【速報】北朝鮮がミサイル発射?迅速な日本政府の対応
日本政府は北朝鮮が本日7時過ぎから7時半にかけて、日本海に向けて弾道ミサイルを2発、発射したと発表しました。事実ならば国連安保理決議違反です。弾道ミサイル発射自体は昨年3月39日以来のことで、バイデン政権発足以来初のことですが、それと同時に特筆すべきは日本政府の対応の迅速さでしょう。
2021/03/25 11:00追記
タイトルを変更しました。
目次
北朝鮮は外交上手?それとも…
「果たして、北朝鮮は外交上手な国なのだろうか」――。
「外交専門家」と称する人たちによれば、北朝鮮は非常に外交が上手な国なのだそうです。
たしかに、世界の最貧国でありながら、この世界的な情報社会化の流れに逆らうように、朝鮮半島の北半分で情報流入を遮断しつつ、世界的にもあまり例がない政治体制を維持し、さらには世界最大の経済・軍事大国である米国を向こうに回して交渉できるのは、なかなか奇跡的なことでもあります。
ただ、当ウェブサイト的には、「北朝鮮が外交上手だから、こうした体制を維持することができている」とする見解には、あまり同意しません。
その理由はいくつかあるのですが、最初に指摘しておきたいのは、地政学的に見て、北朝鮮の存在は中国とロシアにとっては都合が良い(と彼らが考えている可能性が高い)ことです。
もしも韓国が米国の同盟国というステータスのままで、韓国主導で南北統一が実現でもすれば、中国とロシアは米軍が駐留する「統一朝鮮」と陸で国境を接することになりかねません。
ロシアは国土の西部において、NATO加盟国と国境を接していますが、それもノルウェー、エストニア、ラトビアの3ヵ国のみであり、国土西部において陸で国境を接するその他の国(フィンランド、ベラルーシ、ウクライナ、ジョージア、アゼルバイジャン)はいずれもNATO非加盟国です。
また、中国の場合も、ロシアと北朝鮮以外に陸で国境を接する国(ベトナム、ラオス、ミャンマー、インド、ブータン、ネパール、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、モンゴル)は、いずれも米国とは軍事同盟を結んでいません。
だからこそ、「あわよくば『緩衝地帯』として北朝鮮には存続していただきたい」、「もしも南北統一が実現するならば、最低限、米韓同盟は消滅して欲しい」というのが中国、ロシアの共通した願いなのだと考えると、それはそれでスッキリと説明が付きます。
制裁を骨抜きにしてきた中露
この点、中露ともに、これまで事実上、「ミサイルが自国に飛んでこない限りは、北朝鮮の現在の行動を容認する」という姿勢を取って来ました(もちろん、行き過ぎた場合には国連安保理制裁を骨抜きにしたうえで賛同していますが)。
また、国連安保理による北朝鮮制裁決議(とくにUNSCR2375やUNSCR2397)も、よく読むと、わりと穴だらけです。
たとえば2017年9月11日付の『国連安保理決議第2375号』(UNSCR2375)の場合、既存の中朝間の水力発電インフラ事業やロシア原産の石炭輸出を目的とした羅津・ハサン港・鉄道事業については適用対象外です。
また、北朝鮮への原油供給上限や北朝鮮出身労働者の24ヵ月以内国外追放などを盛り込んだ2017年12月22日の『国連安保理決議第2397号』(UNSCR2397)でも、引き続き該当するロシアの事業は例外とされています。
実際、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今から約3年前、中国への売電事業がじつは北朝鮮の大きな収入源となっていると報じています。
北朝鮮の巨大な収入源、中国への売電
―――2018 年 3 月 19 日 10:31 JST付 WSJ日本版より
国連安保理決議に基づく北朝鮮出身労働者の追放から1年以上が経過するにも関わらず、北朝鮮経済がいまだに崩壊する兆しがないのも、結局のところ、中露両国が合法的に北朝鮮を支援する手段が残っているからでしょう。
これに加え、制裁決議に違反した違法な取引も後を絶たないようです。
たとえば、『北朝鮮への制裁は不十分:二次的制裁、瀬取監視強化を』では、「北朝鮮が瀬取りなどの違法な取引を通じて、石油などのさまざまな物資を違法に入手している」、「北朝鮮がハッキング活動等を通じて3億ドル分の暗号資産を奪った」、などの話題を取り上げました。
また、『アジアプレス・ネットワーク』というウェブサイトの『<北朝鮮>市場最新物価情報』というページをチェックしてみても、北朝鮮の物価は短期的には乱高下しているにせよ、中・長期的に見てみると、不思議なほどに安定していることがわかります。
北朝鮮の核問題は本来なら中露も責任を持つべき
もっとも、北朝鮮が核・ミサイルなどの開発を続けていることは、決して中国、ロシアにとっても好ましいことではありません。
たとえば、北朝鮮が核兵器の小型化に成功し、それらの技術がイランやタリバン関係者、ISIL関係者らの手に渡った場合、それは米国を筆頭とする西側諸国にとっては大きな脅威ですが、それだけではありません。
中国もロシアも国内の少数民族を弾圧するなど、何かと敵が多い国でもあります。このため、いずれ小型核がモスクワのクレムリンや北京の天安門広場などで炸裂しないという保証はないでしょう。
個人的には、朝鮮半島の処理は米日中露4ヵ国など周辺大国が責任を持って議論しなければならないのではないかと考えているのですが、そのような話し合いの場が設けられる暇もなく、ドナルド・J・トランプ前政権時代から米中対立が激化。
こうした流れがジョー・バイデン政権にも引き継がれており、とくに現在は中露朝が結びついているような状況にあります(『中露朝韓「無法国家クアッド」を「正しく」警戒すべき』等参照)。
このように考えるならば、北朝鮮にとっては、国連安保理経済制裁などを解除させるべく活動する好機、という言い方もできるでしょう。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射
こうしたなか、バイデン政権発足直後からしばらく音沙汰がなかった北朝鮮の瀬戸際外交が、再び始まったのでしょうか。防衛省によると、今朝、「弾道ミサイルの可能性があるもの」が2発、北朝鮮から発射されました。
北朝鮮のミサイル等関連情報
―――2021/03/25付 防衛省HPより
北朝鮮によるミサイル発射に関する総理指示(07:08)
―――2021/03/25付 首相官邸HPより
North Korea Fires Ballistic Missiles for First Time in Nearly a Year
―――米国夏時間2021/03/24(水) 20:32付=日本時間2021/03/25(木) 09:32付 WSJより)
防衛省や首相官邸だと情報が不十分であるため、WSJの報道もあわせて紹介すると、今回の弾道ミサイルについては、日本の領域にも到達せず、また、排他的経済水域(EEZ)外に墜落したと日本政府が発表したそうです。
WSJはこれについて、金正恩(きん・しょうおん)体制が「バイデン政権」に対するフラストレーションを高めていると評しており、米国に対する何らかのメッセージの可能性を伺わせています。
また、(※当ウェブサイトでは取り上げていませんが、)北朝鮮はこれとは別に、先週末にも巡航ミサイルと疑われるものを発射したと米国政府高官が明らかにしていますが、こちらについて米国政府は「安保理制裁決議などに反するものではない」としています。
迅速な日本政府の対応:しかし…
その一方、目立つのは日本政府の動きです。
先ほど紹介したWSJのリンクでも、「日本政府が発表した」と速報されていましたが、日経電子版の次の記事を読むと、日本政府の行動はたしかに迅速です。
北朝鮮、弾道ミサイル2発を発射 日本の排他的水域外に
―――2021年3月25日 10:14付 日本経済新聞電子版より
日経によると、北朝鮮がミサイルを発射したのは本日午前7時過ぎと7時半前で、飛行距離はいずれも450キロ程度だったとのことですが、先ほど紹介した首相官邸の菅総理指示は7時8分付で発せられています。
やはり、菅総理自身が安倍政権下で官房長官を務めていただけあって、危機管理に強い内閣です。
日経はまた、菅総理は発射されたのが「弾道ミサイルだ」と断定し、「国連安全保障理事会の決議に違反する」と指摘したと報じていますが、北朝鮮がミサイルを発射したことで、結果として菅政権の危機管理能力が表に出て来たこともたしかでしょう。
しかも、おりしも菅総理は4月の訪米を控えており、北朝鮮問題での日米連携を強く印象付ける機会でもあります。
ただ、日本政府(とくに首相官邸)からの情報発信については、安倍政権のころと比べると、やや見劣りがします。安倍政権時代であれば、菅義偉官房長官(当時)が臨時で記者会見を開催し、必要に応じて安倍晋三総理自身も会見を行っていたと記憶しているからです。
この点、現時点において首相官邸ホームページを見ると、トップに『北朝鮮によるミサイル発射事案について』との文字列はありますが、リンクが張られておらず、具体的に何が発生したのかよくわからないという代物となってしまっています。
このあたりは改善して欲しい点といえるでしょう。
韓国・米韓同盟に対する揺さぶりも?
それはさておき、今回の北朝鮮によるミサイル発射は、北朝鮮による大量破壊兵器開発問題への注目を高めるだけでなく、韓国、あるいは米韓同盟にとっても揺さぶりとなり得ます。
もちろん、ミサイル発射は日米韓3ヵ国にとっての共通の脅威ではありますが、それと同時に韓国は、北朝鮮の核を「民族の核」と勘違いしているフシもあります。このため、北朝鮮がミサイル発射能力を身に着けることを、韓国がどう考えるかについては、気になる論点でもあるのです。
先ほど紹介したWSJの記事では、今回の北朝鮮によるミサイル発射を巡り、米韓合同軍事演習への抗議という意味合いもあるとの見方を示しているのですが、個人的にはもうひとつ、ロシアの動きとも絡めて気がかりではあります。
このあたりは、本日にも行われるとされる露韓外相会談にも注目してみたいところです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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>露韓外相会談
ロケットエンジン商談の体を為したミサイル開発支援?
とかだとイヤだなぁ。マサカマサカ
そういえば、韓国政府が一方的に破棄宣言しながら失効直前にドタバタで「我々はいつでも破棄できる状態にある」と謎の詭弁を弄して結局継続している日韓GSOMIAは、主に北朝鮮の核・ミサイル関連の情報共有を目的にしている協定ですが、今回の北朝鮮のミサイル発射では機能したのでしょうか?
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
北朝鮮の弾道ミサイル発射が、「危機に際して、(同盟重視をうたう)米バイデン新大統領が同盟国を助けるのかの試金石になる」と考えるのは考えすぎでしょうか。(もちろん、同盟国には、その義務を求めてくるでしょうが)
蛇足ですが、北朝鮮と、その周辺国との違いは(国として)失うものがない国と失うものがある国との違いではないでしょうか。つまり、北朝鮮の金正恩委員長としては、「自分がすべてを失う時は、世界の全員が失うべきだ」と考えているのです。
駄文にて失礼しました。
いつもありがとうございます。
序文の日時に誤植がありましたので、ご一報まで。
3月39日となってますね。
日本人の問題意識に対しては、39(サンキュー)かもですが…。
米韓は、先のミサイル発射の際に、「通常の行動である」とか「制裁対象の弾道ミサイルではない」なんて腑抜けたことを言ってるから、北に舐められてんだよ。
どうせ安保理で問題にしても中露が反対するから、北には全く堪えない。
日米韓防衛会談を前に、日本から「しっかりせいっ!」と尻を蹴り上げたということかな。
震度4、5あたりの地震で驚かない日本人を見て外国人が驚くそうですが、中露韓の人々は北のミサイルで驚かないのでしょうか。日本海向けとはいえ。
日本人も驚いてはいないか……慣れてはいけないブツなんですけどね。
更新ありがとうございます。
北朝鮮がまた、火遊び。米国に一番見て欲しいんだろうが、日本からしたら「ああ、またかい」というのが日本の受け方かな。もちろん核搭載可能短距離ミサイルでしょうが、日本は素早く対応したと思います。
憶測ですが、発射前から動きは判明していたはず。7時過ぎに発射、直後に官邸に連絡、官邸から即HPにUPされています。それが7時8分。やれる事は出来ている。本番前のリハーサルと思って、気合いが入ったでしょう。
北朝鮮の宣伝媒体が「韓国はなぜ傲慢な日本に関係改善を乞うのか」と言ったのが、3月21日。
そして巡航ミサイル2発を射ったのが、同じ21日の早朝です。
米国も日本も、短距離のショボいミサイルだったのでほとんど無反応でしたが。でも、韓国は?休戦中でも北朝鮮のミサイルは脅威でしょうに、スルー?
この時期の短距離ミサイル発射は、南への「春窮の訴え」ですよね。
そして今朝の弾道ミサイル2発は、米国への挑発というか意志表示?
今後の注目点は、北朝鮮がもっと長い射程の弾道ミサイルを射てるかどうか?でしょうか。
果たしてそんな余力が残っているかどうか?
先日のキンぺーさんとの口頭親書で、ミサイル作戦へのGOサイン(もろもろの支援の確約)もらったかな?
ちかのさま
元歯医者さんの言う通りで、アメリカが怒らないラインを確認しているんじゃないかと思います。
良くある朝鮮人のやり方(慰安婦判決や徴用工の差し押さえ)で、怒るギリギリまではセーフ。
また、リスカですか
奴等は変わりません、核も手放しません
どうやら韓国は、北朝鮮のミサイル発射よりも、各国が「日本海」に向けて発射したと言った事を問題視するようです。
だんな様
「東海(トンへ)」へのこだわり、凄いですね。
今、そこじゃない事態なのに、1番の関心事が、ソレ。w
だんな様
時事通信によると、
インド太平洋軍報道官のマイク・カフカ大佐は声明で「米国は北朝鮮による今朝の東海へのミサイル発射を認識している」と説明した、とのことです。
アメリカが韓国に忖度したということでしょうか?
こういったことが続けば、もはや日米同盟は日本人の心に響かず、自主防衛路線に走るかもしれませんね(その方が良いかもしれませんが)。
日本は米軍の支援が無い場合の対中国戦略を準備しておく必要があります。
FOIPにおけるクアッドの拡大や対中国軍に効果的な兵器の充実など出来る事が沢山あります。
ASEAN諸国に対しても中国の覇権主義を許さないという日本の決意を見せないと益々状況は混沌とするのではないでしょうか?
アメリカもですが日本は腹を括れるのでしょうか?
菅さん、茂木さんは人柄は良さそうですがどうも決意が感じられません。
このままでは中国に付け込まれそうです。
はるちゃんさま
>アメリカもですが日本は腹を括れるのでしょうか?
ここがポイントですね。
結局、日米同盟を基軸としつつも、将来の南北統一の可能性も視野に入れ、聖域なき自主防衛の強化の議論が必要に思います(核保有の議論も、今持つべきとは思いませんが)。
なお、インド太平洋軍は25日「日本海または朝鮮半島東岸沖と表記すべきだった」とする訂正文を発表した、とのことです。
取りあえず、ほっとしました。
米軍、有難う!
本日のプライムニュースで、「ヨーロッパの国は、次の世界的な紛争地域はインド太平洋地域と見ている。その時に存在感を示せるようにするために、(実地で体験を得る目的で)英仏独などは艦艇を派遣してくる」との発言がありました。(もちろん、これが正しいか、もしかしたら実際には無駄になるかもしれませんが)それもあり得るのではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。