TVのレベルは低下しているのか

「優しくて穏やかな日本」は、中道改革連合、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組。これに対して「強くてこわい日本」は、自由民主党、日本維新の会、参政党。こんな内容を放送してしまい、テレビ局が謝罪に追い込まれたそうです。ただ、これについてはネットで「たぶんこれに悪意はない」、「単純に優秀な人がテレビ業界からいなくなっている」、などとする指摘も出て来たようです。

新年早々…

最初にちょっとだけ余談です。今年は、新年早々にさまざまな「事件」が発生している気がします。

その「事件」の最たるものといえば、高市早苗総理大臣が衆院を解散したことといえるかもしれませんが、それだけではありません。当ウェブサイト的にとくに印象深い出来事があるとしたら、そのひとつが「社説取消」です。

ネットで流行っていない用語を批判するのは正しいのか』で取り上げたとおり、東京新聞が新春の社説で、「『中国なにするものぞ』『進め一億火の玉だ』『日本国民よ特攻隊になれ』。ネット上には、威勢のいい言葉があふれています」などと論じました。

しかし、この社説については結局、取り消されてしまいました(『東京新聞が新年の社説記事を削除』参照)。

新聞紙にすでに印刷されてしまっている社説をどうやって「削除」するのかは知りませんが(まさか、配達した1月1日付の東京新聞を、全家庭を回って1つずつ回収するのでしょうか?)、いずれにせよ、社説(しかも新春の社説)を新聞社が取り消すというのは、なんとも異例です。

これも、新聞、テレビといった伝統的なメディアがネット世論を無視できなくなったという証拠ではないでしょうか。

事実と意見を混ぜるな

事実と意見はハッキリ分ける

当ウェブサイトは「政治経済評論」と名乗っている通り、基本的には政治(国内政治や外交)、経済(経済全般や金融)などの話題を日々選び、「読んでくださった方がの知的好奇心を刺激する」という観点から議論することを大きな目的としています。

最近だと、ややもすれば「中国専門サイト」、「レアアース専門サイト」、あるいは「社保下げ専門サイト」などと見られているかもしれませんが(実際、税・社会保険料問題については、実務的にも専門分野だったりします)、いちおう「原点」は「知的好奇心の刺激」を目的とした政治経済評論サイト、ということです。

そして、当ウェブサイトは2016年7月に発足しましたが、それ以来、基本的には「とある点」に注意してきたつもりです。

それは、「客観的に確認できる事実」と、その事実関係に対する「主観的な分析/意見/解釈/感想」については、はっきりと分ける、ということです。

事実と意見を混ぜた文章とは?

このうち「客観的事実」とは「誰がどう報じてもほぼ同じ内容になる情報」であり、「主観的意見」とは「報じる人・論じる人によって全く異なる内容となる可能性がある情報」のことです。

たとえば次の(A)のような文章があったとしましょう。

(A)「OO党のXX代表は昨日夕方のぶらさがり取材で記者団から新党『中核同盟』との連立政権の可能性について尋ねられたところ、『現時点ではまったく考えていない』としつつ、将来についても『まずは新党を見極めたうえで考える』と述べた」(※文章に出てくる党名等はすべてフィクションです)。

これは、基本的には「客観的事実」です。

もちろん、「~と述べました」、など、文体(断定調か、ですます調か)といった違いや、「昨日夕方」の部分を正確な年月日・時刻で表現するかどうか、といった些末(さまつ)な差異は生じる可能性がありますが、こうした点を除けば、どのメディアもこの「OO党のXX代表」の発言についてはほぼ同じように報じるでしょう。

しかし、上記の(A)に、こんな文章が続いていたら、どうでしょうか?

(B)「XX代表は『中核同盟』との連立を否定せず、『中核同盟』との将来的な連立政権形成に含みを持たせた格好だ」。

(C)「XX代表は『中核同盟』との連立については明言を避けるなど、『中核同盟』との連立には後ろ向きな姿勢を示した格好だ」。

(B)と(C)の内容が真逆であることに注意して下さい。

たぶん、当ウェブサイトの常連になってくださるようなレベルの読者の方であれば、文章(A)からは、文章(B)も(C)も理論的に当然に導き出せるというものではないだろう、とお気づきかとは思います(「座りの良さ」でいえば、どちらかといえばCの方かもしれませんが)。

なぜメディアは両者を混ぜるのか

じつは、(B)も(C)も、この文章を書いた記者の勝手な私見であり、「OO党のXX代表」が直接述べた内容ではない、という共通点があるのです(※ちなみにこの「A⇒B」という文章の実例は、先日の『事実と意見ごちゃまぜ記事に政治家が即時反論する時代』でも紹介したばかりです)。

要するに、日本の新聞やテレビ(=オールドメディア)には、本来ならば事実を事実としてそのまま伝えるべき局面で、この手の「記者の主観」(というか「お気持ち」、でしょうか?)がいきなり飛び出してくる、という特徴があるのです。

なにがなんだか、よくわかりません。

ただ、著者も当ウェブサイトを10年近く運営してきたわけですが、そのうえであえて申し上げるならば、「日本のオールドメディアにとっては、事実と意見を分けるのが苦手らしい」、という現象は、かなり多くの人がすでに気付き始めているようです。

実際のところ、XなどのSNS空間を覗いてみても、最近だとオールドメディアのポストにコミュニティノートが着くことも非常に増えていますし、昨年はメディアの取材班のアカウントが一時凍結されるなどの珍事も発生していたりします(最近だと復活したようですが…)。

『Yahoo!ニュース』の取り組み

さらには、ちょっと気になる動きも出てきています。

昨年秋の『メディア排除は経済社会の意思か』でも取り上げた、最大手のポータルサイトのひとつである『Yahoo!ニュース』の方針です。

ガイドライン遵守の改めてのお願いと、ユーザー体験を損なうコンテンツへの対応について

―――2025.11.06付 Yahoo!ニュース『newsHACK』より

『news HACK』によると、『Yahoo!ニュース』はかねてより「LINEヤフー 記事入稿ガイドライン」を策定し、これの遵守をコンテンツパートナーに要求しているそうですが、同日、改めてその遵守を依頼するメールをコンテンツパートナーに送付したとのことです。

具体的には「ユーザー体験を損なうコンテンツ」として、「多くのユーザーが不満・不快に感じる記事もあり、これらに対してはガイドラインを厳格に適用していく必要が生じています」、などと指摘。

そのうえで、こんな趣旨のことが記載されているのです。

  • 見出しと本文に乖離がある(いわゆる「釣り見出し」)記事はガイドライン違反となる
  • 一見した限りでは違反とは言い切れないが、過度に強い表現を盛り込んだ見出しをつけているようなケースであっても、実際にユーザーからフィードバックが多く集まっている場合は、それらを重視して対応する
  • そのような記事を繰り返し配信するパートナーは、当該媒体の記事すべてについて、12月以降に「タイムラインでの掲出量を一定期間減らす措置」を講じる

これは、いったいどういう趣旨でしょうか。

『Yahoo!ニュース』によると、「一定期間のユーザーフィードバック件数と内容が基準を超えた場合に、当該媒体のタイムラインでの掲出量を減少させる措置」が取られる記事として、次のようなものがあるのだそうです。

  • 一部発言の切り取りで、関係のないものへの関与を匂わせたり、あたかも芸能人等がネガティブな物言いをしたかのように誤読させたりするもの
  • SNS等一部の声を切り取るなどして構成した記事で、政治家や芸能人などの尊厳、名誉を傷つける恐れのあるもの
  • 主にスポーツなど結果を伴うもので、記事内容が完結していないものや結果の間違い、結果が判明していないのにすでに判明したかのように誤読させるもの

『Yahoo!ニュース』によれば、この措置は2025年12月から発動するとのことでしたので、おそらく現在、すでに適用されているのでしょう。いわば、オールドメディアとニューズ・ポータルサイトの力関係が完全に逆転したという象徴のような記事です。

「こわい日本」騒動とテレビ業界

「こわい日本」でテレビ局が炎上→謝罪

ただ、『Yahoo!ニュース』のこうしたガイドラインにも関わらず、非常に残念なことに、オールドメディア各社が配信する情報などを見ていると、やはり首をかしげざるを得ないようなものが目につくこともあります。

その事例のひとつがあるとしたら、これかもしれません。

「政党分類」で大炎上のMBS番組が再謝罪 釈明も「こわい日本」は「周辺諸国から見て手強いという意味」

―――2026/01/23 17:10付 Yahoo!ニュースより【ENCOUNT配信】

『ENCOUNT』というサイトが配信およびXなどの騒動を要約すると、大阪のテレビ局「MBS」(毎日放送テレビ)が22日、ジャーナリスト・武田一顕氏の考えをもとに、有権者の判断軸として各政党を色分けしたところ、ネットで「炎上」。番組が23日に放送内容の一部を訂正し再度謝罪したのだそうです。

これについてはネットをやっている人ならば見おぼえがあるかもしれませんが、各政党を次のように色分けしたフリップを放送した、というものです。

  • 「優しくて穏やかな日本」…中道改革連合、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組
  • 「強くてこわい日本」…自由民主党、日本維新の会、参政党

さすがにその釈明は無理がある

これについてご本人は、「『こわい』という言葉は『国民にとって脅威になる』という意味ではない」などとしたうえで、「周辺諸国、とりわけ軍備を拡大している中国やロシア、北朝鮮などから見て、『手ごわく、簡単には侮れない日本を志向している』という意味で用いた表現」だと釈明したそうです。

ただ、ネットで指摘されているフリップを確認すると、上部に、「有権者の判断軸は?」とあります。

したがって、このフリップは「有権者から見て各政党がどういう方向を目指しているかを分類する」という意図で放送されたことは明らかであり、MBSが放送した釈明内容にも、解釈として、少々の無理があります。

テレビ業界は負のスパイラルに入っているのか

ただ、それ以上に気になるのが、こんな指摘かもしれません。

幻冬舎の編集者で幻夏舎の社長を務める箕輪厚介氏が23日、このMBSの放送内容を巡って自身のXに、「悪意がない」、「制作者が忙しいバカだった」と述べたのです。そのうえで、「メディアが儲からなすぎて」、「忙しいバカしかいない」から、「今後も(同様の)ミスが起こる」と予言しています。

ちょっと表現は過激ですが、このポストはネット上でかなりの反響を呼んでいるようであり、とりわけこんなポストが目につきます。

こちらのポストは箕輪氏のポストに重ねるかたちで、映像ディレクターの井上大輔氏が24日に投稿したものです。

井上氏は株式会社TBSビジョン、株式会社テレビ朝日、NHKを経て起業したという経歴の持ち主ですが、そんな井上氏は箕輪氏のポストにあった「悪意はない」を「リアル」とたうえで、「問題は、悪意がないにも関わらず、こんなミスをするほど、制作者の質が落ちていること」と指摘するのです。

井上氏が指摘する「負の連鎖」とは、こうです。

  • 世間から信用を失う
  • 優秀な人が抜ける
  • メディア自体に魅力がなくなる
  • 優秀な人が入ってこない
  • コンテンツの質が落ちる
  • 世間から信用を失う

…。

クリエイター離れがここに来て深刻化か

これ、個人的にはずいぶんと感慨深い指摘でもあります。

じつは、当ウェブサイトでは6年前の『テレビの三重苦:視聴者、広告主、クリエイター離れ』で、テレビ業界からクリエイターも逃げ出し始めると「予言」したのですが、業界により近いところでテレビを眺めて来た人たちから似たような指摘が出てきたことに、個人的には驚いている次第です。

そして、あくまでも一般論ではありますが、いわゆる「負の連鎖」とは、ダメになり始めた業界では頻繁に見かけるものでもあります。

オールドメディア業界がなぜ「ダメになり始めた」のかといえば、そこには複合的なさまざまな理由が考えられますが、著者が勝手に考える理由は「業界自体、今までがうまく行きすぎていて、努力を忘れてしまった」、というものです。

テレビ業界や新聞業界などの例でいえば、大して取材していなくても、今までであれば自分たちが作った映像コンテンツ、新聞記事などは、高い値段で売れていました。情報の入手手段が限られていて、日常的に話題を手に入れる手段がテレビや新聞くらいしかなかった時代、人々がこぞって新聞やテレビを求めたからです。

しかし、インターネットの出現によってこの独占構造が崩れたうえ、人々がネットを知ったことで、新聞、テレビの情報のレベルの低さがバレ始めてしまったのでしょう。

当然、チャンスに敏感なクリエイター、優秀なクリエイターらは、VOD(ビデオ・オンデマンド)各社に転職したり、自身でYouTubeにチャンネルを開設したり、会社を起業したりして、どんどんと業界から脱出し始めているのではないでしょうか。

案外SNS層が伸びるかも?

このように考えると、ファクトチェックすらおざなりな、リスク感覚のない人たちしかテレビ業界に残っていない、といった指摘は、なかなかに気になるところでもあるのです。

あくまでも一般論ですが、どんな業界でも、「衰退」が誰の目にも明らかになったらもう手遅れです。そのまま最盛期の状況を回復することができず、衰退していくことが多いようです(ただし、メディア業界は過去の剰余金の蓄積があるため、しばらくは生き延びて行けるのかもしれませんが…)。

ただ、冒頭でも取り上げた新聞社の事例でもわかるとおり、もはや、SNSの社会的影響力は新聞、テレビといったレガシーメディア(オールドメディア)のそれを完全に上回っていると考えるのが自然でしょう。

問題は、SNSが現実の投票行動にどこまで影響を与えるかが未知数である、という点です。

SNSで「バズ」を多く獲得した政党が躍進するのか、それとも依然、オールドメディアを味方につけた政党がある程度の票を得て国会で発言力を維持するのかは、見えません。

いずれにせよ、今回の衆院選も、隠れたテーマは「SNSで支持を伸ばす政党」対「テレビが強く推す政党」の戦いだというのが著者自身の現時点の見解です。

世の中の選挙アナリストなどの予想に反し、意外と前者が大躍進する―――、といった可能性は、意外と低くないのかもしれない、などと思う次第です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. KN より:

    共産が優しくて穏やか??
    もはやバックの正体を隠す気もないらしい。

  2. はにわファクトリー より:

    セシウムさん事件再発。
    放送局の中に組織破壊者が混じっていて、ミスを装ってサボテージをしている。その正体は組織に対して不満を抱いている人物たちである。
    不満者同士は呼応連携し合い、外部に機密を漏らすことで外部から庇護を受けている。
    起きていることは、こんなところではないでしょうか。

  3. 氷のデスロード より:

    新聞は人間の書く記事だからときに間違ったことを書くこともある。
    大事なのはそのときの姿勢だよね。
    間違いならばお詫びと訂正を追加すれば、誠意ある対応と読者は取る。
    なんでこの人たちは削除して無かったことにしたがるんだろう。

  4. はにわファクトリー より:

    新聞 TV は世論にあらず。この一文で断罪できるはずです。
    ・人をなじりそしり
    ・勝手な理屈で世情を憂いたり
    ・不安を増大させたりすることで
    ・注目を集めようとしていた
    ・それが報道の価値であり、報道の存在意義だと詐称してきた
    もうこれからは通用しません。

  5. 匿名 より:

    いじめ問題ではいじめた側がその意識がないことがある。「あたりまえのことを正直に言っただけ」「悪気はなかった」というのを本気で思っている。「臭いものを臭いと言ってなにがわるいんだ?」
    この報道の御粗末も報道する側は自分の常識に則して「ふつうのことを正直に書いただけ」「悪意はない」という意識なのではないだろうか。「こわいものをこわいと言ってなにが問題なんだ?」
    業界の狭い世界の中で、判断基準が歪み傾いていることに気付かないまま報道してしまう。
    SNSの広い世界の中で、その偏向が目立ち批判・非難が集中する。
    目の前の仕事に追われて視野狭窄に陥り、客観的視点を持てないところに病原がある。
    社内制作部門のほかにDevil’s Advocate(あえてあら捜しをする役割)をする部署が必要なのではないか。

  6. 引きこもり中年 より:

    今回の件は論外として、ネット番組という比較対象ができたため、TV番組全体のレベル低下が目立つようになったのではないでしょうか。(比較対象がなければ「そもそも、こんなもの」で済みますから)
    蛇足ですが、今回の件を、他のオールドメディアは報道すべきではないでしょうか。

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