株式会社電通グループの収益は前年比1割減か
株式会社電通グループが先日、2020年12月期決算(連結、IFRS)の予測を公表しました。これによると売上が前年比で10%程度のマイナスとなるようです。武漢コロナ禍で民放各局のスポット収入が軒並み3割前後の減収となっていたことを思い起こすと、意外と減収幅は大きくない、という気もしますね。
正直、武漢コロナ禍が始まって以来、マスメディア業界からは良い話は聞こえて来ません。
今年8月の『在京地上波テレビ各局、軒並みスポットCMが3割減』などでも触れたとおり、地上波テレビ各社の決算に関しても「新型コロナウィルスのせいで第1四半期決算における広告収入が激減した」、という話題がありました。
また、先日の『朝日新聞の部数「だけが」減少しているわけではない』や『朝日新聞社「中間純損失400億円超」の衝撃』でも報告したとおり、最大手の朝日新聞ですら苦戦するなど、新聞業界からも決して景気の良い話は聞こえて来ません。
ただし、マスメディア各社の決算を冷静に分析していくと、新聞業界よりもテレビ業界の方が苦戦しているように思えます。その理由は収益構造の違いにあります。
一般的に新聞社の場合は広告費だけでなく、新聞の購読料収入が得られますが、テレビ局の場合は広告収入の比率が非常に高く、それだけに企業が武漢コロナ禍で広告費を絞ったことの影響は大きく出ているのではないかと推察されます。
ただ、冷静に考えれば、マスメディア各社が苦戦している原因は、果たしてコロナ禍だけなのかどうかは疑問です。
『埼玉県民様から:「日本の広告費2019」を読む』などでも述べたとおり、コロナ禍が発生する以前の段階で、マスコミ4媒体(新聞、テレビ、ラジオ、雑誌)への広告費が伸び悩むなか、すでにインターネット広告費がテレビ広告費を抜いています。
仮にコロナ禍が発生していなかったとしても、このままのペースで推移すれば、ほんの数年でインターネット広告費がマスコミ4媒体広告費を追い抜くのは確実でしょう。ましてやコロナ禍のさなか、とくにマスコミ4媒体の広告がどう推移しているかについては興味深いところです。
こうしたなか、株式会社電通グループは7日、2020年通期の業績予測を発表しています。
2020年12⽉期通期業績予想、ならびに海外事業における事業構造改⾰の実施および費⽤計上の⾒込みに関するお知らせ【※PDFファイル】
―――2020/12/07付 株式会社電通グループHPより
リンク先PDFファイルの1ページ目に記載されている「2020年通期連結業績予測」と2019年実績値、その増減と増減率を計算すると、図表のとおりです。
図表 株式会社電通グループ・2019年業績と2020年通期連結業績予測(IFRS)
項目 | 2019年→2020年 | 増減・増減率 |
---|---|---|
収益 | 1兆0479億円→9287億円 | ▲1192億円(▲11.37%) |
売上総利益 | 9394億円→8309億円 | ▲1085億円(▲11.55%) |
調整後営業利益 | 1408億円→1113億円 | ▲294億円(▲20.90%) |
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益 | 761億円→631億円 | ▲130億円(▲17.10%) |
営業利益 | ▲34億円→▲114億円 | ▲80億円(―) |
親会社の所有者に帰属する当期利益 | ▲809億円→▲237億円 | +572億円(―) |
(【図表】株式会社電通グループ報道発表より著者作成。なお、「調整後営業利益」は「営業利益から買収⾏為に関連する損益および⼀時的要因を排除した恒常的な事業の業績を測る利益指標」、「親会社の所有者に帰属する調整後当期利益」とは「当期利益(親会社所有者帰属分)から営業利益に係る調整項⽬、事業構造改⾰費⽤、関連会社株式売却損益、アーンアウト債務・買収関連プットオプション再評価損益、これらに係る税⾦相当・⾮⽀配持分損益相当などを排除した、親会社所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標」と記載されている)
いかがでしょうか。
株式会社電通グループはIFRSを採用しているため、日本基準と比べると見慣れない項目がいくつかありますが、おそらく「収益」が「売上高」に相当するのでしょう。これによると、収益、売上総利益はともに前年比10%少々減少し、「調整後営業利益」に関しては20%以上落ち込むことが予想されています。
これを多いと見るか、少ないと見るか。
連結ベース収益が1兆円を割り込むという点に加え、収益と売上総利益がほぼパラレルに1000億円ほど減少し、調整後営業利益も300億円ほど減少しているというのは興味深い現象です。
民放各局がコロナ禍の直後、スポットCMを軒並み30%前後減らしていたことを思い起こすと、その「広告の元締め」であるはずの電通グループの業績は思ったほど悪くはない、という言い方もできるのかもしれません。
もっとも、正直、セグメント情報も開示されていないため、これだけでは何とも言い様がありません。
いずれにせよ、インターネット広告費やマスメディアの収益構造などのテーマについては、引き続き関心を払う価値はありそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>セグメント情報も開示されていないため、これだけでは何とも言い様がありません
『電通が6000⼈弱削減 海外事業の12.5%』という記事が目に留まっています。12/7 11:20 日経有料記事です。経営分析の参考になるのでしたら。
>民放各局がコロナ禍の直後、スポットCMを軒並み30%前後減らしていたことを思い起こすと、その「広告の元締め」であるはずの電通グループの業績は思ったほど悪くはない、という言い方もできるのかもしれません。
減った分の負担を末端に押しつけているんですかねえ。
日産の奇跡の復活は、徹底した下請けイジメで達成されたのを思い出します。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(なにしろ、朝日新聞と違って自分は間違う存在であると自覚しているので)
(朝日新聞が典型かもしれませんが)日本マスゴミ村は、社会とずれてきていると思います。本日の朝日新聞の記者が、「コロナ対策と経済政策のどちらも大切だが、新型コロナ規制を強化した方が、収束した時の景気回復が早くなる」と書いてましたが、(菅義偉総理の対策が効果があるかは別にして)「明日の飯の心配をしている人に、一年後のご馳走の話をしても意味がない」のではないでしょうか。(だとすれば、テレビ局の上にある電通は、ますます、社会からずれているのかもしれません)
駄文にて失礼しました。
国内メディア事情だけみていても電通Gの決算は理解できないだろう。
イギリスに巨大連結対象企業があるのを忘れてはいないか。
リストラするみたいです。
おっしゃる通り電通って収益の半分以上は海外なんですよね。
日本はデジタル化の波がアメリカ、イギリスより5年くらい遅れているのと、そのために出遅れた電通がM&Aした会社が収益あげていくことができるかの瀬戸際かと思います。海外はリストラしやすいし。
広告業界にも経理関係も素人の人間の勝手な推測ですが、電通の減収が少ないのは、広告を作るのが仕事でそれを流す媒体はTVでもネットでもいいからじゃないでしょうか。
大手広告代理店勤務です。
作るのもそうですが戦略も立ててます。
実際には、企業の宣伝部の3カ年計画立てたり、出向したりしてます。コンサルのような仕事もしています。
インターネット広告代理店は、子会社に持ってますし。
減収はありますがその分他に振り分けているのが実際です。
更新ありがとうございます。
これだけの指標ではなんとも言えないですが、かつて2強と言われた博報堂もパッとしませんね。コチラは非常場なので正確な数字は出ていません。しかし大広、読売宣伝などを傘下に置いてますが、トータルの数字はまだ電通の方がマシなようです(いわゆる売上高)。
20年以上前までなら肩で風を切ってたマスコミ様です(小笑)。販促費や雑費名目でバンバン接待をし、また接待を受けたでしょう。今年の冬は尚更冷たい風が吹いているとほくそ笑んでます。ボーナスあるんか?(爆笑)
いくら減収で業績に連動するとしても30歳超えれば100万くらいはもらえるんじゃないですかね。
前に赤字だした時は役員がボーナス無しかな。
20年前と比べると年収1000万超えるのがちょっと遅いのと人、部署により差がついたことですかね。
博報堂は年俸制の人が多いから一概に言えませんが、実践給は減るかもしれませんね。
コメント失礼します。
広告収入が減っていると。検証し易い電脳と違う上にデフレ+武漢肺炎でお金無い人ばかりだからそりゃ減るでしょうね。
いっそ広告代理店やマスゴミが自分の利益の為にこのサイトとか参考にして、
・日本国の外国からの借金はとても少ない
・貯まった金融資産は2000兆円程
・デフレ(物多くお金少ない)なので減税とバラマキで皆豊かになろう
・ハイパーインフレ(年間物価上昇率1万3千%以上。100円の物が1年で130万円に)になる前に増税と緊縮で調整しましょう
とか宣伝すれば、又黒字になるのでは?でもサヨクさんの親玉財務省の手下だからやらないか。折角の特権をもっと多数派の為に使えば、老舗として多数派の支持も得られたでしょうに。