安易な入国ビザ要件緩和

本日は溜まった時事ネタの中から、ややマニアックな「中国人に対する入国ビザの緩和」についての話題を取り上げておきます。それほど多くの報道で取り上げられている形跡はありませんが、実は「入国ビザ」は経済力の弱い国から日本への不法就労目的での入国を防止する意味合いがあります。外務省が安易にビザの発給要件を緩和することは大きな問題です。

中国人向けビザ発給緩和

少し時間が取れたので、本日はいくつか溜まっている時事ネタの中から、「中国人に対する日本訪問ビザの緩和」について、取り上げたいと思います。外務省は9月27日に、「中国人に対するビザ発給要件を10月17日以降、緩和する」と発表しました。

中国人に対するビザ発給要件の緩和等(2016/09/27付 外務省ウェブサイトより)

この中身について見てみる前に、まずは「ビザ」と「ビザ免除プログラム」についてチェックしておきましょう。

※本来、テーマ的は観光庁の入国統計にも触れるべきなのですが、私自身が少々、仕事で手いっぱいとなっているので、本日はビザの話題のみです。

ビザの種類と要件

ビザが免除される国・地域は67か国

この「日本入国ビザ」とは、日本に入国する前に取得する、事前の入国許可証のようなものです。ただ、次の67か国・地域については、在留期間が90日までであれば、日本入国に際して入国ビザを取得する必要がありません(いわゆる「観光ビザ」、図表1)。

図表1 日本が入国ビザを免除している国・地域(2014年12月時点)
地域
アジア(9か国)インドネシア(※1)、シンガポール、タイ(※1)、マレーシア、ブルネイ(※1)、韓国、台湾、香港、マカオ
北米(2か国)米国、カナダ
中南米(12か国)アルゼンチン、ウルグアイ、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、スリナム、チリ、ドミニカ、バハマ、バルバドス、ホンジュラス、メキシコ(※2)
大洋州(2か国)オーストラリア、ニュージーランド
中東(2か国)トルコ、イスラエル
アフリカ(3か国)チュニジア、モーリシャス、レソト
欧州(37か国)アイスランド、アイルランド(※2)、アンドラ、イタリア、エストニア、オーストリア(※2)、オランダ、キプロス、ギリシャ、クロアチア、サンマリノ、スイス(※2)、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ(※2)、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マケドニア(旧ユーゴ)、マルタ、モナコ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン(※2)、ルーマニア、ルクセンブルク、英国(※2)

【出所】外務省ウェブサイト。ただし※1については15日、※2については6か月

ビザの役割とは?

日本人であれば、日本のパスポートを見せるだけで、世界中のたいていの国にはビザを取得しなくても入国できます。それと同様、日本の外務省も、先進国(欧州連合加盟国や米国など)の国民を中心に、67か国・地域の人々に対し、ビザがなくても入国できるという取り扱いを認めているのです。

逆に言えば、ここに掲載されていない国(中国、インド、ブラジル、ロシア、南アフリカなど)の国籍を持つ者は、日本に入国するためのビザの申請が必要です。具体的には、日本に入国する場合には、日本国内の個人や機関などからの「身元保証書」や「招聘理由書」などを日本大使館に提出しなければなりません。これは非常に煩雑です。つまり、不法就労のリスクなどが高い国の出身者は、「ビザ」を義務付けることでそもそも日本に入国し辛い状況となっているのです。

【※余談ですが、韓国国民に対しても日本への短期入国ビザは免除されているのですが、個人的には、竹島を不法占拠する韓国に対する「制裁手段」として、入国ビザの免除制度を廃止することは有効ではないかと考えています。】

中国人に対するビザ制度

中国国籍者の場合だと、日本に入国・滞在・活動するためのビザとしては、「一次有効の短期滞在ビザ」と「商用目的/文化人・知識人等に対する数次有効のビザ」があります(図表2)。

図表2 中国人向けの主な短期滞在ビザ
?区分概要備考
一次ビザ短期商用、親族・知人訪問当の目的で90日以内の滞在を申請するもの「一次ビザ」とは、一枚のビザで一度しか入国できないビザ
数次ビザ大企業の管理職以上などの者の商用目的文化人、知識人等のに対するビザ「数次有効ビザ」とは、期限内なら何度でも使えるビザ

(【出所】外務省ウェブサイト)

ところが、ビジネスマンでも知識人でも文化人でもない個人観光客が、いちいち日本国内の知り合いなどから「招聘」を受けるというのも、なかなか厄介です。そこで、中国国籍者が「観光目的で」日本に入国するための特例として、「中国団体観光・個人観光ビザ」という制度が設けられています。

中国団体観光・個人観光ビザ(2015/01/19付 外務省ウェブサイトより)

これによると、現在、中国人観光客に発給されているビザは、次の4種類です(図表3)。

図表3 中国人に対する観光ビザ
区分概要備考
団体観光ビザ中国の関連法令に基づく「団体観光」の形式をとり、滞在期間は15日以内「団体観光ビザ」の場合、添乗員なしの自由行動は認められない
個人観光一次ビザ団体観光の形式をとらない「一次ビザ」(ビザ一枚につき1回しか入国できないビザ)。滞在期間は15日または30日以内事前に旅行日程を作成して中国の旅行会社を通じてビザを申請する
沖縄県数次ビザ/東北三県数次ビザ1回目に沖縄県や東北三県で1泊以上するなどの要件を満たした場合に発給される、何度でも日本に入国できるビザ。有効期間3年、1回の滞在期間は30日以内1回目の訪問のみ旅行会社を通じてビザを申請すれば2回目以降は旅行会社に旅行手配を依頼する必要はない。発給対象者は十分な経済力を有する者とその家族などに限られる
相当な高所得者用数次ビザ有効期間5年、1回の滞在期間90日以内の数次ビザ1回目だけ旅行会社を通じてビザを申請すれば2回目以降は旅行会社に旅行手配を依頼する必要はない

(【出所】外務省ウェブサイト

これらの中には、既にニュース等で取り上げられている措置もあるので、どこかで「聞いたことがある」という方もいらっしゃるでしょう。沖縄県や東北三県については、初回の訪日時に、旅行会社を通じて旅程を作成したうえでビザを取得するため、「沖縄県や東北三県に1泊以上滞在した」ことがきちんと確認できる、という仕組みです。

ビザ免除制度の拡大には慎重であるべき

冒頭で紹介した、外務省が10月17日以降導入する措置は、次の2点です。

  1. 商用目的の者及び文化人・知識人に対する数次ビザ(最長5年から10年に延長し、発給対象者要件を一部緩和する)
  2. 中国教育部直属大学に所属する学部生・院生及びその卒業後3年以内の卒業生に対する個人観光一次ビザ

一般論として申し上げるならば、より多くの中国人が日本を訪問し、日本に好印象を抱き、日本を好きになってくれるのならば、日本にとっても好ましいことです。しかし、外務省の今回の措置については、いささか疑問点もいくつかあります。

まず、(1)についてです。中国は中国共産党が一党独裁する国である、という事実を忘れてはなりません。自由に入国できる人の範囲が拡大すれば、それだけ日本国内で諜報活動・工作活動をする者の入国が容易になる、ということであり、その意味でも「ビザの期限延長」には慎重な判断が望まれるところです。

次に(2)については、一見すると大学の学部生・院生らの「学際交流」や卒業生らの「卒業旅行」が、今よりも容易にできるようになる、ということですが、学生の身分にある者の不法就労リスクについては明確に排除できる措置が取られている形跡はありません。

いずれにせよ、中国共産党の活動家らが多数入国して来る、あるいは経済力に乏しい者が容易に入国できるようになる、ということでは困ります。

ビザ免除国などの判断の管轄は、外務省ではなく法務省に移管すべきなのかもしれませんね。

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