【夕刊】WSJ「米、対北制裁延期」報道と北朝鮮の狙い
米WSJが日本時間の早朝、「北朝鮮制裁の強化を準備していたが、その発表を延期した」という、少し気になる報道を流しています。その一方で、北朝鮮が狙っているのは「時間稼ぎ」でしょう。さらに、「蚊帳の外」にいたはずの日本が圧倒的な存在感を示しています。これらについての状況を、簡単にまとめておきましょう。
目次
2018/05/29 16:10追記
本文中に誤植がありましたので修正しています。
- (誤)呼び会合
- (正)予備会合
また、『日本は「蚊帳の外」だったはずなのに?』の節で一文が丸々抜けていたので追補し、かつ、意味が通るよう、語順を少し入れ替えております。あらかじめ、お含み置きください。
北朝鮮追加制裁の真相
WSJの「北朝鮮制裁」報道
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は日本時間の今朝、少し気になる記事を配信しています。
Nations Race to Save Korea Summit (米国夏時間2018/05/28(月) 18:38付=日本時間2018/05/29(火) 07:38付 WSJより)
タイトルを直訳すれば「諸国は朝鮮のサミットをこぞって救おうとしている」、というものですが、この記事が取り上げているテーマは、「米国が北朝鮮向けの新たな制裁を準備しているが、とりあえずその発表を延期した状況にある」、というものです。WSJは
The U.S. decided to defer launching a major new sanctions push against North Korea, part of a flurry of weekend moves by both sides aimed at reviving a summit between President Donald Trump and North Korean leader Kim Jong Un.(米国は北朝鮮に対する新たな制裁の発動を延期させることにした。これはドナルド・トランプ大統領と北朝鮮のリーダー・キム・ジョン・ウンとのサミットを再開させようとする週末の双方の動きの一端だ。)
と報じています(なお、 “Kim Jong Un” とは北朝鮮の独裁者である金正恩(きん・しょうおん)のことです)。WSJによると、この新たな制裁の対象となるのは30~40の企業・個人とみられ、中には中国やロシアの企業・組織なども含まれているのだとか。
当初、ホワイトハウスはこの制裁措置を火曜日に公表するとしていましたが、月曜日になって急遽、発動を延期することにしたそうです。これをWSJは「米朝首脳会談の再開に関する協議の進展を見極める」うえで、いったんはこの制裁の発動を延期した、としています。
果たして米朝首脳会談は行われるのか?
ところで、このWSJの記事には続きがあります。米朝首脳会談に先立ち、月曜日にさまざまな動きがあったのだそうです。
まず、米朝当局者が首脳会談の具体的な議題の協議を行うために接触したそうです。米国側の担当者は元駐韓大使だったスン・キム氏、北朝鮮側の担当者は “Choe Son Hui”、すなわち崔善姫(さい・ぜんひ)外務次官(※)としています。
(※以前、この人物の肩書を米国メディアの報道に従い「外務副大臣」と紹介したことがありましたが、わが国のメディアは「外務次官」と報じているようであるため、ここでは「外務次官」と表記しています。)
また、両氏とは別に、今週予定されている予備会合に備え、ホワイトハウスの高官と金正恩の側近もシンガポールで接触したとしています。こうした一連の動きを見ると、米朝両国は米朝首脳会談の実現に動いているように見えなくもありません。実際のところはどうなのでしょうか?
進むも地獄、戻るも地獄。期待するのは「会談延期」
これについて、私の見解を申し上げるならば、北朝鮮は米朝首脳会談について、「進むも地獄、戻るも地獄」となっている、というものです。
まず、米朝首脳会談が開催された場合でも、金正恩はトランプ大統領の前で、核・大量破壊兵器のCVID ((CVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(“Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement”)のこと。)) と約束させられるか、それとも会談が決裂するか、そのいずれかを選ぶ必要があります。
しかし、米朝首脳会談の開催が完全に中止された場合、米国は直ちに、北朝鮮に対する経済制裁をさらに強めて来ることは間違いありませんし、金正恩は米軍による空爆だけでなく、北朝鮮内部からの反乱にも怯えながら生きていくことになりかねません。
どちらにしても金正恩にとっては地獄です。
現在の北朝鮮は、何とか米国を騙して核保有を続ける方法はないかと時間稼ぎをしようとしている、というのが実情ではないでしょうか?週末に韓国の大統領を板門店に呼び出して抱擁してみせたのも、時間稼ぎのための見え透いたパフォーマンスと見るべきでしょう。
いずれにせよ、北朝鮮は6月に予定されたシンガポール会談を、7月、8月と先延ばしを提案し、時間稼ぎを図ってくるのではないかと私は見ています。
日本は「蚊帳の外」だったはずなのに?
ところで、先ほど紹介したWSJの記事に、唐突に日本の安倍晋三総理大臣が登場します。
日米両国首脳は1時間半、トランプ大統領と電話会談を行い、安倍総理が電話会談後に
「我々は共通の政策のもとに、米朝首脳会談が実りのあるものとなるように協力することで一致した」
と述べた、というくだりです。多忙な日米首脳が1時間半も電話で話し込むとは、実に象徴的ですが、それだけではありません。北朝鮮の核開発問題を巡って、日本の総理大臣が米国メディアの記事に「キーパーソン」として何度も登場している、という事実が重要です。
日本のメディアばかり読んでいると、「あれ?日本は蚊帳の外に置かれていたのでは?」という違和感を覚えるに違いありません。こうした「日本蚊帳の外」理論は、韓国メディアにも見ることができます。たとえば、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、次の記事が、その典型例です。
「ジャパンパッシング」で焦っていた安倍氏、米朝会談前にトランプ氏と会談へ(2018年05月29日07時48分付 中央日報日本語版より)
中央日報は、ワシントン・ポスト(WP)などの米国メディアの報道を引用する形で、6月12日の米朝首脳会談に先立って日米首脳会談が行われると報じています。これについて中央日報は、
「北朝鮮をめぐる対話局面で、日本が排除される「ジャパンパッシング」を懸念した日本政府が本格的な会談開催を控えて奔走している。」
と堂々と記載していますが、私はこれを執筆した中央日報の記者に、もう少し事実関係を冷静に見極めてから記事を書くことを強くお勧めしたいと思います。
「日本が蚊帳の外に置かれていた」ことにしたい気持ちもよくわかるのですが、現実には上記WSJの記事などでもわかるとおり、安倍総理は要所、要所で登場しており、しかも、トランプ氏と長時間の会談も行っています。
これに対し、「朝鮮半島問題で運転席に座っている」つもりだったのに、気が付いたら爪はじきにされていた国は、むしろ韓国の方でしょう。先週の米韓首脳会談で文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領がトランプ大統領から徹底的に冷遇されたことを見れば、それは明らかです。
もっとも、そもそも、日本にとっての外交目的は、北朝鮮の核・大量破壊兵器の脅威が除去されることと、北朝鮮に拉致されたすべての日本国民が無事に帰国することにあります。この目的さえ達せられるならば、別に日本が朝鮮半島問題に、主体的に関わる必要などありませんが…。
いずれにせよ、韓国メディアが日本のことを強く嫌っているということはよくわかるのですが、感情が先立つあまり、事実関係を歪めようとする姿勢はいかがなものかと思います。国際情勢を議論するうえでは、客観的な事実関係をベースに、冷静に議論することが重要であることは、今さら指摘するまでもないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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< 夕刊の発信ありがとうございます。
< 安倍首相とトランプ大統領の電話会談凄いですね。1時間30分!半分は通訳が訳して日本語に変換時間でしょうが、それでも45分間も世界のナンバー1、ナンバー2が忙しい合間を縫って会談とは、さぞかし内容があるし、話しやすい友人なのでしょう。
< 金正恩は如何にして時間を稼ぐか。文に恥も外聞もなく、恫喝、怒り、泣き、脅して悪知恵を巡らしたと思う。『中国に入って貰うか』とか『日米の仲を割くか』とか、、無理やろ(笑)
< もし、北の金一族がスイスや安全な避難先行きを認めたら、北朝鮮は崩壊する。その時が韓国の終わりの始まりです。とても韓国だけで北の面倒は見れない(北朝鮮並みの生活を甘んじて受け入れるなら大してカネかからんが)。もちろん米、日、中が介入するだろうが、当事者の韓国はボロボロの国となる。
< 考え変えれば北朝鮮主体に半島を統一して貰った方が主体性のない韓国にとってはいいのか。悩ましいです。
< しかし、あの金正恩が絶対にCVIDを(拉致被害者解放の方が脈がある)認めない。認めたら終わる。まだ6月12日まで睨みあいですね。
< 失礼します。
>「日本蚊帳の外」理論は、韓国メディアにも見ることができます。
ハハハ 韓国メディアは今もってそんなこと言ってるんですかね、面白いこと言いますね。
文大統領訪米でトランプ大統領からどういう扱いを受けたか、蚊帳の外だと気づかされたのは、文大統領であり韓国こそ蚊帳の外だったという落ちではありませんか。
米朝首脳会談は朝鮮半島問題を協議するわけではなく、北朝鮮の“完全で不可逆な非核化”を実現することだけが目的です。
日本は拉致問題も抱えてはいますが北朝鮮の“完全で不可逆な非核化”実現は望むところです。
北の首領様と南の酋長が見苦しい抱擁をしようと、それは恐ろしさにおびえた猿が抱擁している図でしかありません。
北の首領様はトランプ氏の恫喝に怯え慄いて、文様に抱きつくほかなかったのでしょう。
南北がグルになっても米朝首脳会談開かれれば、金正恩に勝ち目は一分もありません。
韓国は本質的には蚊帳の外ですが、米国の軍事攻撃を延期や可能性を狭める効果を発揮するので北にとって見れば都合のいいコマでしょう、実際我々日米も韓国の裏切りで北朝鮮へ向ける外交力を韓国にも発揮しなければならず北朝鮮の孤立化が上手くいきません。
そして米国の軍事行動が未だに行われていない状況ではやはり中露との駆け引きも未だに続いている筈です。取り敢えずは米国は外交的には努力したとアピールするためにこのストーリーを書いてる筈ですから米朝の会談前後の中露がキーマンになるのでは無いかと私は思っています。
大穴で日本が憲法改正案を国会に提出するか解散総選挙で野党を黙らせるかのどちらかでまた事態が動く筈です。
日本が蚊帳の外ってなんか違いますよね。言ってみれば、朝鮮半島の国が駒で日米中露がプレイヤーみたいな。確かに外は外なんだけど盤面に居ないだけで影響は当然及ぶみたいな。自分はそんな認識です。