

     米NBCテレビは13日、複数の米情報機関当局者の話として、6回目の核実験が懸念される北朝鮮に対して、米軍が通常兵器による先制攻撃の準備をしていると報じた。北朝鮮が核実験を敢行するとの確証を得た段階で攻撃を行うとしている。・・・・

    トランプ嘘つかない!ww
    機を見るに敏、準備万端怠りなしというところでしょうか。

  2. 日本橋経理マン より:

    久しぶりの韓国ネタですね。楽しみに御待ちしておりました。日経の鈴置さんのレポートがあまり出て来ないので、新宿会計士さんのレポートは本当に有益で待ち遠しいです。ところで、新宿会計士さんは赤化統一もアリと見ているのですね。興味深いところです。私などは北朝鮮が消滅して南朝鮮が北朝鮮の面倒を見ることになると思っていますが、どの場合であっても南朝鮮が自分で自分の将来を決められないとは、実に興味深い指摘でしょう。それにしても「ウルトラC」とは面白いですね。ブログ主さんは「決して低くない」と仰いますが、本当にそうなら面白いですね。

  3. 黒猫のゴンタ より:

    もしかしたら、変数がもう一つあるかもです

    「北朝鮮利権」奪取へ奔走するロシア
    ttps://myjitsu.jp/archives/20443

    ロシアはこの事態を指咥えて看過するんですかね
    シリアの一件はさておき、トランプとプーチンは根回し済みなのかしら?

    ロシアが絡んだら、こんな感じでの日清日露戦争だったんでしょうね昔は
    こんだけいろんな国に翻弄されてきたら、あんな変な性格になるわね朝鮮人

    でも今や日清はラーメンだし
    征露丸は今や正露丸、マークは勇ましいラッパでも糖衣錠
    平和はいいわぁ

  4. 佐藤鴻全 より:

    北朝鮮危機3つのシナリオと日本の備え -北爆、核容認、ロシア亡命-

    ●トランプvs金正恩の対決の行方は、共に特に国内に弱みを見せると政権崩壊を招きかねない事情を抱えているため、軍事衝突に至る可能性が高い。
    ●米国に届く長距離弾道ミサイル開発を破棄する事を条件に、トランプが一転、北朝鮮の限定的核保有を容認する可能性も、排除出来ない。
    ●金正恩がロシアへ亡命するシナリオも考えられるが、プーチンのロシア側に直接的メリットは乏しいため、国際社会の対露制裁解除等の対価を要求してくる事も想定される。

    http://blog.livedoor.jp/ksato123/archives/54733020.html

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