トランプ政権「メキシコからの20%関税で国境建設」の衝撃 ほか

本日も予定にはない2本目の記事を配信します。米国のトランプ政権が「メキシコ(等)からの輸入関税を財源にメキシコとの国境を建設する」可能性に言及したからです。また、ついでに「現時点で書きたいことの棚卸」についても行っておきたいと思います。

トランプ政権、順調に暴走開始

メキシコ国境の建設財源は20%課税

問題のニュースは、二つあります。

一つ目は、米国の大統領府(ホワイトハウス)が、メキシコから輸入する商品に対して20%の税金をかけて、それを財源にメキシコとの国境を建設する、というものです。

White House Suggests Tax on Mexican Imports to Pay for Border Wall(米国時間2017/01/26(木) 17:17付=日本時間2017/01/27(金) 06:17付 WSJオンラインより)

朝っぱらから衝撃のニュースですね。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)オンライン版によると、ホワイトハウスのシーン・スパイサー報道官の会見で、「米国が貿易赤字を計上している相手国からの輸入に20%の課税を導入する」案を導入する可能性に言及。具体歴としてメキシコを挙げたものです(原文 ‘to institute a 20% tax on imports from countries with which the U.S. runs a trade deficit, “like Mexico”’)。

もちろん、スパイサー報道官は、こうした極端な政策も「現在検討されている案の一つ」に過ぎないとしています。しかし、アメリカとメキシコはともにNAFTA加盟国であり、米国が自ら国際条約を破りに行くことになれば、米国の国際的な地位の急低下は免れないでしょう。

そして、これに関連して、もう一つ、気になるニュースがあります。隣国・メキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領が今週の訪米予定をキャンセルした、とするものです。

Trade Threat, Canceled Meeting Deepen U.S.-Mexico Rift(米国時間2017/01/26(木) 15:37付=日本時間2017/01/27(金) 04:37付 WSJオンラインより)

WSJによると、今回の経緯は次の通りです。

  • 1月25日(水)にトランプ氏がメキシコ国境との間で「物理的な壁」の建設計画を立てる大統領令を発する。
  • これを受けてニエト大統領が、「わが国(メキシコ)は壁の建設費用を負担しない」と表明する。
  • 1月26日(木)早朝にトランプ氏が「とても必要な壁の建設費用をメキシコが払おうとしないのならば、こんどの会談はキャンセルした方がましだ(原文 “If Mexico is unwilling to pay for the badly needed wall, then it would be better to cancel the upcoming meeting.”)」とツイートする。
  • 激怒したニエト氏が訪米キャンセルを発表する。

という流れです。まさに「破壊者」の風格、といったところですね。

メディア不信が生んだ「怪物大統領」

私は、こうした一連のトランプ氏による行動が、米国の国益という観点に照らして適切なのかと言われれば、きわめて疑問だと考えています。ただ、それと同時に、米国民の間では、メディアがゴリ押しする「政治的な正義(“political correctness”、最近では日本語で『ポリコレ』ともいう)」に辟易(へきえき)としていたというのも事実かもしれません。

実際、CNNを筆頭とする米国のメディアは、トランプ氏を「当選させまい」として、猛烈な偏向報道を行いましたし、選挙前の「選挙情勢分析」でも、米国内のメディアはことごとく、予想を外しました。

この背景にあるのは、メディアが押し付ける「正義」に、市民レベルで反乱が生じている、という、「現代特有の事情」です。メディアはその事実を認めたくないのかもしれませんが、私たち一般人がインターネットという最強のツールを手に入れたことで、メディアの報道に簡単には騙されなくなっているのではないでしょうか?

事実、日本の場合は、2012年12月に、メディアの猛烈な偏向報道を跳ね除けて、安倍晋三総裁が率いる自民党が圧勝。安倍政権はその後4回に及ぶ大型国政選挙の全てを制し、政権発足以来5年目に入った現時点でも、支持率は50~60%を維持している状況にあります。私は安倍政権の政策のすべてを盲目的に支持している訳ではありませんが、安倍政権を生んだのは間違いなく日本国民の意思であり、「慰安婦問題」を捏造した朝日新聞を筆頭とするゴミメディアの報道に騙されなくなった日本国民の判断は正しいと考えています。

ただ、メディアの偏向報道を跳ね除けて当選したのが、米国の場合、ドナルド・トランプ氏だったという点に、私は思わず「絶望」を感じてしまいます。これが日米の違いなのでしょうか?

外交についてじっくりと考えてみたい

日本について言及したついでに、「自分自身のメモ」も兼ねて私がじっくりと取り組んでみたいと考えているテーマについても紹介しておきます。

北方領土の日本化

一つ目は「北方領土の日本化」です。

私は昨年、『今回の日露首脳会談は日本にとっても大成功』のなかで、昨年、ウラジミル・プーチン大統領の訪日を迎えた安倍総理の「真の意図」が「対中牽制にあった」との仮説を提示しました。その意味で、私は昨年の日露首脳会談で、北方領土問題が解決しなかったことも、日露経済協力が象徴的なものに留まったことも、「対中牽制」という目的からは全く問題とならないと述べました。

ただ、それと同時に、昨年の日露首脳会談を契機に、北方領土への日本人の渡航・居住をある程度自由化するなど、日露交流の拡大を図ることが期待されます。このように考えるならば、北方領土を事実上「日本化」することで、それこそ数十年、あるいは百年の年月をかけて領土を取り返す、というのも賢明な措置です。

TPPで日本が「盟主」に?

もう一つは、米国がTPP(環太平洋パートナーシップ協定)から離脱することを正式に決定したことを受け、このままでTPPが発効すると、日本が域内最大の経済大国である、という状況が出現する、という点について、です。

私は、米国がTPPから抜けてしまうのは非常に残念であると考えています。ただ、それと同時に、米国が抜けてしまえば、逆に日本がTPPの「盟主」のような存在となります。実は、これはこれで悪いことではないのかもしれません。

つまり、「米国抜き」で先行してTPPを発足させてしまい、トランプ政権が交代するのを待って、次期政権で米国をTPPに招き入れる、というのも、一つの考え方としては成り立ちます。

もっとも、次のBBC報道によれば、現時点でTPPの批准が終了している国は、残念ながら日本だけのようです。

TPP: What is it and why does it matter? (2017/01/23付 BBCより)

記事の中で、

Those other member states are: Japan – the only country to have already ratified the pact – Malaysia, Vietnam, Singapore, Brunei, Australia, New Zealand, Canada, Mexico, Chile and Peru.

とありますので、現時点では日本のみが批准(rafitication)を済ませている、ということです。

ただ、逆に言えば、日本が現時点でもTPPを推進する立場を変えていないという事実が、日本を「米国に代わるアジア太平洋地域の要」とするうえで重要です。

米国でドナルド・トランプ氏という「怪物大統領」が出現したことは、日本にとって決して悪いことではないのかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 非国民 より:

    メキシコだけに高関税はWTO違反では?トランプのことだ、WTOから脱退するかな。トランプ後のアメリカ大統領、難題山積で誰もやりたがらないかも。

  2. 非国民 より:

    ひとつ気が付いたことがある。メキシコからアメリカに輸入する製品に関税をかけるということは、メキシコ製のアメリカにおける製品価格が上昇することになる。つまり、関税を負担するのはアメリカの消費者ということになる。トランプ、大丈夫か、壁はメキシコの負担でなくてアメリカの消費者の負担だぞ。どこか間違ってないか?

  3. 日本橋経理マン より:

    そう言えば、消費税とか大型間接税って、関税と同じ効果があると言う話を聞いたことがありますね。外国からの輸入品に関税を課すのも贅沢品に消費税を課すのも同じだと言うことです。
    尤も、消費税は国内の商品全てに課税されますから、物によっては「消費税」と「関税」が同じになるとは限りませんが・・・

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