公認会計士合格者数の推移

本来、このウェブサイトは「公認会計士試験」のことを書くブログではないのですが、それでも、一人の公認会計士として、どうしても気になることがあります。それは、最近、公認会計士試験の受験者数が減少し始めている、ということです。

公認会計士試験制度は法改正により、それまでの「3次・5段階の試験制度」から、2006年以降、「1次・2段階の試験制度」に変更されました(図表1)。

図表1 公認会計士試験制度の変革

20160729CPA-2

ちなみに私自身は2005年以前に行われた旧「第三次試験」を受験した年代です(このあたり、あまり詳しく書くと歳がばれるので、わざとぼかします)。2006年の前後で試験制度そのものが変わっているため、公認会計士試験の「合格者数」に関する単純比較はできないのですが、「平成27年度公認会計士試験合格者調」をもとに、旧第二次試験・新試験についての「願書提出者数、論文式合格者数、合格率」をグラフにしてみると、図表2の通りです(2006年以降の数値は旧公認会計士第二次試験合格者を含まない)。

図表2 公認会計士試験の合格者の推移

20160729CPA

これを見ていただくと、2007年と2008年の合格者数が前後の年度と比べて激増していることがご確認いただけると思います。これをもう少し詳しく見てみると、図表3の通りです。

図表3 公認会計士試験の2007年・2008年問題
2007年度(平成19年度)2008年度(平成20年度)
受験者数20,443人25,147人
合格者数2,695人3,024人
合格率14.79%15.32%

※? 「受験者」とは願書提出者数、「合格者」とは論文式試験合格者数で、いずれも旧第二次試験合格者を含まない

これが世にいう「大量合格者問題」です。

当時の公認会計士業界(や金融庁)は、「J-SOX」(日本版の「内部統制監査制度」)の導入に加え、「公認会計士の社会的ニーズの高まり」を当て込んで、公認会計士を大量合格させたのですが、実際にはJ-SOXに関する需要はそれほど伸びず、また、監査法人以外の一般企業による公認会計士試験合格者の採用も抑制的だったため、「せっかく公認会計士試験に合格したのに就職先がない」という問題が発生しました。私自身も当時、一般企業(※名前や業種は明かせません)に勤めていたのですが、公認会計士試験合格者を採用するという話は全く出ませんでした。私の個人的な見解ですが、理由の一つには「公認会計士試験合格者」というだけで、新卒者を採用する企業は、まだ日本には多くなかったこと、もう一つはリーマン・ショックによる景気冷え込みがあったと思います。

ただ、その後、公認会計士業界や金融庁が、「インチキ会計基準」であるIFRSの強引な採用を狙ったのも、じつはこの「大量合格者の未就職問題」を解決することを目論んでいたからではないでしょうか?しかし、企業会計・財務内容の開示は、投資家や会社債権者など、社会全体のためにあるものであり、決して公認会計士業界のためにあるものではありません。

いずれにせよ、その後、公認会計士試験に対する願書の提出者数自体が減少していると報じられているのは気になる点ですが、この問題については引き続き、当ブログでもトレースしていきたいと考えています。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告