ウォン安の裏にある「資産バブル」という構造的な問題
すべては「カネを借りてリスク資産を買った韓国」の自己責任
ウォン安は韓国経済が抱える問題の一端を示すに過ぎません。というのも、ウォン安の裏側には、「カネを借りてリスク資産に投資する」という、韓国経済の構造的な問題点が隠れているからです。こうしたなか、FRBが金融引締めに踏み込むなか、案の定、韓国では株安に加え、暗号資産バブルが崩落する可能性が出てきたようです。
目次
あれ?「悪い円安論」はどこに行ったの?
外為市場では最近、円安が進み、当ウェブサイトの予想どおり日本企業の業績に顕著な影響が生じ始めています。たとえば、トヨタ自動車が発表した2022年3月期連結決算(IFRSベース)は営業利益が3兆円近くに達したとする報道も出ています。
トヨタ、過去最高の営業利益2兆9956億円 国内企業初
―――2022年05月11日 14時21分付 ITメディアニュースより
このあたり、「円高」を愛する財務省あたりに忖度しているためでしょうか、以前から一部メディアがしきりに「悪い円安論」を煽ろうとしているフシがありますが、『「悪い円安」論の嘘:電機大手が円安など追い風に増益』などでも論じたとおり、円安は総合的に見て、現在の日本経済に対しては、間違いなく良い影響を与えます。
もちろん、民主党政権下の2011年以降、原発がほとんど稼働を停止してしまっているため、エネルギー・電力供給が不安定であるという問題を抱えていることは事実ですが、これについては政府が原発再稼働やガソリン税値下げ、再生可能エネルギー買取制度の停止などを決断していけば、その影響を緩和することができます。
また、日銀が金融緩和をしている間に、消費税・法人税・所得税などの減税を行い、景気を浮揚させれば、日本経済は不死鳥のごとく復活することが期待できます。『家計金融資産が2000兆円突破』などでも触れたとおり、日本は財政危機でも何でもないからです。
いずれにせよ、日本経済は、せっかく到来した円安という好機をうまく生かしていくことが必要であり、そのために政府がやらねばならないのは原発再稼働と減税です。この肝心なときに、岸田文雄首相が必要な決断をすることができるのかどうか、我々日本国民は有権者として見極めるべきではないでしょうか。
韓国経済を襲うショック
ウォン高にもウォン安にも弱い韓国経済
それはともかくとして、自国通貨高、自国通貨安がその国の経済にどういう影響を与えるかについては、その国が置かれた経済環境等によってまったく異なります。
日本の場合は巨額の対外債権国であるとともに高付加価値・製造立国でもあるため、円安は間違いなく経済を浮揚させる効果が生じます。しかし、対外債務国であったり、あるいは低付加価値国であったり、さらには輸入大国であったりすれば、自国通貨安は経済に悪影響を生じさせかねません。
我々の隣国・韓国は、基本的には外国から外貨などでカネを借りている国であり、また、一見すると輸出立国ですが、その実態は日本から「モノを作るためのモノ」(韓国語でいう「素部装」)を買って来て、国内で加工して輸出しているに過ぎません。
したがって、自国通貨高(ウォン高)にも自国通貨安(ウォン安)にも弱いのですが、とくに困った問題がウォン安です。
一時コロナ禍発生以来の最安値に!
韓国ウォンは昨日、日中では一時1ドル=1291.50ウォンと、コロナ禍発生直後の2020年3月19日の1ドル=1296.00ウォン近い水準にまで売り込まれ、韓国時間5月12日午後3時半に1ドル=1288.60ウォンで取引を終えました。
終値基準として見れば2009年7月14日の1ドル=1293.00ウォンという、じつに13年ぶりの安値水準が視野に入ってきた格好です。
こうしたなか、韓国通貨当局による為替介入のためでしょうか、今朝になって1ドル=1285ウォン台にまで買い戻される局面もありましたが、再び売られるなど、現時点では1285~1290ウォンの間で推移しているように見受けられます。
韓国の通貨当局が現時点で「防衛ライン」に設定しているのは、1ドル=1290ウォン前後、といったところでしょうか。本当にわかりやすい国だと思う次第です。
ウォン安だけでなく株安も!
こうしたなか、韓国メディアには今朝も、ウォンの急落に関する話題がいくつかでていました。
そのうちのひとつが、『中央日報』(日本語版)に掲載されていた、こんな記事です。
「米国発物価ショック」が韓国市場を強打…ウォン相場急落で1ドル=1288ウォン、株価も下落(1)
―――2022.05.13 07:33付 中央日報日本語版より
「米国発物価ショック」が韓国市場を強打…ウォン相場急落で1ドル=1288ウォン、株価も下落(2)
―――2022.05.13 07:35付 中央日報日本語版より
中央日報によると韓国の金融市場では、ウォン安だけでなく、株価指数(KOSPI)についても年初来マイナス15%となる2550ポイント程度に下落し、時価総額は200兆ウォン以上が蒸発した、などと述べています。
こうした状況について、中央日報は金融市場が「スタグフレーションの恐怖」に「激しく動揺」している、などとしつつ、その恐怖に再び火をつけたのが、「米国発物価ショックだ」、などと述べています。
ただ、この点については『韓国ウォン2年ぶり安値水準:原因は「セルコリア」か』でも報告したとおり、新興市場諸国のすべてにおいて、ドルに対して通貨が下落している、という事実は見当たりません。むしろ「韓国から」資金が流出している、と述べた方が正確でしょう。
もっとも、中央日報は「ウォン価値が秋風落葉のように下落し、短期的に1ドル=1300ウォンを上回ることになるという見方も相当ある」などと指摘し、現状のウォン安局面がさらに進む可能性があるとする市場関係者などの発言を取り上げています。
暗号資産市場の闇
詐欺スキームも疑われる暗号資産価格が暴落
ではなぜ、新興市場諸国のなかでも韓国ウォンがとくに弱いのでしょうか。
そのヒントとなるのかどうかはよくわかりませんが、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)には今朝、こんな記事も出ていました。
韓国の仮想通貨が暴落…コイン版のリーマンショックは来るのか
―――2022/05/13 09:46付 朝鮮日報日本語版より
記事タイトルに「コイン版リーマンショック」とありますが、これは、韓国で生まれた仮想通貨(暗号資産)「ルナ」と「テラ」が連日暴落している、とするものです。
朝鮮日報の解説によると、この2つの暗号資産はアップルの元エンジニアが設立したブロックチェーン企業が発行するもので、このうち「テラ」は「1テラ=1ドル」に連動するよう設計され、発行担保を設定したうえで「姉妹仮想通貨」である「ルナ」を発行・償却する、という仕組みなのだそうです。
なんだかよくわかりません。
実際、朝鮮日報によると、「業界からは出資者から新たに集めた資金を旧来への出資者への還元に充てる『ポンジスキーム』ではないかという指摘があった」としつつも、韓国の暗号資産市況が好調だった昨年は「テラ」も「ルナ」もうまく連動していたのだそうです。
つまり、単なる詐欺まがいスキームで投資家からカネを集めていただけの可能性が濃厚、というわけでしょう。
このあたり、当ウェブサイトでは昨年から何度となく指摘してきたとおり、韓国の資産バブル(株式バブル、不動産バブル、暗号資産バブル)は、いずれもFRBの金融緩和を出発点に、韓国通貨当局による為替介入(外国通貨買い・自国通貨売り)による実質的な金融緩和によりもたらされたと考えています。
この詳しいロジックについては、『不動産市場から「韓国資産バブル」を解説する鈴置論考』などでも取り上げてきたのですが、結果的にこの見立てが正しかった証拠といえるかもしれません。
朝鮮日報によると、「ルナ」は最近1週間で99%暴落し、「テラ」も価値が半分になっただけでなく、「ステーブルコイン全体に対する信頼も根底から揺らいでいる」、などとしていますが、そもそも「カネを借りてリスク資産に投資する国民性」に問題はなかったのでしょうか。
利上げか、ウォン暴落か
いずれにせよ、昨今のウォン安は、たんなる通貨の問題ではありません。ウォン安の裏側にあるのは「韓国の資産バブルの崩壊」リスクです。米国が利上げに踏み切るなかで、韓国の通貨当局としては、つぎの2つのいずれかを選ばなければならないからです。
- 米国に追随して韓国も利上げをする
- 韓国の企業・家計を守るために利上げを見送る
もしも韓国が利上げをしなければ、ウォンの価値はさらに下がるかもしれませんし、そうなれば、韓国企業の財務健全性を損ね、韓国からの資金逃避がさらに加速するかもしれません。
その一方で、もしも韓国が利上げをすれば、家計や企業のなかには破綻する事例が続出する可能性が濃厚です。すでに韓国では家計の20%弱が実質破綻状態かそれに近い状態にある(『家計債務急膨張の韓国が通貨スワップを必要とする理由』等参照)からです。
つまり、家計・企業の破綻続出を覚悟の上で、利上げにより通貨防衛に踏み切るか、家計・企業の破綻を避けるために利上げを見送り、その結果ウォンが暴落するかもしれない状況を放置するか、そのどちらか、というわけです。
このあたり、正直、我々日本国民にとってできることは何もありません。
2020年4月以降の為替介入でウォンをジャブジャブと市場に供給したのは韓国の通貨当局の判断であって、日本の通貨当局はなにも関係ありません。
韓国の銀行が潤沢な資金を使って家計に大量にカネを貸したのは韓国の銀行の判断であって、日本の銀行は何も関係ありません。
韓国の家計が銀行から借りた資金を使って株や不動産、暗号資産などに投資したのは韓国の家計の判断であって、日本の家計は何も関係ありません。
すべては韓国の判断であり、すべての責任は韓国が負うべきです。
日韓スワップ待望論
ただ、今週、政権交代が発生したからでしょうか、韓国側からはここ数日、「米韓通貨スワップ」だ、「日韓通貨スワップ」だ、「日米韓三角スワップ」だといった主張がやたらと出てきています(『韓国議員「韓日は感情抜きにスワップで助け合うべき」』等参照)。
正直、日韓通貨スワップを締結しても、日本には本当になにひとつとしてメリットはありません。
日本が韓国の通貨を受け入れたとしても使い様がありませんし、それどころか、過去には韓国が日本とのスワップの存在をバックストップとして、むしろ積極的に自国通貨安誘導を行い、日本企業の輸出競争力を低下させたという事例もあるからです。
いずれにせよ、ある程度は予想されていたこととはいえ、ここにきて韓国で日韓通貨スワップ待望論が急に強くなっていることについては、少し注意してみておく必要があるのかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
しばらくは、朝日、毎日、日経、NHKあたりからスワップ懇願の大合唱が続きそうですね。未来のため、お互いのため、東アジアのため、中国に抗するため、日本のため。そして、愛はないのか~
本日12時過ぎにドルウォンが1282ウォンくらいまで急激に戻したようですが
韓国による介入? と勘ぐってしまいますねw
韓国との取引がない日本人にとっては対岸の火事を見物する気持ちしかないですね。
「ルナ」と「テラ」って存在を知らなかったです。しかも韓国発だったんですか。(笑)
色々記事を漁ってみましたが、結局ドル連動を担保できる理由が全くわかりませんでした。皆が手放そうとした瞬間に価値はゼロにまっしぐらだと思います。
ステーブルコイン(価値が米ドルなどに連動する)で最大のものはTether(USDT)というのがあって、コインの発行時に同額の米ドルを担保に取ります。USDTの価値が毀損しても最悪米ドル元本を返すことができます。
私の理解だと香港ドルの米ドル連動と同じ考え方です。
テラはその担保を取らない「無担保型」のステーブルコインなのだそうです。(なにそれ?)
既に担保型のUSDTが存在するのに、無担保型のテラに存在価値はないと思うんですが・・・無担保型という分類が存在し得るのだろか、極めて「?」です。
ルナとの関係もよくわかりません。サヤ取りのためにセットで作った無担保コインのようですが、担保は取ってないようです。
朝鮮日報
>ルナは最近1週間で99%暴落し、テラも価値が半分になった。単にルナとテラの問題にとどまらず、ステーブルコインに対する信頼も根底から揺らいでいる。
ちなみに、USDTは昨日あたりに1.03ドルまで瞬間的に乖離したようですが、今は戻っています。
今回「信頼が根底から揺らいでいる」のは韓国の仮想通貨だけだと思います。
色々日本語が変でした。またもや。
テラがドルと連動しない分をルナで補填するといった様な仕組みだそうです。
詳しくはこちら↓
時価総額4兆円のルナ、一夜で価値ゼロに
ステーブルコインUSTはなぜドル連動が崩壊したのか
https://news.yahoo.co.jp/articles/d6f6bde4889246f8e9df54c849f4943e16a274fc
しかし、仮に1,000万円投資していたとしたら、990万円の損失ですかぁ。
ほぼ5兆円溶けているので、そんな方々が50万人おられる訳ですね。
極端な選択をする方々が増えなければ良いのですが・・・(言ってみただけですが)
ありがとうございます。
その記事は読んだのですが、やはりよくわからないんです。
ルナで補填すると言ってもそのルナに担保能力がないと思うので。
米ドルの裏付けがないんです。
米ドル担保に発行するUSDTが存在する中では、テラをステーブルコインと呼んではいけないような気がします。
ご指摘の通りだと思います。故に破綻したのでしょう。
まあ一種のサギですね。かの国ですから、騙される方が悪いのでしょう。
テラのホワイトペーパーはあったんですが、肝心のルナの情報は見つかりませんねー。
https://www.terra.money/Terra_White_paper.pdf
Terraの価格の安定性についての説明はあるものの(Luna使ってああだこうだと)、Lunaについては殆ど書かれてません。
USDTは発行時に受け取った米ドルを担保として保管しているわけですが(建前上)、Lunaの発行時に受け取った金はどこ行ったんでしょうね。(笑)
発行者の懐かな?w
韓国はマイナー通貨の通貨スワップを多数やっているのですが、案外これは現時点で役に立っているのかもと思い始めています。
月1回月末時点の外貨準備高を出す時だけスワップを実行するのです。どんなマイナー通貨でも構いません。末日に通貨スワップで手に入れて、翌日返済する。これを毎月繰り返すのです。
そうすると月末時点での韓国の外貨保有残高が増えます。どんなマイナー通貨であろうと外貨であるわけですから。韓国は外貨種別ごとの残高を出しませんから余裕ですね。
為替はともかくとして”ウォン建ての株式なんか”は、政権の判断で際限なく買い支えすればいいと思うんですよね。
本気で家計を救済したいのなら、”安易な救済(通貨スワップ)”を求める前に自前でできることはあるはずなのにね。
リスク資産への投資行為は、自己責任。
リスク投資への融資実行も、自己責任。
リスク管理無能政権にはクスリが必要。
暗号資産か
豊田商事を思い出す
ペーパーがデジタルに変わっただけ
世界のマーケット関係者が
開催を心待ちにする
何年かに一度の注目イベント、
ウォン投げ売りセール開催時期が
迫っているようですなあ。
ところがちょっと前の今年の2月には
新大統領さんや、韓国メディアさんは
「韓国ウォン基軸通貨として編入される資格十分」
などと、韓流ゴリ押しなされてました。(笑)
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/42542.html
これらは経済だけでなく、たとえば
英国での前回G7サミットで、
ただの招待国で呼ばれただけなのに
もはやG8だ! 日本に代ってG7ニダと
韓流挙げての大騒ぎしてたのに
今年のドイツでのG7サミットでは
ただの招待国からも省かれてしまってます(笑)
また、時事通信コメント欄やヤフコメでは
どんな記事にも荒唐無稽に
「だから日本は先進国から没落した。
いまや韓国の足元にも及ばない」??
的な お里が知れる韓流コメントを
日々たくさん目にすルのを勘案すると
これらはどれも同根なのだと気付かされます。
まあ、
およそモロモロ韓流とは
所詮そうしたものなのだ
と正しく位置づけてあげて、
鷹揚に憐れみをもって
寛容に対応してさしあげるというのが
優しい日本人としては妥当なのでしょう。
>ただの招待国からも省かれてしまってます(笑)
韓国招待無!(コリアンショータイム!)の始まりですね。(苦笑)
ルナもテラも、昔あった、円天と同じで「理解できないのは馬鹿だから」の理屈であちこちひねくりまわして「ドルにペッグしている」と主張していただけでしょう。
発行元が買い支えて一見ドルに連動しているように見せかけて、さらなる投資を募っただけだと思います。
ちょうど自転車操業の詐欺会社が、○○%の利息が付きます、、、と言って新規参入者の資金を配当に回すのと同じやり方でしょうね。
韓国で通貨スワップ協定の待望論が並々ならぬ熱情を帯びているわけだけは、なんとなくわかったような気がします。
詐欺のような仮想通貨とか怪しい投資に引っかかる人と、コロナやロシアの陰謀論を唱える人との相関とってくんないかな。
どこかの学者さん。
韓国が身を切っても助けてやる価値(金銭的な価値でなく)がある国なら助けてやればいいと思います。実際は180度X奇数 だけ逆です。
現在の日本の政権は危ういですが、万一韓国を助けるようなことをすれば、誰がしたか記憶しておきましょう。