立憲民主党と国民民主党の明暗分ける「年収の壁」対策
同じ「年収の壁」問題でも、立憲民主党と国民民主党の対応には大きな差が生じているようです。先日も紹介した、立憲民主党が約10日前に出してきた「年収130万円の壁」対策について、これを改めてグラフ化してみると、そのショボさには驚きます。ただ、それ以上に興味深いのは、(著者自身の)リアルの感覚として、国民民主党が提案した「年収103万円の壁」に対する関心が極めて高いことです。残念ながら、立憲民主党の提案が話題にのぼっているフシはほとんどありません。
立憲民主党の年金・健保保険料給付案
先日の『公約にない?立憲民主党の「国民年金相当額給付」法案』などでも取り上げましたが、立憲民主党は約10日前に、いわゆる「130万円の壁」に関する「就労支援給付制度の導入」法案を衆議院に提出しています。
「130万円の壁」等を給付で埋める「就労支援給付制度の導入に関する法律案」を再提出
―――2024年11月13日付 立憲民主党HPより
同党によると、これは配偶者の扶養家族だった人が年収130万円を超えて働く場合、国民年金・国民健康保険の保険料負担が生じ、手取り収入が急激に減ってしまう現象(俗にいう「130万円の壁」)に関し、その手取り減収分を補うため、「収録促進支援給付」を支給する、というものです。
これについては、うまくグラフ化できないかと思っていたのですが、法案などを見る限り、どうやら立憲民主党の給付案(イメージ)は、こんな具合ではないかと思います(図表1)
図表1 立憲民主党の給付案(イメージ)
(【出所】立憲民主党ウェブサイト『「130万円の壁」等を給付で埋める「就労支援給付制度の導入に関する法律案」を再提出』を参考に作成)
立憲案の恩恵が及ぶ範囲は極めて限定的
細部においてやや不正確な部分もあるかとは思います。
ただ、立憲民主党のウェブサイトに記載されている、「年収が130万円を上回って200万円に達するまでの間、年収の増加に伴って、徐々に金額を減らしながら給付金を支給する」こと、という文言に沿ってイメージを作ると、やはり上記図表のようなイメージです。
これのいったい何が問題なのか―――。
それは、立憲民主党案だと、その恩恵が及ぶ範囲は極めて限定的である、ということです。
相変わらず、「取って配る」式のソリューションですが、これが「年収の壁」対策の抜本的解決につながるものでもないでしょう。
これに対し、国民民主党が提唱している「手取りを増やす」の一環である「年収103万円の壁」対策は、立憲餡と大きく異なります。というのも、あくまでも所得税が発生し始めるポイント―――基礎控除48万円と、給与所得控除55万円の合計額―――を引き上げる、という話だからです。
これは、所得税が発生しないポイントを年収103万円から年収178万円程度に増やす、というものですが、それだけではありません。
基礎控除と給与所得控除の引き上げは、(年所得2400万円までの)全勤労者に等しく及ぶ(はず)であるため、この「手取りを増やす」の恩恵を受ける人が、結果的に勤労者の広範囲に及ぶわけです。
年収階層別にみると?
ちなみに所得税の税率は、所得が上がるほど増えていき、課税所得1800万円を超えると、なんと40%に跳ね上がります。これに103万円を加算した者との対応表を作っておくと、図表2のようなイメージです(※ただし、課税所得はほかにも社保控除などがあるため、この図表は若干不正確です)。
図表2 課税所得、税率、年収の対応表
課税所得 | 税率 | 年収 |
0円~ | 5% | 1,030,000円~ |
1,950,000円~ | 10% | 2,980,000円~ |
3,300,000円~ | 20% | 4,330,000円~ |
6,950,000円~ | 23% | 7,980,000円~ |
9,000,000円~ | 33% | 10,030,000円~ |
18,000,000円~ | 40% | 19,030,000円~ |
しかし、課税所得に対する税率がまったく同じだったとすれば、それぞれの税率が適用される年収水準も変わってきます(図表3)。
図表3 課税所得、税率、年収の対応表(控除額178万円にまで引き上げの場合)
所得税率 | 所得税率 | 年収 |
0円~ | 5% | 1,780,000円~ |
1,950,000円~ | 10% | 3,730,000円~ |
3,300,000円~ | 20% | 5,080,000円~ |
6,950,000円~ | 23% | 8,730,000円~ |
9,000,000円~ | 33% | 10,780,000円~ |
18,000,000円~ | 40% | 19,780,000円~ |
つまり、国民民主党の減税案は、所得税額が発生し始めるポイントを178万円にまで引き上げる、というものです(※ただし、現実には社会保険の加入義務が生じる効果もあるため、所得税が発生するポイントはもう少し上がる可能性はあります)。
このように考えたら、立憲民主党の提案する「就労支援給付制度」が、国民民主党提案と比べ、いかに「ショボい」かは明らかでしょう。
とある会合でも期待が非常に大きいことが判明
この点、(詳細は明かせませんが)著者自身、この2週間の間にいくつかの会合に参加したのですが、休憩時間の雑談では参加者の話題もこの「年収の壁」引上げに関する期待感でもちきりでした。正直、「リアル」の世界で、ここまで多くの人が年収の壁に対し注目するというのは、なかなかに異例のことといえるかもしれません。
こうしたなかで、立憲民主党が打ち出している「130万円の壁」に関しては、正直、話題にすら上がっていない、というのが実情ではないかと思います(というか、話題に上がれば、減税に頑なに後ろ向きな立憲民主党に対する反発も生じかねないところです)。
いずれにせよ、著者自身の勝手な主観も交えて、ですが、先の衆院選は新聞、テレビの社会的影響力をSNSなどが完全に凌駕したという意味では、非常に画期的な出来事だったのではないでしょうか。
これに続く兵庫県知事選で、こうした流れが決定づけられたのではないかと思います。
そして、(これも著者自身の希望的観測も交えて申し上げるならば)一度生じたこの「マスコミ→ネット」という流れがひっくり返ることは考え辛く、その意味では自公政権にとっても、財務省が抵抗しようが何しようが、この「年収の壁」問題を巡って、中途半端な対処はできない、ということに他なりません。
その意味では、私たちはなかなかに面白い歴史的瞬間に立ち会っているのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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所得に7割課税されてびっくりして自殺した映画監督を思い出しました。
立憲民主党が国民民主党の提案を丸呑みすることもあるのでは。もっとも財務省に逆らう勇気があれば、ですが。
蛇足ですが、これからは、(受けるかどうかは別にして)他の党からヘッドハンティングされる議員をどれだけ揃えられるかが、その党が発展するかが分かるのではないでしょうか。
毎度、ばかばかしいお話を。
○○(好きな言葉をいれてください):「ネットが政治を動かしてもよいのか」
まさか。
兵庫県知事選挙後にこもごも指摘されたのは新宿会計士様の持論でいらっしゃる「オールドメディア→ネット」と言う話では無く、「ネットにも玉石混淆」「有権者がオールドメディア一辺倒からリテラシーが上がった」と言う事でした。
むしろ「ネットvsマスコミ」と言う対立構図はマスコミ側が過剰に煽って居ました。その中で噴飯物の「我々は放送法に縛られて居るから公正中立、ファクトに基づいて。対してネットは無根拠な誹謗中傷に溢れて」云々の話をお得意の図解で示しながら(バラエティ番組のくせに)大真面目に見栄を切って居ました。
マスコミは信じられて居た期待を大きく下回る偏向報道で評判を下げているがなんだかんだで未だ機能して居ます。一方でネット上では初めから玉石混淆なので期待値は低く、エコーチェンバーも数多あり、しかも次々と無数に湧いて来るので面倒なのですが、それでも(リテラシーがある層には)より良い情報を提供してくれる。またある程度表現力や表現する力のある層には、既存マスコミを全く経ないで直接発信する場も(理論上は)あると言う事になりました。
しかし、例えば暇空茜氏の様な異能の人でも発信を通じて戦うなど難しい。国民民主玉木氏や、兵庫県知事斉藤氏、日本保守党党首某氏、N党立花氏皆それぞれなんでこんな所で?と言う箇所で足元掬われて躓いてそれぞれ苦しんでいます。つまり個人個人がネット界の大谷さんや藤井さんレベルでないと誰かに突然後ろから不意打ちされる様な無限の修羅場。
そう言う面がある様に思うのです
図表1の「給付額」に当たる部分は、現行でも厚生年金・協会けんぽ等側が「扶養対象相当」として実質的に掛金負担してるんですよね。
従来と厚生年金・協会けんぽ等側の負担状況が変わらないのであれば、「130万円の壁問題は単純に基準点を改定(例えば178万円に)すればいいだけ」のように思えます。
*「年収~130万円の(年金・健保上の)扶養対象者」が『年収~178万円の(年金・健保上の)扶養対象者』となるだけのことなのかと・・。
国民民主党によって103万円の壁の存在がクローズアップされた途端に、106万円の壁、130万円の壁などのはなしが沸いて出てきました。無論それらがあることは既成の事実。しかし、それらを急に声高に言いだしたのは、要するに30年間も課税最低限を一切引き上げることなく、隠れ増税を続けてきた財務省及び政界の不作為、さらに言えば悪辣な手口を、多少なりとも隠蔽する意図を疑われても仕方がないと思います。
言うまでもないことですが、租税は単に政府財源としての役割であるばかりでなく、資本主義経済の負の側面、持たざる者から持つ者への財の集中を緩和する意味合いがあります。働いても働いても、その成果が一握りの資本家の懐に入るばかりで暮らしは貧しくなる一方というのでは、社会は破綻してしまう。これが課税最低限を設け、累進税率によって高額所得者により多くを負担させることが正当化される理由でしょう。
しかし、社会保険、年金の壁についてはこれとは全く意味合いが異なると思います。これらは保健年金料を負担する本人が直接の受益者であって、個々人について総払い込み額に応じただけを受け取れるかどうかは確率の問題と言えましょうが、一応負担額 vs. 受益額の関係は貧富の差なく公平と言って良いはずです。高額の医療保険料を支払っているのに、受けられる保険医療の水準が少額しか支払っていない人と同等というのは不公平だと言うのは当たらないでしょう。医療保険の補填分を差し引いた医療費が同じと言っても、懐の痛み具合の感覚は、その人の収入額によって大きく異なるのですから。
結局、106万円、130万円の壁の問題は、それはそれとして検討していくのは今後の重要な政策課題であるとしても、今殊更にそれを言い立てるのは、財政健全化を言い訳に、課税限度額の引き上げを徹底的にサボってきたことへの非難を、逸らす狙いがあってのことだと思っています。
上のコメントに追加。
高額の保険料を支払うのに受けられる医療サービスが低額負担者と同じというのはおかしいという考えへの反論に続けて、
一方で、同じ医療サービスを利用しながら、オレは貧乏なんだから、医者に掛かる費用くらい、国が(金持ちが)払ってくれても罰は当たるまい、というのも、いかにも甘ったれた考え方と言うべき、
という点も、付け加えるべきと考えています。
“立憲餡”
シャバシャバで味薄くコストだけ掛かりそうw
立憲民主党の政策から見えてくるのは、徹底した老人優遇だと私は思います。
現役労働者の事など見向きもしない。まさに「働いたら負け」を地で行くような政策です。
支持層がそうなのだから、そうなるんでしょうね。
いつまで続くかなぁ。