FT「韓国が為替介入」記事とトランプ通商戦争

英FT紙に、「中国は為替介入をしておらず、韓国こそが為替介入をしている」とする「怪文書」が掲載されました。この記事は、半分は当たっているものの、半分は見当外れであり、FT記者も経済学の素養を持っているとは限らないという証拠となってしまっています。そこで、本日は経済学の基本的な原則と米財務省の昨年10月のレポートなどをベースに、米・トランプ政権がドイツ・中国・韓国を「敵視」するとの予想を示しておきたいと思います。

FT記事「韓国が為替介入」の真否

英フィナンシャル・タイムズ(FT)に昨日、こんな記事が掲載されました。

Donald Trump’s anger at Asian currency manipulators misses target(英国時間2017/02/13(月) 01:00付=日本時間2017/02/13(月) 10:00=付 FTオンラインより)

リンク先の記事は東京在勤のRobin Harding記者が執筆したもので、副題には

Evidence suggests Taiwan and South Korea, not China and Japan, are the worst offenders(最悪の違反者は、中国と日本ではなく、台湾と南朝鮮であると、証拠が示唆する)

とあります。なお、韓国のことを英語ではSouth Korea=南朝鮮=と表現しますが、以下では引用にあたり、日本語に訳す時には、「韓国」と称することにします。

リンク先の記事を簡単にまとめれば、要点は次の2つでしょう。

  • ドナルド・トランプ米大統領は日本と中国を「為替操作国である」と名指しして批判したが、日本は2011年以来為替介入を行っておらず、中国はむしろ、通貨安に悩まされている
  • アジアでは日本と中国ではなく、明らかに為替操作を行っている国があるが、それは韓国、台湾、シンガポールだ

Robin Harding記者は記事の中で、韓国と台湾、シンガポールを「為替操作国」“currency manipulator”と呼んでいます。この言葉には非常に深刻な意味合いがあります。

“manipulate”という単語を辞書で調べると、「操作する」「コントロールする」などの意味合いがありますが、それと同時に「不正・インチキによる恣意的な操作」というニュアンスがあり、極めて悪い言葉です。実際、リーマン・ショック以降に発生した、一部の欧米系投資銀行における市場操作にも、この“manipulate”という単語が使われているからです。個人レベルで“manipulate”すれば犯罪であり、国家レベルで“manipulate”すれば経済制裁を食らってもおかしくありません。私は、このように重たい言葉を軽々しく扱うRobin Harding記者のセンスを疑います。

それはともかくとして、Robin Harding記者は、「日本と中国は為替操作を行っておらず、韓国と台湾とシンガポールの3カ国こそが為替操作を行っている」と主張しているのですが、この記事には、少なくとも次の3つの間違いが含まれています。

  • 「中国は為替介入を行っていない」とする下りは間違いで、実際には常に為替介入を行っている
  • 「韓国は自国通貨高抑制を行っている」とする下りは間違いで、直近は自国通貨の下落を防ぐための為替介入を行っている
  • 「シンガポールの為替介入は問題だ」とする下りは間違いで、シンガポールは「カレンシー・ボード制」を採用している

このことを指摘する前に、まず、いくつかの初歩的な経済知識を確認しておきましょう。

国際収支のトリレンマ

経済学を学んだ者であればだれでも知っている原則が「国際収支のトリレンマ」です。これは、「資本移動の自由」「為替相場の安定」「金融政策の独立」という3つの政策目標を同時に達成することはできないとする、国際収支の世界の「鉄則」です(図表1)。

図表1 国際収支のトリレンマ
パターン政策命題具体例
パターン①先進国型「資本移動の自由」と「金融政策の独立」を確保したければ、「為替相場の安定」を放棄しなければならない日本、米国、英国、ユーロ圏
パターン②金融立国型「資本移動の自由」と「為替相場の安定」を確保したければ、「金融政策の独立」を放棄しなければならない香港、シンガポール、デンマーク
パターン③発展途上国型「金融政策の独立」と「為替相場の安定」を確保したければ、「資本移動の自由」を制限しなければならない中国

つまり、通貨の世界では「国際的な資本移動」や「為替相場」、「その国の金融政策」は密接な関連があり、3つの政策目標を同時に達成することはできません。

パターン①の場合

「資本移動の自由」と「金融政策の独立」を重視している国は、米国、欧州連合(EU)、日本、英国、スイスなどの先進国です。これらの国は、自由貿易や自由な投資を重視しており、国が資本フローに規制を掛けるということは、それほどなされていません。たとえば日本の場合、「外国為替及び外国貿易法」(通称「外為法」)で、原則として外貨との両替も資本取引も外国貿易も自由です(同第16条、第21条第1項、第47条等、ただし北朝鮮などとの取引は禁止されている)。また、米国、ユーロ圏、日本、英国、スイスなどの先進国は、独自の金融政策を採用しています。

このため、たとえば「日本だけ」が追加緩和を行ったり、利下げしたりすれば、日本の低金利を嫌って投資資金が外国に流れていく(つまり円安)というフローが発生しますし、米国が金融緩和をやめれば、投資資金が米国に集まりやすくなる(つまりドル高)というフローが発生します。つまり、パターン①の場合は、資本移動の自由と金融政策の独立を重視しているため、結果的に為替相場の安定という政策目標を放棄しているのです。

ただ、イレギュラーな為替変動が生じた際には、当局は手をこまねいて眺めているだけではありません。米FRB、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、イングランド銀行(BOE)、スイス国立銀行(SNB)、カナダ中央銀行(BOC)の6中銀からなる「先進国グループ」は、極端な為替市場の混乱が生じた際に、協調介入することがあるのです。実際、2011年3月の東日本大震災では、極端な円高となったことを受け、これら6つの中央銀行が協調介入を行いました。ただ、そうした「極端な相場変動」がない場合には、基本的に先進国同士では、為替相場は市場原理に委ねるという考え方で一貫しているのです。

パターン②の場合

一方、「資本移動の自由」と「為替相場の安定」を重視している国もあります。たとえば、シンガポールや香港は、「国際的な金融ハブ」を標榜しているため、基本的には国内外の資本移動に制限はありません。ただ、香港ドル(HKD)もシンガポール・ドル(SGD)も、いずれも小国通貨であるため、急激な為替変動にさらされると、資本フロー自体が不安定になってしまいます。そこで、香港とシンガポールは、主要国通貨に対して為替相場を固定(ペッグ)する政策を採用しているのです。

香港の場合は、1米ドル=7.75~7.85香港ドルで固定されています。また、シンガポールの場合は「どの通貨に対して固定しているか」については公表されていませんが、米ドル、ユーロ、円などの主要通貨のバスケットに対して連動させているものと推定されます。

なお、デンマークの場合は、欧州為替安定メカニズム(ERM2)で、自国通貨のデンマーク・クローネをユーロに対してほぼ固定していますが、これはどちらかといえば、デンマークが「国際的な金融ハブを目指しているから」ではなく、「ユーロ圏準加盟国」としてのステータスによるものと考えて良いでしょう(著者私見)。

パターン③の場合

そして、発展途上国の多くが採用しているのは、パターン③、つまり「為替相場の安定」と「金融政策の独立」を両立させることを目指す政策です。発展途上国では、そもそもその国の通貨に信認がないため、外国との資本のやり取りを無制限に自由にしてしまうと、外国から大量に資本が流入してしまうこともありますし、逆に、新興市場諸国不安が生じた時には、一気に外国に資本が流出してしまうこともあります。

このため、中国の場合は「中国本土の人民元」(CNY)と「オフショアの人民元」(CNH)を分ける形で、中国本土の資本市場を外国資本から守っていますし、韓国や台湾の場合は、一見すると先進国を標榜していながらも、資本市場を外国人に対して完全に開くことには消極的です。

ただ、中国や台湾、韓国の問題点は、「自国が為替相場の安定を政策目標に掲げている」と公言していない点にあります。そして、不透明で恣意的な為替介入が常に行われているため、「為替操作国」との疑いを、常にかけられているのです。

カレンシー・ボード制を理解していない記者

以上を踏まえて、FTの記事に戻ってみましょう。

Robin Harding記者は、韓国、台湾、シンガポールについて、貿易黒字がGDPに占める割合が、それぞれ8%、15%、19%であると指摘します。つまり、これらの国が輸出依存型経済であるという指摘です。しかし、だからといって、シンガポールが「貿易を有利にする目的で自国通貨を操作している」と考えるのは早計です。

確かに韓国と台湾は、公然と不透明な為替介入を行っていることは事実ですが、この両国が問題視される理由は、「自由相場制」を採用していながら為替操作を行っている点にあります。しかし、シンガポールは「カレンシー・ボード」制を採用しており、資本移動には何ら制限を加えていません。

シンガポールは政策として、「為替相場の安定」と「資本移動の自由」を重視している国であり(つまり上記のパターン②に該当)、香港やデンマークと同列に位置付けられるべき筋合いにあります。つまり、Robin Hadring記者は、カレンシー・ボード制を全く理解せずに、「貿易収支」だけに着目して記事を配信しているのです。こんなレベルの低い記事を掲載するとは、FTも非常に問題ですね。

為替介入

2種類の為替介入

次に、「為替介入」についても、Robin Harding記者は、初歩的な知識すら持ち合わせていないようですが、きちんと説明しておくと、「為替介入」には、いくつかの種類があり、その代表的なものは、「自国通貨高を防ぐ介入」と、「自国通貨安を防ぐ介入」です(図表2)。

図表2 為替介入の種類
種類概要備考
自国通貨高を防ぐ介入自国通貨の価値が上昇し過ぎることを防ぐために、自国通貨を売って外国通貨を買い入れる為替介入原則として無制限にできるが、やり過ぎると自国通貨の供給量が増え、インフレや資産バブルが発生してしまう
自国通貨安を防ぐ介入自国通貨の価値が下落し過ぎることを防ぐために、外国通貨を売って自国通貨を買い入れる為替介入原則として、保有する外貨準備以上に介入をすることはできない
その他の介入自国通貨と関係なしに行う為替介入日本がアジア通貨危機の時に、インドネシアを救済するために、インドネシア・ルピアを買って米ドルを売る介入を行ったことがある

ただし、日本はかつて、アジア通貨危機の最中の1997年11月3日から18日にかけて、外為特会勘定を使って断続的に5回、米ドルを売ってインドネシア・ルピアを買い支えるオペレーションを行ったことがあります(総額693億円相当)が、これは為替介入の例外でしょう。

そして、ここで重要な点は2つあります。

1つ目は、自国通貨高を防ぐ方の介入については、無制限に実施することができる、という点です。中国の場合は「人民元安」、韓国の場合は「韓国ウォン安」に誘導することで、自国の輸出競争力を有利にするという、基本的な為替操作です。ただ、やり過ぎると国内に通貨が溢れかえって、インフレが加速したり、資産バブルが発生したりします。韓国の場合、中央銀行である韓国銀行が「通貨安定基金証券」なる債券を発行しているそうですが、これは、為替介入によって市場に溢れかえってしまった韓国ウォンを吸収するための負債証券であると考えると、辻褄が合ってきます(これについては『韓国の闇「外為平衡基金債券」を斬る!』を参照)。

2つ目は、自国通貨安を防ぐ方の介入については、保有している外貨準備の範囲内でしかできない、という点です。これが1つめとの大きな違いです。現在の中国や韓国は、人民元や韓国ウォンの為替相場が下落して困っているため、外貨準備を売って自国通貨を買い支えているようです。もっとも、中国も韓国も実際の外貨準備高は公表値よりも少ないと考えられます(中国については『中国の外貨準備統計は信頼に値するか』、韓国については『韓国の外貨準備の75%はウソ?』を参照)。

先進国の為替介入

一方、日本の場合は、財務省・外為特会が為替介入を行い、為替介入の状況についての情報については、毎月、『外国為替平衡操作の実施状況』のページで公表しています。そして、日本は2011年以来、少なくとも先月まで、1銭たりとも為替介入を行っていません。

ただ、日本の場合は為替市場そのものに介入する以外にも、金融政策を行えば、「結果的に」為替相場に影響が生じることがあります。

安倍総理の訪米に先立つ2週間前に、ドナルド・トランプ米大統領は日本と中国を名指しして、「自国通貨安誘導を行っている」と批判しました(これについての詳細は『円安と為替介入巡るトランプ発言の間違い』をご参照ください)。トランプ氏は日本が「円安誘導を行うために量的緩和を行っている」との認識で発言したものですが、これなどもトランプ氏が経済学の「イロハ」すら理解せずに発言している証拠であり、あまりまともに取り合う必要はないでしょう。

事実、安倍総理の訪米中には、トランプ氏は「日本が為替操作を行っている」とは一言も述べませんでしたし、経済問題についてもトランプ氏自身は詳細に触れず、麻生太郎副総理とペンス副大統領との間で協議を行うことで合意したほどです。

米財務省報告の6か国

ところで、FT記事でRobin Harding記者は、オバマ政権下で「外国関係評議会」のシニア・フェローを務めていたというBrad Setser氏による、「一貫して自国通貨の上昇を抑制しようと努めてきた国は、韓国と台湾だ」という発言を引用。そのうえで、「韓国も台湾も為替介入の詳細について、一切の開示を行っていない」と指摘します。

実は、Robin Harding記者のこの下りは、半分は正解で、半分は間違いです。正しい下りは「韓国も台湾も為替介入の詳細について、一切の開示を行っていない」という点であり、間違っている下りは、「韓国は一貫して自国通貨の上昇を抑制しようとしてきた」という下りです。

そして、Brad Setser氏の発言には、「元ネタ」があります。これは、米財務省が2015年に成立した「貿易促進・強制法」(the Trade Facilitation and Trade Enforcement Act of 2015)に基づき、半年に1回公表している米議会向けレポートの最新版『アメリカ合衆国の主要な貿易相手国の外国為替相場政策について(原題“FOREIGN EXCHANGE POLICIES OF MAJOR TRADING PARTNERS OF THE UNITED STATES”)』です。

これによると、中国、日本、韓国、台湾、ドイツ、スイスの6か国が「為替操作監視対象国」に指定されています(図表3)。

図表3 米財務省レポートの6か国の為替介入実施状況
為替介入米財務省の指摘
中国外貨売り・自国通貨買い中国は人民元の急激な下落を防止するための為替介入を行っており、2015年8月からの1年間でおよそ5,700億ドルの外貨準備を売却しているが、中国経済にはより一層の改革や家計消費の比率の上昇が必要だ
日本5年間行っていない日本は2011年以来、為替介入を行っていないが、内需を拡大するため、現在の財政政策や構造改革方針を維持する必要がある
韓国外貨売り・自国通貨買い韓国では為替介入が常態化しており、2016年6月までの1年間で自国通貨の下落を防ぐために240億ドルの外貨を売却しているが、以前は自国通貨の上昇を防ぐ為替介入を行っていた。韓国の経済は過度に輸出に依存している
台湾外貨買い・自国通貨売り台湾は2016年6月までの1年間で自国通貨の上昇を防ぐための為替介入を行っているが、台湾の対米貿易黒字は少額である
ドイツ5年間行っていない欧州中央銀行(ECB)は2011年の東日本大震災以降、為替介入を行っていないが、ドイツは巨額の貿易黒字を積み上げており、内需振興の余力を残している
スイス外貨買い・自国通貨売りスイスは昨年を通じて自国通貨の上昇を防ぐための為替介入を行っているが、これはスイスが小国であることと、巨額の資本流入が生じていることを考えるなら、やむを得ない側面もある

これで見る限り、米財務省は「自国通貨高抑制」の為替介入だけでなく、「自国通貨下落抑制」の為替介入についても、「不透明である」として問題視していることがわかります。ただ、米財務省は、現時点ではこの6か国をいずれも「為替操作国」に認定していません。ちなみに、米財務省は韓国について、

「自国の通貨の上昇を抑制する為替介入」だけでなく「自国の通貨を下落する為替介入」も行っている

と認定しています。その意味でも、Robin Harding記者の記事には、初歩的な間違いが含まれているのです。

米国が問題視する国は独中韓3ヵ国

先日の安倍総理の訪米では、トランプ大統領は安倍総理に対し、2泊3日でゴルフを27ホールも回り、2度の夕食を含めて5回も食事を共にするなど、極めて異例の厚遇ぶりを見せつけました。それだけではありません。日本時間日曜日の午前8時前(現地時間土曜日深夜)に北朝鮮がミサイルを発射したとする情報が入るや否や、安倍総理とトランプ大統領は連れ立って共同記者会見に臨むなど、まさに日米両国が「特別な関係」に格上げされたことを、世界中に見せつけた格好となっています。

日本に対しては「為替介入」の「か」の字も言わなかったトランプ氏は、しかし、中国と韓国、そしてドイツとは、まずは通商問題で、場合によっては安全保障問題で、対立関係に入る可能性は非常に高いでしょう。その根拠は、上でも引用した「米財務省レポート」にあります。そして、昨年私が執筆した『「トランプ通商戦争」の3つの相手国』の中で指摘したとおり、トランプ政権はドイツ、中国、韓国の3カ国を問題視し、「通商戦争」(あるいは本物の戦争)に踏み切る可能性があると考えています。

対欧州ではEUとドイツを敵視へ

トランプ氏は、先月訪米したテリーザ・メイ英首相に対し、英国の欧州連合(EU)離脱を「歓迎」すると表明しました。また、トランプ氏の一連の発言を見る限り、彼がEUを実質的な「ドイツ主導の経済連合体」であるとみなし、敵視していることは間違いないでしょう。

その意味で私は、トランプ氏は、ドイツとは特に強力に対立すると見ています。オバマ政権時代の昨年10月に公表された米財務省レポートの中でも、ドイツは「為替介入を行っている訳ではないが、巨額の経常黒字を積み上げており、内需拡大の努力が不十分だ」と批判しています。トランプ氏がこれを問題視しないはずがありません。

ただ、私はトランプ氏が「軍事同盟」としてのNATOについては重視していると見ています。このため、トランプ氏にとっての「ゴール」とは、「NATOの枠組みを維持したまま、EUを実質的に解体に持ち込むこと」ではないかと考えています。

対中国では「全面戦争」も

一方、米国にとっての中国は、通商面でも軍事面でも相容れない国です。特に、中国は「アジアインフラ開発銀行(AIIB)」を設立し、人民元のハード・カレンシー化を進めようとするなど、「米国が主導するドル基軸体制」に挑戦している国でもあります。さらに、中国は東シナ海や南シナ海をはじめとする、海洋進出への野望を隠さなくなって来ています。

つまり、現在の中国は軍事面でも経済面でも米国と利害が敵対してしまう政策を取っているのであり、そのように考えていけば、通商面でも軍事面でも、これからの「トランプ政権の米国」において、米中衝突の機会が増えることは間違いありません。

トランプ氏は安倍総理との首脳会談の直前に習近平(しゅう・きんぺい)国家主席と電話で会談し、「一つの中国」原則を維持すると述べたそうですが、これは額面通りに受け取るべきではないのかもしれません。「中国を油断させるための米国のリップサービス」の可能性は十分にあるでしょう。

米韓同盟破棄もあり得る

さらに、韓国については、米国では前任のオバマ政権時代から、「米国の軍事的な負担で朝鮮半島を守ってやっているのに、韓国は中国と仲良くしてしまう」という点に、強い不満が溜まっています。こうした軍事面での不満に加え、韓国は恣意的な為替介入を常態化させており、その結果、対米貿易黒字を積み上げている国でもあります。

トランプ政権はこれから、韓国に対して、国防面でも応分の負担を求める可能性は十分にあると考えるべきであり、これに加えて、現在職務停止処分中にある朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領は、罷免判決が下されれば今年6月までに失職し、そうでなくても来年2月には任期満了を迎えます。朴政権の次の政権は、極端な「親北政権」や「親中政権」になる可能性が高く、そうなれば、軍事・経済両面で、米国が韓国を見放す可能性も否定できません。

日本に求められることは?

いずれにせよ、米国がEU、ドイツ、中国、韓国との関係をどう捉えるかによって、アジアやヨーロッパでは大きな変動が生じる可能性もあります。

日本としては、これに備えなければまりません。経済面では、まずは日本銀行の「金融緩和一本足打法」から脱却し、消費税の増税を「取りやめる」(場合によっては「消費減税」に踏み切る)などの抜本的な財政政策が必要でしょう。

また、日米関係が深化すれば、軍事面では、米国からイラク派兵などの国際貢献を求められる可能性もあり、当然、日米共同軍事作戦なども覚悟しなければなりません。そうなると、現行の安全保障法制では明らかに不十分であり、憲法第9条第2項の撤廃と適切な軍法・戦争法の整備が急がれます。

以上、日本が「乗り越えなければならない」ハードルは決して高くありませんが、それでも日本国民の英知を結集すれば、いずれも可能であると考えています。これからの日本を良くするためには、まずは私たち日本国民が賢くなる必要があるのです。

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