国民の批判殺到の財務省「まさかの被害者ポジション」

やっぱり、今度はまさかの被害者ポジションを取り始めたのでしょうか。産経ニュースに23日付で、SNSで財務省に対する批判的なリプライなどが殺到している、などとする記事が掲載されました。ただ、並の国会議員を大きく上回るような実質的権力を持ち、時として虚偽の説明を展開しつつ、強引な増税を通じて日本経済を破壊してきた組織のひとつこそ財務省でもあります。正直、自業自得ではないでしょうか?

財務省という権力者

財務官僚の権力と傲慢な発言

財務官僚といえば、並の国会議員を大きく上回る権限を持っているケースがあるので、注意が必要です。

財務省は国のサイフの入口(国税庁)と出口(主計局)を同時に支配しており、国税調査権や徴税権という「ムチ」、予算という「アメ」を使い分けながら、政治家に対して自分たちの言い分を呑ませることができてしまうからです。

この点、以前からときどき取り上げている通り、一部報道では、国民民主党が提唱する「年収103万円の壁」引き上げを巡る動きに対し、財務省幹部は「死んでも飲めない」などと述べた、とされています。

財務省が「玉木首相の可能性」に顔面蒼白…!「消費税5%」「年収の壁」「給食費タダ」「高校まで完全無償化」ヤバすぎる大盤振る舞いに「死んでも飲めない」と猛反発

―――2024.11.01付 現代ビジネスより

こうした報道が正しいのかどうかは、現時点ではよくわかりません。

ただ、財務官僚による強権的・高圧的な発言を報じたメディアは単一ではないこと、一部メディアは財務省的な「日本は財政危機だ」、などとうかがわせるかのような記事を繰り返し掲載していることなどを踏まえると、財務官僚らが本音ではそのように考え、メディア関係者にそう発言している可能性は十分にあります。

そして、もしこうした発言が事実だとしたら、まさに国会議員に命令するかのような態度であり、傲慢そのものです。

読者の皆さまもご承知のとおり、そもそも、日本は民主主義国であり、法律を決定するのは私たち日本国民から正当に選挙された代表者たる国会議員であり、財務官僚ごとき者たちではありません。もし国会が「減税する」と決めれば、財務省を含めた公務員は、それに従わなければならないのです。

財務省が垂れ流す虚偽のグラフ

現代ビジネスが報じたとされる財務官僚の「死んでも飲めない」とする発言が事実だとすれば、(べつに死ぬ必要はないので)職を辞して自分たちで新党(「ザイム真理党」、でしょうか?)でも何でも立ち上げて国会議員を当選させ、好きなだけ増税すれば良いのではないでしょうか?

それを、国民から選ばれてもいないくせに、「ワニの口に照らし、日本は財政再建が必要だ」、などとする虚偽の説明(たとえば下記図表参照)を国民やメディアに対し繰り返し喧伝し、ときの政権に取り入って、不要不急な増税を繰り返してきたというやり口が汚いのです。

図表 財務省が流布している虚偽のグラフ

(【出所】財務省キッズコーナー『ファイナンスらんど』)

なお、この「ワニの口」論について、少しだけツッコミを入れておきます。

これは「税収と比べて歳出が大きすぎる」とする、財務省の典型的な詭弁の代表格です。

ただ、「現在の歳出税収を大きく上回っている」とする主張自体は、「数値としては」間違ってはいませんが、非常に誤解を招く表現でもあります。「収益・費用」という概念と、「収入・支出」という概念を、巧みに混同させているからです。

簿記に詳しい方ならご存じかと思いますが、そもそも、借金の返済は「費用」ではありません(企業会計上も損益計算書に「借金の返済」という項目は出てきません)。

なにより、もしも借金の返済を「費用」に含めるならば、国債の新規発行による収入や借り換えなどによる収入を「収益」に含めなければおかしいですし、同様に、国債発行収入を「収益」に含めないなら、借金返済を「費用」に含めるのは理論矛盾です。

若干不正確ながら、国家財政を企業会計にたとえていえば、歳出と歳入にはそれぞれ、国債償還支出、国債発行収入が含まれているわけです。

  • 歳出≒国債償還支出+費用
  • 歳入≒国債発行収入+収益(=税収)

歳出には「費用」だけでなく、「国債の償還支出」なども含まれますので、本来ならば、これに対応する概念としては、歳入、すなわち「収益(=税収)」と「国債の発行収入」も含めるのが筋でしょう。それなのに、かたや歳出、かたや税収を比較しているのですから、「歳出」と「税収」は比較項目として見合っていないのです。

いずれにせよ、「歳出」を(本来は比較すべきではない)「税収」を比較したところで、前者が後者を大きく上回っているのは当たり前の話でしょう。こんな杜撰なグラフに騙されて、日本は何年もの間、やらなくて良い増税を繰り返してきたのです。

ちなみに日本が財政再建を必要としていない、という点については、先日の『減税が焦点となるなか改めて見ておきたい資金循環構造』でかなりわかりやすく説明したつもりですし、「減税したら税収が減る」という詭弁については、『秒でバレるウソをつく財務省…それを指摘しない新聞社』などでも指摘したとおりです。

腐敗トライアングルの現状

オールドメディアの社会的影響力の急落

さて、それはともかくとして、現在の日本では、オールドメディア―――とりわけ新聞、テレビ―――の社会的権威が、急激に崩れつつあります。

テレビの社会的影響力が強いのは高齢層などに限られてきていますし、また、新聞に至っては、高齢層を含め、もうほとんどすべての年代から見放されていて、これに変わってインターネット―――とくにYouTubeやSNSなど―――の社会的影響力が急速に高まっているからです。

こうしたなかで、マスメディアの影響力が下がれば、必然的に、マスメディアを利用していた者たちの社会的影響力も下がってきます。

その「マスメディアを利用して来た者たち」の典型例が、官僚機構でしょう。

なにせ、官僚機構は記者クラブという仕組みを使って新聞、テレビなどの関係者を「飼う」ことができますし、また、新聞社に対する軽減税率(財務省)、テレビ局に対する許認可権(総務省)、新聞の再販売価格指定制度(公正取引委員会)など、官僚の許認可権は絶大です。

そして、著者自身も長年、メディア・ウォッチャーをやっていて気付くのですが、新聞、テレビを中心とするオールドメディアは、不思議なくらい、官僚の批判をしません(「もりかけ」「桜」「統一教会」など、メディアは折に触れて自民党批判を繰り返してきたのですが…)。

目ざとい人は財務省の存在に気付く

このあたりの詳細については以前の『【総論】腐敗トライアングル崩壊はメディアから始まる』などでも指摘してきたとおりですので、本稿ではこれ以上は繰り返しません。

そして、先日の兵庫県知事選で、一部メディアがごり押し(?)した候補者が敗れ、メディアから批判的な論調で報じられ続けてきた斎藤元彦氏が再選されたあたりからも、こうしたメディア支配が崩れて来ていることは明らかでしょう。

そうなってくると、やはり目ざとい人は、日本経済に停滞をもたらしてきた本当の犯人が無駄な増税であり、黒田東彦(はるひこ)氏が就任する以前の日銀の金融政策であったのではないか、といった点に気付き始めているようなのです。

著者自身もリアルタイムでSNSによる情報発信を続けている人間のひとりですが、衆院選の直後あたりから、Xなどでは財務省批判のポストが急増。いままでとは明らかに、財務省批判に対する反応が、まったく違っていたのです。

反応が急激に上昇した!

いままでと同じようなノリで財務省の問題点を指摘するようなポストを繰り返していたら、これらに対し、数万件の「いいね」が付き、数百万件のインプレッションを記録するような事象が相次いでいるのです。

当ウェブサイトを昔から読んでくださっているような方ならご存じと思いますが、著者自身はべつに衆院選の前後で財務省に対する記述のレベルを変えたというつもりはありませんし、今までと同じく、今後も統計などの数値をもとに、日本経済の状況についての分析を続けていくつもりではあります。

しかし、著者のXアカウント(@shinjukuacc)はこの3ヵ月ほどでフォロワーが一気に8,000人ほど増え、いまや13,000人を超えていたりもします。

時代の変化…メディアと官僚の自滅

まさかの被害者ポジション!

そして、事実を記述していくと、どうしても結果論としては財務省に対して厳しい意見が出てきてしまうわけですが、これを「財務省に対する誹謗中傷」だといわれると、本当に困惑してしまうのですが、ついにそんな意見が出て来たようです。

産経ニュースに23日付で掲載された、「データアナリスト」と名乗る方による、こんな記事がそれです。

財務省への批判がXで急増、リプライは衆院選後15倍以上に 殺到の批判コメントを可視化

―――2024/11/23 15:30付 産経ニュースより

産経によると財務省のX公式アカウントに対し、10月27日の衆院選以降、批判的なリプライが殺到しており、選挙前と比べて返信数が15倍以上に増え、そのほとんどが「同省を批判・中傷する内容」だ、などと記載されています。

まさに、「まさかの被害者ポジション」、です。

ただ、その「財務省を批判・中傷する内容」の例が、「財務省解体」、「ザイム真理教」、などとありますが、これ、財務省を「批判・中傷する内容」なのでしょうか?

「ザイム真理教」に関しては、森永卓郎氏の著書がその出所だと思われますが(『森永卓郎氏の昨年の著書『ザイム真理教』を読んでみた』等参照)、「財務省解体」に関しては、少なくとも主計局と国税庁を分離せよ、などという意味では、非常に真っ当なでもあります。

これを「中傷」などといわれると、困惑する限りです。

社会のネット化でマスメディアの社会的影響力が剥落する中で、SNSで財務省に対する怒りの声が自然発生的に上がってくるのは当たり前の話であり、ある意味では財務省の自業自得のようなものでしょう。

今さらの被害者ポジションにも無理がある

ちなみに産経によると、財務省のX投稿に対するリプライは、2022年5月15日から今年10月27日までの期間が1ポストあたり平均65件だったのに対し、衆院選後は平均1013件だったそうです。

また、ヤフーのリアルタイム検索で過去30日間に財務省のXアカウントに向けて行われた返信やメンション付き投稿数は約2万件で、このうち93%が反論や批判、誹謗中傷などの「ネガティブな内容だった」、などとしています。

ただ、大変申し訳ないのですが、財務省がこのように批判されるのは、ある意味でやむを得ない話です。

もちろん、本来であれば、財務省、財務官僚はただの一般公務員であり、私たち国民が選挙で選んだ国会議員や都道府県知事、市区町村長、地方議会議員といった選挙で選ばれた者たちではないため、あまり舌鋒鋭く批判すると気の毒だ、と思う人もいるかもしれません。

しかし、当ウェブサイトではこれまで何十回、何百回となく指摘してきたとおり、財務省は外局である国税庁を含め、予算や徴税権などという、極めて大きな権限を持っており、実質的な権力でいえば、並の国会議員を大きく上回ります。

私たち国民から選ばれたわけでもない者の分際で、持つ権力が大きすぎるのです。

そして、その権力を正しく使っているならばまだ話はわかりますが、残念ながら、財務官僚の権限行使は正しくなく、それどころか、天下りなどにも悪用される関連法人を多く持ち、財務官僚ら自身の利権を拡大するかのような行動が続いていたわけです。

その過程で、国民経済は疲弊し、また、減税という声も、(財務省が間接的に支配しているであろう)一部の新聞・テレビなどを通じてかき消されてきたわけです。

財務省の罪は極めて重いと言えるでしょう。

その財務省が、いまさら被害者ポジションを取ろうとしても、かなりの無理があります。

メディアと官僚は同時に没落する

そしてもちろん、利権の拡大は財務省だけの専売特許ではありません。

著名どころだけでも総務省(例:地方交付税利権、電波利権)、厚生労働省(年金・健保などの社会保障)、文部科学省(例:私立大学の許認可権)などの例にみるとおり、官僚機構は総じて自分たちの権限を拡大しようとする傾向を持っています。

しかも、これらの利権は他の利権(たとえばマスメディア)と結びつき、腐敗の度合いを深めていきます。

マスコミは財務省を滅多に批判しない(軽減税率)。

マスコミは総務省を滅多に批判しない(電波利権)。

そんなマスコミが舌鋒鋭く批判しているのは、国民に第1党に選ばれた自由民主党であったり、多くの有権者から支持されている「年収の壁」上限引き上げプランであったり、はたまた、兵庫県知事選で斎藤氏を当選させる原動力となったSNSであったり、といった具合です。

その意味では、まさに現代のインターネット革命とは、過去の宗教革命にも匹敵する、大変大きなうねりとなっているのです(『宗教改革にも匹敵し得る現代の「インターネット革命」』等参照)。

いずれにせよ、当ウェブサイトではこれまで、新聞、テレビなどのオールドメディア側が、そのうち「ネット規制」を大々的に提唱するのではないか、と予言しているのですが(『メディアはそのうち「ネット規制」を言い出すのでは?』等参照)、世の中が徐々に当ウェブサイトに追い付いてきたのでしょうか?

このあたりは興味深いところです。

そして、メディアと官僚機構は、おそらく同時に没落していくのではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. CRUSH より:

    製造業的に言うならば、陳腐化を防ぐには常にカイゼンを継続する必要があります。
    (PDCAサイクルを回し続ける)
    その為にISOでは顧客からのアンケートを義務付けています。
    いろいろな場所で無造作に置かれていて、誰も書いてない風ですが、意外に効き目あるのですよあれ。

    財務省は、被害者ポジションをとるより、耳に痛い意見ほどありがたく真摯に受け止めて自分達を変えるきっかけに使えば、陳腐化しなくてリフレッシュできるのになあ。

    穿った見方をするならば、出世争いが激烈なのに差異がはっきりせず陰湿な「減点防止競争」に終始しがちな官僚の世界にあって、今回の非難書き込み殺到!は財務省の中の「緊縮したくない派」の人たちにはチャンス!かもですけどね。
    うまく利用してうまく泳いで、緊縮派の老人たちを追い出してもらえれな。(笑)

    財務省の中で「高橋洋一の言ってることの方がごもっともだよなあ~」、とか思ってる30代40代はがんばってネ。

  2. セクシー〇〇 より:

     私が貧乏症という病を患っているのも財務省の所為です。税金下げて。

  3. CRUSH より:

    連投失礼。

    僕が、ワニ口グラフを見て常々抱くイメージは
    「個体の血液量」

    子供の血液量と大人の血液量は違います。
    体重増加に合わせて血液量も増加する必要があります。

    経済学では通貨のことを血液に例えることがよくありますが、ワニ口のグラフもアナロジーによく合致します。

    財務省は、心臓を通過する血液の流入と吐出のバランスばかり気にしてますが、その結果すでに大人の身体なのに子供の血液量しかないので常に貧血気味なのが、この30年間の日本だ!、みたいな。

    「血が足りねえ。食い物をじゃんじゃん持ってこい!」
    byルパン三世カリオストロの城

  4. 匿名 より:

    よし、財政再建のためにまずは財務省官僚と関連団体職員・理事の所得税を100%にしましょう!隗より始めよ!

  5. 引きこもり中年 より:

    財務省内部の人間にとって、財務省のいうことは聞かずに、(財務省の感覚では)勝手なこと言っている国民は敵なのでしょう。

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