最大の景気対策は消費税法廃止
消費税法には様々な欠陥がある―。これは私の持論です。本日は、「益税問題」「消費押し下げ効果」などの基本に触れるとともに、「最大の景気対策は消費税法の廃止である」という点について説明します。
※お詫び:エラーにより評論記事の公表が大幅に遅れました。ここに深く陳謝いたします。
目次
経験してわかる、消費税法の欠陥
初年度決算で消費税と向き合う
先月、私は生まれて初めて、「法人税の申告書」を書いて、税務署に提出して来ました。といっても、今期は設立初年度であるため、赤字決算になってしまったので、法人都民税の均等割(当社の場合は64,100円)のみを納めて終了、です。
ただ、思っていたよりも「赤字幅」は少なくて済みました。その大きな理由は、「消費税法」にあります。私の会社のような「中小零細業者」は、お客様から「預かった」はずの消費税を、納税する必要がないからです。
国税庁のウェブサイトを見てみるとわかりますが、売上高が1000万円以下の事業者は、「納税の義務が免除」されます。これは驚きですね。街の飲食店で食事をしても、近所の文房具屋で物を買っても、たいていの場合、消費税が請求されると思います。しかし、その消費税を受け取っている店の側では、年間売上高が1000万円を超えない場合には、お客から「預かった」はずの消費税を、自分の懐に納めてしまうのです。
また、売上高が1000万円を超えていたとしても、5000万円以下の場合は、「簡易課税の特例」を受けることができます。これは、「みなし仕入率」を適用し、業種に応じて決められた率を掛けた金額を納めないでも良い、という仕組みです。
つまり、消費税法は中小企業にとって、事実上の「益税」となっているのです。
「仕入税額控除」とは?
ここで、「仕入税額控除」について、簡単に説明しておきましょう。
例えば、ある企業のある事業年度の損益計算書が次の通りだったとします。
項目 | 金額 |
---|---|
売上高 | 10,800 |
売上原価・販管費 | 9,720 |
営業利益 | 1,080 |
このとき、この企業の「売上高」は10,800ですが、消費税として800を納税するわけではありません。「売上原価販管費」が9,720であり、厳密に言えばこの「売上原価・販管費」の中に、企業が支払った消費税額(720)が含まれているからです。
このため、消費税法上は、原則として売上高(10,800)から売上原価・販管費(9,720)を引いた「営業利益」(1,080)に対して含まれる消費税額(80)のみを納めればよい、という規定となっています。
ただし、消費税法の計算は非常に複雑で、たとえば、売上原価・販管費の中に「人件費」や「公租公課」などの「非課税項目」が含まれている場合、「売上原価・販管費」の項目の中で、企業が実際に支払った消費税額が「720」よりも少なくなるはずです。そこで、実際の申告書上は、
「課税売上-課税仕入」
という計算をさせることで、消費税の納税額を確定しなければなりません。
そして、私の理解では、「納税義務の免除」、「簡易課税の特例」は、この計算の負担が非常に重いため、それを「免除する」という趣旨にあるはずです。
サービス業は50%が益税に!
消費税法上、売上高が5000万円以下の会社であれば、便宜上、次の「みなし仕入率」を使って納税することが認められています。
区分 | 業種 | みなし仕入率 |
---|---|---|
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業 | 80% |
第三種事業 | 製造業等 | 70% |
第四種事業 | その他の事業 | 60% |
第五種事業 | サービス業等 | 50% |
第六種事業 | 不動産業 | 40% |
そして、私の会社は「サービス業」に区分されます。私の会社が提供している「売り物」は、私自身の知識・経験に基づくアドバイザリーであり、「売上原価」という概念が存在しません。そして、私の会社で発生する経費の大部分は、私自身に対する給与・社会保険料などの「人件費」(つまり非課税取引)です。
ということは、消費税法の本来の規定上、お客様からの報酬に含まれている消費税額については、「仕入税額控除」ができず、そのほぼ全額を税務署に納めていなければならないはずです。しかし、現実の消費税法は、そうなっていません。
いわゆる「益税」問題とは、売上高が1000万円以下であれば、預かった消費税の全額がその業者の利益になってしまう、というものです。また、売上高が1000万円を超えても、5000万円までであれば、消費税の「みなし仕入率」は50%に過ぎないため、たとえば
- 売上高が4200万円
だったとすれば、納めるべき消費税額は200万円ではなく、そのさらに半額の100万円で良いのです。これほど不公正な税制、他にあるのでしょうか?
事業者の立場から「消費増税は大歓迎!」
もちろん、飲食店や小売店などのように、「売上高に対して利益の割合が小さい業種」などの場合、消費税の負担はそれなりに大きなものとなります。ただ、私の営むサービス業の場合、売上高がほぼそのまま「(人件費控除前の)利益」と等しくなりますので、「50%のみなし仕入率」とは、「預かった消費税の半額しか国に納める必要がない」という意味です。
例えば、消費税抜きの年間売上高が2000万円だったと仮定します。この場合、消費税率と「益税」の額は、次の通り、税率が上がれば上がるほど「美味しく」なります。
消費税額 | 益税額 | |
---|---|---|
税率0%のとき | 0 | 0 |
税率3%のとき | 60万円 | 30万円 |
税率5%のとき | 100万円 | 50万円 |
税率8%のとき | 160万円 | 80万円 |
税率10%のとき | 200万円 | 100万円 |
税率20%のとき | 400万円 | 200万円 |
仮に、私の会社の年間売上高が2000万円であれば、サービス業であり続ける限り、税率が8%ならば80万円、税率が10%に上がれば100万円(!)もの「益税」が入り続けるのです。
自分自身で会社を経営してみると分かるのですが、年間売上高が5000万円を超えないように注意しさえすれば、消費税額を自分自身の利益にすることができてしまうのです。これは、私のような中小零細事業者にとっては、非常に助かる(?)ものです。一種の国からの「補助金」だと言い換えても良いでしょう。
消費税率は20%に引き上げて欲しい(笑)
いかがでしょうか?
この「免税制度」「簡易課税制度」があれば、消費税率が上がれば上がるほど、中小事業者にとっては「益税」が発生してしまうのです(ただし業種にもよりますが…)。そして、「消費税法上のサービス業」を営む当社にとっては、消費税率が20%とか30%とかになれば、その分、「益税」額が増えてしまいます。
少なくとも事業主の立場からすれば、消費税率が引き上げられれば益税幅も増えるので、大歓迎です。もちろん、あくまでも「事業主の立場からすれば」、ですが。財務省の「増税至上主義」の口車に乗せられている在野の一部エコノミストが「消費増税は必要だ」と唱えている大きな理由は、こうしたご本人の「益税」という利益に直結するからではないかと考えるのは、私だけでしょうか?
消費減税も「財政出動」だ
消費税の「非線形性」
もちろん、
「消費税率が上昇すれば益税が増えるので、増税を希望します」
というのは、私の冗談(それもかなり性質の悪い冗談)です。ただ、消費税率を引き上げれば、国庫に入る税額が比例的に増える、という財務省の考え方には、大きな問題があると言わざるを得ません。
一国の全体の「課税売上高-課税仕入高(=課税標準)」が100兆円だったとします。ここで二つの疑問が発生します。
一つ目は、消費税の趣旨からすれば、その8%、つまり8兆円の税収が発生するはずですが、これは正しいでしょうか?そして、この時に税率を10%に引き上げれば、消費税の税収は10兆円になるのでしょうか?
国全体の課税標準 | 税率 | 税収 |
---|---|---|
100兆円 | 8% | 8兆円 |
10%? | 10兆円? |
実は、この計算式、大きく間違っています。
まず、国全体の課税標準が100兆円だったとして、実際に国庫に入る金額は8兆円ではありません。良いところ5~6兆円程度でしょう。なぜなら、上記で示した「益税問題」があるからです。
よく赤旗(=日本共産党の機関紙)あたりが「消費税法は大企業を利する税制だ」などとトンチンカンな社説を掲げています。消費税が不公正な税制であることは私も同意しますが、現実には日本共産党の主張と真逆で、消費税法は中小企業を利する税制です。
そして、もう一つの問題は、「消費税率を引き上げたら引き上げた分だけ税収が増える」と考えるのが間違いだ、という点です。
財務省の過去のデータによれば、1996年から1997年の増税(3%⇒4%)のときには、税率の増加率は33.3%でしたが、税収増は57.5%に留まりました。しかし、2013年から2014年の増税(4%⇒6.3%)のときには、税率の増加率は57.5%でしたが、税収増はそれを上回る70.0%に達しました(ただし、税率は地方消費税を除外した国税部分のみで出しています)。
年度 | 税収の変化 | 税収増 |
---|---|---|
1996年⇒1997年 | 3.18兆円⇒5.01兆円 | 57.5%増加 |
2013年⇒2014年 | 5.08兆円⇒8.64兆円 | 70.0%増加 |
消費税率が上昇すれば消費が低迷し、消費税収も落ち込むというのが私自身の仮説ですが、現実のデータは、この私自身の仮説を裏付けるものとなっていません。過去2回の消費税率引き上げの際には、いずれも税率の引き上げを上回る税収増がもたらされているからです。
ただ、消費税の増税のタイミングは、いずれも景気回復期にあったため、消費税率引き上げによる消費への打撃を、経済成長の勢いが継続していた分が勝って、税収増となったという可能性はあると見ています。
いちど消費税法を廃止してみては?
いずれにせよ、消費税は、日常生活のすべてに税を課すというものであり、税率が引き上げられれば、それだけ消費に打撃が生じることは間違いありません。
この点、財務省は「日本の財政は危機的状況である」などと主張する「増税プロパガンダ」を垂れ流していますが、現実には『日本国債がデフォルトする日は絶対に来ない』の中で主張したとおり、日本には「財政再建」など必要ありません。
それどころか、経済が回復すれば、法人税や所得税などの税収が増えてきます。実は、2014年の消費増税では、確かに消費税の税収は増えました(年間約3~4兆円程度)が、実は法人税と所得税の合計税収も増えており(合計して約3~4兆円程度)、消費増税がなくても税収増は十分に賄えたのではないかと思います。
現在の消費税の税収は年間10兆円弱ですが、「年間10兆円の財政支出拡大」を行う位なら、消費税法自体を廃止してしまっても良いかもしれません。そして、それが実は、最大の景気対策でもあります。
財務省/外務省不要論
国民から選挙で選ばれたわけでもないくせに、国民生活を破壊することを厭わず、ひたすら「増税プロパガンダ」を垂れ流す財務省は、いまや日本の「ガン」のようなものです。私の目から見て、外務省と並んで最も有害で、最も不要な官庁は、財務省です。
安倍政権が現在、財務省と水面下で随分と綱引きをしているようですが、財務省の掲げる「増税論」の誤りについては、私も「在野の社会人評論家」として、指摘し続けたいと考えています。
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