ウクライナ攻勢:プーチン4州併合宣言が裏目の可能性
ロシアが喜々として自国領に編入宣言したウクライナの4州のうち、ルハンスク州にウクライナ軍が迫っているとの情報が、英国防衛省によって発表されました。事実ならば、ロシアにとっては政治的には非常に大きな失敗であり、「4州併合」というウラジミル・プーチンの政治的賭けが失敗に近づいたことを示唆するものでもあります。ウクライナにおけるロシアの無様な敗退は、国際法秩序に挑戦する無法国家の敗北を意味します。
目次
ウクライナ戦争はロシアによる「違法でいわれのない侵略」
多くの「ロシア・フレンズ」の方々が「その情報は不正確だ」などと批判したものの、結果的にはロシアが発する情報よりもはるかに正確性が高かったものといえば、個人的には何といっても英国防衛省が発信する『インテリジェンス・アップデート』を挙げておきたいと思います。
ウクライナ戦争の発生原因などを巡っては、当ウェブサイトにもときどき、「NATOを1インチたりとも東進させないとする約束を破った西側諸国にも責任がある」、などと真顔で主張する人がいます(※そのような方には、少しは事実関係をご自身で調べるという癖をつけることをお勧めしたいと思います)。
しかし、実際には、今回のウクライナ戦争の本質は、英国防衛省が毎日のように述べているとおり、「違法でいわれのない侵略行為」です。
The illegal and unprovoked invasion of Ukraine is continuing.
The map below is the latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 05 October 2022
Find out more about the UK government’s response: https://t.co/M2JV8Vy7KJ
#StandWithUkraine pic.twitter.com/On3I5nhf16
— Ministry of Defence (@DefenceHQ) October 5, 2022
このことは、(一部の不勉強な人からの批判にもかかわらず)当ウェブサイトとしては何度でも強調しておきたいと思う次第です。
最新のウクライナ軍の進撃状況
さて、そのロシアがウクライナの頑強な抵抗により、ジリジリと後退していることは、私たち国際法秩序を愛する日本国民にとっても諸手を挙げて歓迎すべき事項であることは明白です。
というのも、現在の日本は、故・安倍晋三総理大臣の「置き土産」である「価値観外交」、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」などの構想を世界に提唱する立場にあるからです。その日本にとって、ロシアの違法行為が国際社会で批判されることは、まさに国益そのものでもあります。
こうしたなか、『インテリジェンス・アップデート』の最新版を紹介しておきましょう。
The illegal and unprovoked invasion of Ukraine is continuing.
The map below is the latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 05 October 2022
Find out more about the UK government’s response: https://t.co/5DOyzVlTwJ
🇺🇦 #StandWithUkraine 🇺🇦 pic.twitter.com/adOQRJTszG
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) October 5, 2022
- Ukraine continues to make progress in offensive operations along both the north-eastern and southern fronts. In the north-east, in Kharkiv Oblast, Ukraine has now consolidated a substantial area of territory east of the Oskil River.
- Ukrainian formations have advanced up to 20 km beyond the river into Russia’s defensive zone towards the supply node of the town of Svatove.
- It is highly likely that Ukraine can now strike the key Svatove-Kremina road with most of its artillery systems, further straining Russia’s ability to resupply its units in the east.
- Politically, Russian leaders will highly likely be concerned that leading Ukrainian units are now approaching the borders of Luhansk Oblast, which Russia claimed to have formally annexed last Friday.
若干雑ではありますが、これを意訳すると、こんな具合です。
- ウクライナは北東部と南部の戦線で引き続き前進を続けている。北東部のハルキウ州では、ウクライナはオスキル川の東側で相当の領土を回復した
- ウクライナ軍の部隊はオスキル川から最大で20㎞前進してロシアの防衛圏に入り、現在は補給拠点とされるスバトベの街に向かいつつある
- しかもウクライナ軍の砲撃システムは重要性の高いスバトベ・クレミナ道路をも射程に入れた可能性が非常に高く、このことは東部におけるロシアの部隊への補給能力に対するさらなる圧迫となっている
- ロシアが先週金曜日に正式に併合したと発表したルハンスク州との境界にウクライナの主力部隊が迫っていることは、政治的に見ればロシアの指導者たちにとって懸念すべきことだ
ロシアの無様な現状
なぜか非常に心強く見えてしまうのは気のせいでしょうか。というのも、状況をまとめると、どうもロシアの戦況は芳しくないからです。
「短期決戦のつもりでウクライナに侵入したところ、数日で全土を掌握できるとする当初の目論見と異なり、首都・キーウはおろか、主要都市もほとんど攻略できないままで、3月末にはキーウ近郊から撤退せざるを得なくなった」。
「黒海艦隊が誇る旗艦・モスクワはウクライナによって撃沈(※1)され、さらには東部諸州では夏以降、西側諸国の新兵器の威力もあってか、戦略上の要衝がウクライナ側によって次々と奪還され、地点によってはロシア軍が包囲され、孤立している」。
「ウラジミル・プーチン大統領は『部分的な動員令』(※2)への署名を余儀なくされた」。
※1…ロシア側はいちおう、モスクワは「火災と悪天候で自然に沈没した」などと主張しています。
※2…ロシアの言い分はあくまでも「部分的な動員」だそうです。
それに、ロシアとしてはNATOの東進を防ごうとしたのかもしれませんが、結局、フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を決断してしまいましたし、つい先日は旧共産圏を中心とする中・東欧諸国もウクライナのNATO加盟を支持するとの共同声明を発表しています。
中・東欧9カ国 ウクライナのNATO加盟支持を表明
―――2022/10/3 08:44付 産経ニュースより
これは、非常に興味深い記事です。旧共産圏諸国などが、明らかにロシアの味方ではなくなっているからです。
ソ連崩壊以降、ロシアは「友人」(?)を失った
結局のところ、ソ連崩壊以降のロシアは、旧共産圏だった中・東欧諸国、旧ソ連加盟国だったCIS諸国などの多くを西側陣営に取られてしまいました。もしも今回のウクライナ戦争についても、ロシア側に有利なかたちで講和したところで、ウクライナNATO加盟国となることはあっても、ロシアの友好国となることはないでしょう。
もちろん、CIS諸国のなかにはベラルーシのようにロシアの友好国というケースもあれば、北朝鮮やシリア、エリトリアなどのように、一貫してロシアを支持する域外国も存在します。
さらにはインドのように、地域大国でありながらもロシアとつかず離れずの関係を保っている国もありますし、中国の動きも気になるところではあります。
ただ、基本的には旧ソ連構成国、旧共産圏諸国の多くは、もうロシアはまっぴらだと思っており、このこと自体、ロシアがソフトパワーの発揮に失敗したことの証拠でもあるのでしょう。旧ソ連崩壊でロシアは「友人」(?)を完全に失ったのです。
いずれにせよ、つい先日、ロシアはウクライナの4州の併合を喜々として宣言しましたが、その「併合」したばかりの「ロシア領」にウクライナ軍が到達し、そこでもロシア軍が無様に撤退するようなことがあれば、プーチン自身の「賭け」が盛大な失敗に終わる可能性がますます高まることを意味します。
こうした視点からは、ウクライナ軍のさらなる躍進は、非常に重要な論点のひとつであることは間違いないでしょう。
オマケ:維新はこの人物を除名しないのでしょうか?
さて、どうでも良い「オマケ」をひとつ取り上げておきましょう。
鈴木宗男氏「ウクライナは停戦を」 欧米の武器供与停止も訴え
―――2022年10月05日17時43分付 時事通信より
時事通信によると、日本維新の会の鈴木宗男参院議員は5日、東京都内で開かれた駐日ロシア大使の講演会で、ウクライナに対しては「プーチン大統領が停戦だと呼び掛けたのだから乗るのが筋だ」などと主張。
そのうえで「ミサイルを含め極めて攻撃的な武器を米国が供与するから戦争が長引く」などと述べ、「欧米諸国の武器供与停止も訴えた」のだそうです。日本維新の会がこの人物をいまだに除名していないのは謎と言わざるを得ません。
ちなみにこうしたロジック、日本にもごくまれに似たような主張をする人はいます。「憲法第9条があるから外国から攻められない」、「反撃能力を持つとそれが外国を刺激して戦争のリスクを高める」、といった屁理屈です(いや、「屁理屈」にすらなっていませんが…)。
ただ、考え様によっては、この人物がこのように極端な発言を繰り返すこと自体、欧米諸国による武器供与がこの戦争における非常に正しい行動であるということを、間接的に人々に認識させることに寄与しているのかもしれません。これも一種の皮肉、といったところではないかとも思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
鈴木宗男ね、、。宗男ハウスだの、なんだので物議をかもして収監されたのが、懐かしいね。で、今回の異常なロシア愛に、やはりロシアとの癒着、あるいは利権の存在は、有ったんだなと改めて、確信する次第だ。その鈴木宗男を追い詰めた、辻元清美もなにかと香ばしい噂のある人物だ。両人共に比例区当選ではなかったか。政党への支持とは聞こえがいいが、やはり選挙は人物本位。比例区選出制度は廃止がよい。こんな、お手盛り制度はいらんわ!ついでに議員も削減でよろしい。
ロシアは憲法で”領土の割譲”を認めていないそうですので、ロシアがロシア国内法に則り併合を宣言したウクライナの領土がロシアとの”和平交渉”で返還されるメは消えました
ウクライナが領土の回復をロシアにロシア国内法的に認めさせるにはロシア憲法を(部分的にでも)無効化するしかないので、
突然のメテオストライクでロシア首脳陣が(物理的かつ明示的に)消失でもしないかぎり、早期解決のメもまたカギリナク薄くなったものかと、暗澹深めておりやす…
ロシアの領土割譲は、ありません。
ロシアのウクライナ4州の併合は、当面氷が解けるまで和平交渉での返還のメも、ロシア政変でプーチン政権の崩壊限定以外は、早期解決のメもないでしょう。そのとおり。
プーチン政権は、退路を断って、ウクライナを主戦場とする対EU・対USとの決戦に臨んでいるということです。
核使用の決断はプーチン・バイデンともに抑止が利いていてできないでしょう。
ロシアはどう負けるか、あと始末はどう転ぶかの問題です。
アメリカはアメリカンスタンダードの前のめりを続けるか、閉じこもりに戻るのか。
中国はロシアが落ちたあと、覇権を維持できるかが、注目するところでしょう。
日本は米中の間で沈下を続けるか、インド太平洋に活路を求めて、独自の道を進むことができるか。「ならず者」国家に囲まれて舵取りはますます難しいでしょう。
維新といえば事実上の党オーナーのような橋下も熱心にウクライナが抵抗を止めろ、ということを言ってますね。在日ウクライナ人と口論してまで。何かロシア・コネクションがあるのでしょうか?
こういう言論の間違っているところは、第一に、侵略戦争に抵抗するか諦めるかはウクライナ人が決めることです。
第二に、ウクライナ人の「命が大切」だから抵抗を止めろというのであれば、一体誰が無法な国家を止めるのかと言うことです。この理屈(理屈にもならないですが)で行けば、ロシアや中国のような国が侵略を決めたら決めた者勝ちになります。
橋下氏は一旦引いて、20年後30年後に国を取り返せば良いと言ってましたが、その時に人命が失われるでしょう。また、数十年後に国を取り返す戦争を起こすと、その時はウクライナの方が秩序を壊したと非難される可能性大です。
日本にはかつて「人命は地球より重い」と言った変な首相がいましたし、沖縄の方では「命こそ宝」と言う言葉があるそうですが、それは平和や自由が「崩れない」ことが保証された範囲内の世界で言えることです。
4州併合でロシアパスポートを得た住民たちはいずれはロシアに移住せざるを得なくなる可能性がありますが、それは結果としてウクライナに吉なのでしょう。
ロシア下院で批准されたという”併合”条約案文が下院の公式でDLできたと言う人もいるようですが、見つかりません。
http://duma.gov.ru/services/
多分ここのリンク先にありそうなんですが、リンク先のいくつかが読み込みエラーになってしまいます。
公開を止めてるのかなぁ。
併合した領域の範囲がどう書かれているか気になるんですよね。
無法国家の条約・法令を確認したところで意味は薄そうですが、ロシア政府のアクロバットな言い訳は楽しみの一つです。
コレ↓に引っかかっているのではないでしょうか?
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ru
ロシア下院「隠す意図はない。技術的な問題だ。」
へいへい。w
その「併合」したばかりの「ロシア領」にウクライナ軍が到達し、そこでもロシア軍が無様に撤退するようなことがあれば、プーチン自身の「賭け」が盛大な失敗に終わる可能性がますます高まることを意味します。
自らが定めた「絶対国防圏」が破られて総辞職に至った東条内閣を連想した
少し前にロシアが世界各国に工作資金をバラまいているとの報道があった。
日本では鈴木宗男と佐藤優が金を握らされている。
維新はどうだかはまだわからない。
だが「北方領土を戦争で」発言の丸山をすぐに除名処分にしたこと。
橋下や鈴木の発言を容認していることからもロシア寄りであることは明らか。
あと鈴木は現在命がけで行動している。
何もしなかったら毒殺されることをよくわかっている。
だからブログや講演で必死になってアリバイを作っている。
天安門やクリミアの後がそうだったようにロシアは制裁解除の糸口を必ず日本に求める。
そのときに日本側の交渉人になるのが鈴木。
それがわかっているから今後も鈴木はロシア傾斜をやめない。