「消費者ローンで株を買う」韓国家計、債務破綻急増か
韓国では若年層を中心に、個人債務者がクレジットカードのキャッシングや消費者信用などに手を染め、暗号資産だ、株式だ、先物だといったリスク性の資産に投資し、債務破綻の危機に瀕しているようです。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝掲載された記事によれば、すでに今年上半期の「債務調整」の申請者数が2年前と比べ30%近く増加しているなか、利上げにより今年下半期にはさらに急増することが懸念されているのだそうです。
韓国資産バブルFRB主犯説
『不動産市場から「韓国資産バブル」を解説する鈴置論考』を含め、当ウェブサイトでは以前からしばしば指摘しているとおり、韓国は現在、「コロナ禍直後の家計負債膨張」と「資産バブルの発生」という事態の後始末に直面している状況にあります。
これは、「コロナ禍が深刻化した2020年3月以降、米FRBなどの旺盛な金融緩和で全世界の市場にマネーが注入された結果、韓国で発生したのがウォン高と外貨準備の膨張、マネタリーベースと韓国の家計負債の急拡大、そして資産バブルだった」、とする仮説であり、メカニズムにすれば次の①~⑧です。
【参考】韓国資産バブルFRB主犯説
- ①FRB等、主要国中央銀行による金融緩和
- ②為替市場で韓国ウォンを含めたEM(※)通貨高
- ③韓国の通貨当局が「ウォン高になり過ぎれば輸出業者が困る」と判断
- ④韓国のウォン売り・ドル買い介入(→外貨準備の増加)
- ⑤市中のウォン流通量が増大(→マネタリーベースの増加)
- ⑥金融機関の家計向けローンが増大(→家計債務の増大)
- ⑦カネを借りた家計がリスク資産(株式、不動産、暗号資産など)に投資
- ⑧韓国ウォンがビットコイン取引通貨の第3位に浮上
(【出所】著者作成。なお、「EM」とは “Emerging Markets” 、つまり「新興市場諸国」のこと)
ウォン安?信用二階建て?
このうち③以外の部分に関しては、いずれも韓国銀行などが公表する家計信用やマネタリーベースなどの統計により、具体的に確認することができます。
そして、根源となる①の部分で米FRBが金融引締めに転じたなかで、上記②~⑧が猛烈な逆回転を始めているというのは、経済学的に見れば、ある意味では当然のことでしょう。
とくに、今月に入ってから韓国の通貨・ウォンが13年ぶりの安値水準となる1ドル=1300ウォン台で取引されることも常態化しており、このことは、外貨での借入や、外国からの素材・部品・装備の輸入が多い韓国企業にとっては、経営上の不確実性をもたらしています。
ただ、それ以上に気になるのは、個人債務でしょう。
とくに上記の⑤~⑧の部分でも確認できるとおり、どうやら韓国の個人債務者は、銀行などからおカネを借りて、それを株式だ、不動産だ、暗号資産だといった「リスク資産」に資金を投じていたようなのです。いわゆる「信用二階建て」と呼ばれる、非常にリスクの高い行為です。
当たり前の話ですが、リスク資産の価格は上がったり下がったりします。その値動きの激しさ(ボラティリティ)は、ときとして巨額の利益を得る源泉ともなり得ますが、素人がうかつに手を出すと、巨額の損失を被る原因にもなりかねません。
これに対し、借金の価値は基本的に一定です。これが、非常に厄介な問題をもたらします。
たとえば100万円を借りて、100万円分の株式を購入したとしましょう。もしも株価が上昇し、あなたが購入した株式の価値が200万円に上昇したとしても、借金は100万円のままですので、すぐに株式を売却して借金を返せば、(税金や利子、手数料などを無視すれば)あなたの手元には100万円の現金が残ります。
しかし、株価が下落し、あなたが購入した株式の価値が50万円に下落してしまった場合には、どうなるでしょうか。
この場合も借金は100万円のままですので、すぐに株式を売却しても借金は半額の50万円分しか返せません。あなたは貯金から50万円を返すか、もし貯金がなければ別途働いて50万円を稼ぐかをしなければなりませんし、どうしても借金が返せなければ自己破産するしかないかもしれません。
中央日報「3人目の子供が生まれ、借金で暗号資産投資」
それをリアルで示した記事が今朝、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載されていました。
崖っぷちに追いやられる「借金で投資」…韓国で20代の債務調整申請3年で28%急増
―――2022.07.25 06:44付 中央日報日本語版より
中央日報によると、昨年以降、株式や暗号資産のブームのなかで、「低金利をレバレッジとして積極的な投資に出た20~30代」が、「資産市場の下落と金利引き上げの逆風」のなかで「崖っぷちに追い込まれている」、というのです。
理解に苦しむ記述は、冒頭から始まります。
「会社員のイさん(38)は昨年夏に3人目の子どもを妊娠したとの話を聞きまとまった資金が必要という考えから暗号資産への投資を決心した」。
どうしてそこで「暗号資産への投資」になるのでしょう?
日本人の発想だと、「子供がもうひとりできたのならば、より一層堅実に仕事に励もう」という発想になりそうなものですが、「暗号資産」という「ギャンブル」に手を染めるというのは、どうも私たち日本人の多くにとっては自然な発想ではありません。
しかも、記事の続きも強烈です。
「株式投資で貯めた資金で買った暗号資産の価格が急騰すると妻に隠れてクレジットカードのキャッシングを使って投資額を増やした。だが今年初めに3人目が生まれる前に暗号資産市場が急落し、焦ったイさんはノンバンクから1億ウォンほど信用貸付を受けて暗号資産の先物取引に出た。市場の状況はさらに悪化し、信用貸付を受けた資金まですべて失った」。
このあたり、日本語では「自業自得」というのではないでしょうか。
若年層で信用調整申請者がさらに増加へ!?
ちなみに与党「国民の力」の議員が23日、「信用回復委員会」から得た資料に基づけば、上半期の20台の「信用調整」申請者数は7594人で、2019年と比べて28.3%増加。とくに20代を中心に、カードローンで株式担保融資を受けるなどしている人が増えていることを示唆しているのだそうです。
これについて、中央日報は次のように予測します。
「特に上半期は金利引き上げで貸出金利が上がり、株式と暗号資産などの価格が下落した点を考慮すると、下半期に20代の債務調整申請者がさらに急激に増える恐れがある」。
つまり、利上げをすれば破綻する家計がさらに増加するかもしれません。
もっとも、利上げをしなければしないで、米韓金利差がさらに拡大し、韓国からのキャピタル・フライト(資本逃避)の流れがいっそう加速しかねません。
利上げをしたら家計債務破綻が急増するかもしれず、利上げをしなければウォン安と通貨危機の懸念がさらに高まるという意味では、まさに現在の韓国が置かれている状況は「ジレンマ」そのもの、というわけでしょう。
いずれにせよ、韓国側から「通貨スワップ待望論」がしつこいほど出てくる背景には、私たち日本人が考えるよりも遥かに切迫した状況が韓国で実現していることだけは間違いなさそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
素朴な感想ですが、(別に韓国だけとは限りませんが)人間というものは、「将来、必ず高値で転売できる」と共同幻想にみんなが浸っていれば、借金してでも買うものではないでしょうか。そして、途中で、「必ず値段があがる」という前提に疑念を抱いても、それまでの共同幻想から抜けるのは困難であることも。(韓国も中国も、日本のバブル崩壊と同じになるのでしょうか)
「自分はうまく売り抜ける」
と皆が思っていると思います。
半島の出っ張りは日本じゃ想像つかないくらいの同調圧力社会だから隣のやつがやってうまく行ってるのをみると我慢がならないのです
>上半期の20台の「信用調整」申請者数は7594人で、
思ったより少ない印象です。
信用貸付は家計債務の1割くらいらしいですね。(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63538)
直近の株や暗号資産の暴落でどんな地獄絵図が見えてくるか、(心配して)待っているのですが、まだまだコントロール下にあるようですね。
安心しました。(棒)
URLヘンでしたね。貼り直します。
ニッセイ基礎研:国の破産も招きかねない韓国における家計債務の実態
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63538
ちょっと古い記事です。
韓国人は政府が、徳政令を発令してくれるに違いない。という甘え。この甘えが、日本にも向いているんだよねぇ。韓国人に一言、自分の糞は自分で拭け!
株で損した人の話は昔書いた通りなので繰り返しませんが、どうやら、また「徳政令」を発令しそうな雲行きですね。文在寅前大統領も徳政令をやりました。政府が国債を刷って肩代わりするのかな?中国の不動産バブルのほうも、ローンの支払い拒否を始めた人が結構いるようです。中国政府も徳政令を発令するかどうか、興味があります。
すでに発表されてますよ。
韓国政府は必死だ…「徳政令」再び。「125兆ウォンを投入して経済危機をかわす」
https://money1.jp/archives/84724
しかし、韓国では個人家計債務の問題もさることながら、自営業者の債務も洒落になってない状態になっていると聞きます。第二弾、第三弾もあるかもしれません。それだけの実弾を韓国政府や韓銀がもってるかどうかは知りませんが。
日本は民間が貯蓄過剰経済で対岸の出っ張りは民間借金過剰経済
いつだったかブログ主が借金経済でも循環してるうちは問題ないといってたけど金の流れが逆回転し始めている
一番大きい影響受けるのは不動産投資でしょう
取引がなくなって建設も止まるとgdpに多大なマイナスをもたらすのではないか?
小生は、リーマンブラザーズ=サラリーマンブラザーズ=サラ金と思っており
「アメリカではサラ金から借金して株式投資する人がたくさんいたんだ」と勘違いしていた
ちょっと笑いましたw