クレジットカードの「オーソリ売上」
以前、アメブロで「オーソリ電文」について取り上げたことがありました。最近、この記事に対するアクセス数が増えたようなので、最新の情報を加えたうえで、アップデートしておきたいと思います。
なぜかクレジットカードが使えない!?
クレジットカードに詳しい方であれば、「オーソリ売上」(あるいは「オーソリ電文」)という言葉を聞いたことがある、という方もいらっしゃるかもしれません。これはクレジットカードの売上に関連する「業界用語」です。この言葉を調べるきっかけになったのは、昨年ある地方に出張し、ホテルに宿泊するときに、ホテル代を支払おうとしたところ、「利用額が限度額一杯になってしまっている」という現象が発生したからです。
この時は困りました。持ち合わせがなく、しかも地方出張中です。東京都内であれば、クレジットカードが使えなくても、近所のATMに走り、現金を引き出して支払えば済む話です。しかし、あいにく普段利用している銀行のATMも近所になく、とても困った記憶があります。ところが、意外なことに、そのホテルでは「奇跡的に」SUICA(電子マネー)を使うことができたので、事なきを得た、というオチが付きましたが…。
では、どうして突然クレジットカードが使えなくなるという現象が発生したのでしょうか?実は、どうやら「オーソリ売上」という言葉と関係があるようなのです。
話を単純化するために、ある人が、「利用限度が50万円のクレジットカード」を持っていると仮定しましょう。そして、この人は、携帯電話料金や飲み代などで常時15万円ほど利用残高があるものとします。この人は休みが取れたので、外国に行きたくて、某航空会社で20万円の航空券を購入しました。この時、利用額はどうなるでしょうか?普通に考えると、利用可能額が15万円残っているはずですね。
図表 クレジットカードの利用可能額
●利用限度額…50万円(A)
●常時利用額…15万円(B)
●航空券代金…20万円(C)
●利用可能額…15万円(D=A-B-C)
ところが、ある航空会社で航空券を購入した際、「まだ15万円ほどカード利用可能額が残っているはずだ」と思ってクレジットカードを使おうとしたら、お店の人から
「カードの現在利用額が、利用限度額を超えてしまっている」
と指摘されてびっくりした、というストーリーです。実は、ここに「オーソリ売上高」という概念がかかわっています。
ここから先は、実際に私自身が昨年、カード会社に問い合わせた内容です(なお、金額はすべてフェイクです)。
【新宿会計士】「カードを使おうとしたら現在の利用額が限度額一杯と言われたのですが、自分の計算ではあと15万円程度の余裕があるはずです。どうしてカードの利用残高が限度額を超えてしまっているのでしょうか?」
【カード会社】「お客様の場合、航空会社で40万円分の買い物をなさっています。このため、現在の利用額が55万円となっており、利用限度額を5万円超えています。」
どうもおかしな話です。実際に購入した航空券の金額は20万円であるはずなのに、カード限度額の計算上は、40万円(つまり倍額!)も使ったことにされてしまっているのです。その後、カード会社に「いや、40万円も使っているはずはないので、調べなおしてほしい」と依頼したところ、カード会社から来た回答は、次のようなものでした。
【カード会社】「オーソリ売上の関係で、売上高が二重計上されているようです。」
こちらもクレジットカード業界のことに関しては全くの素人なので、いきなり「オーソリ」と言われても、全く理解できません。そこで、インターネットで検索したところ、どうやらクレジットカード業界では、「承認」を意味する英単語「authorization」を「オーソリ」と略し、そこから転じて「仮売上」(カード枠だけ取る電文)のことを「オーソリ売上」(カード会社によっては「オーソリ電文」)などと称しているらしい、ということがわかりました。
悩ましい「オーソリ電文」
別にこの「オーソリ売上」、怪しいものではなく、クレジットカードの仕組みを利用し、何らかの理由で「仮売上」を立てて、後日それをキャンセルするという処理は、一般的に商慣行として広く行われているものらしいです。一例をあげれば、外国(特に香港)に行くと、ホテルのフロントで「デポジット」名目でクレジットカードを切られることがあります。どうやらこれも「仮売上伝票」の一種らしいのです(ただし、ホテルのデポジットの場合、特に何もなければキャンセル処理されます)。
実は、この「事件」が発生したのは昨年のことですが、今年も似たような事件が発生しました。ある事情があって、一時的に多額の買い物をしたのですが、やはり「オーソリ売上」のために、枠が使い切られてしまい、買い物ができなくなったのです。我が家では、ポイント狙いも兼ねて、日常の買い物は極力、電子マネーやクレジットカードを使うようにしているのですが、枠が一杯になってしまうとカードでの買い物ができません。はて困った!
では、このような事態が発生した場合、ユーザーとしてはどのようにすればよいのでしょうか?
カード会社によると、カード加盟店からの利用申請があった場合には、たとえ「オーソリ電文」であったとしても、それをカード会社側からキャンセルすることはできないとのこと。
ユーザー側ができることといえば、二つあります。一つは、カード利用限度額を引き上げてくれるようにカード会社にお願いすることですが、いちいち、カード会社に電話を掛けるのも面倒な話です(もっとも、中には「オーソリ電文」に対抗し、一時的に枠を増額するなどの柔軟な対応をしてくれるカード会社もあるようですが…)。
もう一つは、カード利用残高を利用代金引き落とし日前にカード会社に先払いしてしまうことです。そうすれば利用限度額が元に戻るのですが(これを「カード利用枠が空く」と表現するようです)、わざわざ銀行振込手数料を負担してまで利用枠を空けるのもバカバカしい気がします。
利用額引き上げは「本末転倒」
現代社会では、クレジットカードや電子マネーのように、便利な支払い手段が増えてきました。また、最近ではスーパーのような日用品の店でも、これらの支払い手段を使うことができます。特にカードは使い方次第ではポイント還元率も良いため、限度額をきちんと記録・管理しながら使えば、結果的に生活費を安く上げることができます。
ただ、普段それほど多額の買い物をしない人が、何らかの理由でいきなり多額の買い物をすると、クレジットカードが突然使えなくなって驚くことがあります。我が家の場合、某銀行のネット振込を使えば、振込手数料が無料になるため、「クレジットカード利用代金の前払い」を選んだのですが、そういう手法が使えない場合には、どうすればよいのでしょうか?
もちろん、利用限度額を引き上げる、という対処法も考えられますが、しかし、一般にクレジットカードの利用限度額の引き上げはリスクを伴います。その意味で、「オーソリ売上」対策で利用可能額を引き上げるのは、本末転倒です。
あくまでも消費者がクレジットカードを利用する最大の動機は「ポイント還元狙い」ですから、「オーソリ売上」に引っかかってしまったら、諦めてその月はクレジットカードを使わない、というのが正しい対策ではないかと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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地方への出張は勿論ですが、外国へ旅行に行った時に、クレジットカードが使えないと、大変なことになります。普段からカードを
使う癖があるので、台湾には、いつもは使わない
元外資系銀行のカードを持って行きました。
元外資系銀行は、台北にも支店があって、現地のお金を引き出せるみたいです。
普段の生活用と、大きな買い物を、する時と、二枚
カードを持っていると、便利みたいです。
いつもコメントありがとうございます。
クレジットカードのブランドでいえば、VISAかマスターなら世界中どこでも通用しますが、JCBだと外国で使えない場所が多いようです。個人的な経験上、JCBは北米や香港、シンガポール、オーストラリアなどでは、使える場所と使えない場所がある一方、欧州、南米だとほぼ全滅状態でしたね(笑)。やはりJCBは日本人がよく出かける場所でなければ使えないのかもしれません。
また、「PLUS」のマークの入った銀行のキャッシュカードだと、ほぼ世界中の銀行ATMから現地通貨を引き出すことができるようです。日本だとメガバンク発行のカードではなく、新生銀行などが発行するものが良いようです。