「ザイム真理教七公三民」記事の顛末とお詫びと再計算
今朝の『ザイム真理教「七公三民」の衝撃』では、「ザイム真理教」の悪質さとして、所得階層によっては実質的な税負担が「七公三民」に近い状況になっているケースもある、などと報告したのですが、そのそもそもの前提条件となる計算に誤りが含まれていました。改めまして読者の皆さまには深くおわび申し上げます。本稿では正しい計算結果を収録しておきたいと思います。
今朝の記事に大きな間違いがありました
久しぶりに、やらかしてしまいました。
弁解の余地もありません。
今朝の『ザイム真理教「七公三民」の衝撃』では、「ザイム真理教」の悪質さとして、所得階層によっては実質的な税負担が「七公三民」に近い状況になっているケースもある、などと報告したのですが、その前提条件となる計算に誤りが含まれていました。
誤りの原因は、単純ミスです。
所得税率は累進課税となっており、その際には図表0のような料率表を使用することが一般的です。
図表0 所得税率
課税される所得金額 | 税額 |
1,000円~1,949,000円 | 所得金額×5%-0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 所得金額×10%-97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 所得金額×20%-427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 所得金額×23%-636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 所得金額×33%-1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 所得金額×40%-2,796,000円 |
40,000,000円~ | 所得金額×45%-4,796,000円 |
(【出所】国税庁タックスアンサー『No.2260 所得税の税率』を著者加工)
「引くべきを足す」という単純ミス→大変お粗末
これで見ていただくとわかりますが、所得税の一番低い税率は5%であり、課税所得額が195万円以上となると、その「超過した部分」に対して10%が適用されますが、195万円未満の部分に対しては引き続き5%の税率が適用されているのです(千円未満切り捨て)。
つまり、課税所得が200万円の人にとって、所得税額は「1,950,000円×5%」+「(2,000,000-1,950,000)×10%」で102,500円ですが、これは「200万円にいったん10%の税率を掛けたうえで、97,500円を引く」、という計算をしても同じ結果が得られます。
じつは、今朝の記事ではこの「引かなければならない部分」を、誤って「足していた」ため、「七公三民」の前提となる計算結果自体が誤っていたものです。大変お粗末です。
再計算結果
改めて、今朝の記事の前提条件で図表1~図表3を再計算しておくと、こんな具合です(※ただし、図表1についてはわかりやすく「手取り」欄を新たに設けます)。
前提条件
- 所得は給与のみであり、賞与はない。
- 厚生年金に加入しているが、基金には入っていない。
- 健保は全国健康保険協会管掌(東京都)とする。
- 第2号保険者(介護保険加入者)とする。
- 扶養控除対象者は1人とし、配偶者控除はない。
図表1 給与と社会保険料(本人負担)、税負担の関係
給与(月額/年額) | 社保本人負担(年額) | 所得税+住民税 | 手取り |
10万円/120万円 | 180,720 | 0 | 1,019,280 |
20万円/240万円 | 361,440 | 66,784 | 1,971,776 |
30万円/360万円 | 542,160 | 165,676 | 2,892,164 |
40万円/480万円 | 722,880 | 282,568 | 3,794,552 |
50万円/600万円 | 903,600 | 431,780 | 4,664,620 |
60万円/720万円 | 1,084,320 | 613,204 | 5,502,476 |
70万円/840万円 | 1,210,140 | 899,458 | 6,290,402 |
80万円/960万円 | 1,281,060 | 1,235,182 | 7,083,758 |
90万円/1080万円 | 1,351,980 | 1,573,906 | 7,874,114 |
100万円/1200万円 | 1,422,900 | 1,937,143 | 8,639,957 |
110万円/1320万円 | 1,493,820 | 2,309,739 | 9,396,441 |
120万円/1440万円 | 1,564,740 | 2,784,862 | 10,050,398 |
130万円/1560万円 | 1,635,660 | 3,270,366 | 10,693,974 |
140万円/1680万円 | 1,699,488 | 3,758,920 | 11,341,592 |
150万円/1800万円 | 1,699,488 | 4,274,920 | 12,025,592 |
(【出所】国税庁『所得税の税率』、『給与所得控除』、全国健康保険協会『令和5年度保険料額表(東京)』等をもとに試算)
図表2 実質的な税負担(所得税+住民税+社会保険料の本人負担+会社負担+
給与(月額/年額) | 社保+所得税+住民税 | 実質的な税負担率 |
10万円/120万円 | 361,440 | 30.12% |
20万円/240万円 | 789,664 | 32.90% |
30万円/360万円 | 1,249,996 | 34.72% |
40万円/480万円 | 1,728,328 | 36.01% |
50万円/600万円 | 2,238,980 | 37.32% |
60万円/720万円 | 2,781,844 | 38.64% |
70万円/840万円 | 3,319,738 | 39.52% |
80万円/960万円 | 3,797,302 | 39.56% |
90万円/1080万円 | 4,277,866 | 39.61% |
100万円/1200万円 | 4,782,943 | 39.86% |
110万円/1320万円 | 5,297,379 | 40.13% |
120万円/1440万円 | 5,914,342 | 41.07% |
130万円/1560万円 | 6,541,686 | 41.93% |
140万円/1680万円 | 7,157,896 | 42.61% |
150万円/1800万円 | 7,673,896 | 42.63% |
(【出所】国税庁『所得税の税率』、『給与所得控除』、全国健康保険協会『令和5年度保険料額表(東京)』等をもとに試算)
図表3 「児童手当拡充」-「扶養控除圧縮による増税」の差額
給与(月額/年額) | 増税部分(A) | 12万円-A |
10万円/120万円 | 0 | 120,000 |
20万円/240万円 | 27,500 | 92,500 |
30万円/360万円 | 27,500 | 92,500 |
40万円/480万円 | 27,500 | 92,500 |
50万円/600万円 | 34,000 | 86,000 |
60万円/720万円 | 47,000 | 73,000 |
70万円/840万円 | 47,000 | 73,000 |
80万円/960万円 | 47,000 | 73,000 |
90万円/1080万円 | 47,000 | 73,000 |
100万円/1200万円 | 50,900 | 69,100 |
110万円/1320万円 | 53,518 | 66,482 |
120万円/1440万円 | 63,900 | 56,100 |
130万円/1560万円 | 63,900 | 56,100 |
140万円/1680万円 | 63,900 | 56,100 |
150万円/1800万円 | 63,900 | 56,100 |
(【出所】国税庁『所得税の税率』、『給与所得控除』、全国健康保険協会『令和5年度保険料額表(東京)』等をもとに試算)
今後の議論につきまして
まず、図表1、図表2については、所得税額が当初の計算バージョンと比べて少なくなるため、数値が大きく変わります。とりわけ「七公三民」の前提となった図表2に関しては、さすがに「実質的な税負担が七割に達する」という試算結果は出てきません。
これが、今朝の記事を全面撤回する理由です。読者の皆さまには、重ねて深くおわび申し上げます。
ただし、月収が110万円を超えて来ると、実質的な税負担が40%を超えて来るという意味では、やはり日本が重税国家であるという今朝の立論の趣旨が没却されるわけではありません。この点については正しい計算結果をベースに、恐らく近いうちに、再びどこかで議論したいと思います。
さらに、図表3に関しては、元記事では盛大なマイナスが生じている所得区分がありましたが、これは計算ミスによるものであり、正しく計算し直すと、どの所得区分においても実質的な差益が生じている、という計算結果が出てきます(もし児童手当に所得制限がなければ、ですが)。
ただし、「『複雑に取って、複雑に配る』という点にさまざまな利権が生じる」、「税制は簡素であるべき」、「社会保険料は事実上の目的税だから、子育て関連など無関係な政策の財源にすべきではない」、といった趣旨については、なにも変わるところはありません。
いずれにせよ、今朝のような杜撰な立論がないよう、著者としても今後、最大限留意したいと思います。
(なお、『ザイム真理教「七公三民」の衝撃』に関しましては、立論自体が誤っていたという点も含めて反省し、開示し続けるという意味で、記事自体は全面撤回しますが、削除はしません。)
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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潔イサギヨい訂正っぷりですね。
「謝ったらタヒぬ病」
の人たちには、とてもよいロールモデルかと。
税率については、
低負担低福祉vs高負担高福祉
だと、長短トントンかと思いますが、
高負担で利権化
低負担で納税して高福祉に住む
みたいなズルこそが、問題の本質かと思います。
給与が低い層は、これに10%の消費税がのしかかると、きついものがありますね。
こういう複雑さが財務省に対して反論し辛い状況を産んでる。
確かにこの視点だと増税ですけど、全体で見れば減税ですよ。。。わからん!わかりやすく。
ザイム真理教に洗脳されない為にはテレビ新聞を見ないこと!
さあ、みなさんyoutubeをチューナーレスで見よう!
さらに消費税とか、燃料税とか重量税とか、いろいろとられてるから、含めると間違ってないかも。こっちは逆進だからより悪質。
これはさすがに訂正しないと後々大変な事になる件だったでしょうね。
速やかに訂正した上、元記事を残しておくのは真摯な姿勢だと思います。
ほとんどの有名人は「たとえ訂正に応じても、元記事は”誤情報の拡散を防ぐ為に”消す」
と言う態度に徹するからなあ。ましてや訂正に応じないケースも多々ある。
そもそも払い損の国民年金など要らない。どうせ自分等の頃は75か80まで貰えなくなっているだろう、これは厚労省の案件でもあるが