総裁選「代理戦争」でオールドメディアに勝ったSNS

カレーは作った当日よりも少し寝かせた方が味がしみこむといわれますが、ウェブ評論もそれと同じようなものかもしれません。高市早苗氏が自民党総裁に選ばれたことで、自民党は首の皮一枚つながった状況ですが、個人的には小泉進次郎氏が自民党総裁に選ばれていた世界線も少し気になります。また、この際なので申し上げておくと、オールドメディアの凋落は今後いっそう加速するでしょう。異常なほどの「小泉推し」で、読者・視聴者の信頼をさらに損ねたからであり、総裁選もある意味ではSNSの勝利だといえるのです。

「予定稿」問題

今回は「予定稿」を作らなかった

週末の自民党総裁選を高市早苗氏が制した件については、『読者雑談用兼自民党総裁選ウォッチ』でも読者の皆さまにリアルタイムで報告していただいたほか、当ウェブサイトでは『高市総裁誕生…とりあえず首の皮一枚つながった自民党』で「速報」的に取り上げています。

ただ、物事は日数が経った方が分析に深みが出るものです。

煮物やおでん、鍋やカレーは作った当日よりも少し寝かせた方が味がしみこむと言われますが(※ただし、夏場のカレーはすぐに傷むので注意!)、ウェブ評論もそれと同じで、ある現象が生じてからしばらく経った方が、色んな事が見えてくるものなのです。

その題材のひとつが、総裁選なのです。今回は「予定稿」を作らなかったことが、結果的に良い方向に働いていると思います。

ここで当ウェブサイトの作成の舞台裏を少しだけ明かしますが、かつて著者自身は大きなイベントが予定された際には、「予定稿」を準備し、どちらかを公開し、どちらかを没にする、ということをやっていた時期もあります。

ただ、こうした「予定稿」については、最近では控え目にしています。

その理由は簡単で、やはり「予定稿」というものは、どこかウソっぽいからです。

「3つの予定稿」を準備するとしたら…?

たとえば今回の総裁選については、次の3つの原稿を準備することが可能だったかもしれません。

  • 『自民総裁に高市氏…初の女性総裁』
  • 『自民総裁に小泉氏…史上最年少で』
  • 『自民総裁に林氏…官房長官経験者』

そのうえで、こんな書き出しを考えるのです。

本日・10月4日(土曜日)に行われた自民党総裁選を●●氏が制した。●●氏はXXXXXXである。<以下略>」

こうした文章の「骨格」部分だけ作り、3つコピペしたうえで、「●●」や「XXXXXX」で示した部分を高市氏バージョン、小泉氏バージョン、林氏バージョンに応じて書き換えるのです。

ただし、現実には、たとえば第1回投票で決まってしまうパターン、第1回投票だけでは決まらずに第2回投票に持ち込まれるパターン、第1回投票と第2回投票のトップが変わってしまうパターンなど、さまざまなケースが考えられるため、記事を公開する直前に、このあたりを細かくチェックしなければなりません。

昨年、「予定稿」で大失敗しました

そして、こうした「予定稿」で盛大に失敗したのが、昨年9月27日付で公表した、『総裁選で石破茂氏が当選…自民党政権の継続性に期待を』です。

同記事を見ていただければわかりますが、冒頭に注記したとおり、じつはこの記事も「予定稿」であり、しかも推敲が不足していたこと、著者自身がなかば思い込みで「高市氏が総裁に選ばれるに違いない」などと予断を持っていたことなどが災いし、「高市氏が新総裁に」とする痕跡が記事本文中に残ってしまっているのです。

また、著者自身が「よもや石破氏が総裁に選ばれることはないだろう」とタカを括っていたこともあり、「石破総裁・石破首相が実現した場合のわが国」に関する分析がずいぶんと甘く、かつ、悲観的な記載と楽観的な記載が混在しているなど、今になって読んでも何が言いたいのかよくわからない記事です。

(ただし、「自民党が石破氏を総裁に選んでしまったことで、自民党が次回衆院選で伸び悩み、立憲民主党がそこそこ議席を取ってしまうかもしれない」とこの時点で指摘できていたのは、個人的には読者の皆さまに褒めてほしいと思う部分です。どうでも良い話ですが。)

いずれにせよ、この「総裁選大逆転劇」もあって、当ウェブサイトではよっぽどのことでもない限り、「予定稿」は控えようと思った(あるいは「予定稿」である場合はその旨明示する方針に変えた)のです。

参院選の「予定稿」

なお、ちょっとだけ余談です。

この失敗例を踏まえつつも、じつはつい最近、当ウェブサイトではこんな「予定稿」を掲載したばかりでもあります。

もし自民惨敗でも石破氏を総裁に選んだ議員の自業自得

―――2025/07/20 20:00付 新宿会計士の政治経済評論より

これは、参院選の投開票が行われた7月20日・日曜日、投票が締め切られた午後8時の時点で公開設定したものです。

同記事でも明示している通り、この記事、自民党が石破茂首相のもと、参院選でかなり苦戦しているのではないかとの観測に基づき、事前に執筆していました(※執筆したのはその直前の金曜日あたりですが、直前まで票読みなどを加筆修正していたりもします)。

著者は選挙期間中の時点で、自民党の獲得議席を28~44議席程度(中央値は36議席)と予想。

立民は2議席増の24議席、公明は3議席減の11議席、維新は1議席減の5議席…、などと想定し、国民民主が13議席増の18議席に増えるほか、参政党がいきなり12議席、保守党も2議席を確保すると予想しました。

結論的には、自民党の獲得議席は39議席であり、著者予想中央値36議席との誤差は+3議席でしたし、公明は6議席減の8議席と、著者予想11議席との誤差は▲3議席で、与党合計で見れば予想がドンピシャリで当たりました。

また、立民は予測24議席に対し実際22議席で誤差▲2議席、維新は予測5議席に対し実際7議席で誤差+2議席、国民民主は予測18議席に対し実際17議席、参政も予測12議席に対し実際14議席と、それぞれ非常に良い線を行っていたと思います。

なお、なぜこの予測を事前に公表していなかったのかといえば、こちらは簡単で、当ウェブサイトのポリシー的に、違法行為の可能性がある行動は極力減らそうという力学が働いているからです。

公選法では人気投票等は公表してはならないとされており、著者自身の予測は人気投票に基づくものではないにせよ、SNS等のさまざまな手段を通じて入手した情報に基づく状況判断が法令解釈上の人気投票として認定されるリスクがゼロではないと考えた結果、この記事についても「予定稿」にしただけの話です。

(※ただし、法令解釈はそのときどきで判断しているため、次回選挙までに著者自身の解釈が変わる可能性はありますが。)

臨場感を大切にしたい

いずれにせよ、当ウェブサイトでは「予定稿」については完全にゼロではないにせよ、最近は控え目にしています。

今回の自民党総裁選についても「高市勝利」バージョンや「小泉勝利」バージョンなどを作らなかったのは、前回の総裁選の「石破大逆転劇」に対する反省を踏まえたものです(ありていにいえば、自民党議員があの場で石破氏を選び出すほどに愚かだとは思っていなかったのです)が、それだけではありません。

その「臨場感のなさ」が、当ウェブサイトの聡明な読者の皆さまには簡単にバレてしまうからです。

とくに、著者にとって思い入れのない候補が勝ってしまった場合の予定稿は、「まさかこの候補が選ばれないでほしい」という深層心理のためでしょうか、記述の底が非常に浅く、思い入れがないということがバレバレになります(推敲が不十分だという点もその証拠です)。

だからこそ、少なくとも今回の総裁選については、結果が出たうえで、それを見ながら論評しようと考えたのであり、その方針は間違っていないと確信している次第です。

自民党の現状を振り返る

楽観視できる状況にない現在の自民党

さて、その論評の第一弾は、すでに『高市総裁誕生…とりあえず首の皮一枚つながった自民党』でも述べたとおり、高市早苗総裁が選ばれたこと自体は歓迎すべきものであるとはいえ、これで自民党、あるいはこの日本が安泰だというほどに楽観視できる状況にはない、というものです。

これでとりあえず、自民党がネット層から憎悪されて次の選挙で泡沫政党に成り下がるという可能性が減ったことは間違いありません。ただ、旧宏池会などの自民党左派が牛耳ったこの4年間―――とくに最後の1年間―――の爪痕は深く、自民党が国民の信頼を回復するのは容易ではありません。

今だから明かしますが、個人的には小泉進次郎氏が自民党総裁選を制していた場合、それが長い目で見てかなり意外な結果をもたらしていた可能性もあったと考えているからです。

その理由は、もし次の首相が小泉氏であれば、小泉氏率いる自民党が、国民の目から見た、とてもわかりやすい「国民の敵」アイコンに化けるからです。当然、次の衆院選では(野党の選挙協力次第ですが)自民党はボコボコに負けて下野を余儀なくされる、という展開もあり得たでしょう。

議席と得票の「意外な関係」

この点、『高市総理効果で得票2割弱増なら自民は過半数回復か?』でも少し触れたとおり、現在の日本の衆院総選挙は小選挙区主体であり、その小選挙区でトップだった候補が1人だけ当選し、あとの候補者は全員落ちるというシステムが採用されています。

少し迂遠(うえん)ではありますが、過去の選挙結果を確認しておきましょう。

2012年、14年、17年、21年の4回の選挙では、自民党が圧倒的な議席を確保していたのですが、その理由も得票率では大したことがないにも関わらず、2番手の候補者(多くの場合は立憲民主党候補者)に自民党候補が競り勝ったからです。内情は案外際どい勝利だった選挙区も多々あります。

そして、2024年総選挙では、石破茂体制下で自民党が「裏金議員」らのパージを行った影響もあり、呆れた有権者らが小選挙区で自民党に投票せず(そのうちのいくばくかは国民民主党に流れ、いくばくかは棄権したと考えられます)、結果的に小選挙区で立憲民主党候補者が競り勝ったという事例が多かったのでしょう。

過去の選挙結果から、小選挙区に限定して、自民党の得票数・得票率と議席数・議席率の関係を列挙すると、こんな具合です。

過去の衆院選における小選挙区の自民党の得票・議席状況
  • 2005年…32,518,390票(47.77%)→219議席(73.00%)
  • 2009年…27,301,982票(38.68%)→64議席(21.33%)
  • 2012年…25,643,309票(43.01%)→237議席(79.00%)
  • 2014年…25,461,449票(48.10%)→222議席(75.25%)
  • 2017年…26,500,777票(47.82%)→215議席(74.39%)
  • 2021年…27,626,235票(48.08%)→187議席(64.71%)
  • 2024年…20,867,762票(38.46%)→132議席(45.67%)

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』データを加工)

有力野党の存在が議席を大きく左右する

非常に意外な話ですが、少なくとも2005年以降の選挙に限定すると、自民党は小選挙区で常に38%以上の票を得続けており、かつ、過半数を超えたことはありません。得票率が最も高かった2014年で48.10%、最も低かった2024年で38.46%です。

しかし、議席に関していえば、2005年(小泉郵政解散)では定数(当時は300議席)の73%に相当する219議席を獲得しており、安倍総理再登板のきっかけとなった2012年には237議席と、じつに定数の79%にも相当する議席を獲得したのです。

その一方、「マスコミ偏向報道選挙」として知られる2009年のときは、自民党が小選挙区でたった64議席、定数の21.33%しか獲得できませんでしたが、当時も得票率は38.68%で、これはむしろ2024年の得票率を上回っています。

だいたい同じような得票率であったにも関わらず、2009年には64議席しか取れず、2024年には(単独過半数割れしたとはいえ)132議席を取ったのは、有力野党が存在したかどうかです。

過去の衆院選における小選挙区の民主党・立憲民主党の得票・議席状況
  • 2005年…24,804,787票(36.44%)→*52議席(17.33%)民主
  • 2009年…33,475,335票(47.43%)→221議席(73.67%)民主
  • 2012年…13,598,774票(22.81%)→*27議席(*9.00%)民主
  • 2014年…11,916,849票(22.51%)→*38議席(12.88%)民主
  • 2017年…*4,726,326票(*8.53%)→*17議席(*5.88%)立民
  • 2021年…17,215,621票(29.96%)→*57議席(19.72%)立民
  • 2024年…15,740,860票(29.01%)→104議席(35.99%)立民

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報結果』データを加工)

2009年は当時の民主党が小選挙区だけでも221議席(当時の定数300議席中73.67%)を獲得しているのですが、その民主党が小選挙区で獲得したのは3348万票、47.43%であり、過半数ではなかったのです。

また、2024年は立憲民主党が小選挙区で104議席と、2021年の57議席と比べて倍近い議席を取っていますが、得票は1574万票で2021年の1722万票と比べてむしろ147万票減っていることに注意してください。

つまり、2024年の衆院選は自民党の一人負けだったわけですが、だからといって最大野党だった立憲民主党も信頼されていたわけではなく、むしろ前回よりも得票を減らしているのです。あれだけ自民党に逆風が吹いていたにもかかわらず、です。

SNS層は自民党から「保守野党」に逃げた?

この点は、テレビ層の存在で、だいたい説明がつきそうです。これは著者の主観ですが、石破自民を支持していたのも、立憲民主党を支持しているのも、おそらくは基本的にはお年寄りを中心とするテレビ層だからです。

若年層・中年層で構成される現役層(とくに18歳~59歳)は、安倍政権時代は自民党をガッツリと支持していて、それが2024年衆院選と25年参院選で一気に流出したものの、流出先が立憲民主党ではなく、いわゆる「保守野党」だったのです。

ここでいう「保守野党」とは、具体的には国民民主党、参政党、日本保守党の3党のことを指します(※といってもこれは便宜上の呼称であり、くどいようですが、著者はこの3党、とりわけ後者の2党を「保守政党」だとは考えていないのですが、この点についてはまた別途どこかで述べたいと思います)。

つまり、2009年の選挙では自民党から流出した有権者の票が一気に民主党に流入するなどし、それが政権交代の原動力となったと考えられるのですが、2024年の選挙では自民党から流出した票が国民民主党など流れ、立憲民主党には流れなかったと考えられます。

立憲民主党はむしろ左派政党でありながら左派票を減らしており(左派人口が減っているからでしょうか?)、2024年に得票を減らしながらも議席を増やしたのは小選挙区制度の歪みによるものにすぎず、おそらく今後、立憲民主党が票を伸ばせる要因はありません。

そして、自民党が高市氏を総裁に選んだことで、(完全にではないにせよ)今後は保守層がある程度自民党に回帰する可能性があり、そうなると、とくに今年の参院選で議席を伸ばした参政党や日本保守党あたりは、党勢が伸び悩むかもしれません。程度の差こそあれ、国民民主党も似たような課題に直面するでしょう。

しかし、仮に自民党が高市氏ではなく小泉氏を総裁に選んでいたならば、石破政権時代に逃げた票が自民党に戻らないだけでなく、自民党を見限った票が雪崩を打って他党に流入する可能性があったのであり、その流入する筆頭有力候補は「保守3党」だったと考えられるのです。

政策で自民党から離れたという側面もある

ただし、高市「総理」(※現時点ではまだ内閣総理大臣に就任していないので、カギカッコ付きです)が登場すれば、それによって自民党が元通り、衆院で圧倒的な強さを発揮する時代が戻って来るのかといわれれば、それも違います。

ここで考えておくべきもうひとつのファクターが、政策です。自民党が(というよりも石破首相が)税社保取り過ぎ問題や外国人問題に対し、アンテナが低すぎたのです。このうちとくに税社保問題に関しては、当ウェブサイトが専門的な観点から、これまで何度となく取り上げてきました。

国民民主が開いたパンドラの箱…国民対財務省の戦い?』や『「税の取られ過ぎ」に気付いた国民がSNSを手にした』などでも指摘したとおり、税金や社会保険料があまりにも高すぎるという実態に、少なくない国民が気付いてしまったからです。

ぶっちゃけ、政権担当能力という意味では、自民党の右に出る政党はありませんし、高市早苗氏という個人は記憶力も政策理解力も異常に高く、実務能力を持つ政治家としては稀有な、卓越した人物であることは間違いありません。

ただ、高市氏が提唱しているすべての政策を実現するだけの財源を税収だけで賄えるのか、という問題はありますし、麻生太郎総理の支援を受けた高市氏が財務省をねじ伏せて国債を大幅増発できるのか、という疑問も残ります。

それに、たかだか税調会長の分際で、多くの国民が心の底から期待したであろう「手取りを増やす」をニヤニヤしながら踏みつぶした宮沢洋一氏のイメージが強すぎる自民党を、総裁が高市氏だからというだけで国民が支持するという保証はありません。

それだけに、高市氏はこれからが正念場です。

SNS対オールドメディア

オールドメディアに依存した「岸破」

なお、この際ですから、ついでに今回の総裁選が、「SNS対オールドメディア」という性質を持っていたという点についても指摘しておきます。

あくまでも想像ベースですが、おそらく岸田文雄・前首相や石破首相、小泉進次郎氏らやそれらの取り巻きは、このSNS時代からは取り残され、いまだにオールドメディアを主要な情報源にしていたからこそ、大きく道を誤ったのではないかと思います。

オールドメディアといえば、古くは「もりかけ」「さくら」、最近だと「統一教会」や「裏金」などで自民党・保守派などに対する攻撃を仕掛けてきていましたが、マスコミを妄信するあまり、このうちの「統一教会」と「裏金」に乗っかって自滅したのが「岸破」(※)だったのです。

(※「岸破」で「キシバ」と読みますが、岸田前首相と石破首相、およびその取り巻きである有象無象を指します。)

ただ、この「岸破」は絶望的にセンスがなく、世の中がオールドメディアからSNSに切り替わりつつあるという事実をキャッチアップできておらず、だからこそ選挙にも絶望的に弱かったのではないでしょうか。

そういえば、安倍総理や高市「総理」は、どちらもSNSを中心に人気が高く、オールドメディアからの人気が低いという共通点があります。

オールドメディアが「次の首相にふさわしい人物の1位は石破氏」、などとする調査結果(※本当に調査したのかどうかも怪しいところです)を繰り返しテレビや新聞で流した結果が、これを妄信した「岸破」が昨年9月の総裁選で高市氏を落として石破氏を選ぶ、という現象だったのではないでしょうか。

このように考えたら、いろいろ合点がいきます。

石破氏が7月の参院選で負けても首相に居座ろうとしたのも、石破氏が「石破辞めるな」デモに相好を崩し、オールドメディアが8月以降流し始めた「世論は石破続投を支持している」などとする怪しげな調査結果を妄信したからではないでしょうか?

ただ、当たり前ですが、もう世の中の人々は、総じてオールドメディアを信頼していません。

オールドメディアが熱心に「小泉推し」を続けたことも、日本国民がオールドメディアを見限る原因を作っています。

また、小泉氏は陣営による「やらせコメント」問題や、神奈川県内における「地元党員離党」疑惑などが浮上し、これらの問題ないしは疑惑への対処でミソを付けた格好だといえます。「地元党員離党」疑惑は現段階では「疑惑」ですが、その疑惑への対応が非常にまずかった格好です。

ネット時代…これから面白くなる!

端的にいえば、小泉氏もオールドメディアによる被害者かもしれません。オールドメディアが全面的に「小泉推し」をしたせいで、少なくない国民が、却って小泉氏に対する不信感を重ねることになったからです。加害者はオールドメディア、そして小泉氏というアイコンを利用しようとした自民党内の一部政治家です。

これまでのようにオールドメディアが情報を支配していれば、どんどんと新しい情報で「上書き」して都合が悪い内容を消し去るということも可能かもしれませんが、SNS時代だとそうは問屋が卸しません。

先日の『ネット出現で情報はフローから「ストック」に変わった』でも論じたとおり、すでに世の中、情報はフロー(すぐに消えてしまうもの)からストック(消えずに蓄積されるもの)に変化したのです。

情報を蓄積することの限界費用が極端に下がったため、かつてならば保存されずに消えていたさまざまな情報は、半永久的に消えずにネット空間に残り続けます。これがデジタルタトゥーです。小泉氏も今回の選挙戦を通じ、消せないタトゥーが残ってしまったのではないでしょうか。

そして、これは小泉氏だけでなく、小泉陣営に参加していた複数の議員にも同じようなことがいえるかもしれません。

いずれにせよ、今回の総裁選はオールドメディアとSNSの「代理戦争」のようなものだったのかもしれませんが、オールドメディアの分析ないし予測のポンコツぶりがいかんなく発揮されましたし、また、SNSで人気が高かった候補が勝利したというのは、間接的にはSNSの勝利です。

新しい時代の到来そのものでしょう。

ネット時代…これから面白くなる!

自民党は党内的には「選挙が終わればノーサイド」、「新しい総裁のもとで挙党一致」ができる政党であるとされ、逆にそれが自民党の強みではあります。

しかし、国民の側は、そういうわけにはいきません。

やはり、自民党は「首の皮一枚」でつながっている状況ですので、日本国民は今後の選挙を通じて、自民党候補者に対しては是々非々で投票行動を判断すべきでしょうし、聡明な日本国民のことですから、実際にそのように行動することでしょう。

その意味では、これから面白い時代が到来することは間違いありません。

いずれにせよ、著者個人としては、高市早苗氏には期待するところも多々ある一方で、「税社保高すぎ問題」についてはしっかりと情報発信していくつもりですし、高市「総理」が財務省を中心とする官僚利権にどこまで切り込むかについてもしっかり見届けるつもりです。

長期的には給付付き税額控除などへの社会的関心が高まると考えられますが(これに関して著者としては現時点ではとりあえずノーコメントです)、それよりも先に、短期的には所得税法と地方税法の基礎控除額の大幅増額、中期的には後期高齢者医療費の自己負担割合3割化、社会保険料減額などが必要です。

したがって、当ウェブサイトとしても、減税、国債増発、厚年廃止、健保改革などについて、これからますますコンテンツを充実させていく所存です。

どうかご期待ください。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    有名な賭けサイト Polymarket が、今回予測を完全に外したことが記事になっています。

    予測市場は直前まで「小泉氏80%」 なぜ高市氏勝利を予測できなかったのか
    https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c068d3966c6b2f01deb75ed3c7e2a19ff626f9d

    Polymarket はひとがどう未来を読んでいるかに依拠して賭けの数字が決まります。結構当たっているとの評判です。米国大統領選ではトランプ再選を正しく予測しました。ワシントン「コクーン」に閉じこもっている自称エリート大手新聞記者はアホ集団と証明もしました。ですが、今回は。

    1. はにわファクトリー より:

      ありゃ、正しく貼り込めませんでしたでしょうか。https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c068d3966c6b2f01deb75ed3c7e2a19ff626f9d4
      これで飛んでいけなければ、なぜ高市氏勝利を予測できなかったのか、でググってください。

    2. 元雑用係 より:

      これですかね?
      yahooはリンクが変わることもあったような。

      https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c068d3966c6b2f01deb75ed3c7e2a19ff626f9d4

      >「自分がどう思うかではなく、みんながどう思うか」を当てることが重要になるため、

      例の曰く付きの日テレ調査でも、党員投票の予測は割と正確でした。誤差1割以内で前回同様でした。
      統計的に読みやすい党員票はそれでイケるでしょうが、決戦投票は統計的に読めない議員票でほぼ決まるのでその予測では難しかった、ことに尽きる気がします。

      私は今回は選挙ドットコムをよく見ていましたが、あそこも外しました。
      小泉陣営の出陣式出席議員が92人で、1回目議員票は80票でした。予測専門家の議員票読みのスタート地点は92人だったそうで、予測の失敗はここが最も大きかったと語っていました。
      もちろん、麻生氏の直前の発信の影響は大きいし3,4位に入れる指示など予測不能だったとも語っていました。「さすが閣下」みたいな評価でした。

      1. 元雑用係 より:

        3,4位じゃなくて4,5位でした。

        勝ち組は麻生、安倍、茂木、小林。
        菅、岸田等、旧主流派はまとめて冷や飯です。
        党内政権交代。

      2. はにわファクトリー より:

        『出陣式出席議員が92人で、1回目議員票は80票』
        カツカレー食い逃げ・小泉陣営の内情を探るためのスパイ多数、だった、のか。

      3. 元雑用係 より:

        すみません、「閣下」ってのは私の意訳による付け足しです。

        >内情を探るためのスパイ多数

        例の参照サイトはいつも朝日の記者が出演してたんですが、取材の体感では「裏切る予定」ではなく、候補者本人の失速に依るものだろうとのことではありました。
        ただまあ、各有力者に人質を差し入れるのは戦国時代でも常套手段でしたし、確立した手法だろうと思います。(笑)

        しかし閣下の最後の一撃は、秀才が考えた完璧な計画が勝負師によってひっくり返された、そんな感じがします。
        「そんな簡単じゃねー」と怒られそうですが。

    3. はにわファクトリー より:

      『さすが閣下』
      インターネット・ミームになる予感がします。最初にキャラ絵を流行らせたものが勝者とも。

  2. 引きこもり中年 より:

    自民党総裁選での代理戦争で、SNSに負けたオールドメディアとしては、(代理戦争第2幕として)総理指名投票でリベンジを果たそうとするのではないでしょうか。

    1. 引きこもり中年 より:

      >https://www.sankei.com/article/20251005-EPGJYE6I75GERJ7XDID5BD63FU/
      オールドメディアである産経新聞のコラムに「高市新総裁誕生は「オールドメディア」の敗北か SNS規制叫ぶ側の根っこが見えてきた」というものがありました。産経新聞には、まだ望みがあるのでしょうか。

  3. 匿名 より:

    高市さんには、支援を頂いた麻生にしっかり御礼を言って、あとは自分の信じるところを、実行してもらいたい。
    麻生やら、公明やらに気を使ってると、何も出来ずに、国民から見放されます。
    人事構想が、話題ですが、幹事長やら官房長官に名があがるのは、財務省の息がかかってそうな奴ばかり。減税、積極財政による経済成長を目指さないと、日本の将来はありません。

    1. 匿名 より:

      「総裁にしていただいてありがとうございます、これからは私の好きにさせてもらいます」なんて、社会人・組織人として言うはずがないし、言えるはずもない。連立相手の公明党にも同じ。決戦投票で拮抗した小泉陣営の議員たちも取り込まなければ物事は進まない。力の源泉は自分を支持してくれる「数」ですよ。

  4. Hさん より:

    幹事長に、鈴木さん、というのはヤバい。
    もと財務大臣。。。 財務省繋がりがあるよなぁ。 また増税とか。。。
    消費税下げる、ガソリン暫定税なくす、税の二重取り廃止など期待していたのだが。。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      幹事長職、他に“出来る人でやりたい人”居そうにないンやけど
      幹事長席を飾るだけやったら進次郎やコバホークでも良さそうやけどアイツ等ではまだ務まらんやろし、茂木氏再びやら林氏はやりたがらん気もするし
      幹事長より税調に手ェ突っ込めるかが先ずはの試金石ちゃうかナ? 知らんけど
      「手取りを増やす」と「ガソリン・軽油の暫定税率廃止」を年内にカタチにするには党税調どないぞせんならんでたぶん
      知らんけど

      1. 転勤族 より:

        あの宮沢某。
        自民党を瓦解の淵まで追いやった張本人だと評価しております。
        まあ、更迭されるでしょうね。

    2. はるちゃん より:

      私は。麻生副総裁、鈴木幹事長に賛成です。
      高市さんが高市路線を進めるためにはこの二人の協力が絶対に必要だからです。高市政権の成否は、高市さんがこの二人を説得できるかどうかにかかっています。
      この二人を役職に就けることによって日常的に意見交換の機会が出来ます。
      高市さんがこの二人を説得することができるかどうかですが、そこで大きな力になるのが国民からの支持です。
      小泉敗退で地団太踏んでいるマスコミが最大の障害になると思いますが、SNSでの高市支援の声は大きな力になると思います。
      高市さんには妥協を排して政策実現に邁進して頂きたいと思います。

  5. 匿名 より:

    昨年の衆院選で、立憲民主党が小選挙区で大勝したのは、国民民主党や参政党、日本保守党といった選択肢もあることを知らなかった人が多かったからではないか?

    国民民主党も参政党も、選挙後に支持率がさらに上がっている。次の衆院選では、立憲民主党が議席を減らして、参政党や国民民主党が議席を増やすのではないか?

  6. 転勤族 より:

    いまは党内人事、首班指名後は閣僚人事。
    高石総裁・高市総理のメッセージとして期待するところであり、
    個人的には高市氏の思想に合致した人選をお願いしたいところではありますが、
    戦略的なバランス人事になるだろうとも思います。
    安倍首相が二階氏を幹事長に据えたように。

  7. 期待してます! より:

    オシント、鋭い考察を毎日楽しみにしています。

  8. 転勤族 より:

    日経平均、爆上がりですね。

  9. んん より:

    基本路線が大幅に外れてはいなかったように見える
    隣国のユン氏、国民を味方につける力が弱かった
    今後復権もあるかもしれないが
    国民の方も積極的に応援してこなかった
    そのため左派のキャンペーンに負けて失権してしまった
    本国でも安倍氏の時のようなネガティブキャンペーンが行われるかもしれない
    高市氏に活躍して充分な力を発揮していただくためには
    即時の反応で国民が支えていく必要があると感じる

  10. 匿名 より:

    なんとか自民は党として残りそうですね、
    ただ、やはり暫くの期間は少数与党かなぁとは思います、次の選挙では選択的に保守系か左派かで自民の議員は落選しく流れが出来そうですし、小泉支持に回った県は下手したら全滅に近い打撃が起こるかもですね、

  11. DEEPBLUE より:

    なる事がゴールでなく、なって何をするのか考えているからあの厳しい顔だったのだと思います。早速オールドメディアが攻勢かけてますしとりあえず応援していきます。

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