儲からないけれどTVer注力せざるを得ないTV業界
民放各局が共同運営する「TVer」と呼ばれるテレビ番組配信サイトが普及し、NHK受信料制度を嫌う人がチューナーレステレビに乗り換えていけば、そのうち本当に地上波テレビ業界が絶滅するかもしれません。すでに新聞業界では、紙媒体の新聞がどんどんと売れなくなり、新聞社がネットに取り込まれるという現象が生じていますが、テレビ業界もこれの後追いをしているのではないでしょうか。
目次
テレビ業界は「見ない人との闘い」
テレビ業界は現在、「テレビを見ない人との闘い」に陥っている、などと指摘されるようになりました。
在京民放各局(のホールディング・カンパニー)の決算などを見ると、現在のところ、テレビ業界は(いちおうは)そこそこの利益を計上するなど、儲かっているようには見えるのですが、その一方で足元で業界自体が危機的な状況に陥りつつあることも事実でしょう。
総務省『令和4年版情報通信白書』などによれば、近年、インターネットの利用時間が徐々に増える一方で、テレビの利用時間については、どの年代でも一様に減っているのです。
もともとテレビ視聴者は高齢層に偏り、若年層に行くほどテレビを見ないという傾向がみられたのですが、どの年代でもテレビ視聴時間が減り、ネット利用時間が上昇するなかで、2021年にはちょうど全年代でテレビ視聴時間をネット利用時間が上回りました(図表1。なお、以下のデータはいずれも平日のもの)。
図表1 全世代・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)
若年層に行くほどテレビ視聴時間は激減する!
この点、高齢者層では依然としてテレビの視聴時間数がインターネットの利用時間数を大幅に上回っていて、しかもテレビ視聴時間に大きな増減はないのですが、それでも60代については、徐々にではあるにせよ、ネット利用時間が増えつつあることが確認できます(図表2)。
図表2 60代のメディアの平均利用時間(平日)
(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)
この「ネット利用時間が増える」という傾向は、若くなるほどに顕著になります。たとえば50代の場合だと、ネット利用時間はテレビ視聴時間を、ほんの少し下回るに過ぎません(図表3)。
図表3 50代のメディアの平均利用時間(平日)
(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)
そして、40代だと、2021年に入り、初めてネット利用時間がテレビ(それに新聞、ラジオを加えた時間)を初めて上回り(図表4)、30代だとテレビ視聴時間が顕著に減り(図表5)、20代だと2021年におけるネット利用時間はテレビ視聴時間(リアルタイム+録画)の3倍です(図表6)。
図表4 40代のメディアの平均利用時間(平日)
(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)
図表5 30代のメディアの平均利用時間(平日)
(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)
図表6 20代のメディアの平均利用時間(平日)
(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)
ちなみにテレビや新聞、ラジオについては、もはや10代からは完全に相手にされていません(図表7)。
図表7 10代のメディアの平均利用時間(平日)
(【出所】総務省『令和4年版情報通信白書』図表3-8-1-3のデータを著者が加工)
このように、「若い人ほどテレビを見ない傾向がある」というのは、もはや現代社会の常識と考えて良いでしょうし、また、下手をすると高齢者層でもテレビ離れが急激に進行していく可能性だってあるでしょう。
ホテルで「NHKなしプラン」を出したらウケるのでは?
ちなみに著者の例で申し上げるならば、著者自身は自宅にも職場にもテレビもラジオも置いておらず、新聞も購読していないため、おそらくは図表2~7でいうところの10代の利用時間をさらに極端なかたちにしたものになっているのだと思います。
もちろん、著者自身もたまには出張もしますし、飲み会に参加することもあります(コロナ禍でその機会は減りましたが…)。
こうしたなか、ごくたまに飲み屋やホテルの朝食会場、空港の待合室で大音量でテレビが点けっ放しになっていたりするのに遭遇すると、どうにも落ち着きません。やはり自分の時間に集中することができないからです(これは個人の性格、という要因も大きいとは思いますが…)。
また、ホテルに宿泊するときに、部屋に備え付けられているテレビでNHKの受信が可能である場合には、ホテル側がNHKの受信料を負担しているのだと思いますが、個人的な希望を申し上げるなら、テレビを撤去する代わりに宿泊費を引き下げたプランを用意してほしいという気もする今日この頃です。
視聴率という謎の指標
それはともかくとして、観察対象としてのテレビ業界は、それなりに面白いものです。
というのも、テレビ業界は新聞業界と並んで、既得権益の塊という性格があるからであり、また、このデジタル時代にそぐわない慣習が多く残されている業界でもあるからです。
その「デジタル時代にそぐわない慣習」の筆頭格は、「視聴率」でしょう。
以前の『そもそも視聴率って信頼できるんでしたっけ?』などでも触れたとおり、この視聴率という代物、私たち一般人から見て、どうにも不思議でなりません。「率」で示されても、それが本当に人々によって視聴されているのかどうかがよくわからないからです。
いちおう、定義自体はビデオリサーチのウェブサイトに掲載されていて(同社ウェブサイト『視聴率』参照)、これを読めば何となくわかるような気もしないではないのですが、やはりウェブサイトを読んでいってもその詳細な測定方法等、あるいはその正確性を巡っては、疑問が尽きません。
たとえば、関東地方だと2700世帯でサンプル調査を行っているのですが、著者自身のように「テレビを持っていない世帯」をどうカウントしているのか、といった点についての詳細な説明は見当たりません。
そもそも「テレビがない人」を計算に含めていないか?
ここでは「世帯視聴率」や「個人視聴率」をもとに、著者なりの疑問点を記しておきましょう。
たとえば、関東地方の世帯数が2700万世帯だったとして(※この数値は適当です)、そのうち2700世帯でサンプル調査をした結果、ある番組の視聴率が1%だったならば、「この2700万世帯のうちの1%である27万世帯がこの番組を視聴した」、と見るのだと思われます(間違っている可能性もあります)。
しかし、そもそもこの2700万世帯のうちの10%がテレビを持っていなかったとしたら、そもそも視聴した世帯数が2.7万世帯ほど水増しされていることになります。
いちおう、視聴率の世界では、関東地区における個人視聴率の1%はおよそ42.2万人と推定されているとの話もあり(Screens『視聴率とはそもそも何なのか? ビデオリサーチ担当者が語る「3つの役割」』参照)、これを100倍すれば4220万人という計算です。
ちなみに総務省統計局『日本の統計2022』第2章図表2-2によれば、関東7都県の令和2年の人口は4365万人であり、テレビの視聴が難しい赤ちゃんなどを除外すれば、だいたい4220万人という数値とは合致していますが、それでも「テレビを持っていない人」までカウントされている疑いは濃厚です。
この点、経営学や会計監査の世界では、「率」と「実数」については、常に分けて考える必要がありますし、「数字」には常に根拠が必要です。そして、「視聴率」自体、全世帯の視聴動向を調査することができなかった昭和時代の遺物のようなものであり、これがどうやって「視聴数」に結びつくのかの説明が欠落しているのです。
ちなみに『YouTube』『ニコニコ動画』などの動画サイトの場合だと、動画の関連情報として「視聴回数」ないし「再生回数」が表示されていますが、視聴率などは表示されていません。
当たり前でしょう。
再生した回数を直接カウントすることができるのですから、「視聴率」などという不透明な数値に依存しなくても良いからです。
儲からなくてもTVerに注力せざるを得ないテレビ局
こうしたなかで、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』に29日付でこんな記事が掲載されていました。
「silent」が記録更新中のTVer 民放テレビ局に入る分配金はどれくらいなのか
―――2022/11/29付 デイリー新潮より
これは、2015年に始まった、民放公式のテレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」に関する記事です。
記事タイトルにもある「silent」はフジテレビが配信している連続ドラマのことだそうですが、ここで唐突に、こんな記述が出てくるのです。
「『silent』がTVerの再生回数の新記録を更新し続けている。10月27日放送の第4話は配信後1週間で582万回も再生され、新記録を達成した。自らが第2話で達成した489万再生の新記録を塗り替えた」。
ここで「視聴率」ではなく「再生回数」が出て来るというのは、非常に興味深い論点です。
いちおう、この記事は同じ視聴率でも「世帯視聴率」よりも「個人視聴率」や「コア視聴率」(個人視聴率のうち13歳から49歳までを切り取ったもの)の方が重視されるようになってきた、といった点を力説しているのですが、個人的にはその部分の説明はほとんど頭に入りません。
せっかくTVerを使った配信が始まったのならば、テレビ局や広告主も、不透明な「視聴率」などではなく、そろそろ「再生回数」を重視した方が良いのではないか、などと思ってしまいます。
この点、リンク先記事によれば、TVer自体は右肩上がりで収益が伸びているにせよ、民放各局にとって収益の柱となっているとまでは言えず、「将来的にも収益の核となるのは難しい」ため、「視聴率第一主義」を「捨てられるはずがない」、と記載されています。
「日テレは単体でのCM売上高が約572億1100万円なのに対し、無料配信による売上高は約9.9億円。フジは同じくCM売上高が約400億2500万円で、無料配信による売上高は9.9億円。偶然だが同額だ」。
つまり、TVerからの収益額は単体でのCM売上高に対し、日テレは1.7%、フジは2.5%で、たしかにどちらも収益の核となっているとは思えません。
しかし、民放テレビ局は「TVerで高い再生数を記録するドラマはコア視聴率も高くなる」という相関性が認められると認識しているのだそうです。それが事実なら、民放各局にとっては、TVerの再生数は無視できない指標になりつつあるはずです。
チューナーレステレビが普及すれば自滅に向かう?
そして、ここで注目しておかねばならないのが、NHK受信料を嫌気する人が増えるなどの要因で、地上波が映らない「チューナーレステレビ」が増えてきてしまう、という可能性です。実際、『想定以上の売れ行き「チューナーレスTV」とTV業界』などでも触れてきたとおり、チューナーレステレビは徐々に普及しつつあります。
そうなってくると、視聴者のテレビ離れが加速するなかで、民放各局としてもTVerに力を入れざるを得なくなりますし、民放各局がTVerに注力すればするほど、地上波自体が廃れてきてしまう、という結果になりかねません。
というよりも、民放各局は今後、TVerを主軸に置かざるを得なくなるのではないでしょうか。
そして、このこと自体、ハンドリングを間違えれば、民放各局自身がNHKを道連れに、地上波テレビ業界を滅亡させてしまう可能性がある、ということでもあります。
これには先例があります。
すでに新聞業界では、紙媒体の新聞が売れなくなり(『過去17年分の朝日新聞部数推移とその落ち込みの分析』等参照)、新聞各社はウェブ戦略を加速させざるを得ないものの、ウェブでも有料読者契約の獲得が思うように進んでいないという惨状にあるのです。
つまり、新聞、テレビというオールドメディア業界は、いずれもネットを取り込もうとして、逆にネットに呑み込まれつつあるのでしょう。
なにより、地上波だとチャンネル数が限られていましたが、ネット上だと競合相手は無数にいます。動画サイトに限定しても、TVer以外にも、YouTubeあり、ニコニコ動画あり、Netflixあり、アマゾンプライムあり、といった具合に、ライバルがいくらでもひしめいているのです。
こうした厳しい競争環境で、はたして10年後にテレビ局は生き延びているのか――。
興味は尽きないところです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
サイト主さま
>ごくたまに飲み屋やホテルの朝食会場、空港の待合室で大音量でテレビが点けっ放しになっていたりするのに遭遇すると、どうにも落ち着きません
当方もそうです。学生時代からテレビのうるさい食堂には『決して』入らないようにしていました。空港などの待合室に設置してある場合には、目に入らない位置に腰かけています。公共空間無音化はぜひとも推進すべきと考えます。
おそらくは TV なし Youtube のみの入院プランがあってしかるべきと考えます。高齢者ほど Youtube にはまって出て来ない=TVを視なくなるのは間違いありません。若き日の女優さん俳優さんたちに我が人生を重ねる楽しみも尽きない。遠い異国の美しいライブ中継も、星空もオーロラもあります。過去15年間に蓄積された全世界情報を視放題なのです、おもしろくないはずがない。
病院の待合室もかなりの高確率で
犬HK、テロ朝にチャンネルが固定されてます、
誰も観てないな、
と
さりげなく確認して
テレビショッピングに変えます。
TVerで興味をもたせParavi(パラビ)(有料チャンネル)に誘導
データ取りと(番組)宣伝も兼ねているので大きな利益は期待していないと思います
W杯全試合無料放送で株をあげたのがAbema
難点は
TV放送より数分のタイムラグ
データ容量の大量消費
解説の本田さんも株上昇中
前にも書いたが、休みの日に我が家にやって来る孫たちはTVを観ない。あまり観ないではなく「全く観ない」のだ。何を観ているのか、YouTubeだ。
無理もないと思う。
TV局の作ったコンテンツを、TV局が指定した時間に、TVの前で見るのと、
好きなコンテンツを、好きな時間に、好きな場所で見るのとではYouTubeに軍配があがるだろう。
スポーツのライブ中継はTVに分があるかもしれないと思っていたが、なんとTVには手の出ない値段になってしまっている。TVに手が出ないというよりスポンサーが二の足を踏む(広告効果と値段を天秤にかけて)値段という事だ。ワールドカップアジア予選の一部はTV放送がなかった。井上尚弥の試合もTV放送なし。ワールドカップ本戦も全試合見ることができるのはAbemaというインターネットTVだ。
これは何を意味しているのか? TV広告は広告費を払う価値がなくなってきているということだろう。
sqsq 様
おはようございます。
最近、TV中継で、自動車メーカーやハウスメーカー等、大企業のCMを見なくなったと感じるのは気のせいでしょうか?。
(酒類、食品メーカーのCMが多くなった?。)
デーブイデー社長の通販のCMを地上波で見かけるのもCM料金の値下げがあったからでしょうか?。ちょっと前はBSでしか見なかったような?。
大企業の広告が少なくなっているとしたら、しっかりした宣伝部があり費用対効果を見ていてTV広告の比率を減らしているのではないかと想像します。その空いた枠をTVコマーシャルは敷居が高いと思っていた新興企業が埋めていくようになるのでは?
TV局の決算などを見ると増益なのでたぶん値下げはしていないのでは。
地上波でショップチャンネルをやるのは、TV局の堕落ではないかと思っています。
TVの広告収入はタイム(番組提供+コマーシャル)とスポット(番組と無関係に広告を流す)ですがショップチャンネルは番組自体がコマーシャル。ジャパネットなどは自社でスタジオを持っていてTV局は単に電波料をもらうだけ。
sqsq さま
>好きなコンテンツを、好きな時間に、好きな場所で見るのとではYouTubeに軍配があがるだろう。
(CMを飛ばすことが出来る録画を除外するとして)決まった時間に、テレビの前にいなければCMを視ることができないテレビ番組より、例え翌日でもCMを視ることが可能であるネット動画の方が、視聴可能な人数が多いのですから、宣伝効果ではネットに軍配が上がるのではないでしょうか。
蛇足ですが、もし、録画再生して何度でも視たくなるCMが作れれば、テレビにも勝ち目があるのでしょうか。
・受信設備を持たないマンションというのもいいかも。
・回答しない人を考慮しないという意味では、世論調査も同じでは?
電通が仕切る視聴率が正しいかというと、正しい数字ではないが答えだと思います。視聴率は正しくなくても、数字があり、それと広告料が連携しているこが必要なだけです。ネット接続されたデジタルTVでは、何の装置も付加せずにテレビがどのチャンネルをいつ設定されていたかを知ることができます(その利用には本当に簡単な許諾が必要ですが)。その数字を電通が使うことを許さないだけです。
でも、これってサイト主さんの専門領域に口を挟むようですが、企業の格付けも似たようなものかなと思っています。正しい数字が必要ではなく、金と結びつけることのコンセンサスがある数字が必要なのです。
ネットの世界では、Google AdWordsやAdSenseがそれに当たると思いますが、視聴率よりもブラックボックスで操作しやすい指標ではないでしょうか?利益を独占すると言うことはそう言う事ですし、過去から支配者が度量衡の統一に執着したのはそれが理由だと思います。
何も考えずに流れてくる映像を見て時間をつぶすというニーズもゼロにはならないはずで、TV業界も既得権益を維持したままうまくやる(TV事業を維持する)方法もあるとは思います。NHK受信料というサブスクへの強制加入という問題さえなければ。
今のニーズというのは、たぶん、個人個人が好きなものを好きな時間に視聴するか、居間に画面だけがポンと置いてあって、家族とか複数人で同時試聴するというもの。どちらにしても、何を視聴するかは好みで自由に選べるほうが好ましい。まだ、一応その内の一種類ぐらいの立場でTV業界がしがみついている感じですね。
その、「画面をポンと置く」という目的に一番合っているのはTVという枯れた家電のはずで、商品としての選択肢も価格も非常にこなれています。チューナーレスTVなんて中途半端なものは、値段的には大した差も無いのに本来売れるはずないんです。これが売れるとしたら、歪んだ市場だな、とすら思います。チューナーレスTVが悪いと言いたいのではなく、商品コンセプト自体が歪んだ競争の結果だな、と。
本来自由なものを偏らせるには何らかの圧力が必要で、その一つが現状のNHK受信料なのは間違いないでしょう。それ以上に問題だと思うのは、事実をそのまま伝えようとしない報道姿勢など内容がマイナス要素になっていて、最近は見たら損をする(無視しても無視する努力がマイナス)とすら感じています。安倍さんの国葬偽のときなど本当に非道かった。この際、TVレスTVという商品を出してみたら売れるかも知れない。
新潮の元記事は、テレビ業界は低視聴率にならなければコア視聴率なんて新たな指標を考え出す必要も無かったし、ネットの脅威がなければTVerなんて事業を始める必要も無かった、と読み取りました。TVer自体もまだ実験の中というところなのですかね。
少し前に”TVerの同時配信”をYoutubeの広告枠で流してたことがありました。居酒屋にいる複数のお一人様客がそれぞれスマホをいじっている場面なんですが、突然同時に笑い出すんです。それは皆がTVer同時配信を見ていたから、という設定です。
社会全体が一つのネタに反応して話題のウェーブを作ったのはテレビ電波時代特有の現象なのでしょうが、ネットでそれが起こるとは考えづらい。
「夢よもう一度」とか言いたかったのかな?
毎度、ばかばかしいお話しを。
テレビ局:「昭和レトロで、一軒の家のテレビに、近所の人が集まった時代を再現しよう。そうすれば、スポンサーに世帯視聴率が悪いが、個人視聴率が良い、と言い訳できる。それにしても、昔はよかった」
スポンサー:「推定視聴人数を用いて、テレビCMの費用対効果を分析するように、第三機関に依頼しよう」
テレビ局:「スポンサー様、番組内でスポンサー企業の商品を買いたくなるように、催眠電波を流します。(実際には催眠電波なんてないけど、スポンサー企業にはバレないだろう)」
テレビ局:「ツイッターのように電通に金を渡して、視聴率を捏造しよう」
この話は、2022年11月30日時点では、笑い話である。
そもそも地上波テレビって、番組の送信自体にすごくコストがかかるんですよね。障害物の多い地上から電波を飛ばすから、出力を強くしないといけないし、山間部・離島・都市部のビル影などには中継局も設置しないといけないし、全国放送するには30局くらいで全国ネットを作らないといけないし。
それでもテレビが娯楽の王様だった時代には 「ウチの番組は視聴率30%だから3000万人が見てるんですよ」 なんて言って、スポンサーから高い広告料を取れたんでしょうが、今はもう無理でしょう。しかし逆に、番組の制作や送信にコストがかからなければ、視聴者が少なくてもビジネスとしては成立します。海外でテレビの多チャンネル化がうまくいったのは 「衛星放送+ケーブルテレビ」 が主流だったからです。
海外で一般的なテレビの視聴方法は 「地域のケーブルテレビ局が、地上波も衛星放送も外国の放送もまとめて受信して、ケーブルで再送信したものを、各家庭で視聴する」 というものです。この方法だと、日本のように各家庭でアンテナを何種類も設置する必要も、個々のテレビがチューナーを内蔵している必要もありません。なので海外では日本より人口の少ない国でも、テレビをつければ何十チャンネルと見れるのがあたりまえだし、ニュース専門局やスポーツ専門局のような専門チャンネルもいっぱいあるわけです。
日本でも一応、BSとCS(スカパー!)によってテレビの多チャンネル化を進めようとはしたけど、海外のようにはうまくいきませんでした。特にBSは地上波と同じく免許制にしたので、新規参入がほとんどなく、既存メディアが出資・運営しているチャンネルばかり。NHKの受信料も上がってしまうので 「そこまでして見たいとは思わない」 という人も多いと思います。
さらに日本では、テレビのリモコンもガラパゴス化しています。ケーブルテレビのリモコンにも 「地上波」 「BS」 「CS」 のボタンがあって、最初に選ぶようになっているなんて、世界中で日本だけですよ。あれはテレビ業界が定めた規格だそうですから、完全に地上波テレビの都合なんですよね。視聴者にとってはシームレスに操作できたほうが良いに決まってるのに、わざとBSやCSにチャンネルを切り替えるのを面倒臭くしてるんですよ。
本来はBSやCSが実用化された時点で、日本のテレビ放送は地方局も含めて全部そちらに引っ越しをさせるべきでした。そうすれば日本も海外と同じようにテレビの多チャンネル化が実現していたはずです。「地上波テレビのデジタル化=地デジ化」 のためにかかった費用は数十兆円といわれ、国や地方自治体もかなり支出したはずですが、そのお金は地デジ化ではなくて多チャンネル化のために使うべきでした。「地デジ化」 は、日本史上最大最悪の 「税金の無駄遣い」 だったと思います。